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第一章
第八話 ストーカー
しおりを挟むここしばらく可奈子が顔を合わせてくれない。朝迎えに来ないし、弁当も作ってくれない。当然だが、明らかに避けられている。
梢さんのアドバイス通りどうにか謝りたいと思い2年A組をこっそり訪ねるのだが、遠目から見ていると目が合ってしまい、そのままどこかへ行ってしまう。
それを追いかけられない俺はヘタレ野郎だ。
なにせ頬の青あざは学校では隠しようもなく、クラスメイトからは詮索され尽くした。晴人の助けもあり階段から落ちて怪我をしたという事に落ち着いたが、会う人会う人『竹浦さんとケンカしたの?』と聞かれて辟易した。
そして可奈子は今日も昼休みにいつもの場所には来なかった。
「まあ、仕方ないよな」
晴人が菓子パンを齧りながら言う。
「AVみたいだったからな」
「やめてくれよ・・・」
言いながら俺はコンビニで買ったおにぎりを口に放り込む。
「て言うか、半分は晴人のせいだろ」
晴人が可奈子に抱きつくようにけしかけたんじゃないか。
「まさか洸平があそこまで興奮するとは思わなかったからな」
「興奮した訳じゃないって」
「じゃあ欲情か?」
反省してないな、晴人。
「晴人がそのつもりなら俺にも考えがあるぞ」
「ほう。あの動画を拡散してもらいたいみたいだな」
「すいませんやめて下さい」
晴人に弱味を握られてしまった。
「仲良しで素敵だと思ったのですが」
ランチボックスのサンドイッチを口に運びながらクリオナが言う。いや、それが二人の関係を今まさに壊そうとしているのだが。
おにぎりの残りを口に放り込むと、俺は大きくため息をつく。
「どうにか謝りたいと思ってるんだよ」
「だろうな」
晴人は大きく頷く。
「じゃなきゃ、責任取るしかないもんな」
「何の責任だよ」
「可奈ちゃん、妊娠したかもよ」
「んな訳あるか!」
とは言いつつ、今なら言われれば責任を取るかもしれない。責任を取るとはなんたるか、それは後で考えるとして、
「ともあれクリオナ」
「はい?」
俺が可奈子に近づけないとなると、同じクラスのクリオナくらいしか頼れる存在はない。
「最近可奈子はどんな感じ?」
避けられているので、最近の様子がわからない。
「はい。いつも通りきびきびしてしっかりしていますよ」
「酸っぱい物を欲しがったりしてない?」
「それはいいから」
「付け合わせのレモンが酸っぱいと言っていましたが」
だからいいって。
「私が見る限り、これまでと可奈子さんは何も違いが無いように見えます。お友達にも普通に対応していますし、授業もしっかりと受けているように見えます。違うのは、洸平さんが近くにいない事くらいでしょうか」
「そうか」
俺は少し安心する。あの出来事が可奈子の精神に影響を与えていたらどうしようと思っていたのだが、ひとまずその心配はなさそうだ。
「こっそり様子を見にいくか」
晴人の提案を受け、昼食を終わらせた俺たちは2年A組へ向かう。
ドアからこっそり中を伺うと、
「あれ?可奈子、誰と話してるんだ?」
可奈子がクラスの男子と喋っている。随分と楽しそうだ。
「ああ、あれは学年一のイケメンと名高い池田君だな。随分仲良くしてるな。もう洸平から乗り換えたのか?」
心の中にもやもやが蘇る。ギジオレに乗っている訳じゃないのに。
「何を話してるんだ?」
気になる。その可奈子の笑顔も、相手の笑顔も。
「クリオナ」
そんな事をする必要はないのに、俺たちと同じようにドアから教室内を伺っているクリオナに声をかける。
「なんでしょうか」
「ちょっと行って、何を話してるか聞いて来てくれるかい?」
「いいですよ」
答えるとクリオナは教室に入ってい行き、可奈子に声をかけた。池田君もクリオナに声をかける。
その様子を眺める俺と晴人。
「まるでストーカーだな」
なんとなく自覚はしている。
クリオナはしばらく可奈子と会話した後、戻って来た。
可奈子たちに見つからない場所に移動すると、クリオナの報告を聞く。
「二人にお話を伺ったのですが」
「うん」
「今度の日曜日、お二人で出かけるようです」
「おっと」
クリオナと晴人の声に、俺の頭は真っ白になった。
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