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第十二話(六)
しおりを挟む「アキは霊力を取り戻すんでしょう? 諦めないよね?」
しばらくして、白銀が口火を切った。彼はうるうると涙を滲ませながら黒龍の花嫁を見上げていた。
「も、もちろん、諦めないけど……」
秋葉は口ごもる。なにか喉につっかえているような、苦しそうな顔をしていた。奥様の悲痛な表情を見取って、瑞雪にどっと後悔の波が押し寄せた。すこぶる気まずい……。
「諦めないのなら、なんでそんな顔をしてるのさっ!」
次の瞬間、白銀が尻尾で秋葉の頬をペシッと叩いた。彼女は弾かれるように顔を上げる。
「シロ、どうしたのよ。そんなに怒って」と、彼女は目を白黒させて言った。
「そりゃ怒るに決まってるよ! 絶対に霊力を取り戻すって言ったじゃないか! アキの嘘つき! 意気地なしっ!」
白銀は大声で叫んだあと、滑るように秋葉の背中から離れていった。
「シロ!」
目にも留まらぬ速さで、屋敷の外へと逃げていく。その丸い瞳からはポロポロと涙が零れていた。
「あー……」
さらに気まず過ぎる空気に胸をじくじくさせながら、瑞雪が控え目に言った。
「実は……シロなんですけど……。生まれたばかりで母親に捨てられたんです……」
「えっ!?」
白銀の思わぬ衝撃的な過去に、秋葉は目を大きく見開いた。
「龍族は角が生えているんですけど、シロはそれが無くて……」
「それだけのことで捨てられたの?」
「はい。龍にとって角は大事なものですから」
龍は角に『気』を溜める。それがないとなると脆弱な個体と見做され、どうせ早死するのだからと赤子のうちに捨てられるらしい。
「それで、ご主人様が死にかけていたシロを拾いまして、こうやって一緒に住んでいるんです」
「そうだったのね。……もしかしてシロは、私と自分を重ねていたのかしら?」
瑞雪は深く頷く。
「えぇ。奥様も霊力がないので似た者同士と思ったのでしょう。それでも、奥様は諦めずに努力していた。その姿を見て勇気付けられたんだと思います。いつも、奥様のことを嬉しそうに話していましたから」
「そう……」
秋葉は少し考え込む様子を見せて、
「そう言えば、シロからはよく霊力がないことについて尋ねられていたわ。馬鹿にするでもなかったし、単なる好奇心でもなかった。思い返せば、なにか言いたげな感じだったかも……」
「きっとシロは、奥様に霊力が戻ったら、自分も角が生えるのだと信じていたのでしょう」
「だから私が諦めるような素振りを見せたから怒ったのね」
「悪気はないんだと思います。あの子はまだ純粋な子供ですから」
「どうしよう……シロを傷付けちゃった……。私……謝りに行かなきゃ!」
秋葉が踵を返した次の瞬間、
「きゃああああっ!!」
視界を覆うくらいの大量の式神が彼女を襲った。
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