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1日目 第2話
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「簡単過ぎるな」
揚陸艦「イワン・グレン」から稚内を見つめる男が不思議そうに呟いた。
彼はソ連陸軍大将のワシリー・ペレツコフである。ペレツコフは北海道侵攻作戦を指揮する司令官である。
「不可解ではありますが損害無しで橋頭堡を確保できました」
ペレツコフの部下である参謀長のドミトリー・ゼーレン中将が言う。
稚内にある自衛隊は抵抗せずに上陸した海軍歩兵に降伏した。空港の方には防衛する兵士は一人もおらず警察官の拳銃を取り上げただけで占拠できた。何もかもがあっけない。
「いや。おかしいここまで無防備過ぎるのは変だ。戦争状態にある国が本国をここまで無防備になる筈がない。我々の特殊作戦や工作が成功したのか日本の国内事情が急に変化したとしか思えん」
ペレツコフがここまで変だと言うのは理由がある既に日ソは交戦状態にあった。だから北海道へ進撃したら反撃を受けるだろうと思っていたが全く無い。先に千歳の空自基地を爆撃しに行った空軍も敵機の接近は受けたがミサイルを放つと退散し一発の敵弾も受けず任務を果たした。どうして日本軍は戦わないのか?とペレツコフは不思議に思う。
「同志チェィコフ少将。捕虜にした日本兵から情報を得たらすぐに教えてくれ」
ペレツコフは感じる違和感を払拭するには日本の内情を知る必要があると感じた。
「分かった。情報があればすぐに届けよう同志」
KGBの政治将校であるイワン・チェィコフ少将が快く引き受けた。政治将校は指揮官のお目付け役でもあるがKGBの任務である諜報活動も行う。だから捕虜の尋問も彼の担当なのだ。
「もしも日本の国内事情が混乱していたり日本軍内部で士気が下がって戦闘を拒否するようになっていたら楽に任務が達成できますな」
ゼーレンは楽観を言う。
「さあ日本人は分からんぞ。大祖国戦争の対日戦で日本の皇帝が戦争は終わりだと言っても日本軍は抵抗を続けたからな」
ペレツコフは太平洋戦争末期に参戦したソ連軍が天皇による玉音放送や大本営からの停戦命令の後でも抗戦を続けた事を指して言った。これはソ連軍が戦後の勢力圏拡大のために戦闘行動を続けたからであるが。
「政府が戦争を止めると命じて従わない日本軍人を捕虜にできれば良い宣伝材料になるだろう。まだ古い軍国主義の思想があると宣伝して日本人にまた反軍と反戦の意識を植え付けられる」
チェィコフはどんな状況でも利用できると考えているようだ。
「さて、参謀長。部隊の上陸はどうなっている?」
憶測の話からペレツコフは実務の話に戻す。
「海軍歩兵連隊は稚内の敵部隊を降伏させ港湾を確保しました。もうすぐ陸軍の第232自動車化狙撃兵師団が稚内港から上陸を始めます。また天塩での陽動作戦と根室での上陸作戦も始まっている筈です」
ソ連軍の北海道侵攻作戦は「流氷5号作戦」と称した。(作戦計画が改定され決定版が五つ目の案であったからだ)この作戦はサハリンから稚内を占領し道北から南下する第3親衛軍団と国後島から根室へ上陸し西へ進撃し道北の第3機械化軍団と合流する第52機械化軍団の2個軍団を統括する第8軍により行われる。ペレツコフがその第8軍の司令官なのだ。
「司令。独立第2海軍歩兵旅団が天塩に上陸しました。敵軍は無く抵抗を受けず橋頭堡を確保できました。また根室も独立第88海軍歩兵連隊により港湾を占領しました」
すぐに続報が来た。北海道攻略の足がかりとなる地域を無血で占領できたという報告でどれもが敵兵を見ずと述べている。
「KGBは何か工作でもしているのかね?」
ペレツコフはここまで日本の反応が無い事が理解できずKGBによる何かの極秘作戦があったのかと思えてきた。
「北海道で特殊任務や工作をやっているのは確かだがここまで日本軍の動きを止めるような工作を私は知らない」
チェィコフは正直に言った。
「日本軍はアメリカとの戦争では守る面積に対して兵力不足を悟った沖縄戦において水際での防衛戦を諦めて内陸に引き込む作戦を採用していました。その例に倣っての作戦では?」
ゼーレンは太平洋戦争末期の沖縄戦を引用して日本軍もとい自衛隊の狙いを考えた。
戦力を台湾に引き抜かれた沖縄の日本軍守備隊は本来想定していた水際防御の作戦を棄て主な防衛線を首里近郊にまで下げ内陸に米軍を引き込む作戦に変えた。米軍に侵攻の足場を整えさせてしまったが日本軍はより優位な位置で迎え撃ち米軍に打撃を与えられた。
