婚約破棄されるとは思っていたけど

朱音 アキ

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第2話

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 僕は王族の間では次期王としてこの国を統治することが決まっている。
 
 2年前に王位継承権第一位であるロスト兄は王族籍から外れ、冒険者として世界を巡ることを許可された。
 王族籍を抜ける条件は一人で冒険者ギルドのAランク認定をされることだった。
 そのことは王族、宰相以外誰も知らない。発表は僕が学園を卒業した後となる。

 元々冒険者に興味があり活動していたロスト兄は着々と力をつけていった。

 幼い時から僕は兄の冒険談を聞くのが好きだった。
 ゴブリンの巣を討伐した話。盗賊のアジトをつぶした話。ダンジョン探索の話。
 様々な話を寝る前の兄との時間に聞かせてもらっていた。

 5歳年上の兄は僕がねだるのを嫌とせず、その日の冒険談を聞かせてくれた。

 そんな二年前のある日、ロスト兄は僕に話があると、真剣な顔で話し出した。

「レオが学園を卒業したら俺は冒険者として生活する」
 
 そんな言葉を聞いた時は、兄を応援し門出を祝福しようと思っていた。

「だから、レオがネスト国の王になり、この国を治めていってほしい」

 祝福しようとした言葉がのどに詰まり、何も発することはできなかった。

 幼い時から、真面目でカリスマ性があるロスト兄が王になるものだと勝手に思い込んでいた。

「僕には王はできないよ。なんでロスト兄じゃないの?冒険者をしていても王をできるでしょ?」

 そうロスト兄に伝えたが。

「俺は王という柄じゃない。どこまでいってもお飾りの王になるだけだ。レオは優しい。冷静に物事を分析し、俺よりはるかに広く、深く考えることができる。それにレオだったら弱者を放置することはないだろ?」
「ロスト兄だって優しいよ。弱者だって救えるでしょ?」
「俺じゃだめだ。弱者をすべて救おうとは思わない。王は理想を語る者であるべきだ。その理想を周りの者が切磋琢磨し、政策として国民に与える。そうあるべきだと俺は思っている。残念だが俺にはそんな優しい理想を描けない。だからレオの方が向いているんだ」

 兄が言っていることは理解ができる物で僕もそう感じていた。

 だけど、王座についてもうまくいく未来が見えない。

 残念ながら、どれだけ言っても兄の決意は変わることがなかった。

「じじぃが言ってただろ?友を大切にって。一人で国を治めるのではない。レオなら良き友と国をよくしていけるだろう。俺はそう確信している」

 あとは祖父に相談してみなと、その話は終わった。

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