妄想ロボ ギジオレ

みつつきつきまる

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第一章

第九話 最後の

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日曜日。

 クリオナから情報を得た俺たちは、虎杖浜駅前にやって来ていた。少し離れた場所から待ち合わせ場所である虎の銅像を眺めている。

 いくら幼馴染みとは言え、こんなストーカーじみた行為はどうなんだとは思う。ただ、気になるんだからどうしようもない。

 焦る気持ちを抑えつつ、待ち合わせ場所に先に着ていた池田君を眺める。確かに俺と違ってイケメンだし、可奈子の隣にいたとしても違和感は無いだろう。だが、だからこそ心のもやもやは晴れない。

「洸平、お前ちょっと落ち着けよ」

「そうですよ。こういう場合は、自分の方がふさわしいと堂々としていた方がいいようですよ」

 そんな事を思える訳がないだろう。俺は衝動を抑えられずに押し倒す男なんだぞ。

 少し待っていると可奈子がやって来た。ゆったりめのジーンズに、白いブラウス。可奈子、こんな服持ってたんだ。

 あまり見ない姿にもやもやが止まらない。隣の男に、俺も知らない姿を晒している。

 二人は並んで歩き出した。俺たちも移動を開始する。

 並んで歩く二人は付き合いたての恋人同士のような距離感を保っている。着かず離れず。手を伸ばせば触れられる位の距離感が、初々しさを感じさせる。

「あんなに・・・仲良さそうに・・・」

 思わず食いしばった歯からぎじぎじと音が漏れれる。

「いや、お前らの方が遥かに仲良さそうだぞ」

 晴人の言葉など耳に入らない。

「このまま二人は仲を深めて行って・・・」

「だから、お前ら程深めるのはかなり時間がかかると思うぞ」

「洸平さんと可奈子さんの仲の深さは、誰も入り込めませんからね」

 晴人とクリオナの声など耳に入らない。

 そうして可奈子と池田君は雑貨店に入って行った。虎杖浜市繁華街にある、おしゃれな雑貨が揃うと噂の雑貨店。

 外から伺う。店の窓から中の様子が伺える。

「楽しそうにしてる・・・」

 可奈子が何かを手に取って池田君に見せて笑っている。その様子は恋人同士以外の何ものでもない。

 そう考えると、俺は可奈子と恋人同士でも何でもない。ただの幼馴染み。そうなると、俺が踏み込んでいい事なのかどうか考えさせられる。俺が可奈子を束縛する権利など無い。

 可奈子が好きな人が出来て、誰かと付き合うなんて事態は覚悟しておく必要があるのは分かっていたはずだ。可奈子はあれだけ可愛いのだから、それほど時間も置かずにその時は訪れるかもしれない。

 そう、今が幼馴染み離れをする時なのかもしれない。

 そう考えると涙が流れそうになる。ずっと一緒にいた可奈子が、俺の手を離れると考えると、おかしくなってしまいそうだ。

 ただ、そうなるのなら最後に謝っておきたい。このまますれ違ったままではなく、笑って送り出してあげたい。

 そう思った俺は、雑貨店から出てきた二人の前にいつの間にか立っていた。

 手に大きな紙袋を持って目を丸くする可奈子。不思議そうな顔をする池田君。

「洸平・・・どうしたの?」

 可奈子の声には少し緊張のいろが見える。

「いや、あの」

 謝りたいのだが、晴人に見せられたあの動画の映像が蘇る。最低だな、俺。

 池田君は黙って俺たちを眺めている。事情がある事を察知したのか、何も言って来ない。

「あの」

 俺は胸の中から言葉を絞り出す。

「可奈子、ごめん」

 どうにか絞り出した言葉は一言だけだった。

 ただただ頭をさげて言う俺に可奈子は、

「私の方こそ、ごめん。ずっと避けてた」

 俺は顔を上げる。可奈子に謝られるとは思わなかった。

「確かにびっくりしたけど・・・パパのロボットのせいなんでしょ?」

「ギジオレのせいであろうと何であろうと、俺が可奈子にひどい事しちゃった・・・だから、最後に謝っておきたかった」」

「最後?」

 可奈子は首を傾げた。

「可奈子は彼を選ぶんだろう?だから——」

「ちょ、ちょっと待ってよ」

 可奈子が手をぶんぶんと振る。

「池田君に買い物に付き合ってもらったのは事実だけど、そんなんじゃないから」

 慌てて言い訳するような可奈子。じゃあ、これはどういう状況?

「もう」

 可奈子が起こったように頬を膨らませて、持っていた紙袋を俺に差し出す。

「??」

 意味が分からず混乱する俺。

 そんな俺に可奈子は、

「洸平、来週誕生日でしょ。体型が近かったから、プレゼント選びに付き合ってもらってただけよ」

「え?」

 誕生日。そう言えばそうだった。最近色々ありすぎて忘れていた。

「本当は来週渡すつもりだったんだけどね」

 そりゃあそうだ。誕生日の一週間も前にプレゼントを渡す訳がない。

 と言う事は、

「俺、可奈子の邪魔しちゃったって事?」

 自分が情けなくなる。謝りたい一心で、可奈子の気持ちを踏み躙ったのではないか。

「うう・・・」

「ちょっと、何で泣くのよ」

 わからない。何故か涙が止まらない。

 可奈子に嫌われたわけではないという安心感と、自分を責める感情が交じり合った俺は、ただただ涙を流すだけだった。


「もう泣かないで、ねえ?昔みたいに子供じゃないんだから」

 可奈子が俺の頭を撫でてくる。昔から、泣き虫だった俺をこうやって慰めてくれたっけ。

「うん」

 俺はそう言って涙を拭う。

「不思議だなぁ。押し倒した方が泣いて、押し倒された方が慰めてる」

「すれ違っていた二人の気持ちが通じ合った瞬間ですね」

「して、池田君」

「何だい?」

「君は可奈ちゃんに対して特別な感情は持ってないのかい?」

「特別な感情?そりゃ、竹浦さんは可愛いし、付き合いたいなとは思うけど」

「やっぱりそうだよね」

「あの二人の間に入れるとは思わないよ」

「やっぱり皆んなそう思うんだね」

 外野の声など何も聞こえなかった。
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