エッチな玩具オナニーがやめられないのにコミュつよイケメン従弟(ぶっちゃけ苦手)と同居することになってしまった

松任 来(まっとう らい)

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6 緊張の打ち合わせ

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「……うっし、しっかりしろよ俺」

大海との約束の時間まであと一分。ドリンクを脇に置き、暖雪は自分の両頬を手のひらでパチンと叩く。ステレオタイプすぎるやり方ではあるが、手のひらに人という字を書いてみたりもした。
どんなに気が進まなくても、引っ越しの打ち合わせは否応なしにやってくる。今日はその一回目だ。
 
あらかじめ候補となる物件の画像は大海に送っておいた。そのうちの数軒には実際内見もしている。
数年ぶりにまともに会話した従弟の大海に同居の申し込みという爆弾を投下されて二週間。この間に、暖雪は新居となるいくつかの物件情報を探した。
ただ、絶賛仕事大炎上中で時間的な余裕などない暖雪に変わって実際に不動産屋に足を運んだりしてくれたのは暖雪の両親だ。二人には大いに手を貸してもらう形になった。息子と甥との同居話を聞いた両親は大喜びで、レジャーかのようなノリで物件巡りもこなしてくれたのだ。繁忙期でほぼ動けない暖雪の引っ越しが、こんなにとんとん拍子で進んだのだから感謝しなければならない。
 
やがて、とうとうその時は訪れた。

卓上に置いたパソコンの画面の向こうに大海が現れ、画面越しに手を振ってくる。
『雪ちゃーん!やっほー!』
今日も通信の乱れなどはなく音声もクリア。通話環境は快適、快晴である。
『今日も休日に時間取らせてごめんねー。物件情報ありがとう!』
緊張することが予測されるような場では、まごつくよりも逆に相手より先手を取って会話を始めるのが鉄則である。会話が苦手ながらもそのことはちゃんと頭に入れていたはずなのに、出遅れてしまった。しまったなと思うも、ここは先手を譲る他仕方ない。ぎこちないながら何とか笑顔を作る。

「お、おう。気にするなよ」
『全部いい感じの家だねえ。どれかいいか迷っちゃうよ』
 「ああ。不動産屋さんが親切で色々頑張ってくれたみたい。で、お前本当に“近くに公園がある”以外の希望条件ないのか?」
『うん!休みの日にぶらーっとそういう所に散歩に行けたらなあって思うから。別に近くじゃなくてもいいよ?電車で二、三駅くらい先のところでも』

このおおらかさ。感心してしまうほどである。産まれ持ってのものなのか、育った環境がそうさせたのか。とにかく大海は、自分が二か月後に住む家へのこだわりがまるでないようだった。なさすぎて困るほどだ。唯一出されたリクエストが、“近隣にのんびり過ごせるような緑の多い公園がほしい”だった。これでは何も条件がないのと一緒だ。そういうわけで、現状ほぼ暖雪の意向によって部屋探しが行われているといった具合である。
「そうか。分かった。……えーと、俺も何か所か内見行ってきたんだけど、この“ソシアビューテラス203号”、ここが広くて周りもほどほどに環境良さそうだから俺の中では優先順位上かなと思うんだけど」

暖雪はさっそく共有した物件の間取りを示して確認を始めた。こうして引っ越しに必要な情報のやり取りだけに集中していればそこまで緊張しないであろうという算段だ。仕事でも同じだ。他者との関わりが苦手でも、業務に関する会話だけをしていればとりあえずの場は持つし自身の役割は果たせる。
『うん分かった。ここにしようか』
速攻でそう頷いた大海に、暖雪は慌ててしまった。

「まだ終わってねえよ。あのな、ここ駅からの距離が悪い意味で絶妙なんだよ。徒歩14分。そういうこと考えると、こっちの光岡台ヒルズ301号の方が魅力的ではあるんだよな。ただここも難点があって、コンビニがすぐ行ける所にないみたいでさあ」
暖雪がそう言っても、大海は首を傾げるだけでぴんと来ていないようだ。
『うーん……?そうかな。俺コンビニあまり行かないから分かんないや』
「まあ実家暮らしだとコンビニのありがたみ実感できないか……」
『あと俺、駅から遠くてもいいよ?14分くらい全然歩くし』
「いやいや……、いやいや大海お前……!」
暖雪は思わず液晶にかぶりついてしまった。

「若いうちはそう思うかもしれないけどな、実際ハードに働きだすとそんなこと言ってられなくなるぞ?」
『マジ……?』
「マジだって!ボディーブローのように効いてくるぞ?駅から10分以内のとこにしときゃどんなに良かったかって!甘く見たら泣くことになるんだから!」
暖雪の勢いに、大海がころころと笑う。
『あはは。大変なんだね雪ちゃん。……分かった、雪ちゃんの言う通りにするよ』
(……しまった。うっかり感情を出しすぎた)
急に恥ずかしさに襲われた暖雪は、一旦落ち着いて気持ちを静める。

しかし、改めて接してみて思うことだが、大海の笑顔には見る者の毒気を抜く力がある。つい数分前まで、接し方に悩んでいた自分が馬鹿みたいに思えてくるほどだ。

(それにしても……)
手持ち無沙汰気味に、暖雪は傍らのカップに手を伸ばし一口飲む。
(……ここまで何でも合わせてくれるようだと張り合いがないな)
この調子では、他の物件を見せても同じようなやり取りがただ繰り返されるだけなのではないだろうか、そんな気がひしひしとしてくる。
このまま、“そんじゃこっちで全部決めとくな”と告げて通話を切ってしまっても何の問題もないように思えた。しかし、無駄に気を使ってしまう性格が災いして、それではあんまりにも薄情なのではないかという気になってしまう。あと、わざわざ日本とアメリカでズームを繋いでいるのに、たった数分で締めてしまうのもどうだろう。

(だったらなんか適当な雑談でもして場を繋げば……、って思うんだけど、その雑談内容が全く浮かばない……。ああ~……!)
自分の会話下手っぷりが心底憎い。忸怩たる思いで、暖雪は大海の方をちらりと伺った。大海の方から何か会話を振ってくれるのではないかと、そう内心期待しての行為である。結局相手に頼らざるをえないのがすこぶる惨めだ。
しかし、目線をやった先にいる大海の顔を見た暖雪の胸に、“あれっ?”という言葉が浮かぶ。

今日の大海は、男性が身に着けるには珍しい、ダスティピンクとグリーンが合わさったスクエア型のピアスを両耳に着けていた。そんな彼が、何やらそわそわと落ち着かないような仕草をしている。

そして、少し強ばった顔でこんなことを言ってきた。
『ね、ねえ雪ちゃん?今日さ、何か雪ちゃんちに郵便届かなかった?不在票入ってたりとか……』

「えっ?」
意図の読めない質問に、暖雪はぽかんと口を開ける。
「いや……。今日は何も来てないと思うけど。さっきコンビニ行くとき郵便受け見たけどそれっぽいものはなかったし」
その返答に、大海は落胆したような様子で肩を落とした。
『そっかぁ……』
「何?何のこと?」
明らかにしょげ返った大海の台詞の意図が分からず、暖雪は戸惑いの声を上げた。
『え、えーと……、あの、その……』
大海はもごもごと話し出す。どこか不安げだ。こんな大海の姿を見るなんて、暖雪はおよそ想像していなかった。

『今さら言うのも本当、どうかと思うんだけど……。雪ちゃん、いきなり同居してくれとか頼んで……、迷惑じゃなかった?』
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