2 / 12
第2話
しおりを挟む
私たちの出会いは、職場だった。
新入社員として入社してきた私の教育係だったのが、トオル。
仕事を通して私たちの距離は縮まっていき、私が二十四歳時、トオルが転職を機に告白されて付き合い、二十五歳でゴールインした。
結婚後も、私は仕事は続けた。
トオルから、
「これからのことを考えたら、子どもが出来るまでは働いて欲しい」
と言われたからだ。
もちろん、私もそのつもりだったから快諾した。
私の方が収入が少なく、家に入れる生活費が少なかったため、その分家事を多めに負担することでお互い了承。
始めの頃はお互い忙しい中、支え合って生活していた。
休日には一週間溜まった家事を一緒にこなし、余った時間で食事に行ったり映画を見たり、貴重な夫婦の時間をともに過ごした。
しかし、そんな穏やかな新婚生活は長くは続かなかった。
トオルは転職を機にデザイン関係の仕事についたのだが、その能力が認められ、色々と仕事を任されることが増えてきたのだ。
彼の帰りは次第に遅くなり、休日も疲れていると言って家事をしてくれなくなった。
トオルがしていた家事は、自動的に私がすることとなり、結構な負担になっていった。
私だって仕事をしながら生活費を入れている。トオルよりも少し少ないが、その分家事を負担しているので、これ以上負担が増えるのは辛かった。だけど一番辛かったのは、私が彼の負担を背負っている事に対し、トオルが感謝の言葉一つくれなかったことだ。
むしろ、
「いや、俺も忙しいし。お前と違って俺、期待されてるからさ」
と、負担するのが当然と言わんばかりの言動と、私を見下すような態度に腹が立った。
彼の態度はドンドンと悪化していき、今まで彼自身で行っていたことも、私に頼るようになっていった。
私はいつからトオルの母と錯覚していた? と自問してしまうほどだ。
そのせいで、彼と衝突することが増えていった。
「トオル。せめて、自分のことは自分でやってくれない? 前はやってたじゃない。ハンカチや靴下の準備まで私に頼られると、さすがにしんどい……」
「お前の方が早く帰ってきてるし、家のこと分かってるんだから、準備してくれた方が早いだろ? 適材適所だろ。それに、出来る方がやったらいいじゃないか」
「別に暇だから、あなたよりも早く帰ってきてるわけじゃないわ。時間内に終わらせて早く帰れるように、私だって色々と考えてるの!」
「……俺の仕事の要領が悪いって言いたいのか?」
「そ、そういうわけじゃない! 色々とプロジェクトを任されて大変なのは分かってる。でも……」
「なんだかんだ、お前の仕事は、俺よりも早く帰れる程度の量ってことだろ? 現に、俺よりも早く帰ってきてるんだから」
「……ならせめて、貯金をしてくれない? トオル、最近貯蓄用の口座にお金、入れてくれてないよね?」
「俺にだって付き合いがある分、支出が多いの! それに何で俺だけが、貯蓄用口座に多めに金をいれなきゃいけないんだよ。あーしんど。俺、お前と違って仕事で疲れてるから、風呂入ってくる」
こんな感じで最終的にはトオルから話を切り上げられてしまう。話しだってまともに相手に伝わらない。
それに加え、私を見下すような言動が出てきたことも気になっていた。
「なんかおかず、少なくないか?」
「時間があるなら、ちゃんとアイロンかけておけよ」
「なんかお前、最近太った? 結婚したときの面影、なくなってきたな」
笑いながら言われるたびに、心がすり減っていく。始めは笑って受け流していたけれど、私が怒ると、
「冗談だろ? そんなことも分からないのかよ」
とヘラヘラするだけで、私が本当に嫌がっていると理解してくれない。挙げ句の果てには、
「冗談なのに、なんでそこまで俺が怒られないといけないんだよ。お前、ほんっと変わったよな。付き合ってたときは優しかったのに……」
なんて言われる始末だ。
トオルだって変わったよ、とは言い返せなかった。
確かに彼の言うとおり、トオルの仕事は忙しい。そのせいでイライラしているだけ。きっと元の優しい彼に戻ってくれると信じ、トオルが快適に生活出来るように気を遣う日々が続いた。
しかし結婚して二年後、トオルが役職についたことで帰宅時間が遅くなり、休日出勤も増えた。
私への嫌みは変わらず、夜の営みも完全にレスになっていた。
一時期は子どもが出来なくて悩んだけど、やることもやっていないので、出来るわけはない。
そして、結婚四年目のある日。
全てが変わった。
新入社員として入社してきた私の教育係だったのが、トオル。
仕事を通して私たちの距離は縮まっていき、私が二十四歳時、トオルが転職を機に告白されて付き合い、二十五歳でゴールインした。
結婚後も、私は仕事は続けた。
トオルから、
「これからのことを考えたら、子どもが出来るまでは働いて欲しい」
と言われたからだ。
もちろん、私もそのつもりだったから快諾した。
私の方が収入が少なく、家に入れる生活費が少なかったため、その分家事を多めに負担することでお互い了承。
始めの頃はお互い忙しい中、支え合って生活していた。
休日には一週間溜まった家事を一緒にこなし、余った時間で食事に行ったり映画を見たり、貴重な夫婦の時間をともに過ごした。
しかし、そんな穏やかな新婚生活は長くは続かなかった。
トオルは転職を機にデザイン関係の仕事についたのだが、その能力が認められ、色々と仕事を任されることが増えてきたのだ。
彼の帰りは次第に遅くなり、休日も疲れていると言って家事をしてくれなくなった。
トオルがしていた家事は、自動的に私がすることとなり、結構な負担になっていった。
私だって仕事をしながら生活費を入れている。トオルよりも少し少ないが、その分家事を負担しているので、これ以上負担が増えるのは辛かった。だけど一番辛かったのは、私が彼の負担を背負っている事に対し、トオルが感謝の言葉一つくれなかったことだ。
むしろ、
「いや、俺も忙しいし。お前と違って俺、期待されてるからさ」
と、負担するのが当然と言わんばかりの言動と、私を見下すような態度に腹が立った。
彼の態度はドンドンと悪化していき、今まで彼自身で行っていたことも、私に頼るようになっていった。
私はいつからトオルの母と錯覚していた? と自問してしまうほどだ。
そのせいで、彼と衝突することが増えていった。
「トオル。せめて、自分のことは自分でやってくれない? 前はやってたじゃない。ハンカチや靴下の準備まで私に頼られると、さすがにしんどい……」
「お前の方が早く帰ってきてるし、家のこと分かってるんだから、準備してくれた方が早いだろ? 適材適所だろ。それに、出来る方がやったらいいじゃないか」
「別に暇だから、あなたよりも早く帰ってきてるわけじゃないわ。時間内に終わらせて早く帰れるように、私だって色々と考えてるの!」
「……俺の仕事の要領が悪いって言いたいのか?」
「そ、そういうわけじゃない! 色々とプロジェクトを任されて大変なのは分かってる。でも……」
「なんだかんだ、お前の仕事は、俺よりも早く帰れる程度の量ってことだろ? 現に、俺よりも早く帰ってきてるんだから」
「……ならせめて、貯金をしてくれない? トオル、最近貯蓄用の口座にお金、入れてくれてないよね?」
「俺にだって付き合いがある分、支出が多いの! それに何で俺だけが、貯蓄用口座に多めに金をいれなきゃいけないんだよ。あーしんど。俺、お前と違って仕事で疲れてるから、風呂入ってくる」
こんな感じで最終的にはトオルから話を切り上げられてしまう。話しだってまともに相手に伝わらない。
それに加え、私を見下すような言動が出てきたことも気になっていた。
「なんかおかず、少なくないか?」
「時間があるなら、ちゃんとアイロンかけておけよ」
「なんかお前、最近太った? 結婚したときの面影、なくなってきたな」
笑いながら言われるたびに、心がすり減っていく。始めは笑って受け流していたけれど、私が怒ると、