この前例から上陸してすぐの防衛作戦はせず内陸で待ち構えているとゼーレンは思った。
「偵察を強化すべきだな。地上と空から日本軍の動向を探れ」
ペレツコフは北海道で日本軍が隠れ潜み反撃の時を窺っているのではないかと思えていた。
「同志司令官。日本兵からの情報を教えよう」
チェィコフは今届いた尋問の情報を伝える。
「彼らは自衛隊と言う軍事組織の将兵で政府から出撃や交戦許可が出てないから我が軍に一発も攻撃して来なかったそうだ」
チェィコフからの情報をペレツコフはよく分からないでいた。
「自衛隊?日本の軍隊は国防軍と名乗ってなかったか?それに政府の許可が下りてないと言うのも理解できない」
ペレツコフの疑問はチェィコフも同様だった。
「私も理解できない。情報がまだ足りないのもあるが何か我々が掴んでいる日本とは違う事になっているようだ」
冷静なチェィコフも困り顔になっている。その顔を見てよりペレツコフは状況のおかしさを感じた。
「しかも日本の放送局が流しているラジオやテレビの番組を傍受してみたが我が国との戦争は報じられていない。むしろ日本国内で起きた自然災害について盛んに報じている。どうも我々は別の国に間違って来てしまったのではないかとさえ思えるぐらいに」
チェィコフの言う別の国に来てしまったと言う感覚はペレツコフも同感だった。
「しかしここは間違いなく日本です。高度な心理戦をやっているのでは?」
ゼーレンが不可解なこの状況を払いたいように言う。
「仮にそうだとしても軍隊の警戒態勢に報道管制をここまでやって無防備な状態にする意味が分からん」
チェィコフは肩をすくめる。
「まさかと思うが戦争やっているとは思わなかったと日本人が言っているかもしれんな」
ペレツコフは冗談でそう言った。
「いや。実は捕虜を尋問すると誰もがそう言うのだ」
チェィコフの発言にペレツコフもゼーレンも呆気にとられた。
東京都内にあるテレビ局では北海道にある系列の放送局から送られて来た動画を見て戸惑っていた。
炎上する千歳基地や燃える稚内のレーダーサイトや市内を飛ぶ軍用ヘリコプターに稚内空港のカメラが捉えたヘリが強行着陸して武装した集団が降りて来る様子。根室市の沿岸に大型のホバークラフトで来てそこから降り市内へ次々に入る武装した兵士達。
どれも信じられない光景ばかりだ。自衛隊とは違う武装集団が北海道に侵攻していると言うのは軍事に疎い記者でも分かったが理解できないものである。
「何処の軍隊だ?テロリストのレベルじゃねーぞ」
「あのホバークラフトが旗を立てていますね。赤い旗ですが」
「赤い?中国の旗か?あの旗の部分をズームにして画像処理しろ」
動画の旗の部分を拡大して鮮明に見えるように画像処理をする。そして現れたのは赤い旗の右上に描かれた黄色い鎌とハンマーのマークだ。
「見たこと無い旗ですね」
平成生まれの新人スタッフが言う。
「ソ連の国旗だな」
50代の海外ニュースを解説員が見て言い当てる。
「ソレンって何処にあるんですか?」
新人が尋ねると解説員はカルチャーショックを受けつつ説明せねばと平静になる。
「1991年まであった社会主義国家だよ。今はロシア連邦になっててあの旗は使われていない筈なんだが」
解説員は簡単に解説した。
「じゃあロシアが攻めて来たんですね。ロシアって北海道に近いんですか?」
解説員は新人に地図帳を投げてやりたくなった。
「どうします?これを流しますか?」
一方で報道局長はスタッフから送られて来る映像をニュースにするのかどうか尋ねられていた。スタッフが調べると既にネットの動画投稿サイトやツイッターで北海道での異常事態は世界に向けて発信されている。もはや誰もが知る事件になろうとしている。
「流すぞ速報だ。北海道で正体不明の武装集団が侵攻していると言う内容でだ。すぐに政府や防衛省・外務省に確認取れ!」
午前6時が過ぎていた。報道局長は始まったばかりのニュース番組に北海道での事態を速報で流させた。
「TVで稚内と根室が攻撃されているってやっていたぞ!」
上富良野駐屯地では交代で食堂へ朝食を食べに行っていた隊員が興奮して部隊の皆へ伝える。食堂にあるテレビが映すニュース番組で稚内と根室がソ連軍による侵攻している様子を流していた。それを見た隊員や幹部はまだ見ていない者達へ伝えていた。
北島はテレビを見た方で上官の村田と相席で朝食を食べていた時にその映像を見ていた。
「これで防衛出動命令が出ますね」
北島は村田へ尋ねる。
「そうだろうな。この映像を見たら迷いは無くなる筈だ」
村田はそう言ってみたものの初の防衛出動命令がすぐ出るか分からない。
