対超常部隊隊長が副隊長から請われたこと

青木十

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幼馴染みたちの更なる蛇足

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「……ソウ言やソウだったな。結構前の話だ。ワタシは追い返したけど……皆のところには?」

 ダイアーの問いにギランは首を振る。ドゥルイットは暫し思案したあと、頭の奥の引き出しから何とか記憶を取り出したような何とも言えない顔で呟いた。

「あー……オレのトコロにも来た」

 そうだろうとデズモンドは得意げだ。
 それ自体はよくあることなだけなんだよとアレックスが頭を抱える。その目の前へ、皿に載せられたフライドチキンが現れた。顔を上げると、片眉を大きく上げたギランが皿を差し出している。

「二人がキチンと聞き出す。アレックスは鶏肉チキンデモ食べてロ」

 その心遣いにアレックスの緊張が緩む。一人で悩んだとしてどうしようもない。ギランの言うとおり二人に頼ろうと肉に手を伸ばす。
 その間にも、三人の話は進んでおり――

「手加減しなくてイイって言われたモンで、好き放題したら来なくなったナ」
「ダメだよ……夢魔たちに精力で勝つのは、追い払う時のやり方だから」

 何でもないように言うドゥルイットに、デズモンドが咎めるように言った。その表情には憐れみが浮かんでいる。

「定期的に精気を吸わないとダメみたいだから、たまには相手してあげないとかわいそうじゃないか」
「軍のコミュニティで遊びの関係を持つのは、ワタシはお勧めできないな」
「ソレはダイアーの考え方でしょ」

 正しいけれどそう言って良いのか分からないことをデズモンドが物申せば、ダイアーが苦い顔をする。ダイアーはスタンスだから殊更忌避感があるのだろう。
 まさに今デズモンドの話している内容が、何かしらに所属している夢魔たちが管理されている理由である。彼らは、定期的に異種族と性的な接触をして、精気を含む生気を得る必要がある種族なのだ。通常の食事でもなんとかなるそうだが、体調がまったく変わるらしい。
 アレックスは、双子の顔を思い浮かべ何とも言えない気持ちになった。

「違う違う。夢魔に関しては規則ルールがあったはずだ」
「それも知ってるよ。ボクが相手するようになってから、他の人にはチョッカイを出さなくなったっテ。実はこっそりリスト外とも遊んでたみたいだから、逆に感謝されたくらいだヨ?」
「そうだったのか。デ? その感謝されたって誰に?」

 ダイアーが丁寧に尋ねていく。その横でアレックスはまた頭を抱えた。

 夢魔のでは体調不良者が出ることもあるため、彼らの動向は把握しておく必要がある。守らなくてはならないことがいくつかあるのだ。
 特に、“相手から了承をもらう”は、絶対厳守だ。
 もちろん品行方正であれば管理から外れ、問題があれば相談することと言われるだけになる。しかしそれは本当に一握りの夢魔だけだ。
 彼らの多くは、かなりの確率で自由奔放なのだ。彼らはよく性交の前に魅了を使うのだが、絶対厳守の了承を魅了下でもらうという小賢しいことをよくやる。
 軍属の夢魔が相手としていい人物はリストにまとめられていて、事前にアポイントを取ってから、必ずするしないを尋ねるようにとなっていたはずだ。健康で体力があり、しっかりし、それでいて行為があってもトラブルにならない人物で、尚且つ本人が希望した場合だけ――という決まりになっていた。一応、アンケートは秘密裏に行われ、リストに関しては口外するなとなってはいる、はずだ。それを把握していて、リスト外の被害を把握している人物なんていただろうか。

 アレックスはそう考えていたが、答えはすぐに判明する。

「ウィリアムだヨ?」

 アレックスは思わず自身の額を叩いた。パシッと小さく音がした。
 ウィリアムは、アレックスの前任の隊長だ。面倒見がよく、アレックスも対超常部隊に配属になってからとても世話になった人物でもある。尊敬している人はと尋ねられたら、両親と彼の名を挙げるだろう。
 彼はアレックスが隊長になった後、問題なく部隊が動いているのを見てから退役していた。そう考えると確実に五年は前の話だ。

 アレックスは仕事が増えたことに、小さく溜め息を吐いた。どこかで時間を取って、双子から話を聞かなくちゃならない。
 デズモンドに前隊長の名を出されたダイアーは、呆れたように肩を竦めた。

「ウィリアムは、何とかなるって分かっててデズモンドに任せたんだな。だからあいつら、夢魔のくせに大人しいのか」
「ボク自身も手近で済ませられるから、とてもありがたいヨ?」

 へへへと笑うデズモンドに対して、ダイアーは眉根を寄せ慄いた。
 ダイアーが何を考えているのか、アレックスには少しだけではあるが想像ができた。夢魔のは、それなりに頻度が高く、なかなか激しい行為に成りがちだと聞いている。疲労が仕事に出る場合もあり、複数人がローテーションになるよう対応することが推奨されている。少しだが手当ても出る程だ。
 それを一人で相手し、尚且つ手近で済ませられると、デズモンドは笑っているのだ。

「一番誠実なのはギランだけど……」

 声を絞り出したダイアーは、一度ギランへ視線を向ける。ギランは何本目かのフライドチキンを豪快に噛みちぎっているところだった。その横のドゥルイットは、我関せずでグラタンのソースをこそいでいる。
 二人を暫し見やった後、スプーンをプラプラと弄んでいるデズモンドへと視線を戻した。

「ワタシの中で、デズモンドは一番ヤバいヤツになったな」
「えー……」

 疲労を感じさせるダイアーの言葉に、デズモンドはとても不満そうに口を尖らせた。

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