VRMMOの最強魔眼士~視力極振りの最弱職~

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05.家族会議

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 自宅に着いてしばらくすると、晩御飯の呼びかけが聞こえてきた。
 部屋に一緒にいた藤真と階段を降りていき、一階、リビングの食卓に着く。
 微かに鼻腔をくすぐるのは芳ばしい香辛料の匂い。

「うわ、カレー!?やった!」

 恐らく台所まで今日の晩飯を確認しに行ったであろう藤真の声を聞き、さっき香った匂いに納得する。 
 椅子に座って少し待っていると、さっきより明瞭な匂いが香ってきた。
 食卓にコトッという音を立ててカレーが盛られたであろう皿が置かれ、ホカホカと湯気を立てる様が容易に想像出来る。

「ただいまー」

 その時、ちょうどリビングの扉がガチャッと開かれ、少し低めで聞き覚えのある声が聞こえて来た。

「おかえり、父さん」

 そう、我らが父親のご帰還である。

「おかえりー!」

「おかえりなさい」

 仕事終わりの父さんに口々にねぎらいをかけていく。

「おっ、今日はカレーか。うわ、美味そう」

 父さんも席につき、4人全員参加の晩御飯が開催される。
 思えば、父さんがこの場に揃っていることはここ最近あまり無かったかも知れない。
 元々そこまで時間的に遅くなる職業では無いが、別に早くもない。
 大体いつも俺らが食べ終わったあとくらいに帰ってくる。
 別に特段寂しかった訳でもないが、拒絶する理由もないし、何よりみんなで食べるご飯は美味しい。

 待ちきれなくなったのであろう藤真が早口で「いただきます!」と言った後、はぐはぐとカレーを掻き込む声が聞こえてきた。
 思わず笑いそうになりながらも、それに続いて俺も食べることにする。

「いただきます」

 大きめに切られたじゃがいもが熱くて一口目を呑み下すのに苦難するが、何とか呑み込み、熱々のカレーを味わいながら食べていく。

「……れん、お前最近どうだ。不自由……はしてるだろうが、慣れたか?」

 突然名前を呼ばれてびっくりしたが、親としてはやっぱりそこら辺心配だよな、と思い、思ったままを口に出す。

「うん、藤真が手伝ってくれるし、そこまで不自由してないよ」

「そうか。なら良かった」

 父さんは心底安堵したように息を吐き出す。

「……まぁ、時々誘導が下手な時あるけど。いや、わざとか」

「ん!?えほっえほっ、それは兄ちゃんが鈍臭いだけだろ!俺のせいにすんな!」

 唐突に矛先を向けられたからか、藤真がむせながら反論してくる。

「何をぉ?お前、いっつも思っとったけどなぁ――!」

「あーあー、うるさいうるさいー」

 こ、こいつ……!

「ほらほら、とりあえずカレー食べちゃいなさい!冷めたら美味しくないよ!」

 今まで静観していた母さんが耐えきれなくなったのか完食を促す。

「「はーい」」

 カレーだけに留まらず、食べ物全般冷めたら美味しくなくなることは重々承知しているので、素直に席に着く。

「あ、ほういやほうふぁんふぁー」

 藤真がカレーを口に入れたまま父さんとの会話を始めようとする。

「ひとまずその口の中の呑み込んでから話せ」

 父さんは呆れたように乾いた笑いを漏らした。

「……んぐっ、あれさ、オアリブって知ってる?」

「うーん、何だそりゃ」

 どうやらあのゲームについて言及するらしい。
 対する父さんは本当に分からないようで、困惑している。

「最近リリースしたゲームなんやけどさ」

「あ、ゲームか。知らんなぁ」

 どうやら父さんは俺と同類らしい。

「兄ちゃんがさ、それやりたいらしくてさ」

「ほう」

「……えっ?」

 ……こいつ今なんて言った?
 いやいやいや、え?俺そんなことひとっことも言ってないが!?
 何言ってんのこいつ!?

「俺そんなこと言ってな――」

「目は?目はどうするの?」

 えっ、ちょ母さん?なんでそんな前のめりなの?
 声の圧が凄いよ?なんか怖いよ!?

「今日ちょっとゲーセン行って試してきたんやけどさ、ちゃんと見えとったんやって。
 原理はよく分からんけど、目じゃなくて脳に直接情報を送るやらなんやらってことらしい」

「へぇ!なんてゲームだっけそれ」

 どうやら母さんが興味を持ったらしい。

「オアリブ。あとそのゲームのやり方って二種類あってさ、さっき言った感じのやつと普通にVRゴーグルでやるやつとあるから、さっき言った感じのだと結構お高いと思う」

 携帯を取りだしたのだろう、ポチポチと画面を叩く音がする。

「……あったあった。このオアリビングってやつ?」

「うん、そうそれ」

「……高っ!?」

「どれどれ……高っ」

「これ桁間違えてない……?」

 母さんのガタガタと震える声が聞こえる。どうやらそのゲームの値段が信じられないくらい高いらしい。

「まぁ、写真見る感じだと結構大きそうだし、そんなもんなんだろうな」

 対する父さんは物凄く冷静だ。

「ま、値段なら気にしなくていい。それを払う価値が俺らにはあるだろうし、俺がちょっと頑張ればいける額だしな」

「あなた……!」

「わー、父ちゃんイケメーン」

「おい藤真、うるさいぞ」

 俺を置いて三人で笑っている。

 え、何これもしかして買う方向に進んじゃってる感じ……?
 え……?

 ◇◇◇

 それから数日経って、件のゲーム機が我が家に運び込まれた。
 そう、つまり買ったのだ。あの両親さんは。

 俺が正気に戻って、止めようとした時にはもう遅かった。
 あの父さんの発言の後すぐにポチりやがった。判断が早すぎる。
 おかしくない?おかしいだろ。つまり俺は悪くない。悪くないったら悪くないのだ。

 ……さて、買ってしまったものは仕方ない。
 うん、仕方ない!

 ということで、あの挫折からまだそんなに日が経ってないが、もう一度あの世界に足を踏み入れようと思う。
 無理そうだったら売る。そうする他ない。

 とりあえずもう一回やってみよう。せっかくの厚意だ。無下にはできないしな。
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