【短編】妹の代わりに謝り続けた人生を、今日で終わらせます

あまぞらりゅう

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 クシュタル伯爵家の、美貌の妹は有名だった。
 絹のようなホワイトブロンドに、宝石の如き碧い瞳。それは誰もが目で追ってしまうほどの美しさだった。

 対して姉は、赤に近い栗色の髪の平凡な容姿。
 二人には、姉妹だとは信じられないほどの明確な『差』があった。

 黒髪に厳つい面構えの父親と赤みの強い巻き毛の母親から、どうしてこのような妖精が生まれたのかと、ディアナは疑問に思ったことがある。
 母に尋ねると、妹は隣国の公爵令嬢だった高祖母にそっくりらしい。

 高祖母は『白銀の薔薇』と呼ばれ、王家や高位貴族たちのあいだで凄まじい争奪戦が起こったとか。
 一度、姿絵を見せて貰ったことがあるが、妹に瓜二つでとても驚いたのを覚えている。

 そんな可愛い妹を、母は存分に甘やかした。
 美しさを維持するための食事や運動だけは厳しかったが、それ以外は好きにさせていた。特に、「必要経費だ」と言ってドレスや宝石は湯水のように買い与えた。

 逆に姉は厳しく育てられた。
 クシュタル家は嫡子がおらず、婿養子を迎えることになる。なので、その妻になる姉も屋敷や領地のことを熟知していなければいけなかった。
 妹は遊んで暮らして、姉は勉強三昧の日々だった。

 騎士団長を務めている父は屋敷には不在がちで、ディアナは幼い頃から家令の手伝いをし、17歳の今では彼女が家のことを管理するようになっていた。
 母と妹のせいで財産は減っていき、それを何とかして補おうとディアナは日々頭を搾っていたのだった。

 唯一の救いは、父が姉妹平等に接してくれたことだった。
 父は身勝手な妻と次女をよく叱っていたが、一年のほとんどを戦地で過ごす彼の力では二人を改心させることなど出来なかった。

 それでも父だけは自分の努力を評価してくれて、たまに母たちに黙ってこっそりプレゼントを贈ってくれたりもして、ディアナはそれだけでも嬉しかった。

 父が国家のために命がけで戦っているのだから、屋敷内の小さな揉め事で煩わせることはいけないと彼女は思っていた。


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