2 / 7
第2話
しおりを挟む僕は王族の間では次期王としてこの国を統治することが決まっている。
2年前に王位継承権第一位であるロスト兄は王族籍から外れ、冒険者として世界を巡ることを許可された。
王族籍を抜ける条件は一人で冒険者ギルドのAランク認定をされることだった。
そのことは王族、宰相以外誰も知らない。発表は僕が学園を卒業した後となる。
元々冒険者に興味があり活動していたロスト兄は着々と力をつけていった。
幼い時から僕は兄の冒険談を聞くのが好きだった。
ゴブリンの巣を討伐した話。盗賊のアジトをつぶした話。ダンジョン探索の話。
様々な話を寝る前の兄との時間に聞かせてもらっていた。
5歳年上の兄は僕がねだるのを嫌とせず、その日の冒険談を聞かせてくれた。
そんな二年前のある日、ロスト兄は僕に話があると、真剣な顔で話し出した。
「レオが学園を卒業したら俺は冒険者として生活する」
そんな言葉を聞いた時は、兄を応援し門出を祝福しようと思っていた。
「だから、レオがネスト国の王になり、この国を治めていってほしい」
祝福しようとした言葉がのどに詰まり、何も発することはできなかった。
幼い時から、真面目でカリスマ性があるロスト兄が王になるものだと勝手に思い込んでいた。
「僕には王はできないよ。なんでロスト兄じゃないの?冒険者をしていても王をできるでしょ?」
そうロスト兄に伝えたが。
「俺は王という柄じゃない。どこまでいってもお飾りの王になるだけだ。レオは優しい。冷静に物事を分析し、俺よりはるかに広く、深く考えることができる。それにレオだったら弱者を放置することはないだろ?」
「ロスト兄だって優しいよ。弱者だって救えるでしょ?」
「俺じゃだめだ。弱者をすべて救おうとは思わない。王は理想を語る者であるべきだ。その理想を周りの者が切磋琢磨し、政策として国民に与える。そうあるべきだと俺は思っている。残念だが俺にはそんな優しい理想を描けない。だからレオの方が向いているんだ」
兄が言っていることは理解ができる物で僕もそう感じていた。
だけど、王座についてもうまくいく未来が見えない。
残念ながら、どれだけ言っても兄の決意は変わることがなかった。
「じじぃが言ってただろ?友を大切にって。一人で国を治めるのではない。レオなら良き友と国をよくしていけるだろう。俺はそう確信している」
あとは祖父に相談してみなと、その話は終わった。
0
あなたにおすすめの小説
義母と義妹に虐げられていましたが、陰からじっくり復讐させていただきます〜おしとやか令嬢の裏の顔〜
有賀冬馬
ファンタジー
貴族の令嬢リディアは、父の再婚によりやってきた継母と義妹から、日々いじめと侮蔑を受けていた。
「あら、またそのみすぼらしいドレス? まるで使用人ね」
本当の母は早くに亡くなり、父も病死。残されたのは、冷たい屋敷と陰湿な支配。
けれど、リディアは泣き寝入りする女じゃなかった――。
おしとやかで無力な令嬢を演じながら、彼女はじわじわと仕返しを始める。
貴族社会の裏の裏。人の噂。人間関係。
「ふふ、気づいた時には遅いのよ」
優しげな仮面の下に、冷たい微笑みを宿すリディアの復讐劇が今、始まる。
ざまぁ×恋愛×ファンタジーの三拍子で贈る、スカッと復讐劇!
勧善懲悪が好きな方、読後感すっきりしたい方にオススメです!
今、婚約破棄宣言した2人に聞きたいことがある!
白雪なこ
恋愛
学園の卒業と成人を祝うパーティ会場に響く、婚約破棄宣言。
婚約破棄された貴族令嬢は現れないが、代わりにパーティの主催者が、婚約破棄を宣言した貴族令息とその恋人という当事者の2名と話をし出した。
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
【完結】魅了魔法のその後で──その魅了魔法は誰のため? 婚約破棄した悪役令嬢ですが、王太子が逃がしてくれません
瀬里@SMARTOON8/31公開予定
恋愛
その魅了魔法は誰のため?
一年前、聖女に婚約者である王太子を奪われ、婚約破棄された悪役令嬢リシェル・ノクティア・エルグレイン。
それが私だ。
彼と聖女との婚約披露パーティの噂が流れてきた頃、私の元に王太子が訪れた。
彼がここに来た理由は──。
(全四話の短編です。数日以内に完結させます)
悪役断罪?そもそも何かしましたか?
SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。
男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。
あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。
えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。
勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる