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第十四話 契約(一)
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「秋葉は……今も白龍と契約状態にあるということだ」
信じられない言葉に、秋葉の視界が白黒に変色していく。
急激に身体が熱くなったと思ったら、今度は背中に悪寒が走った。温度差ににわかに身体が震えだして、キンキンと刺すような耳鳴りがしてきた。
憂夜の黄昏色の瞳からは、光が消えかけている。
彼はわなわなと唇を震わせながら、独り言のように呟いた。
「だから……秋葉は今も白龍の『花嫁』だ…………」
心臓に直接雷撃を叩き付けられたような衝撃が秋葉を襲う。
ふつふつと怒りが湧いてきて、激情が体中を駆け抜けた。
「なんでよっ!?」
秋葉は、抑えられない怒りをぶつけるように、金切り声を上げる。
「だって、白龍は春菜を選んだわ! 霊力を失った私は捨てられたの! あのとき、私の存在なんて心の片隅にもなかったかのように……!」
嫁入りの日の、白龍の視線は覚えている。彼の心は春菜にしか向いていなくて、自分のことは初めて見る人間みたいに、文字通りに他人事だった。
「だが、契約は有効だ。秋葉は昔、白龍に『血』を分けただろう?」
光が弾けるように、過去の出来事が秋葉の頭をよぎった。あの日、瀕死状態の白龍に彼女は己の血を分け与えた。
そして――……、
『そう。契約。君が血を分けてくれたから、私たちは契約したのだよ』
確かに彼は『契約』と言った。
「でも……龍神様の御印は、春菜に移ったわ。それは花嫁も変化したってことじゃないの?」
「おそらく、秋葉の霊力が消えたから一時的に印も沈み込んだんだと思う。それで、今回の霊力の回復に伴い、それが浮上してきた。その際に黒龍の神力を浴びて、拒否反応を起こしたんだ」
憂夜はあの日のことを思い出した。
あれは、朝から空が黒雲に覆われて、ひどく嫌な天気だった。
突如、白龍の静かな断末魔の叫びが聞こえて、慌てて飛んでいくと既に彼の側には秋葉がいた。
白龍は大きな『邪』に襲撃されたようで、息も絶え絶えに横たわっていた。
秋葉は白龍を救おうと声をかけながら必死で霊力を吹き込んで、最後は彼の言われるままに血を分け与えた。
余程の上質な霊気だったのだろう。白龍はすぐに回復して、無事に命も取り留めた。
不思議な魅力を持つ娘だと思った。見たこともない圧倒的な霊力が、彼の肌を震わせた。
生命力に満ち溢れており、勝ち気な雰囲気で、度胸もある。そして、深い優しさも持ち合わせているように見えた。
「あーあ。白龍に先を越されたな」
二人の様子を見届けて、憂夜は苦笑いをしながら踵を返す。あんな立派な花嫁を見つけるなんて、羨まし過ぎる。
「……ま、幸せになってくれ」
それが憂夜と秋葉の、最初の出会いだったのだ。
信じられない言葉に、秋葉の視界が白黒に変色していく。
急激に身体が熱くなったと思ったら、今度は背中に悪寒が走った。温度差ににわかに身体が震えだして、キンキンと刺すような耳鳴りがしてきた。
憂夜の黄昏色の瞳からは、光が消えかけている。
彼はわなわなと唇を震わせながら、独り言のように呟いた。
「だから……秋葉は今も白龍の『花嫁』だ…………」
心臓に直接雷撃を叩き付けられたような衝撃が秋葉を襲う。
ふつふつと怒りが湧いてきて、激情が体中を駆け抜けた。
「なんでよっ!?」
秋葉は、抑えられない怒りをぶつけるように、金切り声を上げる。
「だって、白龍は春菜を選んだわ! 霊力を失った私は捨てられたの! あのとき、私の存在なんて心の片隅にもなかったかのように……!」
嫁入りの日の、白龍の視線は覚えている。彼の心は春菜にしか向いていなくて、自分のことは初めて見る人間みたいに、文字通りに他人事だった。
「だが、契約は有効だ。秋葉は昔、白龍に『血』を分けただろう?」
光が弾けるように、過去の出来事が秋葉の頭をよぎった。あの日、瀕死状態の白龍に彼女は己の血を分け与えた。
そして――……、
『そう。契約。君が血を分けてくれたから、私たちは契約したのだよ』
確かに彼は『契約』と言った。
「でも……龍神様の御印は、春菜に移ったわ。それは花嫁も変化したってことじゃないの?」
「おそらく、秋葉の霊力が消えたから一時的に印も沈み込んだんだと思う。それで、今回の霊力の回復に伴い、それが浮上してきた。その際に黒龍の神力を浴びて、拒否反応を起こしたんだ」
憂夜はあの日のことを思い出した。
あれは、朝から空が黒雲に覆われて、ひどく嫌な天気だった。
突如、白龍の静かな断末魔の叫びが聞こえて、慌てて飛んでいくと既に彼の側には秋葉がいた。
白龍は大きな『邪』に襲撃されたようで、息も絶え絶えに横たわっていた。
秋葉は白龍を救おうと声をかけながら必死で霊力を吹き込んで、最後は彼の言われるままに血を分け与えた。
余程の上質な霊気だったのだろう。白龍はすぐに回復して、無事に命も取り留めた。
不思議な魅力を持つ娘だと思った。見たこともない圧倒的な霊力が、彼の肌を震わせた。
生命力に満ち溢れており、勝ち気な雰囲気で、度胸もある。そして、深い優しさも持ち合わせているように見えた。
「あーあ。白龍に先を越されたな」
二人の様子を見届けて、憂夜は苦笑いをしながら踵を返す。あんな立派な花嫁を見つけるなんて、羨まし過ぎる。
「……ま、幸せになってくれ」
それが憂夜と秋葉の、最初の出会いだったのだ。
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