「冗談だろ? そんなことも分からないのかよ」
とヘラヘラするだけで、私が本当に嫌がっていると理解してくれない。挙げ句の果てには、
「冗談なのに、なんでそこまで俺が怒られないといけないんだよ。お前、ほんっと変わったよな。付き合ってたときは優しかったのに……」
なんて言われる始末だ。
トオルだって変わったよ、とは言い返せなかった。
確かに彼の言うとおり、トオルの仕事は忙しい。そのせいでイライラしているだけ。きっと元の優しい彼に戻ってくれると信じ、トオルが快適に生活出来るように気を遣う日々が続いた。
しかし結婚して二年後、トオルが役職についたことで帰宅時間が遅くなり、休日出勤も増えた。
私への嫌みは変わらず、夜の営みも完全にレスになっていた。
一時期は子どもが出来なくて悩んだけど、やることもやっていないので、出来るわけはない。
そして、結婚四年目のある日。
全てが変わった。
1
あなたにおすすめの小説
最後に一つだけ。あなたの未来を壊す方法を教えてあげる
椿谷あずる
恋愛
婚約者カインの口から、一方的に別れを告げられたルーミア。
その隣では、彼が庇う女、アメリが怯える素振りを見せながら、こっそりと勝者の微笑みを浮かべていた。
──ああ、なるほど。私は、最初から負ける役だったのね。
全てを悟ったルーミアは、静かに微笑み、淡々と婚約破棄を受け入れる。
だが、その背中を向ける間際、彼女はふと立ち止まり、振り返った。
「……ねえ、最後に一つだけ。教えてあげるわ」
その一言が、すべての運命を覆すとも知らずに。
裏切られた彼女は、微笑みながらすべてを奪い返す──これは、華麗なる逆転劇の始まり。
侯爵家を守るのは・・・
透明
恋愛
姑に似ているという理由で母親に虐げられる侯爵令嬢クラリス。
母親似の妹エルシーは両親に愛されすべてを奪っていく。
最愛の人まで妹に奪われそうになるが助けてくれたのは・・・
虚言癖の友人を娶るなら、お覚悟くださいね。
音爽(ネソウ)
恋愛
伯爵令嬢と平民娘の純粋だった友情は次第に歪み始めて……
大ぼら吹きの男と虚言癖がひどい女の末路
(よくある話です)
*久しぶりにHOTランキグに入りました。読んでくださった皆様ありがとうございます。
メガホン応援に感謝です。
貴方に私は相応しくない【完結】
迷い人
恋愛
私との将来を求める公爵令息エドウィン・フォスター。
彼は初恋の人で学園入学をきっかけに再会を果たした。
天使のような無邪気な笑みで愛を語り。
彼は私の心を踏みにじる。
私は貴方の都合の良い子にはなれません。
私は貴方に相応しい女にはなれません。
四の五の言わず離婚届にサインをしてくれません?
白雲八鈴
恋愛
アルディーラ公爵夫人であるミレーネは、他の人からみれば羨ましいと思える立場にいた。
王妹の母譲りの美人の顔立ち、公爵夫人として注目を集める立場、そして領地の運営は革命と言えるほど領地に潤いを与えていた。
だが、そんなミレーネの心の中にあるのは『早く離婚したい』だった。
順風満帆と言えるミレーネは何が不満なのか。その原因は何か。何故離婚できないのか。
そこから始まる物語である。
居場所を失った令嬢と結婚することになった男の葛藤
しゃーりん
恋愛
侯爵令嬢ロレーヌは悪女扱いされて婚約破棄された。
父親は怒り、修道院に入れようとする。
そんな彼女を助けてほしいと妻を亡くした28歳の子爵ドリューに声がかかった。
学園も退学させられた、まだ16歳の令嬢との結婚。
ロレーヌとの初夜を少し先に見送ったせいで彼女に触れたくなるドリューのお話です。
くだらない冤罪で投獄されたので呪うことにしました。
音爽(ネソウ)
恋愛
<良くある話ですが凄くバカで下品な話です。>
婚約者と友人に裏切られた、伯爵令嬢。
冤罪で投獄された恨みを晴らしましょう。
「ごめんなさい?私がかけた呪いはとけませんよ」
蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる