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第一章 輝葬師
六幕 「戦いの後で」 四
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ヴェルノが1ヶ月の動向を話し終えるまでにしばらくの時間が流れた。
「・・・そんなわけで、今に至っている。大体こんな感じだな。何か質問はあるか?」
少し前に輝印の精査を終えて、ヴェルノの話に聞き入っていたニリルは頭を振った。
「いや、特にはない。行動にかかる日数は妥当だし、嘘を言っているとも思えない。今回の騒動が計画的なものなら突発的なイルザ村の件は対処しないだろうしな。念の為、ガフディという輝葬師の報告書も後で確認するが、輝印も容疑者のものと一致していないことも併せて、君たちは今回の騒動に関与していないと判断しよう。エツィオ、これでいいな?」
ニリルの問いかけに、エツィオは問題無いという意思表示をするかのようにゆっくり頷いてから目を閉じた。
その様子を見てからニリルは三人の方を向ける。その目にはもう疑いの色はないように感じられた。
「不愉快な思いをさせたな」
「いいさ、悪意はなかっただろうし、志征としての職務だったということで割り切るよ」
「ありがとう。ついでと言っては何だがもう一ついいか?これは志征としてではなく個人的な質問だ。回答を強要するつもりはないから、嫌なら答えなくてもいい」
「・・・それは、質問次第だな。出来れば好きな食べ物を聞く位にしてもらいたいとこだが」
ヴェルノの軽口にニリルは苦笑いをした。
「好きな食べ物もいいが、今は貴方の強さのことについて聞きたい。ヴェルノ、貴方は魔錬刃を使用していないにも関わらず、その実力は志征の上位層である『緋雀』と比べてもなんら遜色はなかった。貴方は元志征・・・それも最上位層である『鳳』で、本当は魔錬刃を使えば一人でフレアを討伐できたんじゃないのか?」
ヴェルノは少し考えてから、首を横に振った。
「すまないが、その質問には答えられない。だが代わりに一つだけ言えるとしたら、俺は輝核を欠損していて魔操の出力が思うように上げられないということだな」
「なるほどな、輝核欠損か。・・・全てを話せない理由があるということは理解しているつもりだから、それで十分だ。もうこれ以上の詮索はしないよ」
「そうして貰えると助かる。さてと、それじゃあ俺達は部屋に戻らせてもらおうかな」
ヴェルノは椅子から立ち上がり、アスとジゼルにも部屋へ戻るよう促した。
「そうそう、話が長くなってしまったから忘れないように念押ししておくが、冒頭に言った明日の立ち会いの件、よろしく頼むよ」
「ああ、ちゃんと心得ているよ」
ニリルは笑顔でそう答え、部屋を辞去するヴェルノを見送った。
「お父さん」
部屋へ戻る途中、ジゼルが弱々しい声でヴェルノを呼び止めた。
「ん?」
「今日の話、途中からすごく悲しい気持ちになった。尋問のようなやりとりで気分が落ちたっていうのもあるけど、私、お父さんのこと何も知らないんだなって再認識しちゃったから。お父さんはあまり過去のことを話したがらないから聞かないようにしてたけど、もっとちゃんと知りたいよ。過去のことって私達にもやっぱり話すことはできないの?」
少し困ったような表情をしたヴェルノは、ジゼルの肩に優しく手をかけると青い瞳を真っ直ぐジゼルに向けた。
「すまないジゼル、いつかちゃんと話すよ」
「いつかって、いつ?」
ジゼルがそんなヴェルノの目線を外すかのように俯いて呟く。
ヴェルノはゆっくりとアスに視線を移した。
「そうだな。あと五年、アスが十五になって正心の儀を迎えたら、その時は二人に全てを話そう」
「アスが大人になったら、か」
「それまでは二人とも待ってほしい」
少し間を置いてから、ヴェルノの顔を見上げたジゼルが頷いた。
「うん、わかった。それまで待つよ。でもその時がきたら絶対に話してね。約束だよ!」
「ああ、約束しよう。アスもそれでいいか?」
アスは黙って頷いた。
しかし、正直なところ過去のことはどうでもよかった。むしろ話を聞いてしまうと今のこの三人の関係性が壊れてしまうのではないかという一抹の不安さえあった。
確信があるわけでもなかったが、ただ何故か強くそう感じていた。
ヴェルノは複雑そうな表情をするアスの頭をポンポンと優しく叩き、ニッコリと笑みを送ると再び部屋に向かって歩き始めた。
