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第一章 輝葬師
三幕 「脅威の影」 二
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『フレア』
・・・この世界において人の天敵ともいえる謎の白い生命体。
他の獣や蟲等は、その縄張りを侵したり、攻撃するなどの刺激を与えたりしない限りは基本的に人を襲うことはない。
しかし、この生命体だけは別で、人そのものと人が使用する魔元石の二つを明確に攻撃対象としている。
膂力は人のそれを圧倒し、莫大な魔力を基とした強力な魔操も使用する。
アスは実際にフレアと対峙したことはなかったが、過去にフレアに襲われ、無惨な肉塊となった悍ましい骸を見たときの恐怖を思い出し、気付けば一筋の汗が頬を伝っていた。
「そうでしたか。情報ありがとうございます。どうするかもう一度考えてみます」
「うん、その方がいいよ」
女性は頷くと、片付けの途中だった食器を持って店の奥に戻って行った。
「お父さん、フレアだって」
アスが戸惑った表情でヴェルノを見る。
「うーん。どうしようかな」
ヴェルノは椅子の背もたれによしかかると、顔を天井に向け、息を吐いた。
多分今後の行動を思案しているのだろうと思ったアスはその姿を黙って見つめ、次の言葉を待った。
ジゼルもアスと同様にヴェルノを見つめ沈黙している。
しばらくしてからヴェルノは意を決した表情で視線を二人に戻した。
「このままハマサ村に進もう。多分、単独徘徊型のフレアだろうから、遭遇の可能性はかなり低いと思う。討伐までどれだけかかるかわからないし、リーベルマンの件をいつまでも後回しにしたくはないからな」
アスはヴェルノの柔らかいが緊張感のある声に表情を固くしつつも、静かに頷いた。
「りょーかい。よくよく考えれば、フレアは元々神出鬼没って言われてるんだから、旅をしている以上どこに行っても遭遇の可能性はあるもんね。・・・ただ、いるかもって言われてる場所に進むのは正直ちょっとだけ気味が悪いけど」
沈黙の間にジゼルも自分の考えを整理して少し落ち着いたのか、いつもの調子でそう言うと、再び目の前の料理を口に運び始めた。
「そうだな。遭遇する確率が通常より高いことは確かだろう。万が一遭遇した場合は、いつも言っている通り二人は全力で逃げること。それだけは再度肝に命じておいてくれ」
「はーい。そういえば今までちゃんと確認してなかったけど、私とアスは逃げるとして、お父さんはどうするの?一緒に逃げるんだよね?」
「俺か?俺は二人が逃げきるまでフレアと戦うつもりだよ」
「えっ?」
予想していなかった回答に動揺したのかジゼルの食事の手が再び止まる。
アスもこれまで漠然と疑問も持たずに、みんなで逃げるのだろうと思い込んでいたため、戦うという選択肢を考えていたヴェルノの発言にかなり動揺した。
「お父さん、戦うつもりだったの?大丈夫なの?フレアだよ?」
アスが不安そうに尋ねると、ヴェルノは椅子に立て掛けた愛用のグラディウスに目を向けた。
「そうだな。この得物だけで討伐しろって言われるとまず無理だろうな。ただ、足止めして逃げるくらいならよっぽどのことがない限り問題ないよ」
「本当に大丈夫?なんか少し心配になってきた。そりゃお父さんが強いのは分かってるけど、フレアと単独で戦うのは流石に無茶な気がするな」
ジゼルは料理に添えられたブロッコリーをなんとなしにフォークで転がした。
「ふふふ、心配してくれてありがとう。二人はフレアを見たことがないから不安が勝るのかもだけど、お父さんは過去に何度か戦ったことがあって、大体の力量感は把握しているから、そこまで無茶なことを言っているつもりはないよ」
「え?、戦ったことあるの?」
ジゼルとアスは、ヴェルノの意外な戦歴に驚いた表情を見せる。
「ああ、だから大丈夫だよ」
「うーん、そう言われてもねぇ。・・・お父さん、無理だけは絶対にしないでね、約束だよ」
ジゼルが上目がちにヴェルノを見る。