「稚内空港が占領されたと言う事は攻撃ヘリや攻撃機が出てきますね。千歳の空自がやられたから爆撃されてしまう」
テレビは空港のカメラが撮影したMil8輸送ヘリコプターが空港のエプロンや滑走路に着陸し武装した兵士達が降りて空港の施設へ侵入する様子が出ていた。アナウンサーは「稚内空港とは現在も連絡ができません」と言っている。
「出動命令が出てすぐに森か林に行って偽装したいな」
「駐屯地から出られず戦車を壊されたくはないですね」
二人は空からの脅威からすぐに駐屯地から出たいと語りながら朝食を済ませた。森や林などの草木が多い所ならば偽装網を戦車にかければ幾らか敵機の目を誤魔化せるし分散配置もできるからだ。
「あの映像を見て皆が動揺しているだろう。落ち着かない者がいたら任務へ集中するように言うんだ」
村田は北島へアドバイスした。誰もが初の実戦にこれから向かうと実感する筈だ。そのショックで不安になっている隊員への対応を村田は言った。それは中隊長としての役割をせねばと言う村田の使命感からであった。
それは北島も同様だった。これから戻る小隊で部下をしっかり掌握し、彼らに失望させたり舐められないか。指揮官としての素質が試されていると自分に言い聞かせていた。
「では小隊に戻ります」
「すぐに出動になるだろう。しかっり頼むぞ」
上官から励ましを受けて小隊に戻った北島であったが、小隊ではこの異常事態について皆が話し合っていた。
「小隊長!出動はいつですか?」
北島の姿を見つけると下田が焦りの表情で尋ねる。
「すぐに出るだろう」
北島は落ち着いた声で答えた。
「すぐに出動して奴らを撃退したいです」
下田がこんなに好戦的になっているのは理由がある。下田の自宅が稚内にあるからだ。故郷が侵略されて落ち着かないのだ。
「そうだ俺も気持ちは同じだ。すぐに出動して北海道から敵を追い返したい」
同感だと言って下田の意見を受け入れ共感していると示し落ち着かせる。
「テレビであんなにやっているんだ。すぐに出動命令が来る」
下田はここまで聞いて納得したと言う返事はしたが落ち着かない様子だ。頭では納得しても感情が鎮まらないのだろう。
「地元が侵攻を受けて気分が落ち着かないだろう。阿藤一曹、準備や点検はどうなっている?」
小隊の最先任の隊員である阿藤邦昭一等陸曹へ尋ねる。
「完了しています」
防衛出動準備命令が出てすぐに弾薬の準備も済んでいた。
「よし。ではこの場で体操をしよう。身体を大きく動かせ」
グラウンドを走らせるのも考えたが戦車の傍から離れさせる訳にはいかない。いつ出動命令が来るか分からないからだ。だからその場で出来る体操で身体を動かし少しでもガス抜きをさせようと北島は考えた。
「はじめ」
北島が号令をすると皆は腕をいつもより大きく振り回したり足をキックの動作のように伸ばしてウサ晴らしをするように動いた。
「見てください。稚内は武装した集団に占拠され市役所と警察署との連絡が途絶えました」
堀田は総理執務室のテレビに映る稚内市内の様子を指して言った。そこには自治体やテレビ局が設置したカメラが撮影した市内を侵攻する武装集団の様子が映っていた。
「そして港から次々に戦車や装甲車が降ろされています。北海道は侵略を受けています」
稚内港を映すカメラは埠頭で装甲車輌をタラップから自走させて降ろす輸送艦の姿を映していた。
堀田は一旦防衛省の統幕監部へ戻り新しい情報や分析に部隊の状況を聞いてからまた総理官邸へ戻り総理の平沢へ防衛出動を促す動きをしていた。
「北海道に来たのが何処の連中か分かったか?」
平沢は吸殻の束が重なる灰皿に煙草を押し付けながら尋ねる。
「ヘリの標識がこの赤い星です。これはロシア軍のものです」
マスコミやネットに出回っている画像を拡大し画像処理して印刷した紙が堀田が連れて来た尉官により配られる。赤い星の画像は稚内市上空を飛ぶMil24ハインド攻撃ヘリの側面に描かれたものだ。
「兵器もロシア製のものばかりです。ロシア軍で間違いないと思います」
「だがテレビじゃ赤いソ連の旗を掲げていると言っているぞ」
岸野がそう堀田へ言うと堀田は「そこなんです」と応えた。
「確認されているロシア軍だと思われる艦船にはソ連の国旗と思われる旗がありました。ロシア連邦がソ連にまた国名を変えたとも聞きませんしおかしいです」
堀田がこう言うと1時間前から総理官邸に来ていた外務大臣の香田嘉朗が「その件で伝える事がある」と言い始める。
「各国にある大使館から発信される報告の電文や各国政府の公式情報を見るとおかしい事が起きている。我々が知っている者達じゃない。知らない者達が大使を務め知らない者が各国の指導者をしている」
