オオカミさんはちょっと愛が重い

青木十

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二人の邂逅 2

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 そうやって楽しげに話していると、先程メニューを聞いていった店員が料理を手にやってくる。

「週替わりです」
「はーい、僕です」

 エミルがさっと手を挙げる。
 彼の前に置かれたトレイには、エミルの頼んだオムライスの皿が載っていた。ふわりとした鮮やかな黄色のオムレツが小さく切った野菜と肉のピラフの上に鎮座している。脇には葉物野菜のサラダ、小皿には赤が美しいトマトのソースだ。

「日替わりのブラウンシチューとサラダ、それからパンですね」

 ケヴィンの前には、しっかりと煮込まれただろう肉と野菜がたっぷり入ったシチューだ。葉物とトマトのサラダ、パンが二つ添えられている。

「お昼時なので、パンは焼き立てですよ」
「それは楽しみだ」

 鼻のいいバースィルがすんすんと匂いを嗅げば、シチューの匂いとともに小麦の芳ばしい匂いが感じ取れた。その様子を見たケヴィンは、軽く破顔し「ここのパンはシェフのお手製なんだ」と嬉しそうに言った。

「ラースくん、フリットのソースにゆで卵はいれるかい?」

 カウンターの奥から声がかかった。口調は大人びているものの、まるで少年のような声音だった。

「あ、はい! お願いしますー」

 ラースが少し腰を上げて返事を返せば、カウンターの向こうから小さな手が振られた。なんだろうと、消えてしまった先を眺め不思議そうにするバースィルとシュジャーウに、ケヴィンが教えてくれる。

「ここのシェフは小人族なんだよ」

 バースィルの口から、へぇと驚きの声が漏れた。カウンターから姿が見えなかったのも頷ける。
 小人族とは、草原の多い平野部を好む種族で、牧歌的な地域の町を選んで住まう種族だ。体格は小柄で、人族の身長の半分くらい。外見は幼く、中年期に差し掛かっても人によっては子供に見える者もいるのだそうだ。バースィルは会ったことがなかったが、彼らは手先が器用で調理や細工、錬金術などなんでも巧みにこなすという。コックとしても重宝されていることだろう。
 ケヴィンの話によると、シェフは南の大国レオミュール王国の有名店で厨房のチーフをしていたのだが、いろんな料理をしたいと出奔、ここに流れてきたらしい。だからコックではなくシェフなのだそうだ。

「さすが大陸中央の国、いろんな種族がいるんですね」

 シュジャーウが興味深そうに答えると、ケヴィンは柔らかく笑った。

「私からしたら、君の種族も珍しいがね」
「そうなんです? なら、もっと大事にしてくださいよ」
「しっかり訓練して、早く馴染めたらな」
「やった! 頑張りますよ」

 人見知りのないシュジャーウは、すっかり班長のケヴィンに懐いていた。楽しげにからかい合っている。
 ちなみに、シュジャーウの種族である豹獣人族は、西方と北方に数種族住む程度。中央部から南東部にかけてはまず見かけない、珍しい種族だ。

「おまたせしました。白身魚のフリットと、チキンソテーです」

 すっすっとラースとハンネスの前にトレイが置かれ、いい色に揚がった白身魚のフリットと、こんがり焼き目が美しいチキンソテー、ともに温野菜とパン、付け合せのピクルスが一緒に届けられた。フリットの横には、ピクルスとハーブの入ったマヨネーズソースが添えられており、どうやら先程話していたゆで卵がみじん切りにされて和えられているようだ。客の希望でソースをアレンジしてくれる店なのだろう。
 どちらの料理も美味しそうで、バースィルのステーキにも期待が高まった。

 店員の青年が身を引くと、バースィルたちの前にもトレイが差し出された。いつの間に来ていたのか、もう一人店員がいたようだ。
 二人は置かれた料理に目も鼻も奪われた。

「はあぁ、すげぇ……」
「美味しそう」

 焼き立てステーキは見栄え重視でドンと一枚置かれている。大きく肉厚なそれは見ただけで腹が鳴りそうだ。しっかりと焼き目がついているため、芳ばしい香りも食欲を刺激する。その横には温野菜、それから角切りステーキまで添えられていた。
 メインの香りに負けないくらい食欲をそそるガーリックの香り。山盛りのガーリックライスだ。その山の頂上には、揚げたガーリックと粗挽き胡椒、刻みパセリが載せられている。
 隣の小皿は玉ねぎ、小さなきゅうりに人参、パプリカと、色鮮やかなピクルスだ。

 想像以上に食べごたえのありそうな食事が出てきた。
 旨そうな見た目と匂いに感激し、店員へ礼を言おうと顔を上げたバースィルは、中途半端な姿勢のまま固まった。
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