妄想ロボ ギジオレ

みつつきつきまる

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第一章

第三話 年季の違い

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 日曜日。俺は可奈子と連れ立って家を出た。

 手を振って見送っていた母親は何か勘違いしているようだが、晴人とクリオナのデートに付き合ってやるだけだ。いや、晴人がクリオナを連れ出すための名目に使われただけ。

「待ち合わせ場所はどこだっけ?」

「駅前だったと思うけど」

 可奈子はそう言って髪をかきあげる。

 今日は天気が良くお出かけ日和。そろそろ夏が始まりそうな予感がする、そんな陽気。

 可奈子はいつものように大胆に太ももを出したショートパンツにTシャツ、スニーカー。あまりデートの服装には感じない。

 まあ、俺もチノパンにチェックのシャツと言うシンプルな装い。 

「そう言えば、可奈子って何でいつもショートパンツなんだ?」

 俺は可奈子の太ももを眺めながら言う。

「ん?洸平が太もも好きそうだから」

 可奈子は言って、にやりと笑う。俺の視線がバレたか。

「よく見てるし」

「気づくんだ」

 いや、まじまじと見た事はないぞ。

「気づくよ。意外と女の子って視線に敏感だからね」

 気づいてて見せてるのかよ。

「洸平はあんまり胸は見ないけど」

 そういう言い方するな。

「じゃあ今度から見るようにするよ」

「見てほしい訳じゃないの」

 分かってる。

「足だけだったら、いいかなって」

 少し俯きながら言う。恥ずかしいならそう言えばいいのに。

「悪くないけどさ」

 そりゃ、近くに健康的な太ももがあったら見ちゃうよな。いくら可奈子でも。

「素直でよろしい」

「でもあんまり短いの履いてるとさ」

「何?他の人に見られたくないって?」

「そうじゃないけど」

「じゃあわかった。他の人の前じゃ控える」

 可奈子はそんな事を言う。彼氏でも何でもないのに、俺のために服装を制限する必要があるのか?

 まあ、可奈子なりの防衛本能なのかもしれないし、俺としても可奈子が見られている事を気にする必要も無くなる。

 つか、何なんだ俺は。

「んで、今日はどこに行くって?ちゃんと聞いてないんだよね」

 交差点を信号待ちで止まる。左右から流れる自動車を見送りながら聞いた俺に、可奈子は言う。

「虎杖浜ランドだって。あそこなら、お金もかからないしそんな大袈裟じゃない」

 虎杖浜ランド。俺たち虎杖浜市民なら誰もが訪れた事のある、市営の公園。数々のアトラクションが設置されており、激安で利用する事ができる。公園と言うには大きくて、遊園地と言うにはショボい。そんな公園が、虎杖浜市海岸付近にある

「高校生がデートで行くような場所じゃないと思うけど」

 どちらかと言えば家族連れが多く訪れる印象。高校生が楽しむには、虎杖浜ランドにあるアトラクションは幼すぎる。メリーゴーランドとかコーヒーカップとか、そんなのばかり。

「そう?あそこのジェットコースターは中々怖いけど」

「いつ壊れるか分からないから怖いんだろ」

 信号が青になったので、横断歩道を渡る。

「ふうん」

 可奈子が目を細める。

「ジェットコースターとか洸平は嫌いだもんね。初めて乗った時泣いてたし」

「うるさいな」

 そんな時にも可奈子は隣にいる。ちなみに、これは中学時代の話で、可奈子がジェットコースターに乗れる身長になったのを記念して一緒に乗ったのだが、それ以来俺は乗ることはなかった。ここに限らず。

「それで言うと、可奈子はお化け屋敷が嫌いじゃないか。最初から最後までずっと離れないくせに」

「お化け屋敷は怖がるところだからいいのよ!」

 可奈子は顔を真っ赤にして言って来る。これは小学生の頃の話。俺の知る限り、あれ以来可奈子はお化け屋敷には入っていない。

「だったら今日入ってみるか?どれだけ大人になったか見せてみろよ」

 そんな事を言うと、可奈子も黙ってはいない。

「いいでしょう。その代わり、洸平もジェットコースター乗るんだからね!」

 俺の鼻先を指差して挑戦状を叩きつけてきた。

「おもしろい。俺がジェットコースターとやらに平然としているところを見せてやる!負けたらオゴリな」

「勝ち負けをどう判断するかは知らないけど・・・受けて立つ!」

 なんか可奈子と出かける度にこんな事しているな。まあ、それが楽しいんだけどね。

 そして、俺がいかにジェットコースターに強くなったかを熱弁している間に、待ち合わせ場所である虎杖浜駅前についた。

「虎の銅像の前にいるって言ってたけど・・・ああ、いたいた」

 虎杖浜駅の待ち合わせスポットである虎の銅像の前に、晴人とクリオナはいた。晴人はともかく、クリオナは人ごみにいてもよく目立つほど輝いている。

 晴人は手を上げた。

「やあやあ、可奈ちゃんは太もも好きの洸平の希望通りの格好だね」

 俺の太もも好きはどこから広まったんだ?