香田の言う事に平沢も岸野も安永も理解できなかった。
「つまりどういう事だ?」
平沢が尋ねる。
「夜の間に日本国外に居る大使と各国の大統領とかの指導者がそっくり入れ替わっていたような事が起きている」
香田がそう言ってもにわかに信じられなかった。
「アメリカの大統領は?」
岸野が訊く。すると香田の後ろに控えている外務次官が答えた。
「ペリーではなくドナルド・トライバルになっています。中国は宗主席ではなく劉壮大です。韓国は朴大統領ではなく白庸全になっています。北朝鮮も金一族ではなく周と言う人間が第一書記をやっています。ヨーロッパも中東もどこも指導者は全部違います」
そう聞かされたもののそれが北海道にロシア軍かソ連軍かが攻めてくる事件とどう繋がるのか平沢には分からない。
「この様子だとロシアがソ連に変わっていたと言うのか?」
安永が思いつきで言うと外務次官は「そうとしか思えない事が起きています」と答えた。
「ロシアから発信されるメディアはソ連と自称しています。外交電文もです」
「自衛隊が傍受した通信にもソ連軍だとする内容の電文が交わされています」
外務次官に続いて堀田も情報を加える。
「ロシアにある大使館はどうなっている?連絡はできるのか?」
岸野が外務次官へ尋ねる。
「連絡は繋がりません。モスクワの大使館も他の地域にある領事館もです」
「そうなると、日本国内にあるロシア大使館に訊いても分からんだろうな」
北海道の軍事行動はどういう事か質す窓口が無いと岸野は分かった。
その時、外務次官の携帯電話が電話を受電したとバイブレーターの機能が震えて報せる。
「総理。モスクワの放送局がソ連軍参謀総長の声明で北海道への侵攻作戦を実行中だと言っています」
外務次官の報告に堀田が動く。
「総理。防衛出動命令を出すしかないようです」
安永が仕方ないという風に切り出す。
「いや。まずはソ連政府になんとか話をしろ。すぐに軍事行動を止めて貰おう」
平沢は違った。皆が信じられないと言う顔をした。
「まずは何故こうなったか知らねばならん。自衛隊を使い反撃したらエスカレートするじゃないか」
「もうその段階ではありません。このまま自衛隊が動けないのでは北海道の半分はすぐに奪われます」
平沢の意見に堀田がすぐに反論した。
「しかしだね。流血はさけた方がいいだろう」
「総理。既に自衛官に死亡者が出ています」
攻撃を受けたレーダーサイトや千歳基地では自衛隊の隊員や幹部に死傷者が出ていた。堀田が興奮気味なったのを見て岸野が堀田の肩をそっと叩き説得を代わる様に促す。
「総理。ソ連は北海道を奪うだけでは満足はしませんよ」
岸野の切り出しに平沢の反応が変わり聞き入る。
「まさか可能なら日本全土を奪うと?」
「その通りです。あの国は共産主義を広める為に対外政策をやっています。それとも総理の地元に赤旗が揚がり支援者に集団農場で働かせたいですか?」
平沢は「う~む」と困ったように唸る。
「北海道から仙台はそんなに遠くはないでしょう。戦車やヘリは結構速いですし」
岸野は平沢に地元がソ連軍に占領される情景を想像させた。
「総理。助けられるのは貴方だけなんですよ」
追い込んで持ち上げるやり方で岸野は平沢を畳み掛ける。
「分かった防衛出動命令を出そう。すぐに閣僚会議を開いてくれ」
観念したように平沢は決心した。
「そういえばアメリカはどうした?日米安保の出番だぞ」
平沢は香田へ尋ねる。
「アメリカ政府はまだ何も反応を示していない」
香田が答えてすぐに外務次官の新垣が続ける。
「アメリカの反応で気になるところがあります。向こうのメディアではこのソ連軍の北海道侵攻は当然の結果だと言っているのです」
「どういう事だ?」
新垣の報告に皆が目を丸くする。日米安保があるのだから助けて貰えると思いアメリカの世論も日本に同情すると自然に思っていただけに。
「翻訳すると。日本は国後島と択捉島を軍事力で奪還しようとして失敗した。アメリカ政府が止めたにも関わらず強行した日本が北海道を攻められるのは当然の結果だと言っています」
新垣の言うアメリカのマスコミの意見に誰もが不可思議に思った。
北方領土と称する国後島・択捉島・歯舞諸島・色丹島の四島を返還して欲しいと何度もソ連時代から交渉はしている。けれども自衛隊を使い軍事力による奪還作戦をしようなど検討もした事がない。
だがアメリカではアメリカ政府の反対を押し切り日本は軍事力で北方領土の奪還に乗り出し返り討ちに遭って北海道へ逆に攻め込まれていると言っている。
憶えの無い濡れ衣に困惑するばかりだ。
「まさか日本は見捨てられているのか?」
平沢はおののいた。
揚陸艦「イワン・グレン」から稚内を見つめる男が不思議そうに呟いた。
彼はソ連陸軍大将のワシリー・ペレツコフである。ペレツコフは北海道侵攻作戦を指揮する司令官である。
「不可解ではありますが損害無しで橋頭堡を確保できました」
ペレツコフの部下である参謀長のドミトリー・ゼーレン中将が言う。
稚内にある自衛隊は抵抗せずに上陸した海軍歩兵に降伏した。空港の方には防衛する兵士は一人もおらず警察官の拳銃を取り上げただけで占拠できた。何もかもがあっけない。
「いや。おかしいここまで無防備過ぎるのは変だ。戦争状態にある国が本国をここまで無防備になる筈がない。我々の特殊作戦や工作が成功したのか日本の国内事情が急に変化したとしか思えん」
ペレツコフがここまで変だと言うのは理由がある既に日ソは交戦状態にあった。だから北海道へ進撃したら反撃を受けるだろうと思っていたが全く無い。先に千歳の空自基地を爆撃しに行った空軍も敵機の接近は受けたがミサイルを放つと退散し一発の敵弾も受けず任務を果たした。どうして日本軍は戦わないのか?とペレツコフは不思議に思う。
「同志チェィコフ少将。捕虜にした日本兵から情報を得たらすぐに教えてくれ」
ペレツコフは感じる違和感を払拭するには日本の内情を知る必要があると感じた。
「分かった。情報があればすぐに届けよう同志」
KGBの政治将校であるイワン・チェィコフ少将が快く引き受けた。政治将校は指揮官のお目付け役でもあるがKGBの任務である諜報活動も行う。だから捕虜の尋問も彼の担当なのだ。
「もしも日本の国内事情が混乱していたり日本軍内部で士気が下がって戦闘を拒否するようになっていたら楽に任務が達成できますな」
ゼーレンは楽観を言う。
「さあ日本人は分からんぞ。大祖国戦争の対日戦で日本の皇帝が戦争は終わりだと言っても日本軍は抵抗を続けたからな」
ペレツコフは太平洋戦争末期に参戦したソ連軍が天皇による玉音放送や大本営からの停戦命令の後でも抗戦を続けた事を指して言った。これはソ連軍が戦後の勢力圏拡大のために戦闘行動を続けたからであるが。
「政府が戦争を止めると命じて従わない日本軍人を捕虜にできれば良い宣伝材料になるだろう。まだ古い軍国主義の思想があると宣伝して日本人にまた反軍と反戦の意識を植え付けられる」
チェィコフはどんな状況でも利用できると考えているようだ。
「さて、参謀長。部隊の上陸はどうなっている?」
憶測の話からペレツコフは実務の話に戻す。
「海軍歩兵連隊は稚内の敵部隊を降伏させ港湾を確保しました。もうすぐ陸軍の第232自動車化狙撃兵師団が稚内港から上陸を始めます。また天塩での陽動作戦と根室での上陸作戦も始まっている筈です」
ソ連軍の北海道侵攻作戦は「流氷5号作戦」と称した。(作戦計画が改定され決定版が五つ目の案であったからだ)この作戦はサハリンから稚内を占領し道北から南下する第3親衛軍団と国後島から根室へ上陸し西へ進撃し道北の第3機械化軍団と合流する第52機械化軍団の2個軍団を統括する第8軍により行われる。ペレツコフがその第8軍の司令官なのだ。
「司令。独立第2海軍歩兵旅団が天塩に上陸しました。敵軍は無く抵抗を受けず橋頭堡を確保できました。また根室も独立第88海軍歩兵連隊により港湾を占領しました」
すぐに続報が来た。北海道攻略の足がかりとなる地域を無血で占領できたという報告でどれもが敵兵を見ずと述べている。
「KGBは何か工作でもしているのかね?」
ペレツコフはここまで日本の反応が無い事が理解できずKGBによる何かの極秘作戦があったのかと思えてきた。
「北海道で特殊任務や工作をやっているのは確かだがここまで日本軍の動きを止めるような工作を私は知らない」
チェィコフは正直に言った。
「日本軍はアメリカとの戦争では守る面積に対して兵力不足を悟った沖縄戦において水際での防衛戦を諦めて内陸に引き込む作戦を採用していました。その例に倣っての作戦では?」
ゼーレンは太平洋戦争末期の沖縄戦を引用して日本軍もとい自衛隊の狙いを考えた。
戦力を台湾に引き抜かれた沖縄の日本軍守備隊は本来想定していた水際防御の作戦を棄て主な防衛線を首里近郊にまで下げ内陸に米軍を引き込む作戦に変えた。米軍に侵攻の足場を整えさせてしまったが日本軍はより優位な位置で迎え撃ち米軍に打撃を与えられた。
この前例から上陸してすぐの防衛作戦はせず内陸で待ち構えているとゼーレンは思った。
「偵察を強化すべきだな。地上と空から日本軍の動向を探れ」
