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第十二話(三)
しおりを挟むほんの少しの時間なのに、全身にぐっしょりと汗をかいていた。鼓動も速くなり、息も上がっている。心臓がぶるりと震えて、疲労感が激しく押し寄せた。
これは、神力を人間の世界に送り出す儀式だ。
下界に渡った力は、空、大地、海などの隅々に流れていき、やがて人間の霊力や生命の生きる源になる。
しかし、それには精緻な操作と、微妙な感覚の制御が必要とされる。龍神の力はあまりにも巨大で、少しでも加減を間違えれば人間界を破壊してしまうのだ。
そこで、大事なのが花嫁の存在だ。
彼女たちが夫である龍神の力を媒介して、人間界に放出する。そうすることによって、均整の取れた安定した神力が降り注ぐのである。
また、花嫁は龍神の『魂』自体を安定させる存在でもある。
神の力は膨大で、時として己の気に呑み込まれて自我を見失うこともある。そんな時、花嫁が力を収めて、癒やし、『錨』として神を世界に繋ぎ止める役割を果たすのだ。
過去の龍神たちに花嫁がいない時代は、天変地異や戦乱が相次いだという。
憂夜は今のところは神力を上手く操作できているが、それでも匙加減を誤ってしまい大嵐を起こしたこともある。
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