オオカミさんはちょっと愛が重い

青木十

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二人の住処 2*

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 食事を終え手早く汗を流して戻ってくれば、ウィアルがリビングのソファに腰掛けてコーヒーを飲んでいた。部屋の中にはコーヒーのいい薫りが漂っている。
 ウィアルはきちんと夜着を身に着けていて、魔法で乾かしたのだろう髪はすでにサラサラだ。バースィルはというと、体は拭いたものの夜着は下だけ、肩に掛けたタオルでまだ頭を拭いている状況だ。待ちきれないのは自分だけかと、バースィルは少し不満に思う。

 そんなバースィルの気持ちは露知らず、カップから唇を離してウィアルは柔らかく微笑んだ。

「バースィル、食器の片付け、ありがとうございます」

 食器が片付いているキッチンに視線が送られた。ウィアルには先にシャワーを浴びさせ、その間にバースィルが片付けておいたのだ。バースィルからしたら下心しかないのだが、ウィアルは純粋に感謝しているようだ。

「あんなのどうということはねえよ」
「それでも助かります」

 そう言って微笑むウィアル。
 本当はもっと甘やかしたいのだが、何でも卒なくこなすこの男に対してバースィルができることは少ない。こういう明確にあるが優先の低いもの――たとえそれがバースィルの欲で意図的に下げられたとしても――くらいしか、するチャンスがないのだ。
 なら、バースィルにできることは、それ以外で甘やかすこと。

 コーヒーのカップを取り上げて、両脇を支えて立つように促す。ちゅっちゅと口付けると、ほのかに薫るコーヒーの芳ばしさ。腰に両腕を回しぐっと抱き寄せれば、ウィアルがもたれかかるように踵が浮いて、自然と腰と腰がぶつかり合う形になった。驚いて小さく瞠るウィアルに、自身の熱と硬さを知らしめてやる。

「そうやってなかったことにするのは、なしだぞ」

 さながら肉食の獣といった表情で、思わず唇を舐めれば、またウィアルの眦が染まる。

「まだコーヒーが残っていて……」
「そんなの後でも、明日でも飲める」
「バースィルも髪が乾いていません」
「そんなの……」

 ――ヤってる間に乾く。

 耳元で低く囁やけば、ウィアルの体が微かだがふるりと震えたのが分かった。ウィアルは耳が良いらしく、小さな音もよく拾う。なのでこうやって囁やくのは、効果てきめんなのだ。
 このマメで真面目で少しお固い恋人を甘やかすなら、ベッドの上が最適だ。今晩もぐずぐずのでろでろに甘やかしてやろうと思えば、ますます熱が溜まっていく。
 わざとリップ音を立てて耳に口付け、両腕に力を入れて抱え上げる。バースィルの方が背も高く体格もいいので易いものだ。そのまま、寝室へと足を運んだ。

 一度扉の前で下ろしはしたが、その頃には観念したのか、ウィアルは両腕をバースィルの首に回して大人しく寄り添っていた。
 なら都合が良いとばかりに、ベッドへと運び入れて押し倒す。
 首元で匂いを嗅いでみれば、深緑に果物の香りが混ざっていた。体を洗った際の残り香だろう。

「旨そうな匂いがする」

 そう呟いて、べろりと舐め、はむりと甘噛み、ぢゅうと吸い上げた。唇を離せば、赤い鬱血痕が姿を現す。

「シャツで隠れないところはだめだと……」
「なんでだ、俺のだって分かるだろ」

 不満を漏らす唇を塞ぎながら、夜着の合わせを寛げていく。あっという間に白い肌が曝け出された。日に焼けたバースィルとは違い、色白のそれは滑らかで心地よい。
 バースィルは、首に回していたタオルをベッドの外へと放り投げた。上半身は何も着ていないので、スボンだけだ。
 夕食前からお預けを食らっていたバースィルのそれはしっかりと立ち上がり、着たばかりの夜着をこれでもかと押し上げている。

「ウィアル、愛してる」

 そう言って各所に唇を落とし、さわさわと体を撫でて官能を引き出していく。股の間に滑り込ませた脚を寄せれば、徐々に芯を持ち始めた熱を感じる。

「好きだ、愛してる」

 ウィアルの反応ににんまりと笑んで耳元へ囁やけば、薄い唇からは吐息が零れた。零れ落ちた熱が肩口に当たってくすぐったい。

「お前は言ってくんねぇの?」

 そう言って乞えば、小さな声が返ってくる。

「バースィル、好きですよ……」
「ベッドでは敬語を使うなって言ってんだろ」
「……好き、だ」

 ぽそぽそと紡がれる拙い愛の言葉。美しい瞳は少し潤み、輝きを増している。
 バースィルは満足げに頷くと、ウィアルの薄いながらも整った体に顔を近づけた。
 昨晩もしっかりと甘やかしたが、今晩もたっぷり甘やかせて蕩けさせよう。でろでろのぐずぐずにして、自分以外が見えないようにしてやりたい。
 そんなことを考えながら、べろりと長い舌で愛しい体を舐め上げた。

 西方の狼たちは皆、愛情が深く、愛の表現が強く、そしてその想いが些か重い。
 バースィルも例に漏れず、情熱的で嫉妬深く欲が強いのであった。
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