ペレツコフは北海道で日本軍が隠れ潜み反撃の時を窺っているのではないかと思えていた。
「同志司令官。日本兵からの情報を教えよう」
チェィコフは今届いた尋問の情報を伝える。
「彼らは自衛隊と言う軍事組織の将兵で政府から出撃や交戦許可が出てないから我が軍に一発も攻撃して来なかったそうだ」
チェィコフからの情報をペレツコフはよく分からないでいた。
「自衛隊?日本の軍隊は国防軍と名乗ってなかったか?それに政府の許可が下りてないと言うのも理解できない」
ペレツコフの疑問はチェィコフも同様だった。
「私も理解できない。情報がまだ足りないのもあるが何か我々が掴んでいる日本とは違う事になっているようだ」
冷静なチェィコフも困り顔になっている。その顔を見てよりペレツコフは状況のおかしさを感じた。
「しかも日本の放送局が流しているラジオやテレビの番組を傍受してみたが我が国との戦争は報じられていない。むしろ日本国内で起きた自然災害について盛んに報じている。どうも我々は別の国に間違って来てしまったのではないかとさえ思えるぐらいに」
チェィコフの言う別の国に来てしまったと言う感覚はペレツコフも同感だった。
「しかしここは間違いなく日本です。高度な心理戦をやっているのでは?」
ゼーレンが不可解なこの状況を払いたいように言う。
「仮にそうだとしても軍隊の警戒態勢に報道管制をここまでやって無防備な状態にする意味が分からん」
チェィコフは肩をすくめる。
「まさかと思うが戦争やっているとは思わなかったと日本人が言っているかもしれんな」
ペレツコフは冗談でそう言った。
「いや。実は捕虜を尋問すると誰もがそう言うのだ」
チェィコフの発言にペレツコフもゼーレンも呆気にとられた。
東京都内にあるテレビ局では北海道にある系列の放送局から送られて来た動画を見て戸惑っていた。
炎上する千歳基地や燃える稚内のレーダーサイトや市内を飛ぶ軍用ヘリコプターに稚内空港のカメラが捉えたヘリが強行着陸して武装した集団が降りて来る様子。根室市の沿岸に大型のホバークラフトで来てそこから降り市内へ次々に入る武装した兵士達。
どれも信じられない光景ばかりだ。自衛隊とは違う武装集団が北海道に侵攻していると言うのは軍事に疎い記者でも分かったが理解できないものである。
「何処の軍隊だ?テロリストのレベルじゃねーぞ」
「あのホバークラフトが旗を立てていますね。赤い旗ですが」
「赤い?中国の旗か?あの旗の部分をズームにして画像処理しろ」
動画の旗の部分を拡大して鮮明に見えるように画像処理をする。そして現れたのは赤い旗の右上に描かれた黄色い鎌とハンマーのマークだ。
「見たこと無い旗ですね」
平成生まれの新人スタッフが言う。
「ソ連の国旗だな」
50代の海外ニュースを解説員が見て言い当てる。
「ソレンって何処にあるんですか?」
新人が尋ねると解説員はカルチャーショックを受けつつ説明せねばと平静になる。
「1991年まであった社会主義国家だよ。今はロシア連邦になっててあの旗は使われていない筈なんだが」
解説員は簡単に解説した。
「じゃあロシアが攻めて来たんですね。ロシアって北海道に近いんですか?」
解説員は新人に地図帳を投げてやりたくなった。
「どうします?これを流しますか?」
一方で報道局長はスタッフから送られて来る映像をニュースにするのかどうか尋ねられていた。スタッフが調べると既にネットの動画投稿サイトやツイッターで北海道での異常事態は世界に向けて発信されている。もはや誰もが知る事件になろうとしている。
「流すぞ速報だ。北海道で正体不明の武装集団が侵攻していると言う内容でだ。すぐに政府や防衛省・外務省に確認取れ!」
午前6時が過ぎていた。報道局長は始まったばかりのニュース番組に北海道での事態を速報で流させた。
「TVで稚内と根室が攻撃されているってやっていたぞ!」
上富良野駐屯地では交代で食堂へ朝食を食べに行っていた隊員が興奮して部隊の皆へ伝える。食堂にあるテレビが映すニュース番組で稚内と根室がソ連軍による侵攻している様子を流していた。それを見た隊員や幹部はまだ見ていない者達へ伝えていた。
北島はテレビを見た方で上官の村田と相席で朝食を食べていた時にその映像を見ていた。
「これで防衛出動命令が出ますね」
北島は村田へ尋ねる。
「そうだろうな。この映像を見たら迷いは無くなる筈だ」
村田はそう言ってみたものの初の防衛出動命令がすぐ出るか分からない。
「稚内空港が占領されたと言う事は攻撃ヘリや攻撃機が出てきますね。千歳の空自がやられたから爆撃されてしまう」
テレビは空港のカメラが撮影したMil8輸送ヘリコプターが空港のエプロンや滑走路に着陸し武装した兵士達が降りて空港の施設へ侵入する様子が出ていた。アナウンサーは「稚内空港とは現在も連絡ができません」と言っている。
「出動命令が出てすぐに森か林に行って偽装したいな」
「駐屯地から出られず戦車を壊されたくはないですね」
二人は空からの脅威からすぐに駐屯地から出たいと語りながら朝食を済ませた。森や林などの草木が多い所ならば偽装網を戦車にかければ幾らか敵機の目を誤魔化せるし分散配置もできるからだ。
「あの映像を見て皆が動揺しているだろう。落ち着かない者がいたら任務へ集中するように言うんだ」
村田は北島へアドバイスした。誰もが初の実戦にこれから向かうと実感する筈だ。そのショックで不安になっている隊員への対応を村田は言った。それは中隊長としての役割をせねばと言う村田の使命感からであった。
それは北島も同様だった。これから戻る小隊で部下をしっかり掌握し、彼らに失望させたり舐められないか。指揮官としての素質が試されていると自分に言い聞かせていた。
「では小隊に戻ります」
「すぐに出動になるだろう。しかっり頼むぞ」
上官から励ましを受けて小隊に戻った北島であったが、小隊ではこの異常事態について皆が話し合っていた。
「小隊長!出動はいつですか?」
北島の姿を見つけると下田が焦りの表情で尋ねる。
「すぐに出るだろう」
北島は落ち着いた声で答えた。
「すぐに出動して奴らを撃退したいです」
下田がこんなに好戦的になっているのは理由がある。下田の自宅が稚内にあるからだ。故郷が侵略されて落ち着かないのだ。
「そうだ俺も気持ちは同じだ。すぐに出動して北海道から敵を追い返したい」
同感だと言って下田の意見を受け入れ共感していると示し落ち着かせる。
「テレビであんなにやっているんだ。すぐに出動命令が来る」
下田はここまで聞いて納得したと言う返事はしたが落ち着かない様子だ。頭では納得しても感情が鎮まらないのだろう。
「地元が侵攻を受けて気分が落ち着かないだろう。阿藤一曹、準備や点検はどうなっている?」
小隊の最先任の隊員である阿藤邦昭一等陸曹へ尋ねる。
「完了しています」
防衛出動準備命令が出てすぐに弾薬の準備も済んでいた。
「よし。ではこの場で体操をしよう。身体を大きく動かせ」
グラウンドを走らせるのも考えたが戦車の傍から離れさせる訳にはいかない。いつ出動命令が来るか分からないからだ。だからその場で出来る体操で身体を動かし少しでもガス抜きをさせようと北島は考えた。
「はじめ」
北島が号令をすると皆は腕をいつもより大きく振り回したり足をキックの動作のように伸ばしてウサ晴らしをするように動いた。
「見てください。稚内は武装した集団に占拠され市役所と警察署との連絡が途絶えました」
堀田は総理執務室のテレビに映る稚内市内の様子を指して言った。そこには自治体やテレビ局が設置したカメラが撮影した市内を侵攻する武装集団の様子が映っていた。
「そして港から次々に戦車や装甲車が降ろされています。北海道は侵略を受けています」
稚内港を映すカメラは埠頭で装甲車輌をタラップから自走させて降ろす輸送艦の姿を映していた。
堀田は一旦防衛省の統幕監部へ戻り新しい情報や分析に部隊の状況を聞いてからまた総理官邸へ戻り総理の平沢へ防衛出動を促す動きをしていた。
「北海道に来たのが何処の連中か分かったか?」
平沢は吸殻の束が重なる灰皿に煙草を押し付けながら尋ねる。
「ヘリの標識がこの赤い星です。これはロシア軍のものです」
マスコミやネットに出回っている画像を拡大し画像処理して印刷した紙が堀田が連れて来た尉官により配られる。赤い星の画像は稚内市上空を飛ぶMil24ハインド攻撃ヘリの側面に描かれたものだ。
「兵器もロシア製のものばかりです。ロシア軍で間違いないと思います」
「だがテレビじゃ赤いソ連の旗を掲げていると言っているぞ」
岸野がそう堀田へ言うと堀田は「そこなんです」と応えた。
「確認されているロシア軍だと思われる艦船にはソ連の国旗と思われる旗がありました。ロシア連邦がソ連にまた国名を変えたとも聞きませんしおかしいです」
堀田がこう言うと1時間前から総理官邸に来ていた外務大臣の香田嘉朗が「その件で伝える事がある」と言い始める。
「各国にある大使館から発信される報告の電文や各国政府の公式情報を見るとおかしい事が起きている。我々が知っている者達じゃない。知らない者達が大使を務め知らない者が各国の指導者をしている」
香田の言う事に平沢も岸野も安永も理解できなかった。
「つまりどういう事だ?」
平沢が尋ねる。
