33 / 131
第二章 遠き日の約束
二幕 「ロムトアへ」 三
しおりを挟む
依頼内容を共有したヴェルノ達は、旅の支度をするために喫茶店リンドを出た。
「旅の道具は大体拠点に揃っているが、武器だけは調達が必要だな」
ヴェルノが腰に帯びている剣は先のフレアとの戦いで折れたままであった。
ヴェルノ達の使用しているグラディウスは市販の物より高級な鋼材を使用した特注品であるため、新しく購入するにも修理するにもかなりの費用がかかる。
懐事情が芳しくないヴェルノ達はとりあえず剣の修理を後回しにしていたのだ。
「下手な安物を買うよりは今の折れた剣の方がマシって言ってたけど、やっぱり買うの?」
ジゼルが尋ねると、ヴェルノは首を横に振ってにっこり微笑む。
「いや、今回は支度金として五万ベトラまで使っていいと言われているから、双極分枝の『箱』で修理するよ。素材の純青藍鋼もここに来る途中の鋼材屋で買ってきた」
「ご、五万!!一般人の年収クラスが支度金って・・・、さすが貴族ね、恐るべし」
「そうだな、正直どうやって修理費を捻出しようかと悩んでたところだったから、ほんと助かったよ。確かこの近くに街の双極分枝があったはずだから寄って行こう」
街の双極分枝は喫茶店リンドから少し歩いた所にあった。
双極分枝に到着したヴェルノ達は、中に入ると早々に受付を済ませて、奥の魔具模造床と書かれた部屋に進んだ。
部屋の中には、五メートル四方の巨大な装置があり、双極分枝の職員と思われる若い女性が装置前面のパネルを操作していた。
「へぇー、ここの『箱』は結構でかいんだな」
女性がヴェルノの声に気付き、こちらに振り向く。
「こんにちわ、魔具模造機のご利用ですか?」
「ああ、No.99、グラディウスの修理をお願いしたい」
「かしこまりました。現在、他に利用者はいないので、すぐに取りかかれますよ」
「それはよかった、急ぎで頼みたい」
女性は笑みを浮かべて頷くと装置前面のパネルを操作し始めた。
魔具模造機は、双極に登録されたオリジナルのアーティファクトの設計情報を基にして、そのレプリカを生成したり修理したりできるアーティファクトで、通称『箱』と呼ばれている。
魔元石を介した魔力によって動作するアーティファクトと呼ばれる道具の構造は非常に複雑であるため、人類はアーティファクトの生成も修理も箱を用いることでしか行うことができない。
そのため、この箱は人類にとって非常に重要なアーティファクトの一つであった。
少しして、操作を終えた女性がこちらに顔を向けた。
「お待たせいたしました。設定を完了しましたので装置左方の蓋を開けて素材をセットしてください。必要素材は・・・」
「知っているから、説明は大丈夫だよ」
ヴェルノは柔らかい口調で女性の言葉を遮ると、慣れた手つきで装置左方にある蓋を開けた。
装置内には素材を置くための棚があり、そこへ折れた剣の刃先、先程購入した純青藍鋼、鞘から抜いた折れた剣を順次並べて蓋を閉めた。
装置がセットされた素材の読み取りを自動で開始する。
十秒程で装置の前面パネルに修理のための所要時間が表示された。
「ありがとうございます。素材は十分ですね。所要時間は二時間程度となりますが、ここで待ちますか?」
「いや、他に用事があるから、出来上がり頃に取りに来るよ」
「かしこまりました。それでは修理を開始いたしますので、修理費用を前払いでお願いいたします。料金は・・・ん??えっ??」
女性が装置のパネルに表示された料金を見て目を丸くする。そこには一般的な剣の修理費とは比べ物にならないくらいの高額な値が示されていた。
「純青藍鋼の加工を行うんだ。多分二万ベトラくらいかな?」
女性は絶句したままヴェルノの方を向いて、その言葉を肯定するかのように小さく頷いた。
「タラス、悪いが費用を頼む」
タラスは頷いて女性に詳細な額を確認すると、鞄から百べトラ札の札束を二つ取り出して女性に渡した。
「お釣りは結構ですよ。・・・さてと、それでは皆さん、ここでの用事はとりあえず終わったようですので拠点へ戻りましょうか」
「ああ、そうだな。職員さん、修理をよろしく頼むよ」
「・・・か、かしこまりました」
両手に札束を持った職員が呆然とする中、タラスの雅やかな口調に促されてヴェルノ達は双極分枝を後にした。
拠点に戻ったヴェルノ達は速やかに準備を整え、それぞれ荷のつまった鞄を背負い拠点を出発する。
途中、食料品等の消耗品を購入しつつ、時間を見計らって双極分枝で修理した剣を受け取り、王都外郭西大門を抜けて一路、ロムトアを目指した。
外郭西大門を出てからしばらくはレンガで舗装された街道が続いていたが、至ロムトアと書かれた木の看板に従って街道の分岐点を越えると、次第に草木がまばらに生えた土の道に変わっていく。
進むほどに整備状況が悪くなっていく道らしき道を進み、四人は日の落ちる頃にようやくロムトアの麓に辿り着いた。
目の前に広がるロムトアは標高二百メートル程度の小さな山であったが、自然の中で荒々しく育った草木が鬱蒼としており、ここからの道のりはより険しくなることが容易に想像できた。
道のりの険しさと日が落ちて視界が悪くなったことを考慮すると、これ以上進むのは危険であろうと判断した一行は、ここで野営し明朝から本格的にロムトアに入ることにした。
野営に適したところを探し、その場所でアスとジゼルがテントの設営を始めるとタラスも少し離れた場所でテントの設営を始める。
