9 / 16
幼馴染みたちの更なる蛇足
しおりを挟む
「……ソウ言やソウだったな。結構前の話だ。ワタシは追い返したけど……皆のところには?」
ダイアーの問いにギランは首を振る。ドゥルイットは暫し思案したあと、頭の奥の引き出しから何とか記憶を取り出したような何とも言えない顔で呟いた。
「あー……オレのトコロにも来た」
そうだろうとデズモンドは得意げだ。
それ自体はただよくあることなだけなんだよとアレックスが頭を抱える。その目の前へ、皿に載せられたフライドチキンが現れた。顔を上げると、片眉を大きく上げたギランが皿を差し出している。
「二人がキチンと聞き出す。アレックスは鶏肉デモ食べてロ」
その心遣いにアレックスの緊張が緩む。一人で悩んだとしてどうしようもない。ギランの言うとおり二人に頼ろうと肉に手を伸ばす。
その間にも、三人の話は進んでおり――
「手加減しなくてイイって言われたモンで、好き放題したら来なくなったナ」
「ダメだよ……夢魔たちに精力で勝つのは、追い払う時のやり方だから」
何でもないように言うドゥルイットに、デズモンドが咎めるように言った。その表情には憐れみが浮かんでいる。
「定期的に精気を吸わないとダメみたいだから、たまには相手してあげないとかわいそうじゃないか」
「軍のコミュニティで遊びの関係を持つのは、ワタシはお勧めできないな」
「ソレはダイアーの考え方でしょ」
正しいけれどそう言って良いのか分からないことをデズモンドが物申せば、ダイアーが苦い顔をする。ダイアーはそういうスタンスだから殊更忌避感があるのだろう。
まさに今デズモンドの話している内容が、何かしらに所属している夢魔たちが管理されている理由である。彼らは、定期的に異種族と性的な接触をして、精気を含む生気を得る必要がある種族なのだ。通常の食事でもなんとかなるそうだが、体調がまったく変わるらしい。
アレックスは、双子の顔を思い浮かべ何とも言えない気持ちになった。
「違う違う。夢魔に関しては規則があったはずだ」
「それも知ってるよ。ボクが相手するようになってから、他の人にはチョッカイを出さなくなったっテ。実はこっそりリスト外とも遊んでたみたいだから、逆に感謝されたくらいだヨ?」
「そうだったのか。デ? その感謝されたって誰に?」
ダイアーが丁寧に尋ねていく。その横でアレックスはまた頭を抱えた。
夢魔の食事では体調不良者が出ることもあるため、彼らの動向は把握しておく必要がある。守らなくてはならないことがいくつかあるのだ。
特に、“相手から了承をもらう”は、絶対厳守だ。
もちろん品行方正であれば管理から外れ、問題があれば相談することと言われるだけになる。しかしそれは本当に一握りの夢魔だけだ。
彼らの多くは、かなりの確率で自由奔放なのだ。彼らはよく性交の前に魅了を使うのだが、絶対厳守の了承を魅了下でもらうという小賢しいことをよくやる。
軍属の夢魔が相手としていい人物はリストにまとめられていて、事前にアポイントを取ってから、必ずするしないを尋ねるようにとなっていたはずだ。健康で体力があり、しっかり機能し、それでいて行為があってもトラブルにならない人物で、尚且つ本人が希望した場合だけ――という決まりになっていた。一応、アンケートは秘密裏に行われ、リストに関しては口外するなとなってはいる、はずだ。それを把握していて、リスト外の被害を把握している人物なんていただろうか。
アレックスはそう考えていたが、答えはすぐに判明する。
「ウィリアムだヨ?」
アレックスは思わず自身の額を叩いた。パシッと小さく音がした。
ウィリアムは、アレックスの前任の隊長だ。面倒見がよく、アレックスも対超常部隊に配属になってからとても世話になった人物でもある。尊敬している人はと尋ねられたら、両親と彼の名を挙げるだろう。
彼はアレックスが隊長になった後、問題なく部隊が動いているのを見てから退役していた。そう考えると確実に五年は前の話だ。
アレックスは仕事が増えたことに、小さく溜め息を吐いた。どこかで時間を取って、双子から話を聞かなくちゃならない。
デズモンドに前隊長の名を出されたダイアーは、呆れたように肩を竦めた。
「ウィリアムは、何とかなるって分かっててデズモンドに任せたんだな。だからあいつら、夢魔のくせに大人しいのか」
「ボク自身も手近で済ませられるから、とてもありがたいヨ?」
