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第十三話(三)
しおりを挟む「消えろ」
次の瞬間。
秋葉の耳に、底冷えするような重々しい声が聞こえた気がした。すると、黒色の大波が現れて、秋葉たちを呑み込んでいく。
秋葉は思わず目を瞑って息を止めたが、肉体には特に影響がないようだ。むしろ、温かいものに包みこまれている感じがした。
「秋葉! シロ! 大丈夫か!?」
数拍して目を開けると、憂夜が二人を抱きしめていた。
あれだけいた式神は、綺麗さっぱり消えてしまっている。風の音に混じって、黒龍の気が辺り一面に広がっていくのを感じた。
「憂夜……!」
「黒龍様あぁぁぁー! うわああーーん!」
式神が消えて安心したのか、二人とも泣きながらひしと彼に抱きつく。
「遅れて悪かった。お前たち、よく頑張ったな」
憂夜は二人を優しく撫でた。冷たい手が、秋葉の火照った身体を落ち着かせてくれて心地良い。
秋葉と白銀は目を合わせて「えへへ」と嬉しそうに小さく笑った。
「そうだ、黒龍様! アキからちょっとだけ霊気が出たんだよ!」
しばらくして白銀がばっと勢いよく顔を上げて、爛々と瞳を輝かせながら言った。
憂夜は頷いて、
「あぁ、一瞬だが俺も感じた。秋葉の霊力が目覚めつつあるんだと思う」
「本当に……?」
秋葉は驚愕と歓喜が入り混じった顔で憂夜を見る。自然と一筋の涙が零れ落ちた。
「あぁ。今回は瞬発的なものだが、いずれ戻ると俺は思う。秋葉が何年も諦めないで努力を続けた結果だ」
「そうだよ! やっぱり、諦めなければなんだってできるんだ! いつか、ぼくだって…………!!」
「うん……! うん……!」
秋葉の柿渋色の瞳から、堰を切ったように涙が溢れ出した。これまでの、いろんな感情が複雑に混じり合う。
霊力がなくなったあの日から、辛いことしかなかった。家族からも里のみんなからも蔑まれて、悲しくて悔しくて。枕を濡らす夜のほうが多かった。
でも。
ほんの少しだけど、前へ進んだ。少しだけど、大きな一歩。
鍛錬を続ければ、これからも、きっと。
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