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第十八話(三)
しおりを挟む「『私の血』ですって……?」
秋葉の信じ難い言葉を聞いて、春菜の顔はみるみる歪んでいく。またしても、姉に横取りされてしまったことが許せなかった。
(白龍様はわたしのものなのに……。あんな女の汚れた血が混じっているなんて……)
悋気と憎悪が、彼女の黒い心にどろついた墨を重ねていく。
「許せない……」
春菜は再び影で攻撃をはじめた。今度は太い杭の形になって、鋭利な先端で秋葉の腹を突こうと、ぎゅんと直線に伸びていく。
さっきの一瞬の隙を突いて憂夜から離れた秋葉は、まだ正気に戻っていなく無防備だ。
「死ねっ! 糞女っ!」
「黒炎冥火!」
憂夜は両手から二本の炎の柱を出す。それらは螺旋になって絡み合い、一つの大きな柱となって、影の杭を燃やし尽くした。
だが。
「くそっ! 白龍の神力か!」
純白の綺麗な光線だけが残って、秋葉に向かっていった。
白龍と黒龍は表裏一体。二つの力は常に均衡だ。それは互いに影響しあい、衝突すれば相殺する。
しかし、今の白龍の宝玉には、春菜の霊力と邪の力――さらに秋葉の血の力も加わっている。それらは黒龍一人の力よりも上回っていた。
(不味いっ……! 直撃する!)
ズドンと重い音と地響き。そして閃光が周囲を真っ白に染めた。
「秋葉っ!」
憂夜は血相を変えて、彼女の名前を呼びながら駆け寄る。
最悪の結末が頭をよぎった。やはり異変を感じたときに帰せば良かったと、後悔で胸が押し潰されそうになる。
たとえ契約の解除は叶わなくても、秋葉が生きていれば……ただそれだけでいい。
「いったぁ~……」
煙が晴れると、いつもの秋葉の声が聞こえた。聞き覚えのある明るい声音に、憂夜の目はじんと熱くなった。
どうやら彼女の意識は戻ってきたらしい。瞳にも光が差して、強い意思を感じるいつもの秋葉だった。
尻もちをついてはいるが、どこも怪我はなさそうだ。
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