ジゼルもその後に続く。
アスは二人の後ろ姿を眺めながら、ゆっくりと歩を進めた。
「・・・そんなわけで、今に至っている。大体こんな感じだな。何か質問はあるか?」
少し前に輝印の精査を終えて、ヴェルノの話に聞き入っていたニリルは頭を振った。
「いや、特にはない。行動にかかる日数は妥当だし、嘘を言っているとも思えない。今回の騒動が計画的なものなら突発的なイルザ村の件は対処しないだろうしな。念の為、ガフディという輝葬師の報告書も後で確認するが、輝印も容疑者のものと一致していないことも併せて、君たちは今回の騒動に関与していないと判断しよう。エツィオ、これでいいな?」
ニリルの問いかけに、エツィオは問題無いという意思表示をするかのようにゆっくり頷いてから目を閉じた。
その様子を見てからニリルは三人の方を向ける。その目にはもう疑いの色はないように感じられた。
「不愉快な思いをさせたな」
「いいさ、悪意はなかっただろうし、志征としての職務だったということで割り切るよ」
「ありがとう。ついでと言っては何だがもう一ついいか?これは志征としてではなく個人的な質問だ。回答を強要するつもりはないから、嫌なら答えなくてもいい」
「・・・それは、質問次第だな。出来れば好きな食べ物を聞く位にしてもらいたいとこだが」
ヴェルノの軽口にニリルは苦笑いをした。
「好きな食べ物もいいが、今は貴方の強さのことについて聞きたい。ヴェルノ、貴方は魔錬刃を使用していないにも関わらず、その実力は志征の上位層である『緋雀』と比べてもなんら遜色はなかった。貴方は元志征・・・それも最上位層である『鳳』で、本当は魔錬刃を使えば一人でフレアを討伐できたんじゃないのか?」
ヴェルノは少し考えてから、首を横に振った。
「すまないが、その質問には答えられない。だが代わりに一つだけ言えるとしたら、俺は輝核を欠損していて魔操の出力が思うように上げられないということだな」
「なるほどな、輝核欠損か。・・・全てを話せない理由があるということは理解しているつもりだから、それで十分だ。もうこれ以上の詮索はしないよ」
「そうして貰えると助かる。さてと、それじゃあ俺達は部屋に戻らせてもらおうかな」
ヴェルノは椅子から立ち上がり、アスとジゼルにも部屋へ戻るよう促した。
「そうそう、話が長くなってしまったから忘れないように念押ししておくが、冒頭に言った明日の立ち会いの件、よろしく頼むよ」
「ああ、ちゃんと心得ているよ」
ニリルは笑顔でそう答え、部屋を辞去するヴェルノを見送った。
「お父さん」
部屋へ戻る途中、ジゼルが弱々しい声でヴェルノを呼び止めた。
「ん?」
「今日の話、途中からすごく悲しい気持ちになった。尋問のようなやりとりで気分が落ちたっていうのもあるけど、私、お父さんのこと何も知らないんだなって再認識しちゃったから。お父さんはあまり過去のことを話したがらないから聞かないようにしてたけど、もっとちゃんと知りたいよ。過去のことって私達にもやっぱり話すことはできないの?」
少し困ったような表情をしたヴェルノは、ジゼルの肩に優しく手をかけると青い瞳を真っ直ぐジゼルに向けた。
「すまないジゼル、いつかちゃんと話すよ」
「いつかって、いつ?」
ジゼルがそんなヴェルノの目線を外すかのように俯いて呟く。
ヴェルノはゆっくりとアスに視線を移した。
「そうだな。あと五年、アスが十五になって正心の儀を迎えたら、その時は二人に全てを話そう」
「アスが大人になったら、か」
「それまでは二人とも待ってほしい」
少し間を置いてから、ヴェルノの顔を見上げたジゼルが頷いた。
「うん、わかった。それまで待つよ。でもその時がきたら絶対に話してね。約束だよ!」
「ああ、約束しよう。アスもそれでいいか?」
アスは黙って頷いた。
しかし、正直なところ過去のことはどうでもよかった。むしろ話を聞いてしまうと今のこの三人の関係性が壊れてしまうのではないかという一抹の不安さえあった。
確信があるわけでもなかったが、ただ何故か強くそう感じていた。
ヴェルノは複雑そうな表情をするアスの頭をポンポンと優しく叩き、ニッコリと笑みを送ると再び部屋に向かって歩き始めた。
ジゼルもその後に続く。
アスは二人の後ろ姿を眺めながら、ゆっくりと歩を進めた。
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