18 / 38
ハーレム第4章 ショタと俺
回想は死亡フラグだって
しおりを挟む
二年前のことである。
入学式を翌週に控えた俺は、来るキャンパスライフに備えて意識高く自己研鑽に励む・・・・・・なんてことはせずに毎日好きな時間に起きてのんべんだらりと過ごす、という素晴らしい日々を送っていた。
その日も正午近くになるまで布団の中でグズグズとスマホを触っていた俺は、空腹が耐え難いレベルになってようやく居間に降りてきた。厳しい受験勉強を一年真面目に続けてきたんだからこれくらいの堕落は許してほしい。
直射日光で温もった部屋の真ん中で、痛いほど冷えた牛乳をコップに注いでゴクゴク喉に流し込みつつ、何か作るのもめんどくさいな、レトルトカレーとかでいいか、と戸棚に目をやったその時であった。
買い換えたばかりのスマホに、母から近所の喫茶店に来るよう指令が入ったのは。
我が家内での母のニックネームは『サザエさん』だ。
ドラ猫を裸足で追っかけはしない。由来になったのは財布を忘れて買い物に出かけたくだりの方。
母の財布を携え、俺は木製のドアを押して店内に足を踏み入れた。ドアに取り付けられた鈴のカランカランという音がすると、店の中ほどでこちらに背を向けて座っていた母が振りむき、「やっ」とニッコリ笑って片手を挙げた。俺は一つため息をつき、「やっ、じゃないよ」と零してテーブルに向かった。
「ははっ、そんな嫌そうな顔しなくてもいいじゃん。どうせさっき起きたとこだったんでしょ?」
「舞浜のネズミ・・・・・・?いや、あのさあ母さん、いい加減外出前に忘れ物ないか見るクセつけてくれよ」
そこまで言ってから、俺は母と同じテーブルに見知らぬ親子らしき女性と男児が同席していることに気が付いた。
「こんにちは」
とりあえず笑顔で会釈すると、女性の方も微笑を返してくれる。
「こんにちは。いつもお母さんから聞いてます。ええと、光くん、だったわよね?お母さんのお友達の大城(おおき)です。こっちは息子の・・・・・・」
大城さんはやや童顔の、快活そうな女性である。自己紹介を促すように傍らでミニカーを走らせている男児の背を押した。
知らない人の前に出された男児は、怖気づいたように大城さんに顔を埋めるが、それでも隙間からちらりとこちらをのぞき見て、「赤火です」と声を張り上げた。多分挨拶は大きな声で、と家庭で躾を受けているのだろう。
元々の目力は強めなのにちょっとおずおずと瞳を動かす彼が可愛くて、俺はつい頬が緩んでしまう。
「赤火君こんにちは。俺は光」
少年の目線に合わせて少し屈んでやるが、ますます恥ずかしそうにして完全に大城さんの胸に埋まってしまう。
「あはは。可愛いね」
「もう、すみませんこの子ったら。もうすぐ小学生だっていうのに」
余っている椅子を引いて腰掛けた俺に、眉尻を下げて大城さんが苦笑した。
「いえいえ。・・・・・・赤火君小学生なんだあ、じゃあ俺と一緒だね。俺も四月から大学一年生なんだ、学校楽しみだね」
少し暗みがかかった茶髪の後頭部に向かってそう話しかける。彼はしばらくもぞもぞと頭を動かしていたが、やがて少しこちらに目を向けてぼそりとこう呟いた。
「・・・・・・ヒカリ」
「え?何?」
脈絡無く名前を呼ばれて、俺はきょとんとする。
「超音戦隊ピカレンジャーと・・・・・・同じだぁ」
?という表情を浮かべた俺の目の前に、ぐいと赤いコスチュームを身に纏ったフィギュアを出してくる。
「・・・・・・これ」
「ああ・・・・・・」
その特徴的なマスクで思い当たった。今子供たちの間で人気の特撮で、書籍やソフト、グッズはことごとく大ヒット。各種イベントや食品ともコラボしまくっていて、大きなお友達は元よりファンを公言する芸能人もいるという話を聞いたことがある。そんな戦隊ヒーローものの主人公を務める青年の名前が・・・・・・。
「ヒカリ」
「そうだったな。うん知ってる知ってる!かっこいいよな!」
再度俺の前にフィギュアをちらつかせる赤火に、俺は出来うる限りの笑顔で応える。
「火事で逃げ遅れた女の子助けるとこ、かっこよかったよな。見たか?先週のやつ」
俺も毎週楽しみに観てるんだぜ的な言い方をしてしまったが、たまたまザッピングしてたらちょろっとそこのシーンが目に入っただけである。それでもよかった、こうして可愛らしい男の子との楽しい話のネタになったわけだから。
「・・・・・・うん!」
あ、ちょっと笑ってくれた。
可愛い。
入学式を翌週に控えた俺は、来るキャンパスライフに備えて意識高く自己研鑽に励む・・・・・・なんてことはせずに毎日好きな時間に起きてのんべんだらりと過ごす、という素晴らしい日々を送っていた。
