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「友樹、あの子……」
「俺の彼女だ! ごめん、ちょっと行ってくる」
慌しく廊下へと駆けていく友樹の横顔は緩みきっていて、まるで運命の相手とであったかのような表情を浮かべていた。
これが運命の赤い糸ではなく、ただの赤い糸だったという事実に一安心すると思っていたのに、何だか素直に喜べない自分がいて戸惑う。
「希輝に報告しないと」
昨日一緒に帰りながら交換した連絡先に、メッセージを飛ばした。
「昼休みに例の空き教室で」というメッセージにすぐに既読がつき、「了解」という簡素な文が返ってくる。
友樹が照れ笑いを浮かべ、不自然な距離を開けて歩いていく初々しい二人の背中を見ながら、深く溜息を吐いた。
「――というわけで、友樹に彼女ができた」
「友樹って?」
「俺の友人。あと、俺と縁が深いせいか赤い糸も見えるんだよな」
使い慣れた空き教室で、いつもなら友樹といる時間帯に、希輝の不機嫌そうに動いた眉を見ながらパンに齧り付いた。
友樹は出来たばかりの彼女と教室を出て行ったけど、彼女の手作り弁当を一緒に食べるのだろう。
「縁が深い、ねえ」
「……? なんだよ。希輝にだって友達の一人や二人……あ」
そういえば、希輝には心を開いている人が一人もいないんだっけ。
気を遣うように希輝を見れば、不機嫌そうな視線が返ってきて慌てて目を逸らした。
「俺の彼女だ! ごめん、ちょっと行ってくる」
慌しく廊下へと駆けていく友樹の横顔は緩みきっていて、まるで運命の相手とであったかのような表情を浮かべていた。
これが運命の赤い糸ではなく、ただの赤い糸だったという事実に一安心すると思っていたのに、何だか素直に喜べない自分がいて戸惑う。
「希輝に報告しないと」
昨日一緒に帰りながら交換した連絡先に、メッセージを飛ばした。
「昼休みに例の空き教室で」というメッセージにすぐに既読がつき、「了解」という簡素な文が返ってくる。
友樹が照れ笑いを浮かべ、不自然な距離を開けて歩いていく初々しい二人の背中を見ながら、深く溜息を吐いた。
「――というわけで、友樹に彼女ができた」
「友樹って?」
「俺の友人。あと、俺と縁が深いせいか赤い糸も見えるんだよな」
使い慣れた空き教室で、いつもなら友樹といる時間帯に、希輝の不機嫌そうに動いた眉を見ながらパンに齧り付いた。
友樹は出来たばかりの彼女と教室を出て行ったけど、彼女の手作り弁当を一緒に食べるのだろう。
「縁が深い、ねえ」
「……? なんだよ。希輝にだって友達の一人や二人……あ」
そういえば、希輝には心を開いている人が一人もいないんだっけ。
気を遣うように希輝を見れば、不機嫌そうな視線が返ってきて慌てて目を逸らした。
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