1 / 35
遭逢の物語
第一話
しおりを挟む
バンっと大きな音を立ててテーブルに手をつき、目の前のエルフは立ち上がった。
春の日差しのように繊細で美しい白金の髪を振り乱し、翡翠を思い出させる瞳に怒りや不安といった強い感情をにじませて。
「この神託が現実になると大変なことになっちゃうんだよ! 分かるかい、ヴァル!」
久方ぶりに顔を合わせた我が友ラオーシュは、長話をまくし立てた後、半泣きで叫ぶ。
それに付き合わされている俺は深い溜息をついて頭を振った。
「そうは言ってもどうにかなるもんでもないだろう。メディアナが神託を受けて、勇者を見つけることを祈れ」
「なんでそんなにのんきなんだよ! 勇者は僕の目の前にいるんだけど!!」
ラオーシュが、俺お手製の木製テーブルに両の拳を叩きつける。
この男がこうも取り乱すとはよっぽどだ。
いや、よっぽどの話ではあるのだけれども。
俺は腕を組みながら背もたれに体を預ける。
椅子は少し軋んだ音を立てながら、俺の体を支えた。
「そうがなるな。復活は十年ほど先なんだろ? その頃の俺じゃあ、十年前と同じ結果なんて出せやしねえよ」
溜息とともに漏れた俺の言葉に、ラオーシュは拳を握りしめたまま、感情に任せて体を震わせている。
このような神託を知らされ、慌ててヴォールファルト王国辺境に住む俺の家までやってきてくれたのだ。俺は何分そういうことに疎い生活をしているからな。
この男、ヴォールファルト王国の筆頭宮廷魔術師であるラオーシュと俺の付き合いはそれなりに長い。十年ほど前、今よりも魔物が跋扈しもっと物騒だった時代に一緒に旅をした仲間の一人だ。
そしてその旅の目的は、魔王討滅という大それたものだった。
この大陸には、魔族という我々と根本から異なる種族がおり、そいつらとその配下である魔物たちが人々の領域を侵していた。
早い話が大陸内の領土の取り合いだ。
彼らは混沌に属しており、この長い歴史において和睦という道はなかった。
そのお陰というかそのせいというか、他の種族間や複数ある国家間の仲は大変良好である。我々は連合軍として魔族と相対することができた。
そんな魔族たちを率いるのは、定期的に現れ奴らを統治する魔王という存在。
五十年から百年くらいに一人現れるとされている。
この大陸で信奉されている女神の神殿にて神託がくだされ、「数年後に魔王が現れる」と我々人間に知らされる。そこから各国が協力して、軍拡、設備投資、資金確保などを経て、時が来れば各地で戦端が開かれるというわけだ。
魔王出現に関する神託と共に、魔王に対抗する存在――勇者についても啓示を受けることになる。勇者は我々側の最終兵器というやつだ。
この勇者を、その時まで大事にしっかり育てるのが、魔王討伐の鍵となる。
そうして、魔王軍と連合軍が領土の攻防戦をやっている裏で、勇者は打倒魔王を掲げ旅立つというのが一連の流れだ。
長い歴史、勇者が勝つこともあれば、負けることもある。
大陸の八割以上が魔族領だったという記録もある。
もちろんその逆もだ。
どちらにせよ決着がつくまでは両陣営も疲弊しているわけだから、次の神託のタイミングまで互いに軍レベルの干渉はないようだった。
まあ俺もそういう歴史だったらしいと聞いただけだがな。
少なくとも、前回の魔王が倒されてここ十年、大きな侵攻のようなものはない。
せいぜい辺境で小規模の小競り合いがあるくらいだ。魔族領近くでの魔物の出現やダンジョン関連、スタンピードもありはするが、軍の干渉とは違うしな。
そんでもってだ。
前回の魔王討伐の詳細を語るとだ。
十五年ほど前に神託が降り、新たな魔王の誕生と勇者の存在が知らされた。八十年近くぶりの神託だったそうだ。
ラオーシュが喚いているのは、まあ、その勇者がたまたま――
俺だった。
……という話だからだ。
くっそど田舎の、将来も考えてない、特技もない、ついでに夢もないクソガキが選ばれちまったわけだ。
神殿の連中に見出された俺は、各国各所属の猛者やらお偉いさんやらからみっちり英才教育を受け、ダンジョンというダンジョンに潜り、辺境という辺境を訪ね、とにかく鍛えられた。
面倒見てくれた皆が呆れ返るくらいに、レベルも上げに上げた。
剣の師匠であるこの国の将軍閣下からは、「お前のレベルへの執着は狂気じみている」と大笑いされたくらいだ。「もしかしたらそれが勇者にとって必要な素養なのかもしれないですね」と、大司教様も得心したような顔をしていたな。
当の俺は興味なさげにその話を聞いていたように思う。
そうして約五年の修行を終え、俺は仲間と共に旅立った。
駆け出しながらエルフとしての能力も個人のセンスも長けていた宮廷魔術師のラオーシュ。
聖女と呼ばれ今代最強の魔力量を誇り、回復だけでなく攻守共に優れたメディアナ。
先祖代々武を尊び勇者と共に魔王を討ってきた騎士の家系であり、女神から授かったと伝えられる家宝の盾を継いだラインハルト。
ぶっちゃけ、こいつらだけで勝てるんじゃないかと思うくらい強い奴らだった。
俺は皆よりレベルは高かったが、もっとレベル上げときゃよかったと思ったくらい。
もちろん他にも多くの協力者支援者がいてくれた。
皆に助けられて、俺は旅を続けることができた。
そのお陰もあり何の困難もなく旅は進み――進んでしまい、想定の半分以下の日程で魔王城についてしまった。
しかも、しかもだ。
将軍閣下が大笑いしただけのことはあり、俺のレベルは心底狂気じみていたらしい。
先陣を切った俺の初撃で魔王は討たれ、その余波で魔王城の力を生み出している巨大な魔石も粉微塵と化してしまった。
魔王城の力というのは、防衛機構として設けられているゴーレムの類や魔防障壁、各所の転送機構など、まあいろいろな便利機能だ。
俺の一振りで、何かいろいろ呆気なく終わってしまった。
懐かしいなと一つ溜息をついてコーヒーを口に運ぶ。
ラオーシュが土産に持ってきた高級な豆は、香り高く燻されており口に含んだ時の満足度が高かった。
キュアノス共和国の南方で作られているとかそんなことを言っていたな。
今思えば、濃い五年間だった。
魔王討伐を成し無事凱旋した俺たちは、各々の道を歩み、それなりに平和な生活を手に入れた。
今日まであっという間の十年だったが、あの五年より充足感を得るようなことはない。
それくらい、俺の人生において大事な時間だった。
もちろん、この十年だって意義のある十年ではあった。
平和とはありがたいものだ。
――だが、問題はここからだ。
先日、「十年後にまた魔物たちが溢れる時代が来る。魔王が再び現れるであろう」と、高位神官であるメディアナが神託を受けたのだ。
今までの通例を無視し、たった二十年で魔王が現れると。
魔族たちも自分たちの信仰する神――我々で言う邪神、悪神、そして魔神――から神託を受けて、その時に備え始めたことだろう。
勇者の神託はまだ降りてない。
そもそも今回の神託自体が異例のことだ。
もしかしたら勇者の神託がないという可能性だってある。
もしなかったら?
まさか、俺が勇者を続けるのか?
その時の俺は四十路手前だ。二十年前と同じこと――魔王討伐を成すなんて、到底無理な話だ。
しかも、なんか、おまけがあるらしい。
「魔王復活、か……」
「復活じゃない、強さを引き継いで誕生する、だよ!」
ラオーシュが椅子に座り直しながら、不機嫌そうに俺の言葉を遮った。
そう、今回の問題点は期間だけじゃない。
魔王の強さについても言及があったのだと。
魔族は王の力を継承する秘術を魔神から授かったらしく、今回その秘術を用いて前魔王の力を引き継いで新魔王が現れるらしい。
そのように女神は言ったのだそうだ。
「どっちもそう変わらんだろ」
「変わるよ。復活じゃ、ヴァルが倒せなかったみたいな言い方じゃないか。ヴァルは魔王を倒した。僕もメディアナもラインハルトもちゃんと見届けている。
これだけは譲らないよ……!」
それでも尚悔しげに顔をしかめるラオーシュ。
エルフらしい長い耳が、力なく垂れ下がっていた。
そうだ、俺たちは確かに魔王を倒した。
魔王城の最奥で、魔王を討ち魔石の破壊を成したのだ。
魔石が破壊されたことで、魔王城の機構が起動しなくなるのも確認した。
そしてその旨は、神託として神殿にも知らされている。
何も問題はなかったはずだ。
まああれだな。倒せてなかったのではと問題視する奴らがいるんだろうな。
ラオーシュは、魔王討伐を経て筆頭宮廷魔術師の地位に就かされた。そのせいで、お偉いさんどもと話さざるを得ない立場になってしまった。
そんなことのために森から出てきたわけでもないのだろうから、同情を禁じえない。
ちなみにメディアナは、教会内で着々と地位を上げ、今は高位神官として女神の神託を受ける立場にまでになった。彼女からラオーシュに知らされた神託の内容には嘘はないと言える。やけに詳しいのもそのお陰だ。
ラインハルトは、王国で騎士団長様をやっている。俺の師匠の直属だ。あいつもこれから忙しくなるんだろうな。
「俺たち二人がこんな田舎で悩んでも仕方ないだろ。女神サフィーアの神託を待つしかない。次の勇者が優秀であることを祈ろう」
「うぅ、わかったよ……」
俺の他力本願さに、更にうなだれるラオーシュ。
不安なのは分かるがな。それを俺の家でやるな。
その日の晩飯には、昔もらった質のいいワインを開け、ラオーシュの愚痴に付き合った。
森に帰ればいいのにと返してみたが、首を振られた。
面倒ごとはあるが、多くの資金でじっくりたっぷり魔法の研究ができてしまう今の環境は魅力的なんだとさ。
それなら観念して、お貴族共と腹の探り合いするしかねぇなと伝えたら、何とも言えない顔でワインを呷っていた。
春の日差しのように繊細で美しい白金の髪を振り乱し、翡翠を思い出させる瞳に怒りや不安といった強い感情をにじませて。
「この神託が現実になると大変なことになっちゃうんだよ! 分かるかい、ヴァル!」
久方ぶりに顔を合わせた我が友ラオーシュは、長話をまくし立てた後、半泣きで叫ぶ。
それに付き合わされている俺は深い溜息をついて頭を振った。
「そうは言ってもどうにかなるもんでもないだろう。メディアナが神託を受けて、勇者を見つけることを祈れ」
「なんでそんなにのんきなんだよ! 勇者は僕の目の前にいるんだけど!!」
ラオーシュが、俺お手製の木製テーブルに両の拳を叩きつける。
この男がこうも取り乱すとはよっぽどだ。
いや、よっぽどの話ではあるのだけれども。
俺は腕を組みながら背もたれに体を預ける。
椅子は少し軋んだ音を立てながら、俺の体を支えた。
「そうがなるな。復活は十年ほど先なんだろ? その頃の俺じゃあ、十年前と同じ結果なんて出せやしねえよ」
溜息とともに漏れた俺の言葉に、ラオーシュは拳を握りしめたまま、感情に任せて体を震わせている。
このような神託を知らされ、慌ててヴォールファルト王国辺境に住む俺の家までやってきてくれたのだ。俺は何分そういうことに疎い生活をしているからな。
この男、ヴォールファルト王国の筆頭宮廷魔術師であるラオーシュと俺の付き合いはそれなりに長い。十年ほど前、今よりも魔物が跋扈しもっと物騒だった時代に一緒に旅をした仲間の一人だ。
そしてその旅の目的は、魔王討滅という大それたものだった。
この大陸には、魔族という我々と根本から異なる種族がおり、そいつらとその配下である魔物たちが人々の領域を侵していた。
早い話が大陸内の領土の取り合いだ。
彼らは混沌に属しており、この長い歴史において和睦という道はなかった。
そのお陰というかそのせいというか、他の種族間や複数ある国家間の仲は大変良好である。我々は連合軍として魔族と相対することができた。
そんな魔族たちを率いるのは、定期的に現れ奴らを統治する魔王という存在。
五十年から百年くらいに一人現れるとされている。
この大陸で信奉されている女神の神殿にて神託がくだされ、「数年後に魔王が現れる」と我々人間に知らされる。そこから各国が協力して、軍拡、設備投資、資金確保などを経て、時が来れば各地で戦端が開かれるというわけだ。
魔王出現に関する神託と共に、魔王に対抗する存在――勇者についても啓示を受けることになる。勇者は我々側の最終兵器というやつだ。
この勇者を、その時まで大事にしっかり育てるのが、魔王討伐の鍵となる。
そうして、魔王軍と連合軍が領土の攻防戦をやっている裏で、勇者は打倒魔王を掲げ旅立つというのが一連の流れだ。
長い歴史、勇者が勝つこともあれば、負けることもある。
大陸の八割以上が魔族領だったという記録もある。
もちろんその逆もだ。
どちらにせよ決着がつくまでは両陣営も疲弊しているわけだから、次の神託のタイミングまで互いに軍レベルの干渉はないようだった。
まあ俺もそういう歴史だったらしいと聞いただけだがな。
少なくとも、前回の魔王が倒されてここ十年、大きな侵攻のようなものはない。
せいぜい辺境で小規模の小競り合いがあるくらいだ。魔族領近くでの魔物の出現やダンジョン関連、スタンピードもありはするが、軍の干渉とは違うしな。
そんでもってだ。
前回の魔王討伐の詳細を語るとだ。
十五年ほど前に神託が降り、新たな魔王の誕生と勇者の存在が知らされた。八十年近くぶりの神託だったそうだ。
ラオーシュが喚いているのは、まあ、その勇者がたまたま――
俺だった。
……という話だからだ。
くっそど田舎の、将来も考えてない、特技もない、ついでに夢もないクソガキが選ばれちまったわけだ。
神殿の連中に見出された俺は、各国各所属の猛者やらお偉いさんやらからみっちり英才教育を受け、ダンジョンというダンジョンに潜り、辺境という辺境を訪ね、とにかく鍛えられた。
面倒見てくれた皆が呆れ返るくらいに、レベルも上げに上げた。
剣の師匠であるこの国の将軍閣下からは、「お前のレベルへの執着は狂気じみている」と大笑いされたくらいだ。「もしかしたらそれが勇者にとって必要な素養なのかもしれないですね」と、大司教様も得心したような顔をしていたな。
当の俺は興味なさげにその話を聞いていたように思う。
そうして約五年の修行を終え、俺は仲間と共に旅立った。
駆け出しながらエルフとしての能力も個人のセンスも長けていた宮廷魔術師のラオーシュ。
聖女と呼ばれ今代最強の魔力量を誇り、回復だけでなく攻守共に優れたメディアナ。
先祖代々武を尊び勇者と共に魔王を討ってきた騎士の家系であり、女神から授かったと伝えられる家宝の盾を継いだラインハルト。
ぶっちゃけ、こいつらだけで勝てるんじゃないかと思うくらい強い奴らだった。
俺は皆よりレベルは高かったが、もっとレベル上げときゃよかったと思ったくらい。
もちろん他にも多くの協力者支援者がいてくれた。
皆に助けられて、俺は旅を続けることができた。
そのお陰もあり何の困難もなく旅は進み――進んでしまい、想定の半分以下の日程で魔王城についてしまった。
しかも、しかもだ。
将軍閣下が大笑いしただけのことはあり、俺のレベルは心底狂気じみていたらしい。
先陣を切った俺の初撃で魔王は討たれ、その余波で魔王城の力を生み出している巨大な魔石も粉微塵と化してしまった。
魔王城の力というのは、防衛機構として設けられているゴーレムの類や魔防障壁、各所の転送機構など、まあいろいろな便利機能だ。
俺の一振りで、何かいろいろ呆気なく終わってしまった。
懐かしいなと一つ溜息をついてコーヒーを口に運ぶ。
ラオーシュが土産に持ってきた高級な豆は、香り高く燻されており口に含んだ時の満足度が高かった。
キュアノス共和国の南方で作られているとかそんなことを言っていたな。
今思えば、濃い五年間だった。
魔王討伐を成し無事凱旋した俺たちは、各々の道を歩み、それなりに平和な生活を手に入れた。
今日まであっという間の十年だったが、あの五年より充足感を得るようなことはない。
