うちの天使に近寄るな~影と風に愛された死神はうちの子を守りたいだけなんだ~

朱音 アキ

文字の大きさ
128 / 134

第127話 妥協の二文字は許さない

しおりを挟む
「俺はティナに翼をさずけたい」

 ベクトル商会の一室で俺の真剣な声が響きわたる。

「……わふ?」
「……ごめんなさい。意味がわからないわ」

 モコとミランダさんは俺の宣言から数秒後、ようやく頭の整理ができたのか、俺に質問を投げかけてくる。

「聞いてほしいんだけど」
「わふ」
「うん。聞いているわ」
「ティナはどうみたって天使だろ?それでも残念ながら生物学的には人間に分類されるらしいのだ。俺には天使としか思えないがな。ここまでは理解できているよね?」
「わふっ」
「……うん。まあー、そういうことでいいわ。続けて」

 モコはもちろんっと元気に鳴いているが、ミランダさんの反応はいまいちだ。
 なぜかはわからないが、とりあえず、説明を続ける。

「ふと思ったんだ。うちの天使であるティナが本当に天使になるためには何が必要か。だって、天使である天使が天使ではないと言われるのは悲しい事でしょ?あんなに可愛いくて可憐で目に入れても痛くない、ふわりとした天使を天使と呼べないなんてこの世がおかしいでしょ?」
「ソラ君いったん落ち着いて?天使が暴走しているわ。頭の中がぐちゃぐちゃになりそうなの」

 俺の熱い気持ちを伝えていくが、ミランダさんからストップがかかる。
 確かに、天使が天使すぎて話が脱線するところだった。ティナの可愛さを語っているとどれだけ時間があろうと本題に進まない。

「ごめん。ティナが天使になるには、そう、翼がないんだ……」
「わふわふわふ?」
「そうだ。モコ。ないのならば俺たちがさずければいいんだ。えらいぞモコ」

 モコも興奮して話だし、だから翼をティナにさずけるのと正解を答えてきた。
 ほんとうちの子は天才だ。
 とりあえず、モコの体をわしゃわしゃしてあげる。

「ごめんなさい。まったくそのテンションにはついていけてないけど。ティナちゃんに翼をつけるってこと?」
「そう。何か方法はない?」
「んー。わかっていると思うけど。翼が生えてくる薬や木の実、ダンジョンさんの宝物なんかはないわよ?」

 それは想定済みだ。調べはしていないが、この世界に天使が溢れてない時点で理解している。
 おそらく翼を生やすようなものは存在しないだろうと。
 翼が生やすようなものがあると、みんな天使になっているだろ?可愛い子を天使にしているだろ?これは世界が変わっても常識のはず。だからこんな事実がわかったところで俺は悲しまない。

「わかってる。でも俺はティナに翼を授けたい」
「まあ、私に話に来たってことは服関係なんでしょうが、天使の翼ねー。正直無理よ」
「理由を詳細に教えて欲しい。できる可能性が何パーセントぐらいあるのかも」
「早口にならなくても教えてあげるから、とりあえず、ソファーに座って」

 ミランダさんの返事を聞き、ソファーから立ち上がってしまった。

「ごめん」
「いいわよ。無理といったのは商売の観点からね。翼の形状の服はどうしても形を保つのが難しいし、着用できる期間も短くなる。ドラゴンローブでさえ、比較的固めな皮で翼をつくり、着用期間を長く使用としているけど、おそらく二年ももたない。これは売る時にも説明しているわ」
「今回は商売のことは抜きにして考えてほしい。一着だけ、そうすればできないかな?そんなに長持ちしなくてもいい。別に一度着て次は着れないとかでもいい。俺は一目でも見てみたいんだ」
「そんなものを職人に作らせようとしているの?」
「失礼だろうが、この気持ちは変わらないんだ。どう?白金貨一枚、いや、二枚だす」

 ミランダさんはあきれを通りこしているみたいだが、金額の話しをすると目の色を変える。

「本気で言っているのかしら?」
「本気だ。そんぐらいの値段で天使が天使になれるなら、俺は幸せだ」
「わふわふ」

 モコも異論なしと。

「……はぁー、本気みたいね。わかったわ。ソラ君には感謝しているしね。やりますよ。それにお金はいらないわ」
「いや、ダメです。この金額は俺が天使のために使うお金。これだけは譲れないし、翼の材料にもこだわって欲しい。ふわふわで白い羽を翼状にし、なおかつ、ティナに似合うように作り上げて欲しい。ここに妥協の二文字はない」
「もう、ほんとバカなんだから。わかったわよ。では白金貨一枚もらいます。白いふわふわの羽ね。ダンジョン産の物でこれだけの資金があれば集められないこともないわ」
「なんなら俺たちがとりに行ってもいい」
「ここからだと遠すぎるわ。材料のことも含め、一度ティナちゃんをお借りするかもしれないけど、それ以外はベクトル商会会長、ミランダ・ベクトルにまかせときなさい。最上級の天使の翼を用意してあげる」

 胸を張り高々と宣言するミランダさん。
 俺は目の前がかすんでいくのを感じながらも感謝の気持ちを伝える。

「ありがとうございます。この御恩一生を通して返していきます」
「わふわふっ」
「もう、ほんとバカ」

 深々と頭を上げてお礼を言っている俺の頭をポンポンしてくるミランダさん。

「私も妥協はしない。最低でも半年、一年ぐらいは見ていて欲しい」
「それは……わかりました。最高の一品楽しみにしておきます」

 それは長すぎるのではないかと思ったが、移動だけでも数ヶ月かかり、作成にも時間がかかるのかもしれない。
 また、最高の一品ということだし、何個かの素材を試すのかもしれないしな。
 ここは大手ベクトル商会会長を信じよう。

 晴れ晴れとした気持ちでモコを引き連れ、ベクトル商会をでる。

 これで争いが世界からなくなる。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました

空地大乃
ファンタジー
ダンジョンが日常に溶け込んだ世界――。 平凡な会社員の風間は、身に覚えのない情報流出の責任を押しつけられ、会社をクビにされてしまう。さらに、親友だと思っていた男に婚約者を奪われ、婚約も破棄。すべてが嫌になった風間は自暴自棄のまま山へ向かい、そこで人々に見捨てられた“放置ダンジョン”を見つける。 どこか自分と重なるものを感じた風間は、そのダンジョンに住み着くことを決意。ところが奥には、愛らしいモンスターたちがひっそり暮らしていた――。思いがけず彼らに懐かれた風間は、さまざまなモンスターと共にダンジョンでのスローライフを満喫していくことになる。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流@3/19書籍発売!
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る

神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】 元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。 ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、 理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。 今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。 様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。 カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。 ハーレム要素多め。 ※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。 よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz 他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。 たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。 物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz 今後とも応援よろしくお願い致します。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

処理中です...