へへへと笑うデズモンドに対して、ダイアーは眉根を寄せ慄いた。
ダイアーが何を考えているのか、アレックスには少しだけではあるが想像ができた。夢魔の食事は、それなりに頻度が高く、なかなか激しい行為に成りがちだと聞いている。疲労が仕事に出る場合もあり、複数人がローテーションになるよう対応することが推奨されている。少しだが手当ても出る程だ。
それを一人で相手し、尚且つ手近で済ませられると、デズモンドは笑っているのだ。
「一番誠実なのはギランだけど……」
声を絞り出したダイアーは、一度ギランへ視線を向ける。ギランは何本目かのフライドチキンを豪快に噛みちぎっているところだった。その横のドゥルイットは、我関せずでグラタンのソースを刮いでいる。
二人を暫し見やった後、スプーンをプラプラと弄んでいるデズモンドへと視線を戻した。
「ワタシの中で、デズモンドは一番ヤバいヤツになったな」
「えー……」
疲労を感じさせるダイアーの言葉に、デズモンドはとても不満そうに口を尖らせた。
ダイアーの問いにギランは首を振る。ドゥルイットは暫し思案したあと、頭の奥の引き出しから何とか記憶を取り出したような何とも言えない顔で呟いた。
「あー……オレのトコロにも来た」
そうだろうとデズモンドは得意げだ。
それ自体はただよくあることなだけなんだよとアレックスが頭を抱える。その目の前へ、皿に載せられたフライドチキンが現れた。顔を上げると、片眉を大きく上げたギランが皿を差し出している。
「二人がキチンと聞き出す。アレックスは鶏肉デモ食べてロ」
その心遣いにアレックスの緊張が緩む。一人で悩んだとしてどうしようもない。ギランの言うとおり二人に頼ろうと肉に手を伸ばす。
その間にも、三人の話は進んでおり――
「手加減しなくてイイって言われたモンで、好き放題したら来なくなったナ」
「ダメだよ……夢魔たちに精力で勝つのは、追い払う時のやり方だから」
何でもないように言うドゥルイットに、デズモンドが咎めるように言った。その表情には憐れみが浮かんでいる。
「定期的に精気を吸わないとダメみたいだから、たまには相手してあげないとかわいそうじゃないか」
「軍のコミュニティで遊びの関係を持つのは、ワタシはお勧めできないな」
「ソレはダイアーの考え方でしょ」
正しいけれどそう言って良いのか分からないことをデズモンドが物申せば、ダイアーが苦い顔をする。ダイアーはそういうスタンスだから殊更忌避感があるのだろう。
まさに今デズモンドの話している内容が、何かしらに所属している夢魔たちが管理されている理由である。彼らは、定期的に異種族と性的な接触をして、精気を含む生気を得る必要がある種族なのだ。通常の食事でもなんとかなるそうだが、体調がまったく変わるらしい。
アレックスは、双子の顔を思い浮かべ何とも言えない気持ちになった。
「違う違う。夢魔に関しては規則があったはずだ」
「それも知ってるよ。ボクが相手するようになってから、他の人にはチョッカイを出さなくなったっテ。実はこっそりリスト外とも遊んでたみたいだから、逆に感謝されたくらいだヨ?」
「そうだったのか。デ? その感謝されたって誰に?」
ダイアーが丁寧に尋ねていく。その横でアレックスはまた頭を抱えた。
夢魔の食事では体調不良者が出ることもあるため、彼らの動向は把握しておく必要がある。守らなくてはならないことがいくつかあるのだ。
特に、“相手から了承をもらう”は、絶対厳守だ。
もちろん品行方正であれば管理から外れ、問題があれば相談することと言われるだけになる。しかしそれは本当に一握りの夢魔だけだ。
彼らの多くは、かなりの確率で自由奔放なのだ。彼らはよく性交の前に魅了を使うのだが、絶対厳守の了承を魅了下でもらうという小賢しいことをよくやる。
軍属の夢魔が相手としていい人物はリストにまとめられていて、事前にアポイントを取ってから、必ずするしないを尋ねるようにとなっていたはずだ。健康で体力があり、しっかり機能し、それでいて行為があってもトラブルにならない人物で、尚且つ本人が希望した場合だけ――という決まりになっていた。一応、アンケートは秘密裏に行われ、リストに関しては口外するなとなってはいる、はずだ。それを把握していて、リスト外の被害を把握している人物なんていただろうか。