それくらい、俺の人生において大事な時間だった。
もちろん、この十年だって意義のある十年ではあった。
平和とはありがたいものだ。
――だが、問題はここからだ。
先日、「十年後にまた魔物たちが溢れる時代が来る。魔王が再び現れるであろう」と、高位神官であるメディアナが神託を受けたのだ。
今までの通例を無視し、たった二十年で魔王が現れると。
魔族たちも自分たちの信仰する神――我々で言う邪神、悪神、そして魔神――から神託を受けて、その時に備え始めたことだろう。
勇者の神託はまだ降りてない。
そもそも今回の神託自体が異例のことだ。
もしかしたら勇者の神託がないという可能性だってある。
もしなかったら?
まさか、俺が勇者を続けるのか?
その時の俺は四十路手前だ。二十年前と同じこと――魔王討伐を成すなんて、到底無理な話だ。
しかも、なんか、おまけがあるらしい。
「魔王復活、か……」
「復活じゃない、強さを引き継いで誕生する、だよ!」
ラオーシュが椅子に座り直しながら、不機嫌そうに俺の言葉を遮った。
そう、今回の問題点は期間だけじゃない。
魔王の強さについても言及があったのだと。
魔族は王の力を継承する秘術を魔神から授かったらしく、今回その秘術を用いて前魔王の力を引き継いで新魔王が現れるらしい。
そのように女神は言ったのだそうだ。
「どっちもそう変わらんだろ」
「変わるよ。復活じゃ、ヴァルが倒せなかったみたいな言い方じゃないか。ヴァルは魔王を倒した。僕もメディアナもラインハルトもちゃんと見届けている。
これだけは譲らないよ……!」
それでも尚悔しげに顔をしかめるラオーシュ。
エルフらしい長い耳が、力なく垂れ下がっていた。
そうだ、俺たちは確かに魔王を倒した。
魔王城の最奥で、魔王を討ち魔石の破壊を成したのだ。
魔石が破壊されたことで、魔王城の機構が起動しなくなるのも確認した。
そしてその旨は、神託として神殿にも知らされている。
何も問題はなかったはずだ。
まああれだな。倒せてなかったのではと問題視する奴らがいるんだろうな。
ラオーシュは、魔王討伐を経て筆頭宮廷魔術師の地位に就かされた。そのせいで、お偉いさんどもと話さざるを得ない立場になってしまった。
そんなことのために森から出てきたわけでもないのだろうから、同情を禁じえない。
ちなみにメディアナは、教会内で着々と地位を上げ、今は高位神官として女神の神託を受ける立場にまでになった。彼女からラオーシュに知らされた神託の内容には嘘はないと言える。やけに詳しいのもそのお陰だ。
ラインハルトは、王国で騎士団長様をやっている。俺の師匠の直属だ。あいつもこれから忙しくなるんだろうな。
「俺たち二人がこんな田舎で悩んでも仕方ないだろ。女神サフィーアの神託を待つしかない。次の勇者が優秀であることを祈ろう」
「うぅ、わかったよ……」
俺の他力本願さに、更にうなだれるラオーシュ。
不安なのは分かるがな。それを俺の家でやるな。
その日の晩飯には、昔もらった質のいいワインを開け、ラオーシュの愚痴に付き合った。
森に帰ればいいのにと返してみたが、首を振られた。
面倒ごとはあるが、多くの資金でじっくりたっぷり魔法の研究ができてしまう今の環境は魅力的なんだとさ。
それなら観念して、お貴族共と腹の探り合いするしかねぇなと伝えたら、何とも言えない顔でワインを呷っていた。
10
あなたにおすすめの小説
真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~
水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。
アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。
氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。
「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」
辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。
これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!
悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放
大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。
嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。
だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。
嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。
混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。
琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う――
「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」
知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。
耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。
「役立たず」と追放された神官を拾ったのは、不眠に悩む最強の騎士団長。彼の唯一の癒やし手になった俺は、その重すぎる独占欲に溺愛される
水凪しおん
BL
聖なる力を持たず、「穢れを祓う」ことしかできない神官ルカ。治癒の奇跡も起こせない彼は、聖域から「役立たず」の烙印を押され、無一文で追放されてしまう。
絶望の淵で倒れていた彼を拾ったのは、「氷の鬼神」と恐れられる最強の竜騎士団長、エヴァン・ライオネルだった。
長年の不眠と悪夢に苦しむエヴァンは、ルカの側にいるだけで不思議な安らぎを得られることに気づく。
「お前は今日から俺専用の癒やし手だ。異論は認めん」
有無を言わさず騎士団に連れ去られたルカの、無能と蔑まれた力。それは、戦場で瘴気に蝕まれる騎士たちにとって、そして孤独な鬼神の心を救う唯一の光となる奇跡だった。
追放された役立たず神官が、最強騎士団長の独占欲と溺愛に包まれ、かけがえのない居場所を見つける異世界BLファンタジー!
俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード
中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。
目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。
しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。
転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。
だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。
そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。
弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。
そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。
颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。
「お前といると、楽だ」
次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。
「お前、俺から逃げるな」
颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。
転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。
これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。
続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』
かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、
転生した高校時代を経て、無事に大学生になった――
恋人である藤崎颯斗と共に。
だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。
「付き合ってるけど、誰にも言っていない」
その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。
モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、
そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。
甘えたくても甘えられない――
そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。
過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの
じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。
今度こそ、言葉にする。
「好きだよ」って、ちゃんと。
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
異世界で聖男と呼ばれる僕、助けた小さな君は宰相になっていた
k-ing /きんぐ★商業5作品
BL
病院に勤めている橘湊は夜勤明けに家へ帰ると、傷ついた少年が玄関で倒れていた。
言葉も話せず、身寄りもわからない少年を一時的に保護することにした。
小さく甘えん坊な少年との穏やかな日々は、湊にとってかけがえのない時間となる。
しかし、ある日突然、少年は「ありがとう」とだけ告げて異世界へ帰ってしまう。
湊の生活は以前のような日に戻った。
一カ月後に少年は再び湊の前に現れた。
ただ、明らかに成長スピードが早い。
どうやら違う世界から来ているようで、時間軸が異なっているらしい。
弟のように可愛がっていたのに、急に成長する少年に戸惑う湊。
お互いに少しずつ気持ちに気づいた途端、少年は遊びに来なくなってしまう。
あの時、気持ちだけでも伝えれば良かった。
後悔した湊は彼が口ずさむ不思議な呪文を口にする。
気づけば少年の住む異世界に来ていた。
二つの世界を越えた、純情な淡い両片思いの恋物語。
序盤は幼い宰相との現実世界での物語、その後異世界への物語と話は続いていきます。
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
異世界転生した双子は今世でも双子で勇者側と悪魔側にわかれました
陽花紫
BL
異世界転生をした双子の兄弟は、今世でも双子であった。
しかし運命は二人を引き離し、一人は教会、もう一人は森へと捨てられた。
それぞれの場所で育った男たちは、やがて知ることとなる。
ここはBLゲームの中の世界であるのだということを。再会した双子は、どのようなエンディングを迎えるのであろうか。
小説家になろうにも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる