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第十二話(二)
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憂夜は、暗い地下の底に向かって、一人で歩いていた。
黒龍の屋敷からそれほど遠くない、ひっそりとした場所に洞窟がある。
そこに建つ黒龍の祠の下に、神聖な空間が存在していた。
長い階段を降りるごとに、だんだんと空気が変容するのを感じる。太陽から届く光が消え、均一に植えられた霊灯花という植物の、花弁の放つ淡い光だけが頼りだ。
底からは、真冬の引き裂くような寒気が襲ってきて、濃い神力が充満していく。
最下層まで降りると、十畳ほどの円形の空間が広がっていた。床一面に広がった複雑な文様の魔法陣と、その中心には黒漆喰の祭壇が置かれていた。
祭壇の上には、拳大くらいの大きさの、漆黒に輝く『黒龍の宝玉』が祀られていた。
憂夜は静かに呪文を唱えた。すると魔法陣が端から光りだして、宝玉に向かって進んでいく。
それが玉まで届くと、一瞬だけカッと眩い閃光が辺りを照らした。
すぐに光は収まって、宝玉の核が燃えはじめる。命の灯火のような深紅の光が、憂夜の端正な顔を赤く照らした。
次に彼は、おもむろに手を翳して、己に内包する神力を核に向けて放った。
再び閃光。間髪開けずに、黒い気が空間に充満して闇が支配した。それも僅かの時間で、すぐに元の状態に戻る。
憂夜はふっと息を吐きながら表情を緩めた。
「よしっ! 一丁、上がり!」
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