妄想ロボ ギジオレ

みつつきつきまる

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第二章

第十七話 大きい小さい問題

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「やっぱり海はいい」

 青いブーメランパンツを履いた晴人が仁王立ちして言った。

「見てる方が恥ずかしいんだけど」

 俺は普通のゆったりとした水着。普通の短パンと言っても過言でもないような、挑戦的な晴人とはうって変わって、落ち着いた水着。可奈子は俺にも晴人のようなパンツを履いてもらいたかったみたいだが、『それを履かせるなら、可奈子にももっと露出をしてもらうぞ。金に糸目はつけない』と言ったら引き下がった。

 さすがに、あんなパンツを堂々とは履けない。

「何を言う」

 晴人はいつになく堂々としている。

「せっかくクリオナが選んでくれたんだぞ。俺に似合うと思って選んでくれたんだから、恥ずかしがる理由がどこにある」

「まあ、いいんだけどさ」

 俺は言いつつ、砂浜に座り込む。

 俺たちは結局、身近な虎杖浜海岸に来ていた。少し前来た虎杖浜ランドのすぐ近く。あの、カメ型メカとやりあった場所でもある。

 その時全焼した海の家はもう撤去されていて影も形もなくなっている。それでも、ほかにも海の家はあるから、賑わいに変化はなさそうだ

 今日は天気がいいので、海水浴客が多い。家族連れやらカップルやら、はたまだ女子だけのグループがいたりと、一年のうちで虎杖浜海岸が一番賑わう日かもしれない。

「女子達はまだかな」

 と、晴人。胸張って立ってるのやめればいいのに。

「女の子は色々準備があるからな」

 俺はしみじみ呟く。ここ数日、可奈子と暮らす事でいろいろ気付かされる事が多い。

「よく分かってんな、洸平」

 晴人は言うと、俺の隣に座り込む。

「で、可奈ちゃんとはどこまで行ったんだ?」

「電車で隣町まで」

「そうじゃねえ。分かってるんだろ?」

「な、何の事だ?」

 我ながら動揺してしまった。いや、やましい事は無いはずだ。無い——はず?一緒の布団で寝るのはやましい事なのか?

 結局あの事故以来、一緒の布団で寝るなどという不届な状況には陥っていないが、可奈子は寝る時になったら俺の部屋に来るようになった。毎回俺のベッドを占領して、床で寝ようとする俺をじーっと見てから眠りに入るのだが、俺が何か悪い事でもしただろうか。

 ただでさえ、可奈子とは言え同い年の女子と同じ部屋で寝る事に心がざわついていると言うのに、これ以上心を乱すような事はしないでほしい。

「な、な、何も無いよ」

 なるべく平静を装う。そう、俺たちはただの幼馴染みで、何もない。

「ふーん」

 晴人はつまらなさそうに言う。

「一緒の布団で寝る、みたいなイベントがあってもいいと思ったんだがな」

「!!」

 心臓が止まるかと思った。

「ははは。そんな事がある訳がないだろう。馬鹿だな晴人はー」

「ずいぶんぎこちないが——まあ、洸平がそんな事出来るわけないか」

 あっさり引き下がってくれてほっとする。

「夏休みはまだ半分だからな。これからに期待」

 そうか。まだ半分あるのか。俺の理性は保つだろうか。

「ちゃんと避妊しろよ」

 そんな事言うんじゃねぇよ。

「二人とも、お待たせー」

 可奈子とクリオナが着替えを終えてやって来た。

「おおっ!」

 晴人は拳を握って立ち上がった。

 露出の少ないスカートのついた水色のワンピースの水着を着たクリオナを、晴人はじっくりと眺める。

「か、可愛い・・・」

 その恍惚とした表情はやめた方がいいと思う。

 そんな様子を眺めていると、腕をちょんちょんとつつかれる。

 そちらを向くと可奈子。俺の選んだ赤いビキニを身につけて、俺を見ている。

「ねえ、私は?」

「え?ああ、いいと思うよ」

「違う」

「あ?そうか、似合ってるよ」

「そうじゃなくて」

 可奈子は少し恥ずかしそうに体をくねらせている。いいと思うし、似合っていると思う。

 でもそうじゃないらしい。

 困っていると、晴人が肘で俺をつついてくる。

 クリオナが笑顔でうなずいている。

 ああ、そうか。

「か、可愛いと思うぞ」

 可奈子がとびきりの笑顔を見せた。




「よーし、スイカ割りやるぞー」

「スイカなんかねーよ」

「じゃあ洸平そこに埋まれ」

「何割る気だ!」

 俺が言うと晴人が近づいてきて、女子には聞こえない声で、

「だったら可奈ちゃんの胸にあるスイカでも割るか?」

「何言って!そんなに大きくない!」

「間違ったツッコミは動揺してる証拠だぞ」

「何?何の話?」

 ビーチボールを手にやってくる可奈子とクリオナ。

「いやー、可奈ちゃんはスタイルがいいな、って話をね」

「そう?」

 満更でもない様子の可奈子がその場でくるりと一回転する。

 まあ正直、可奈子はスタイルがいいと思う。痩せている訳でもないが、決して太っている訳でもない。健康的に適度な筋肉がついた体型。胸だってしっかりあるし、引き締まったくびれとか、小さめなお尻とか、太ももとか——って考えていると恥ずかしくなってきた。

 ともあれ、比較するとクリオナは細すぎるなと思うし、梢さんはもうちょっと肉感的。可奈子は理想的な体型とも言える。いろいろな意味で。

 複雑な想いを抱いていると、クリオナが晴人に近づく。

「胸の大きい女性が好みですか?」

 はっきり聞くな。クリオナは。まあなんだ、クリオナはあまり大きくないから、気にしてるのかな。

「勿論、胸の大きな女の子は大好き」

 よくはっきり言えるな。羨ましいくらいだ。

「でも、同じくらい小さい女の子も好き」

 軽薄に言う晴人。何でもいいのかよ。

「でも、クリオナが一番好き」

 うわー。

 見ると可奈子も同じ顔をしている。

 よくもまあ、そんな事を恥ずかしげもなく言えるなぁ。ブーメランパンツで。

 クリオナはにこにこしているし、本人達がいいならいいんだけど。

「洸平はどう?大きい方が好き?」

 少し影響を受けたのか、可奈子も聞いてくる。

「前も聞かれなかったか?」

「そうだけど」

 可奈子は自分の胸を抑える。

「これくらいじゃ不満?」

 いやいや、ちょっと待て。

「何で俺が可奈子の胸に満足だとか不満だとか言わなきゃならないんだ」

「お、いちゃつきが始まったぞ」

「そうですね」

 余計な事を言う二人は放っておいて、

「そういうの聞くのは俺じゃないだろ」

「ちょっと気になったの!梢さんくらい大きい方が好きなのかなって」

「梢さんって誰だ?」

「浮気でしょうか」

「サイテーだな」

 二人は放っておいて、

「あーなったから好きって訳でもないだろうよ。あれはたまたまだし」

「好きでもないのに関係を持ったという事でしょうか?」

「サイテーだな、洸平」

「でも、私がいいって言ってるのに触って来ないし。不満なのかと思うじゃない」

「お、なんか展開が変わってきた」

「何を触っていいんでしょうか?」

「そら、クリオナ、言っちゃダメな奴だよ」

「そんな簡単に触れる訳ないだろう!幼馴染みの胸なんて!」

「おっと、口を割ったぞ。ちゃんと憶えておくんだぞ、クリオナ。重要な証拠になるかもしれない」

「何ですか?結局、胸を触る触らないで騒いでいただけですか?」

「うるさい二人とも!」

 俺が声を荒げても、二人はにやにやニコニコするだけ。

「まあまあ揉めない。おっぱいだけに」

 どっかで聞いたな。

「つまりは」

 晴人が要約する。

「可奈ちゃんが胸を触れ触れと言ってるのに、洸平は別の巨乳と浮気をしている、って事でいいのかな」

 何だその話。

「良くねえ」

 とは言うものの、勢いで余計な事を口走ってしまったような気がする。

「で」

 可奈子が腰に手を当てて仁王立ちしている。

「大きいのが好きなの?小さいのが好きなの?」

 そう、結局話題はそれだった。

 晴人とクリオナも注目している。なぜそんな事に注目しているのか。

「はあ」

 と、ため息。

「可奈子ぐらいがいい」

 俺は卑怯な逃げ道へと逃げ込んだ。

「何よ。ぐらいって何よ?」

「洸平、だめだぞ。『可奈子のがいい』って言わないと」

「どれぐらいか、知っているのですか?」

 三人は許してくれなかった。

「じゃあ」

 まあ仕方ない。

「後で触って確かめる」

「へ、変態・・・」

 赤くなるなら最初から言うなよ、可奈子。


 
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