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第十四話(八)
しおりを挟む不意に、初めに契約を交わした娘を思い出した。
彼女は快活な性格で、他人のために自己犠牲も問わない子だった。何の混じり気のない澄み切った瞳の、無垢な笑顔が印象的だった。
姉妹の霊力が入れ替わるのを感じたときは、ひどく動揺した。
双子は表裏一体。古より、同一の個体と見做される。
ゆえに花嫁の入れ替わりは理論上は問題ないが、あの娘とはもう会えないのかと思うと一抹の寂しさがよぎった。
だが、これでいい。
霊力のない娘を、無理に天界に連れて行くことはできなかった。己の神力で保護を掛けることも可能だが、霊力がいつ戻るか見当が付かないとなると、彼女を最後まで守りきれるか不安だった。
だから、あのときも、縋る彼女を知らない振りをした。
これ以上、傷付けたくないから。
ならば、はじめから冷たくしたほうがいい。
(あの娘は黒龍と平穏に暮らしているだろうか……)
そう、思いを馳せたとき。
――カッ!
にわかに身体の中の神力が膨れ上がって、全身が発光しはじめた。
「これは……?」
額に文様が浮かび上がる。それは直に火に炙られているかのように熱かった。
「これは……花嫁との『共鳴』だ」
しかも、春菜の霊気ではない。
あの娘――秋葉の霊気を感じる。
「彼女は霊力を失ったのではなかったのか……?」
この文様が浮かび上がったということは、霊力を取り戻したということ。
そして――……。
光河はガタリと音を立てて勢いよく立ち上がる。
大きく目を見開き、全身を震わせながら、呟いた。
「迎えにいかなければ……私の花嫁を……!」
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