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第12話
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「マイさ――ん……あたし、ほんとなんでこんなに男を見る目ないんだろ……」
「サオリさん、ちょっと飲み過ぎでは? そんなこと言ったら、私だって男の見る目がなかったってことになるんだけど……」
くだを巻くサオリをなだめながら、私は苦笑いをした。
サオリの一人称も『私』から『あたし』に変わっている。
今、サオリと一緒に旅行に来ている。
今回の一件で、サオリには世話になったからだ。向こうは、慰謝料を請求されなかっただけで充分だと言ったけれど、気持ちが収まらなかったため、彼女を旅行に誘ったのだ。
もちろん、トオルから振り込まれた慰謝料を使って来ている。
女二人の傷心旅行。
それも同じ男から与えられた傷だと思うと、おかしくて笑ってしまう。
トオルのその後は、彼の両親が私に改めて謝罪の連絡をしてくれたときに聞いた。
予想通り、トオルは会社を解雇された。
だが、トオルには私への慰謝料がある。さらにサオリの両親からも訴えられ、結局そちらにも少額だが慰謝料を支払うことになったそうだ。
両方とも、期限までに一括で払わなければならなかったため、トオルは最終的に借金をしたらしい。
会社経営をしているサオリの父親が、トオルのことを色んな業界のお偉いさんたちに話したおかげで、トオルは未だに定職に就くことが出来ず、バイトを掛け持ちして必死になって借金を返しているとのことだ。
実の両親からも見放され、仕事も失い、借金まみれになった彼がどのような人生を歩んでいくかなんて、私にはどうでもいい。
もう彼とは、赤の他人なのだから。
私も仕事を辞めた。
逆恨みしたトオルが、職場に乗り込んでくる可能性を考慮してのことだ。
新しい仕事は、サオリの両親が斡旋してくれた。彼女の両親は、今回の一件で私に深く謝罪をし、娘を正しい道に導いてくれたと大変感謝してくれていた。
そのお陰で、前職よりも待遇もよく、給料の良い職に就くことができた。
……なんか今回の件で、サオリ両親の私への評価が爆上がりし、お見合いを勧められるんだけど、それはお断りしている。
仕事と同じ理由で、家も売った。
売ったお金を両親に返そうとしたが、私を一時でも疑った罪悪感を持っていた両親は、その金を新しい生活の足しにするように言ってくれた。
トオルからの慰謝料と家を売ったお金で、今の私はちょっとだけ小金持ちだ。
新たな住まいも見つけたし、もう少しすれば仕事も始まる。
新しい一歩を踏み出せる。
そして――
ぐでんぐでんに酔っ払ったサオリが、空になった私のグラスに酒を注いだ。酔っ払っているせいで、グラスから零れた酒がテーブルに零れる。
「ああっ! ちょっとサオリさん、お酒零れて――」
「……飲みましょう! もう飲みまくりましょう、マイさんっ!」
「もうっ、分かった分かった! とことん付き合うから……」
「もう、マイさん、やさしー! あたし、マイさんと結婚するー!」
サオリが抱きついてきた。
彼女とは、なんだかんだ付き合いを続けている。
何だか妙に懐かれてしまい、何かと私と一緒にいたがるのだ。
でもまあ……悪い気はしない。
変な縁で繋がった『友人』に抱きつかれてため息をつきつつも、これから始まる新しい生活に心を躍らせている自分がいるのを感じていた。
<了>
「サオリさん、ちょっと飲み過ぎでは? そんなこと言ったら、私だって男の見る目がなかったってことになるんだけど……」
くだを巻くサオリをなだめながら、私は苦笑いをした。
サオリの一人称も『私』から『あたし』に変わっている。
今、サオリと一緒に旅行に来ている。
今回の一件で、サオリには世話になったからだ。向こうは、慰謝料を請求されなかっただけで充分だと言ったけれど、気持ちが収まらなかったため、彼女を旅行に誘ったのだ。
もちろん、トオルから振り込まれた慰謝料を使って来ている。
女二人の傷心旅行。
それも同じ男から与えられた傷だと思うと、おかしくて笑ってしまう。
トオルのその後は、彼の両親が私に改めて謝罪の連絡をしてくれたときに聞いた。
予想通り、トオルは会社を解雇された。
だが、トオルには私への慰謝料がある。さらにサオリの両親からも訴えられ、結局そちらにも少額だが慰謝料を支払うことになったそうだ。
両方とも、期限までに一括で払わなければならなかったため、トオルは最終的に借金をしたらしい。
会社経営をしているサオリの父親が、トオルのことを色んな業界のお偉いさんたちに話したおかげで、トオルは未だに定職に就くことが出来ず、バイトを掛け持ちして必死になって借金を返しているとのことだ。
実の両親からも見放され、仕事も失い、借金まみれになった彼がどのような人生を歩んでいくかなんて、私にはどうでもいい。
もう彼とは、赤の他人なのだから。
私も仕事を辞めた。
逆恨みしたトオルが、職場に乗り込んでくる可能性を考慮してのことだ。
新しい仕事は、サオリの両親が斡旋してくれた。彼女の両親は、今回の一件で私に深く謝罪をし、娘を正しい道に導いてくれたと大変感謝してくれていた。
そのお陰で、前職よりも待遇もよく、給料の良い職に就くことができた。
……なんか今回の件で、サオリ両親の私への評価が爆上がりし、お見合いを勧められるんだけど、それはお断りしている。
仕事と同じ理由で、家も売った。
売ったお金を両親に返そうとしたが、私を一時でも疑った罪悪感を持っていた両親は、その金を新しい生活の足しにするように言ってくれた。
トオルからの慰謝料と家を売ったお金で、今の私はちょっとだけ小金持ちだ。
新たな住まいも見つけたし、もう少しすれば仕事も始まる。
新しい一歩を踏み出せる。
そして――
ぐでんぐでんに酔っ払ったサオリが、空になった私のグラスに酒を注いだ。酔っ払っているせいで、グラスから零れた酒がテーブルに零れる。
「ああっ! ちょっとサオリさん、お酒零れて――」
「……飲みましょう! もう飲みまくりましょう、マイさんっ!」
「もうっ、分かった分かった! とことん付き合うから……」
「もう、マイさん、やさしー! あたし、マイさんと結婚するー!」
サオリが抱きついてきた。
彼女とは、なんだかんだ付き合いを続けている。
何だか妙に懐かれてしまい、何かと私と一緒にいたがるのだ。
でもまあ……悪い気はしない。
変な縁で繋がった『友人』に抱きつかれてため息をつきつつも、これから始まる新しい生活に心を躍らせている自分がいるのを感じていた。
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