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第六話 初の晩、新月(一)
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静かな月夜が好き。
秋葉が四ツ折家の納屋に住んでいた頃は、格子の下から月をよく見ていた。
月は三十日かけて、様々な形に変化する。満月、三日月、上弦や下弦の月……。毎日のように形を変える月を眺めるのが好きだった。
あの日から感情を心の底に押し込めた自分と違って、日によってころころと様変わりするそれは、とても魅力的に見えたのだ。
私も、変わりたい。
そう、切に願っていた。
子供の頃は明るい太陽が好きで、夜が来るのが怖かった。
真っ暗で、音のない世界。それは絶望の底へ向かっているようで、希望を運んでくれる太陽が登るのが待ち遠しかった。
でも、いつからだろうか。
いつの間にか太陽が怖くて、夜を待ち望んでいた自分がいたのだ。
それは、唯一の一人になれる時間だからだろうか。
罵倒されたり嘲笑されたり、そんな声が届かないから。妹と比べられることもないから。霊力があってもなくても、全員に平等に来る休息の時間だから。
夜の孤独な時間は、いつしか秋葉にとって大切なものになっていた。
今宵は新月。月は目に見えないが、始まりの日。
自分の新しい人生もここから始まるのだと思うと、自然と胸の奥が熱くなった。
闇を照らす星空が綺麗だ。こんな素敵な夜空を見ていると……。
――じゃあ、また夜に。
秋葉が四ツ折家の納屋に住んでいた頃は、格子の下から月をよく見ていた。
月は三十日かけて、様々な形に変化する。満月、三日月、上弦や下弦の月……。毎日のように形を変える月を眺めるのが好きだった。
あの日から感情を心の底に押し込めた自分と違って、日によってころころと様変わりするそれは、とても魅力的に見えたのだ。
私も、変わりたい。
そう、切に願っていた。
子供の頃は明るい太陽が好きで、夜が来るのが怖かった。
真っ暗で、音のない世界。それは絶望の底へ向かっているようで、希望を運んでくれる太陽が登るのが待ち遠しかった。
でも、いつからだろうか。
いつの間にか太陽が怖くて、夜を待ち望んでいた自分がいたのだ。
それは、唯一の一人になれる時間だからだろうか。
罵倒されたり嘲笑されたり、そんな声が届かないから。妹と比べられることもないから。霊力があってもなくても、全員に平等に来る休息の時間だから。
夜の孤独な時間は、いつしか秋葉にとって大切なものになっていた。
今宵は新月。月は目に見えないが、始まりの日。
自分の新しい人生もここから始まるのだと思うと、自然と胸の奥が熱くなった。
闇を照らす星空が綺麗だ。こんな素敵な夜空を見ていると……。
――じゃあ、また夜に。
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