エッチな玩具オナニーがやめられないのにコミュつよイケメン従弟(ぶっちゃけ苦手)と同居することになってしまった

松任 来(まっとう らい)

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52 吹っ切れた臆病者が一番怖い

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「最初はもっと時間かけてからがいいのに」
「……俺は、今キスしたいと思ってるけど」
気遣ってくれているのだろう言葉も嬉しいが、多くの障害を取っ払った今、暖雪はさらに遠くのほうにあるものに手を伸ばしたい気持ちになっていた。
高いハードルを越えた先にある景色。大海と二人なら、こんなにもたくさん見ることができる。

「いいの?」
「いいよ。大海は他の男とは違う」

暖雪は目を薄く閉じて軽く大海の方に顔を傾けた。上から微かに息を吐く音が降ってきて、腰に回された手にきゅっと力が入った。
「愛してる、雪ちゃん」
顔の前に温かな温度が近づいてきて、額の辺りがざわめく感覚が訪れる。そして直前に短い告白を一つ落とされてから、暖雪の唇がふんわりと塞がれた。少し目を開けて身体の力を抜くと、目の前にいる大海もやっぱりほんの僅か瞼を開いてこちらを覗き込んでいる。

「っ、ふふ……」
「はは……」

従兄弟同士の関係から恋人へと一歩進んだその認識がとてもくすぐったくて、堪えきれず笑うと相手も同じように笑う。改めてちゃんと見つめれば、照れ混じりながらも真剣な顔をしてそれに応えられる。数拍置いて、またどちらからともなく二人は口づけを交わした。一緒にラインを飛び越えたという確認としての一回目のキスを経てからの、そこから続く道を共に歩いていこうという意志を互いに見せるかのような二回目だった。

何度か角度を変えて、ついばむように唇を食む。数回舌が当たって鼻が当たって、そのキスは一分ほど続いただろうか。
同時に少し顔を離して目線を絡ませ合って、またも二人我慢できず笑いだす。そういえばここは真昼のダイニングで、今は昼食の途中だ。

気恥ずかしさとそわそわするような甘いときめきがある程度収まるのは、それからだいぶ経ってからだった。



「……なあ大海」
それは、どうしても聞かずにはいられなかった暖雪が、でもどう聞けばいいんだろうと考えに考え抜いた結果出た問いかけだった。

「今晩、どっちの部屋で寝るの?」
「……っ、!!」
見るからに動揺した大海が、布巾で拭いていたコップを取り落としかける。すんでのところで落下を免れたそれを片手に、大海はわなわなと声を上げた。

「っ、ゆ、雪ちゃ……」
そのまま絶句してしまった。やはりどうあがいてもこの反応は避けられないか。

二人で食後の皿洗いをしていた。初めてのキスの後、言葉少なげに視線を合わせたり合わせなかったりしつつ手作りのハンバーグ定食をたいらげたのが三十分前。食後のお茶を飲んでから気だるい身体に喝を入れて立ち上がったのが十分前だろうか。
暖雪が食器を洗い、大海がラックを開けるため伏せてある小物系の水気をふき取る作業を始めた。それだけの時間が流れる中、暖雪は聞きたくて聞きたくて仕方なかったのである。
直接的な表現は避けたいがきちんとした結論は出したい。そんな気持ちがないまぜになって、先ほどのような聞き方になってしまった。遠まわしな質問でも、その意味はダイレクトに大海に伝わったようだ。

「え、えと……、それって……」
「いやその、だからさ、今日って土曜じゃん?明日も二人休みだから……。だからその……、さ」
視線を泳がせながら、ぼそぼそと暖雪は言う。
「同じ生活圏の中にいてさ、ちょっと、……もちろん付き合えたのは嬉しいけど気まずいだろ今。今日しなかったら俺明日お前とどんな顔して一日過ごせばいいのか分かんないんだけど」
「それはまあ……。う、うん……。そうだね」
大海の方も視線をうろつかせ気味だ。
「なんだよ。お前なんで変なとこで思い切りが悪くなるんだよマジで」
「だ、だから……、雪ちゃんのことが大事すぎてどうすればいいか分からないんだって……」
やがてその目は床の方に固定されてしまった。
「来週するか?でもその間微妙な距離感になってもどかしいだろ。一か月先にするか?それとも三か月先?変わらないだろ?」
「わ、分かった!分かったよ!」
これが初対面に近いなら、もう少し時間を置いてゆっくり愛情を深めたいと暖雪も思っただろう。だが大海の場合は期間を開けてしまってはあまりにもその間対応に困る。
「俺も、……雪ちゃんとしたいと思ってる」
大海がこっくりと頷く。
「雪ちゃんの方から言ってくれてよかった。……けど俺男同士でのやり方とか知らなくて」
「俺が教えてやるよ。ちなみに俺受けの方がいいからお前は女の子相手にする時と同じ心づもりでいいよ」

「ん……」
大海はもじもじと布巾を握りこみ、引っ張ってくしゃくしゃにしてを繰り返す。

「失敗して……、雪ちゃんにケガとかさせるの怖いな……」
「その辺も俺が加減分かってるから」
知らないとは言いつつ、うっすらではあるが知識があるらしい。こんな風に話していると、だんだんこっちまで恥ずかしさが増してきて俯いてしまう。勘弁してほしい。

「別に最初から上手くやることなんかないだろ。途中でやめてもいいし。そういう塩梅見極める意味でも少しずつやってったほうがいいよ。だとしたらもう今日からやるのがいいだろ。な?」
最後のほうはやや強引だったが、暖雪は大海にそう迫る。昨夜暖雪の実家に向かおうとしていた時とはあべこべだ。

「雪ちゃん……。なんかキャラ変わってない?」
「変わってねーよ。一旦ここまで来たら宙ぶらりんのままなんて嫌なんだよ。一気に最後までやった方が気持ちが楽なんだ」
一息にそう言って、暖雪は顔を真っ赤にしている大海に迫る。
「……うん、うん。確かに。俺もそうかも。……やっぱり、今日しちゃうべきだよね。このまま我慢して何にもしないでいたら俺何か暴走してやらかしてたかもしれない」

暴走の詳細が気にはなるが、とにかく話はまとまった。
自分から啖呵を切ったようなものだ。ちゃんとサポートしてやらなければ。

(……とか思ってたんだろうなあ、前の俺なら)

妙なプレッシャーを感じず、自然体に近い心境で大海との初体験に臨もうとしている自分に、暖雪は気づいていた。
前まで纏っていた思い鎧が、脱げたかのようにいられる。

「……まあ、準備はもちろんちゃんとしますけど」
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