命導の鴉

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第一章 輝葬師

六幕 「戦いの後で」  三

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「俺たちが?」

 ニリルの言葉を受けてヴェルノが目を丸くする。

「ああ、君たちには不可解な点が三つある。一点目はフレアの襲来に合わせてタイミングよく現れたこと、二点目はジゼルの目の前で都合良くフレアの魔法が消失したこと、三点目は同じフレアの直撃を受けたエツィオに比べてアスの怪我が軽すぎること。エツィオは懐に鉄板も仕込んでいたというのにご覧の有り様だ。以上から、君たちはフレアと裏で繋がっており、フレアも君たちに対して意図的に手を抜いたという可能性が考えられる。志征としてこの不可解な点は明らかにしておきたい」

 あまりに唐突な疑いにアスとジゼルは困惑した表情でヴェルノの方に顔を向けた。

「関与なんてないさ。俺たちはどこにでもいるただの鴉の一行だよ。ニリルの言った不可解な点については俺達も分からないから答えようがないな。悪いが、俺たちに関してこれ以上の情報を提供する気はない」

 ヴェルノはうっすらと笑みを浮かべ、落ち着いた表情で答えるが、その態度は明らかに非協力的であった。

「そうか・・・。ヴェルノ、先日双極分枝に捜索完了証明を提出しただろう?悪いとは思ったが証明書にあった貴方の輝印を基に、志征の権限で輝核台帳を閲覧させてもらった」

 それは予想外の言葉だったようで、ヴェルノの眉が少し上がった。

「君たちの素性を少し調べる程度のつもりだったんだが。・・・驚いたよ、志征の権限をもってしても記録は全て非開示だったからな。そこまで強い非開示設定を行う権限は王以下最上位貴族の六華、又はそれに近しい者しか有していない。つまり貴方はこの国の最上位層となんらかの関連があることになる。ただの鴉ではなことは明白だ」

「なるほど、完了証明を調べられるとは迂闊だったな。まぁ調べられても問題はないから気にしてなかったという方が正しいか。それで?」

「本来であれば、私の権限を越えた非開示記録を有する人物を探ることは越権であり禁則行為となるが、本件の調査ということであれば特別に許可されるだろう。今回の件で納得いく回答が得られなければ王都に連行してでも君たちの素性を調べることになる。それは多分だが貴方にとっても望ましいことではないだろう?是非、協力的な態度で臨んで貰えるとありがたい」

 強張る表情で強い言葉を放ったニリルに対し、ヴェルノは動じることなく柔らかい表情を崩さなかった。

「ふふふ、ニリル、本当に連行するつもりならこの状況はないだろう。明らかにこっちの方が戦力が上だ。・・・とはいえ、ニリルの言う通り志征に目をつけられると面倒なのも事実だ。しょうがない、今回は出来る範囲で協力しよう」

 その言葉に、ニリルの表情が少し和らいだ。

「そう言ってもらえてよかった。それじゃあ、早速この場で三人の輝印をもらおう。認証装置に残っていた輝印と違うことを確認したい」

 ヴェルノはニリルが差し出した紙を受け取ると慣れた手つきで輝印を押印し、ジゼルに紙を渡した。

 この尋問のような状況に不安そうな表情をしながら輝印を押すジゼルを見て、ヴェルノは大丈夫と優しく微笑んだ。

 次に、ジゼルからアスに紙が手渡された。

 アスは輝印を押すことが滅多にないため、辿々しい手つきで押印する。

 ふと、アスは押印された三人の輝印を見比べる。当然のことだが三人とも全く違う紋様が刻印されていた。

 何故かアスにはそれが、三人は家族といえど他人であるということを強調しているかのように感じられた。

「よければ、紙をもらおうか?」

 ニリルが手を差し出すと、アスは自分の印が正しく押されていることをもう一度確認した上で、紙をニリルに手渡した。

 紙を受け取ったニリルは小さな画面がついた機器を鞄から取り出すと、三人の輝印が押された紙を機器にセットしてボタンを押した。

 小さな機械音と共に紙が機器を通過し、三人の輝印が機器の画面に映し出される。

「今から輝印を精査するが、少し時間がかかる。その間にここ一ヶ月の行動履歴を話してくれ。精査しながら聞くよ」

 ニリルは機器の画面を見ながら真剣な表情で操作を始めた。

「一ヶ月前というと、このハマサ村で捜索依頼を受けたくらいだな。とりあえずそこから話すが、疑義があれば適宜質問してくれ」

 ニリルは画面に目を向けたまま、小さく頷いた。
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