愛を知らない少年たちの番物語。

あゆみん

文字の大きさ
19 / 76

18話 精霊との契約 side歩夢

しおりを挟む
気づかないふりをしていたけれど、本当は知っていた。
太一兄ちゃんが、最近無理をして夜遅くまで作業していたことを。

だから、少しでも兄ちゃんの力になりたくて、リサさんに編み物を教えてもらって、こっそりプレゼントを作っていた——その矢先だった。

今日、兄ちゃんは奴隷商人に捕まって、売られそうになった。
それだけで胸が締めつけられたのに、まさか優ちゃんがこの世界で“生きてるかもしれない”なんて。

みんなは僕を不安にさせないように隠していたみたいだけど、聞こえてしまった。
聞こえて、しまったんだ。

そこで僕は決めた。
太一兄ちゃんを守れるくらい強くなる。
もし本当に優兄ちゃんが生きているなら、今度は僕が助ける。
二人とも、守りたい。

そんなとき、ちょうど良くがやってきた。

「あゆむ~、おなかすいた~。なんかちょうだ~い」

「メルエム……」

僕は太一兄ちゃんにも、ベンさんたちにも秘密にしていることがある。
それは——”精霊と話せる”ということ。

つい最近知ったばかりだけど、精霊いわく“話ができる人間なんて三百年ぶり”なんだとか。
僕自身、実感は湧かない。

「…ねぇメルエム、《契約》について教えてほしい」

「やっと聞く気になったんだね歩夢! 僕、感激! 口説き続けた甲斐があった~!」

メルエムは出会ったときから、契約しよう契約しようと、熱心に言ってきていた。
彼いわく、僕の魔力は“とびきり美味しい”らしく、独り占めしたいらしい。

契約を結ぶと精霊魔法が使えるようになるらしいけど、詳しい仕組みはまだ知らない。

「じゃあ説明するよ! 僕ら精霊と契約できるのは、精霊と会話できる者だけ。これは知ってるよね?」

「うん」

「契約を結ぶと、その精霊の魔法を全部使えるようになる。僕の属性は水を応用した氷魔法だから、僕と契約すれば歩夢も全部扱える! しかも僕は上位精霊だから、水魔法の適性を強化してあげられるよ。じゃんじゃん使ってね!」

「メルエムって……すごいんだね」

「やっと気づいたの!? 歩夢ったら!」

「でも、そんなに強い魔法が使えるなら……代償もあるよね?」

メルエムは少し黙り、それから優しい声で言った。

「歩夢は聡いね。魔力の味も好みだし、ほんとにタイプだよ。そうだね、単刀直入に言うと——精霊魔法を使えば使うほど、歩夢の寿命は減る」

やっぱり。
強い力には、それ相応の代償があるんだ。

「質問してもいい?」

「もちろん!」

「契約しても……精霊魔法を使わなければ、寿命は減らない?」

「その通り! 使わなければ大丈夫。けど、一度結んだ契約は解消できない。さて、どうする?」

僕は少しだけ、胸の奥に浮かんだ迷いを噛みしめた。
でもすぐに答えは出た。

「……僕、いままで太一兄ちゃんにも優ちゃんにも守ってもらってばかりだった。今度は僕が守りたい。二人も、ベンさんも、リサさんも。みんなを守れるなら……寿命が減るのなんて怖くない。
メルエム、僕に力を貸してくれる?」

「ふふ……歩夢はほんと可愛いね。任せて。じゃあ契約を始めるよ」

うなずくと、メルエムが小さな体を寄せ、額をそっと僕の額へ当てた。
その瞬間、彼が静かに詠唱を紡ぎはじめる。

「我が名はメルエム。落ち人であり、精霊の愛し子・八雲歩夢に仕えし者。我は望まれる限り力を貸し、この身が尽きるまで汝に仕えることを誓う——」

詠唱が終わった途端、体が急に重くなり、まぶたが勝手に落ちてくる。

「おやすみ、歩夢。僕の主」

その言葉を最後に、僕は深い眠りへ沈んだ。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜

N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。 表紙絵 ⇨元素 様 X(@10loveeeyy) ※独自設定、ご都合主義です。 ※ハーレム要素を予定しています。

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。 2026/02/14 累計30万P突破御礼バレンタインSS追加しました 2026/02/15 累計いいね♡7777突破御礼SS 19時に公開します。 様々な形での応援ありがとうございます!

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

追放されたおまけの聖女♂は冷徹王太子の腕の中から離してもらえない〜今さら戻れと言われても、もうこの人の魔力しか受け付けません!〜

たら昆布
BL
聖女のおまけで召喚されたと思われて追放された不憫受けが拾われて愛される話

転生したけどやり直す前に終わった【加筆版】

リトルグラス
BL
 人生を無気力に無意味に生きた、負け組男がナーロッパ的世界観に転生した。  転生モノ小説を読みながら「俺だってやり直せるなら、今度こそ頑張るのにな」と、思いながら最期を迎えた前世を思い出し「今度は人生を成功させる」と転生した男、アイザックは子供時代から努力を重ねた。  しかし、アイザックは成人の直前で家族を処刑され、平民落ちにされ、すべてを失った状態で追放された。  ろくなチートもなく、あるのは子供時代の努力の結果だけ。ともに追放された子ども達を抱えてアイザックは南の港町を目指す── ***  第11回BL小説大賞にエントリーするために修正と加筆を加え、作者のつぶやきは削除しました。(23'10'20) **

処理中です...