「夜の間に日本国外に居る大使と各国の大統領とかの指導者がそっくり入れ替わっていたような事が起きている」
香田がそう言ってもにわかに信じられなかった。
「アメリカの大統領は?」
岸野が訊く。すると香田の後ろに控えている外務次官が答えた。
「ペリーではなくドナルド・トライバルになっています。中国は宗主席ではなく劉壮大です。韓国は朴大統領ではなく白庸全になっています。北朝鮮も金一族ではなく周と言う人間が第一書記をやっています。ヨーロッパも中東もどこも指導者は全部違います」
そう聞かされたもののそれが北海道にロシア軍かソ連軍かが攻めてくる事件とどう繋がるのか平沢には分からない。
「この様子だとロシアがソ連に変わっていたと言うのか?」
安永が思いつきで言うと外務次官は「そうとしか思えない事が起きています」と答えた。
「ロシアから発信されるメディアはソ連と自称しています。外交電文もです」
「自衛隊が傍受した通信にもソ連軍だとする内容の電文が交わされています」
外務次官に続いて堀田も情報を加える。
「ロシアにある大使館はどうなっている?連絡はできるのか?」
岸野が外務次官へ尋ねる。
「連絡は繋がりません。モスクワの大使館も他の地域にある領事館もです」
「そうなると、日本国内にあるロシア大使館に訊いても分からんだろうな」
北海道の軍事行動はどういう事か質す窓口が無いと岸野は分かった。
その時、外務次官の携帯電話が電話を受電したとバイブレーターの機能が震えて報せる。
「総理。モスクワの放送局がソ連軍参謀総長の声明で北海道への侵攻作戦を実行中だと言っています」
外務次官の報告に堀田が動く。
「総理。防衛出動命令を出すしかないようです」
安永が仕方ないという風に切り出す。
「いや。まずはソ連政府になんとか話をしろ。すぐに軍事行動を止めて貰おう」
平沢は違った。皆が信じられないと言う顔をした。
「まずは何故こうなったか知らねばならん。自衛隊を使い反撃したらエスカレートするじゃないか」
「もうその段階ではありません。このまま自衛隊が動けないのでは北海道の半分はすぐに奪われます」
平沢の意見に堀田がすぐに反論した。
「しかしだね。流血はさけた方がいいだろう」
「総理。既に自衛官に死亡者が出ています」
攻撃を受けたレーダーサイトや千歳基地では自衛隊の隊員や幹部に死傷者が出ていた。堀田が興奮気味なったのを見て岸野が堀田の肩をそっと叩き説得を代わる様に促す。
「総理。ソ連は北海道を奪うだけでは満足はしませんよ」
岸野の切り出しに平沢の反応が変わり聞き入る。
「まさか可能なら日本全土を奪うと?」
「その通りです。あの国は共産主義を広める為に対外政策をやっています。それとも総理の地元に赤旗が揚がり支援者に集団農場で働かせたいですか?」
平沢は「う~む」と困ったように唸る。
「北海道から仙台はそんなに遠くはないでしょう。戦車やヘリは結構速いですし」
岸野は平沢に地元がソ連軍に占領される情景を想像させた。
「総理。助けられるのは貴方だけなんですよ」
追い込んで持ち上げるやり方で岸野は平沢を畳み掛ける。
「分かった防衛出動命令を出そう。すぐに閣僚会議を開いてくれ」
観念したように平沢は決心した。
「そういえばアメリカはどうした?日米安保の出番だぞ」
平沢は香田へ尋ねる。
「アメリカ政府はまだ何も反応を示していない」
香田が答えてすぐに外務次官の新垣が続ける。
「アメリカの反応で気になるところがあります。向こうのメディアではこのソ連軍の北海道侵攻は当然の結果だと言っているのです」
「どういう事だ?」
新垣の報告に皆が目を丸くする。日米安保があるのだから助けて貰えると思いアメリカの世論も日本に同情すると自然に思っていただけに。
「翻訳すると。日本は国後島と択捉島を軍事力で奪還しようとして失敗した。アメリカ政府が止めたにも関わらず強行した日本が北海道を攻められるのは当然の結果だと言っています」
新垣の言うアメリカのマスコミの意見に誰もが不可思議に思った。
北方領土と称する国後島・択捉島・歯舞諸島・色丹島の四島を返還して欲しいと何度もソ連時代から交渉はしている。けれども自衛隊を使い軍事力による奪還作戦をしようなど検討もした事がない。
だがアメリカではアメリカ政府の反対を押し切り日本は軍事力で北方領土の奪還に乗り出し返り討ちに遭って北海道へ逆に攻め込まれていると言っている。
憶えの無い濡れ衣に困惑するばかりだ。
「まさか日本は見捨てられているのか?」
平沢はおののいた。
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