「分かったよ。無理も無茶もしないさ。さぁ二人とも、料理が冷めないうちに食べよう。食べたら出発だ」
・・・この世界において人の天敵ともいえる謎の白い生命体。
他の獣や蟲等は、その縄張りを侵したり、攻撃するなどの刺激を与えたりしない限りは基本的に人を襲うことはない。
しかし、この生命体だけは別で、人そのものと人が使用する魔元石の二つを明確に攻撃対象としている。
膂力は人のそれを圧倒し、莫大な魔力を基とした強力な魔操も使用する。
アスは実際にフレアと対峙したことはなかったが、過去にフレアに襲われ、無惨な肉塊となった悍ましい骸を見たときの恐怖を思い出し、気付けば一筋の汗が頬を伝っていた。
「そうでしたか。情報ありがとうございます。どうするかもう一度考えてみます」
「うん、その方がいいよ」
女性は頷くと、片付けの途中だった食器を持って店の奥に戻って行った。
「お父さん、フレアだって」
アスが戸惑った表情でヴェルノを見る。
「うーん。どうしようかな」
ヴェルノは椅子の背もたれによしかかると、顔を天井に向け、息を吐いた。
多分今後の行動を思案しているのだろうと思ったアスはその姿を黙って見つめ、次の言葉を待った。
ジゼルもアスと同様にヴェルノを見つめ沈黙している。
しばらくしてからヴェルノは意を決した表情で視線を二人に戻した。
「このままハマサ村に進もう。多分、単独徘徊型のフレアだろうから、遭遇の可能性はかなり低いと思う。討伐までどれだけかかるかわからないし、リーベルマンの件をいつまでも後回しにしたくはないからな」
アスはヴェルノの柔らかいが緊張感のある声に表情を固くしつつも、静かに頷いた。
「りょーかい。よくよく考えれば、フレアは元々神出鬼没って言われてるんだから、旅をしている以上どこに行っても遭遇の可能性はあるもんね。・・・ただ、いるかもって言われてる場所に進むのは正直ちょっとだけ気味が悪いけど」
沈黙の間にジゼルも自分の考えを整理して少し落ち着いたのか、いつもの調子でそう言うと、再び目の前の料理を口に運び始めた。
「そうだな。遭遇する確率が通常より高いことは確かだろう。万が一遭遇した場合は、いつも言っている通り二人は全力で逃げること。それだけは再度肝に命じておいてくれ」
「はーい。そういえば今までちゃんと確認してなかったけど、私とアスは逃げるとして、お父さんはどうするの?一緒に逃げるんだよね?」
「俺か?俺は二人が逃げきるまでフレアと戦うつもりだよ」
「えっ?」
予想していなかった回答に動揺したのかジゼルの食事の手が再び止まる。
アスもこれまで漠然と疑問も持たずに、みんなで逃げるのだろうと思い込んでいたため、戦うという選択肢を考えていたヴェルノの発言にかなり動揺した。
「お父さん、戦うつもりだったの?大丈夫なの?フレアだよ?」
アスが不安そうに尋ねると、ヴェルノは椅子に立て掛けた愛用のグラディウスに目を向けた。
「そうだな。この得物だけで討伐しろって言われるとまず無理だろうな。ただ、足止めして逃げるくらいならよっぽどのことがない限り問題ないよ」
「本当に大丈夫?なんか少し心配になってきた。そりゃお父さんが強いのは分かってるけど、フレアと単独で戦うのは流石に無茶な気がするな」
ジゼルは料理に添えられたブロッコリーをなんとなしにフォークで転がした。
「ふふふ、心配してくれてありがとう。二人はフレアを見たことがないから不安が勝るのかもだけど、お父さんは過去に何度か戦ったことがあって、大体の力量感は把握しているから、そこまで無茶なことを言っているつもりはないよ」
「え?、戦ったことあるの?」
ジゼルとアスは、ヴェルノの意外な戦歴に驚いた表情を見せる。
「ああ、だから大丈夫だよ」
「うーん、そう言われてもねぇ。・・・お父さん、無理だけは絶対にしないでね、約束だよ」
ジゼルが上目がちにヴェルノを見る。
「分かったよ。無理も無茶もしないさ。さぁ二人とも、料理が冷めないうちに食べよう。食べたら出発だ」
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