アレックスはそう考えていたが、答えはすぐに判明する。
「ウィリアムだヨ?」
アレックスは思わず自身の額を叩いた。パシッと小さく音がした。
ウィリアムは、アレックスの前任の隊長だ。面倒見がよく、アレックスも対超常部隊に配属になってからとても世話になった人物でもある。尊敬している人はと尋ねられたら、両親と彼の名を挙げるだろう。
彼はアレックスが隊長になった後、問題なく部隊が動いているのを見てから退役していた。そう考えると確実に五年は前の話だ。
アレックスは仕事が増えたことに、小さく溜め息を吐いた。どこかで時間を取って、双子から話を聞かなくちゃならない。
デズモンドに前隊長の名を出されたダイアーは、呆れたように肩を竦めた。
「ウィリアムは、何とかなるって分かっててデズモンドに任せたんだな。だからあいつら、夢魔のくせに大人しいのか」
「ボク自身も手近で済ませられるから、とてもありがたいヨ?」
へへへと笑うデズモンドに対して、ダイアーは眉根を寄せ慄いた。
ダイアーが何を考えているのか、アレックスには少しだけではあるが想像ができた。夢魔の食事は、それなりに頻度が高く、なかなか激しい行為に成りがちだと聞いている。疲労が仕事に出る場合もあり、複数人がローテーションになるよう対応することが推奨されている。少しだが手当ても出る程だ。
それを一人で相手し、尚且つ手近で済ませられると、デズモンドは笑っているのだ。
「一番誠実なのはギランだけど……」
声を絞り出したダイアーは、一度ギランへ視線を向ける。ギランは何本目かのフライドチキンを豪快に噛みちぎっているところだった。その横のドゥルイットは、我関せずでグラタンのソースを刮いでいる。
二人を暫し見やった後、スプーンをプラプラと弄んでいるデズモンドへと視線を戻した。
「ワタシの中で、デズモンドは一番ヤバいヤツになったな」
「えー……」
疲労を感じさせるダイアーの言葉に、デズモンドはとても不満そうに口を尖らせた。
0
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由
スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの少年二人は、15歳になり神の祝福でスキルを得た事で道をたがえる。彼らはやがて青年となり、片方は魔王討伐に旅立つ勇者として華々しい活躍をし、もう片方はただ彼の帰還を待つ相変わらずスラム暮らしの存在となる。
これは何も持たない青年がただ勇者の帰りを待つ日常を描いた作品です。
無自覚両片想いの勇者×親友。
読了後、もう一度だけ読み直して頂けると何か見える世界が変わるかもしれません。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
お腹いっぱい、召し上がれ
砂ねずみ
BL
料理研究家でαの藤白蒼は幼なじみで10個下のΩ晃と番になった。そんな二人の間に産まれた照は元気いっぱいな男の子。泣いたり、笑ったり、家族の温かみを感じながら藤白家の日常が穏やかに進んでいく。
そんな愛する妻と愛する息子、大切な家族のお腹いっぱい喜ぶ顔が見たいから。蒼は今日も明日もその先も、キッチンに立って腕を振るう。
さあ、お腹いっぱい、召し上がれ。
最愛の番になる話
屑籠
BL
坂牧というアルファの名家に生まれたベータの咲也。
色々あって、坂牧の家から逃げ出そうとしたら、運命の番に捕まった話。
誤字脱字とうとう、あるとは思いますが脳内補完でお願いします。
久しぶりに書いてます。長い。
完結させるぞって意気込んで、書いた所まで。
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
冷酷なミューズ
キザキ ケイ
BL
画家を夢見て都会へやってきた青年シムは、「体液が絵の具に変わる」という特殊な体質を生かし、貧乏暮らしながらも毎日絵を描いて過ごしている。
誰かに知られれば気持ち悪いと言われ、絵を売ることもできなくなる。そう考えるシムは体質を誰にも明かさなかった。
しかしある日、シムの絵を見出した画商・ブレイズに体質のことがばれてしまい、二人の関係は大きく変化していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる