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第一話(三)
しおりを挟む「遅いよ、何やってんだい!」
「ごめんなさい! すぐ取りかかります!」
秋葉の朝はまだまだ続く。今朝は体術の特訓に集中しすぎて、朝食の準備に遅れてしまった。
彼女は薄汚れた割烹着をさっと羽織って、急いで持ち場についた。
「ったく……。お前は『無能』なんだから、せめて仕事くらいはちゃんとしておくれよ」
「は~い」
気の抜けた返事をする。その声音には、もはや何の感情も宿っていなかった。
これは諦念なのかもしれないし、もう、どうでもいい。周囲に期待をしても無駄なのだから。
秋葉たちが用意している朝食は、旦那様あるいはお父様、奥様あるいはお母様、そしてお嬢様あるいは妹の春菜――この三人への栄養満点で上等な食事。あとは使用人たちへの賄いだ。
この賄いにも等級がある。屋敷内での地位が高い者ほど、主人たちの食事内容に近いものを口にできるのだ。
秋葉は、質の悪い麦飯のおむすびとたくあん二切れ。これらは一番下っ端の者たちの食事だった。
でも麦飯は栄養があるし、僅かながら塩も振ってある。それに、たくあんだって噛みごたえがあって美味しいし、彼女にとっては文句のつけようのない朝食だ。
たまに、焼きたての魚や温かい味噌汁が恋しくなる日もあるけれど。
「ほら、無能。もたもたやってるんじゃないよ。早く行くよ」
「あっ、はい!」
そんな使用人たちの朝食は、もっと後の時間だ。
まずは主人たちに食事を出し、それから家令や侍女長などの位の高い者。秋葉たち下女の食事時間は、いつも昼に差し掛かっていた。
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