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第十四話(二)
しおりを挟む「じゃあ……」
しばらくのあいだ黙り込んでいた秋葉は、震える唇をやっと開いた。
「じゃあ、春菜は? 春菜が白龍の花嫁なんじゃないの……?」
「憶測だが、今は白龍が二重契約状態になっているんだと思う。過去にこのような事例はないが、神が二人の花嫁を持つことは禁忌ではない。つまり……」
憂夜は言葉を続けるのを止めた。視線を落として、全身をわなわなと震わせている。
少しして、彼は意を決したように顔を上げて、まっすぐに秋葉の目を見て行った。
「つまり…………秋葉も白龍の花嫁になる権利を持っている。
…………その契約が有効な限り、俺の――黒龍の花嫁には、決してなれない」
「なんてこと……」
ついに全身の力抜けて、秋葉はがくりと地面に崩れ落ちた。視界は急激に狭まり呼吸が苦しくなって、気味の悪い脂汗が吹き出る。
憂夜は宝物を掬い取るように、彼女の身体を優しく支えながら抱きしめた。
でも、彼女は全身が痺れていて、彼の腕に包まれている感覚がない。視界はもう、真っ黒だった。
「私は……ここでも必要ないの?」
せっかく自分の本当の居場所ができたって思ったのに。
大切な仲間ができたのに。
そして……心から愛したい神様ができたのに。
「っ……!」
秋葉は卒然と立ち上がって、出口に向かって駆けていった。
「おいっ! 秋葉っ!」
憂夜は呼び止めるが、追い掛けることができなかった。
自分にはその資格がないと思ったのだ。
なぜなら、彼女は白龍のものなのだから。
「くそっ!!」
やるせない気持ちで、頭がどうにかなりそうだった。強く握った拳から血が滴り落ちる。
やっと手に入れたと思ったのに、簡単にすり抜けてしまった。
死ぬまで大切にしようって誓ったのに、自分は彼女を守る権利さえ持っていない。
神の世界で理は絶対だ。一度結ばれた契約を、他者がどうかすることは出来ないのだ。
こんなに……秋葉を愛しているのに。
「ちっくしょおおぉぉぉぉぉっ!!」
憂夜の悲痛な咆哮が、暗闇に轟いた。
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