「クリオナも可愛い服じゃない。ここにいるとナンパされるんじゃないの?」

 白いワンピース姿のクリオナがにっこり笑う。周囲の邪気が払われるような、至福の笑顔。

「そうなんだよ」

 晴人が不満そうに言う。

「次から次に声かけてくるからさ、ほら」

 言って手を見せる。クリオナと繋いでいる手を。

「手が早いな。お前」

「彼女を守るためだよ」

 今度は満足そう。クリオナは相変わらずニコニコしている。

「ふーん」

 そんな二人を眺めていた可奈子。

「私もナンパされるかもよ?」

 可奈子が俺の顔を覗き込んでくる。何故だか可奈子は、人に対抗したがる。

「じゃあ繋いでやるから手をだせよ」

「もうちょっと言い方ってあると思うんだけど」

 そう言いながら不満そうに手を繋いできた。

「俺は相当緊張してやっと手を繋いだのに・・・何で息するみたいに手を繋げるんだよ」

 まあ、年季が違う。

「やっぱりお二人は仲がいいのですね」

 クリオナが嬉しそうに目を細めた。

 それから俺たちは海岸へ向かう。




 虎杖浜海岸に人影は多くない。まだ海水浴シーズンには少し早く、海の家もまだ準備中だ。

「今年は海水浴に来る?去年は来れなかったけど」

 きらきらと宝石みたいに輝く波間を眺めながら可奈子が言う。去年は可奈子の母親が亡くなった事もあって来られなかった。

「来たいのか?いいぞ。どうせ暇だからな」

「じゃあ、今度水着買うの付き合ってよ」

「うん。あ、俺も買わなきゃな」

「選んであげるよ」

 そんな何気ない会話をする。

 ふと見ると晴人が恨めしげにこちらを見ている。

「また息するみたいにデートの約束か。しかも水着買いに行くとか。なかなかハイレベルのカップルだぞ」

「幼馴染みって、恋人同士よりも仲が良い関係なのですね」

 クリオナは何か勘違いしている。

「いや、これくらい普通だって」

「そうそう、洸平には毎回付き合ってもらってるし」

「そうやって洸平好みの水着を着せるわけだ」

「そんな訳ないだろ!」

「で?どんなえっちな水着を着せるんだ?」

「だから違うって!」

 ついつい顔が赤くなる。可奈子の水着選びにはいつも付き合わされるが、実を言うとまともには見ていない。無警戒に試着姿を見せられても、見ているフリをしているだけ。

 水着姿の女の子をまじまじ観察出来るほど、俺は経験豊富ではない。

 だから、水着選びには付き合っているが、俺は選んではいない。

「ふーん。あ、そうだ」

 晴人は何か閃いたらしい。

「クリオナ、俺たちも今度水着買いに行こうよ」

 俺と違って邪なものが見える。

「はい。嫌です」

 クリオナははっきり言う。

「可奈子さんと行きます」

 晴人が巨大なハンマーで殴られたみたいな顔をしている。

「いや、これが普通か。あいつらが普通じゃないんだ・・・」

 うわごとのように呟く晴人。

 そうして晴人が大きめのダメージを負ったあたりで、虎杖浜ランドに辿り着く。

 少し錆びついたアーチに、『ようこそ虎杖浜ランドへ』という年季の入った文字が書かれている。年々字が薄くなっているから、書き直したりしないんだろうな。

 中は俺たちが子供の頃から見ている景色と同じ。ラインナップは昔からほとんど変わらない。多少古いが手入れは行き届いているアトラクションがいくつも設置されている。

「あ、このメリーゴーランドって、私達が初めて乗った時のままじゃない?」

「幼稚園ぐらいの時か。馬に混じって一台だけユニコーンがあるんだよな」

「それ取り合いになって」

「あったな」

「結局二人で乗ったんだっけ。写真が残ってると思うけど」

「このちっちゃい電車にもよく乗ったな。可奈子が好きだったからよく乗せられた」

「嫌だったの?」

「そんな事は無いけど」

「洸平はこっちのバイクの乗り物の方が好きだったよね」

「可奈子は乗らないんだよな。つまんなそうに待っててさ」

「中々帰って来ないんだもん。私はあっちの飛行機とかに乗りたいのに」

「だんだん激しめのが好きになるからな。付き合わされる俺の身にもなってみろよ」

「そう言えば忘れてないでしょうね。ジェットコースター」

「そっちこそ。お化け屋敷」

 と言ったところで、晴人の視線に気づく。恨めしそうな目をしている。

「お前らを連れて来るんじゃなかった」

「怒ってるのか?」

「いや・・・見せつけられてるみたいで虚しくなるだけだ」

 何を言ってるんだ晴人は。

「幼馴染みなんだから、思い出が一杯あるに決まっってるじゃない」

 可奈子の言う通り。この虎杖浜ランドは、見るもの全てに可奈子との思い出がある。

「わかりました」

 クリオナがぱっと顔を輝かせた。

「幼馴染みと言うのは、幼い頃から好きあっている間柄というわけですね」

 クリオナは何か勘違いしている。



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