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11話 歩夢のスキル
しおりを挟む「歩夢、そろそろ起きる時間だよ。」
「…うぅ、……おはようお兄ちゃん。」
まだどこかぼーっとしているがとりあえず席まで誘導する。
「歩夢くん、疲れてるところ悪いね。
歩夢くんのタグ情報を一度確認したいんだがいいかい?」
……コクッ。
静かに歩夢がうなずく。
さっきと同じように歩夢にタグの開示方法を説明し、待っているとタグ情報が開示された。
名前 : ヤグモ アユム
人種 : 人族
魔力 : S
身体能力 : F
適正魔法 : 水、土
スキル : ペイント
称号 : 落ち人、精霊の愛し子
状態 : 心的外傷
「まさか…。」
「……………」
二人が一気に静かになる。
「どうしたんですか?」
「落ち着いてきいてくれ。まず魔力や身体能力、適正魔法は特に問題ない。状態の心的外傷に関してはあとで歩夢くんの気持ちの整理がついてからゆっくり話そう。」
そんな細かい情報まで記載されるのか。
十中八九親父関連のことだ。
聞いてて気のいい話しじゃないからできることならあまり話したくはないけど、二人に隠し事もしたくない。
あとで歩夢ともしっかり話し合おう。
「問題は称号の欄の精霊の愛し子だ。この世界には太一くんたちのような落ち人意外に獣人しかいないのは知っているかな?」
「はい、リサさんから少し聞きました。」
「その獣人の中でも一目置かれている種族がいるんだ。それが竜族。彼らは強大な力を持っているが故に子が生まれにくい。それと番に対する執着が強い種族でもあり、大人になるとすぐ番を探す旅に出るんだ。」
「すみません、いくつか気になることがあるんですけど、まず番ってなんですか?」
「番っていうのは簡単に言うとお互いに結ばれあった存在ね。夫婦やパートナーみたいなものよ。ここまでは大丈夫かしら?」
「はい、大丈夫です。」
「そこで運命の番の話に戻るのだけれど、運命の番は魂が結び合った関係でお互いに切り離せない強いつながりを持っている者同士のことを言うの。かくいう私たちも運命の番なの。」
「そうなんですか!運命の番って結構いるものなんですか?」
「いいや、運命の番に出会える者はほんの一握りだ。ほとんどの人が出会わずに人生を終える。」
なるほど、そんな感じなのか。
とりあえず番がどんなものかわかってきた。
けど肝心な話ができていない気がする。
「だいたい番に関しては理解しました。でも二つ目の質問になっちゃうんですけどその竜族の番が歩夢の精霊の愛し子にどう関係してるんですか?」
「竜族は精霊と密接に絡み合っていて互いを隣人と呼び合うほどには仲が良い。自由気ままな性格の精霊は竜族の言葉には耳を傾けるほどだ。ここで問題の精霊の愛し子に移るんだが、………。」
「なんですか?」
「………精霊の愛し子は竜族の運命の番なんだ。」
「…えーと、そうなんですね?」
トラウマがある歩夢にとって運命の番が現れたとしても仲良くならない限り拒否されて終わりだろう。
だけどなんで二人ともそんなに深刻そうなんだ。
「運命の番だとしても歩夢がその人を受け入れない限り特に何か起こるわけではないですよね?二人がそんなに青ざめている理由は他にありますか?」
「……太一ちゃん、運命の番を侮ってはいけないわ。」
「?」
「運命の番ってだけでも手放せない獣人は多い。それも竜族みたいに番への執着が強い種族は番を手に入れるためならどんなことでもする奴が多い。全員が全員そうとは言い切れないが、基本番を他人に見せるのは嫌がるだろうな。」
「実際すでに番っていた落ち人を運命の番だからって拉致した人もいるわ。
もし歩夢ちゃんが本当に運命の番だとしたらもう二度と会えなくなる可能性もなくはないのよ。」
「そんな……。」
歩夢がいないなんてそんなの無理だ。
耐えられる自信がない。
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