その日も正午近くになるまで布団の中でグズグズとスマホを触っていた俺は、空腹が耐え難いレベルになってようやく居間に降りてきた。厳しい受験勉強を一年真面目に続けてきたんだからこれくらいの堕落は許してほしい。
直射日光で温もった部屋の真ん中で、痛いほど冷えた牛乳をコップに注いでゴクゴク喉に流し込みつつ、何か作るのもめんどくさいな、レトルトカレーとかでいいか、と戸棚に目をやったその時であった。
買い換えたばかりのスマホに、母から近所の喫茶店に来るよう指令が入ったのは。
我が家内での母のニックネームは『サザエさん』だ。
ドラ猫を裸足で追っかけはしない。由来になったのは財布を忘れて買い物に出かけたくだりの方。
母の財布を携え、俺は木製のドアを押して店内に足を踏み入れた。ドアに取り付けられた鈴のカランカランという音がすると、店の中ほどでこちらに背を向けて座っていた母が振りむき、「やっ」とニッコリ笑って片手を挙げた。俺は一つため息をつき、「やっ、じゃないよ」と零してテーブルに向かった。
「ははっ、そんな嫌そうな顔しなくてもいいじゃん。どうせさっき起きたとこだったんでしょ?」
「舞浜のネズミ・・・・・・?いや、あのさあ母さん、いい加減外出前に忘れ物ないか見るクセつけてくれよ」
そこまで言ってから、俺は母と同じテーブルに見知らぬ親子らしき女性と男児が同席していることに気が付いた。
「こんにちは」
とりあえず笑顔で会釈すると、女性の方も微笑を返してくれる。
「こんにちは。いつもお母さんから聞いてます。ええと、光くん、だったわよね?お母さんのお友達の大城(おおき)です。こっちは息子の・・・・・・」
大城さんはやや童顔の、快活そうな女性である。自己紹介を促すように傍らでミニカーを走らせている男児の背を押した。
知らない人の前に出された男児は、怖気づいたように大城さんに顔を埋めるが、それでも隙間からちらりとこちらをのぞき見て、「赤火です」と声を張り上げた。多分挨拶は大きな声で、と家庭で躾を受けているのだろう。
元々の目力は強めなのにちょっとおずおずと瞳を動かす彼が可愛くて、俺はつい頬が緩んでしまう。
「赤火君こんにちは。俺は光」
少年の目線に合わせて少し屈んでやるが、ますます恥ずかしそうにして完全に大城さんの胸に埋まってしまう。
「あはは。可愛いね」
「もう、すみませんこの子ったら。もうすぐ小学生だっていうのに」
余っている椅子を引いて腰掛けた俺に、眉尻を下げて大城さんが苦笑した。
「いえいえ。・・・・・・赤火君小学生なんだあ、じゃあ俺と一緒だね。俺も四月から大学一年生なんだ、学校楽しみだね」
少し暗みがかかった茶髪の後頭部に向かってそう話しかける。彼はしばらくもぞもぞと頭を動かしていたが、やがて少しこちらに目を向けてぼそりとこう呟いた。
「・・・・・・ヒカリ」
「え?何?」
脈絡無く名前を呼ばれて、俺はきょとんとする。
「超音戦隊ピカレンジャーと・・・・・・同じだぁ」
?という表情を浮かべた俺の目の前に、ぐいと赤いコスチュームを身に纏ったフィギュアを出してくる。
「・・・・・・これ」
「ああ・・・・・・」
その特徴的なマスクで思い当たった。今子供たちの間で人気の特撮で、書籍やソフト、グッズはことごとく大ヒット。各種イベントや食品ともコラボしまくっていて、大きなお友達は元よりファンを公言する芸能人もいるという話を聞いたことがある。そんな戦隊ヒーローものの主人公を務める青年の名前が・・・・・・。
「ヒカリ」
「そうだったな。うん知ってる知ってる!かっこいいよな!」
再度俺の前にフィギュアをちらつかせる赤火に、俺は出来うる限りの笑顔で応える。
「火事で逃げ遅れた女の子助けるとこ、かっこよかったよな。見たか?先週のやつ」
俺も毎週楽しみに観てるんだぜ的な言い方をしてしまったが、たまたまザッピングしてたらちょろっとそこのシーンが目に入っただけである。それでもよかった、こうして可愛らしい男の子との楽しい話のネタになったわけだから。
「・・・・・・うん!」
あ、ちょっと笑ってくれた。
可愛い。
10
あなたにおすすめの小説
月弥総合病院
僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話
あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ハンター ライト(17)
???? アル(20)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後半のキャラ崩壊は許してください;;
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる