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9話 歩夢のスキル
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「歩夢、そろそろ起きる時間だぞ」
「…うぅ……おはよう、お兄ちゃん……」
まだ半分夢の中みたいな表情の歩夢。
「歩夢くん、疲れてるところ悪いね。
ちょっとタグ情報を確認したいんだが、いいかい?」
歩夢は小さく、静かに頷いた。
それからタグの開示方法を説明して、歩夢にもタグを見せてもら。
───────────────────
名前 : ヤグモ アユム
人種 : 人族
魔力 : S
身体能力 : F
適正魔法 : 水、土
スキル : ペイント
称号 : 落ち人、精霊の愛し子
状態 : 心的外傷
───────────────────
「まさか……」
「…………」
二人が同時に黙りこむ。
「どうしたんですか?」
ベンさんは、言葉を選びながら口を開いた。
「まず落ち着いて聴いてくれ。魔力や身体能力、適正魔法は問題ない。
状態の“心的外傷”については……歩夢くんの気持ちが整理できたら、ゆっくり話してくれればいい」
そんなことまで書かれるのか。
十中八九、親父の件だ。
できるなら触れたくないが、二人に隠すのも違う。歩夢とも、あとでちゃんと話さなきゃいけない。
「問題は――称号の《精霊の愛し子》だ。
この世界には太一くんたちのような落ち人のほか、獣人しかいないのは知っているね?」
「はい、リサさんから少し聞きました」
「その獣人の中でも特に一目置かれている種族が竜族だ。強大な力を持つがゆえに子が生まれにくく、番――つまり、生涯の伴侶に対する執着がとても強い。大人になればすぐ番を探す旅に出るほどだ」
「すみません、まず番ってなんですか?」
リサさんが柔らかく補足する。
「番は、お互いに結びついた存在のことよ。夫婦とか、それに近いパートナー関係だと思ってくれればいいわ」
「なんとなくわかりました」
「話を戻すわね。私たち獣人には“運命の番”というものが存在するの。魂の底で結びついた、切っても切れない関係。かく言う私たちも、運命の番なんだけれど」
「運命の番って、そんなにいるものなんですか?」
「ほとんどいないよ。出会えずに生涯を終える者のほうが圧倒的に多い」
二人の話から、番に関することは何となくわかってきた。
だが肝心な部分がまだ見えてこない。
「番のことは理解できましたけど……それが歩夢の《精霊の愛し子》とどう関係あるんですか?」
ベンさんが静かに告げる。
「竜族は精霊と強く結びついていて、互いを“隣人”と呼び合うほどなんだ。気まぐれな精霊も、竜族の言葉には耳を傾ける。
そして――《精霊の愛し子》は、竜族にとっての“運命の番”なんだ」
「……えーと、そうなんですね?」
深刻な空気のわりに答えがふんわりしていて、少し拍子抜けする。
番自体、そこまで悪いものじゃないと言っていたのに、何がそんなに問題なのか。
それに歩夢にはトラウマがある。
仮に“運命の番”が現れたとして、歩夢が受け入れなければそれまでだ。
「運命の番でも、その人に拒んだらそれで終わりじゃないんですか?」
リサさんは、珍しく真剣な声で否定する。
「太一ちゃん、運命の番を甘く見ちゃだめよ」
ベンさんも苦い顔で続ける。
「番を手放せない獣人は多い。特に竜族のように執着心が強い種族は、番を手に入れるためなら手段を選ばない者もいる。全員がそうではないが……他人に番を見せるのさえ嫌がる者も多い」
リサさんが少し声を落とす。
「実際にね、すでに番がいた落ち人を、“運命の番だから”って理由で奪った竜族もいたの。もし歩夢ちゃんが本当に運命の番だったら……太一ちゃんと二度と会えなくなる可能性だって、ゼロじゃないのよ」
「そんな……拉致じゃないですか……っ」
胸の奥が冷たくなる。
歩夢のいない日々なんて考えられない。
歩夢は、俺が守らないと。
「…うぅ……おはよう、お兄ちゃん……」
まだ半分夢の中みたいな表情の歩夢。
「歩夢くん、疲れてるところ悪いね。
ちょっとタグ情報を確認したいんだが、いいかい?」
歩夢は小さく、静かに頷いた。
それからタグの開示方法を説明して、歩夢にもタグを見せてもら。
───────────────────
名前 : ヤグモ アユム
人種 : 人族
魔力 : S
身体能力 : F
適正魔法 : 水、土
スキル : ペイント
称号 : 落ち人、精霊の愛し子
状態 : 心的外傷
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「まさか……」
「…………」
二人が同時に黙りこむ。
「どうしたんですか?」
ベンさんは、言葉を選びながら口を開いた。
「まず落ち着いて聴いてくれ。魔力や身体能力、適正魔法は問題ない。
状態の“心的外傷”については……歩夢くんの気持ちが整理できたら、ゆっくり話してくれればいい」
そんなことまで書かれるのか。
十中八九、親父の件だ。
できるなら触れたくないが、二人に隠すのも違う。歩夢とも、あとでちゃんと話さなきゃいけない。
「問題は――称号の《精霊の愛し子》だ。
この世界には太一くんたちのような落ち人のほか、獣人しかいないのは知っているね?」
「はい、リサさんから少し聞きました」
「その獣人の中でも特に一目置かれている種族が竜族だ。強大な力を持つがゆえに子が生まれにくく、番――つまり、生涯の伴侶に対する執着がとても強い。大人になればすぐ番を探す旅に出るほどだ」
「すみません、まず番ってなんですか?」
リサさんが柔らかく補足する。
「番は、お互いに結びついた存在のことよ。夫婦とか、それに近いパートナー関係だと思ってくれればいいわ」
「なんとなくわかりました」
「話を戻すわね。私たち獣人には“運命の番”というものが存在するの。魂の底で結びついた、切っても切れない関係。かく言う私たちも、運命の番なんだけれど」
「運命の番って、そんなにいるものなんですか?」
「ほとんどいないよ。出会えずに生涯を終える者のほうが圧倒的に多い」
二人の話から、番に関することは何となくわかってきた。
だが肝心な部分がまだ見えてこない。
「番のことは理解できましたけど……それが歩夢の《精霊の愛し子》とどう関係あるんですか?」
ベンさんが静かに告げる。
「竜族は精霊と強く結びついていて、互いを“隣人”と呼び合うほどなんだ。気まぐれな精霊も、竜族の言葉には耳を傾ける。
そして――《精霊の愛し子》は、竜族にとっての“運命の番”なんだ」
「……えーと、そうなんですね?」
深刻な空気のわりに答えがふんわりしていて、少し拍子抜けする。
番自体、そこまで悪いものじゃないと言っていたのに、何がそんなに問題なのか。
それに歩夢にはトラウマがある。
仮に“運命の番”が現れたとして、歩夢が受け入れなければそれまでだ。
「運命の番でも、その人に拒んだらそれで終わりじゃないんですか?」
リサさんは、珍しく真剣な声で否定する。
「太一ちゃん、運命の番を甘く見ちゃだめよ」
ベンさんも苦い顔で続ける。
「番を手放せない獣人は多い。特に竜族のように執着心が強い種族は、番を手に入れるためなら手段を選ばない者もいる。全員がそうではないが……他人に番を見せるのさえ嫌がる者も多い」
リサさんが少し声を落とす。
「実際にね、すでに番がいた落ち人を、“運命の番だから”って理由で奪った竜族もいたの。もし歩夢ちゃんが本当に運命の番だったら……太一ちゃんと二度と会えなくなる可能性だって、ゼロじゃないのよ」
「そんな……拉致じゃないですか……っ」
胸の奥が冷たくなる。
歩夢のいない日々なんて考えられない。
歩夢は、俺が守らないと。
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