ここまでの道中、タラスはヴェルノ達と一定の距離を保って後ろを追従する形で歩いていたため、三人とタラスの間で会話らしい会話はほぼ無かった。
そんなタラスを見て、内気なのかなとジゼルがアスに軽口を投げかける場面もあったが、アスはタラスが時折見せる三人を監視しているかのような鋭い目に若干の不信感を抱いていた。
「旅の道具は大体拠点に揃っているが、武器だけは調達が必要だな」
ヴェルノが腰に帯びている剣は先のフレアとの戦いで折れたままであった。
ヴェルノ達の使用しているグラディウスは市販の物より高級な鋼材を使用した特注品であるため、新しく購入するにも修理するにもかなりの費用がかかる。
懐事情が芳しくないヴェルノ達はとりあえず剣の修理を後回しにしていたのだ。
「下手な安物を買うよりは今の折れた剣の方がマシって言ってたけど、やっぱり買うの?」
ジゼルが尋ねると、ヴェルノは首を横に振ってにっこり微笑む。
「いや、今回は支度金として五万ベトラまで使っていいと言われているから、双極分枝の『箱』で修理するよ。素材の純青藍鋼もここに来る途中の鋼材屋で買ってきた」
「ご、五万!!一般人の年収クラスが支度金って・・・、さすが貴族ね、恐るべし」
「そうだな、正直どうやって修理費を捻出しようかと悩んでたところだったから、ほんと助かったよ。確かこの近くに街の双極分枝があったはずだから寄って行こう」
街の双極分枝は喫茶店リンドから少し歩いた所にあった。
双極分枝に到着したヴェルノ達は、中に入ると早々に受付を済ませて、奥の魔具模造床と書かれた部屋に進んだ。
部屋の中には、五メートル四方の巨大な装置があり、双極分枝の職員と思われる若い女性が装置前面のパネルを操作していた。
「へぇー、ここの『箱』は結構でかいんだな」
女性がヴェルノの声に気付き、こちらに振り向く。
「こんにちわ、魔具模造機のご利用ですか?」
「ああ、No.99、グラディウスの修理をお願いしたい」
「かしこまりました。現在、他に利用者はいないので、すぐに取りかかれますよ」
「それはよかった、急ぎで頼みたい」
女性は笑みを浮かべて頷くと装置前面のパネルを操作し始めた。
魔具模造機は、双極に登録されたオリジナルのアーティファクトの設計情報を基にして、そのレプリカを生成したり修理したりできるアーティファクトで、通称『箱』と呼ばれている。
魔元石を介した魔力によって動作するアーティファクトと呼ばれる道具の構造は非常に複雑であるため、人類はアーティファクトの生成も修理も箱を用いることでしか行うことができない。
そのため、この箱は人類にとって非常に重要なアーティファクトの一つであった。
少しして、操作を終えた女性がこちらに顔を向けた。
「お待たせいたしました。設定を完了しましたので装置左方の蓋を開けて素材をセットしてください。必要素材は・・・」
「知っているから、説明は大丈夫だよ」
ヴェルノは柔らかい口調で女性の言葉を遮ると、慣れた手つきで装置左方にある蓋を開けた。
装置内には素材を置くための棚があり、そこへ折れた剣の刃先、先程購入した純青藍鋼、鞘から抜いた折れた剣を順次並べて蓋を閉めた。
装置がセットされた素材の読み取りを自動で開始する。
十秒程で装置の前面パネルに修理のための所要時間が表示された。
「ありがとうございます。素材は十分ですね。所要時間は二時間程度となりますが、ここで待ちますか?」
「いや、他に用事があるから、出来上がり頃に取りに来るよ」
「かしこまりました。それでは修理を開始いたしますので、修理費用を前払いでお願いいたします。料金は・・・ん??えっ??」
女性が装置のパネルに表示された料金を見て目を丸くする。そこには一般的な剣の修理費とは比べ物にならないくらいの高額な値が示されていた。
「純青藍鋼の加工を行うんだ。多分二万ベトラくらいかな?」
女性は絶句したままヴェルノの方を向いて、その言葉を肯定するかのように小さく頷いた。
「タラス、悪いが費用を頼む」
タラスは頷いて女性に詳細な額を確認すると、鞄から百べトラ札の札束を二つ取り出して女性に渡した。
「お釣りは結構ですよ。・・・さてと、それでは皆さん、ここでの用事はとりあえず終わったようですので拠点へ戻りましょうか」
「ああ、そうだな。職員さん、修理をよろしく頼むよ」
「・・・か、かしこまりました」
両手に札束を持った職員が呆然とする中、タラスの雅やかな口調に促されてヴェルノ達は双極分枝を後にした。
拠点に戻ったヴェルノ達は速やかに準備を整え、それぞれ荷のつまった鞄を背負い拠点を出発する。
途中、食料品等の消耗品を購入しつつ、時間を見計らって双極分枝で修理した剣を受け取り、王都外郭西大門を抜けて一路、ロムトアを目指した。
外郭西大門を出てからしばらくはレンガで舗装された街道が続いていたが、至ロムトアと書かれた木の看板に従って街道の分岐点を越えると、次第に草木がまばらに生えた土の道に変わっていく。
進むほどに整備状況が悪くなっていく道らしき道を進み、四人は日の落ちる頃にようやくロムトアの麓に辿り着いた。
目の前に広がるロムトアは標高二百メートル程度の小さな山であったが、自然の中で荒々しく育った草木が鬱蒼としており、ここからの道のりはより険しくなることが容易に想像できた。
道のりの険しさと日が落ちて視界が悪くなったことを考慮すると、これ以上進むのは危険であろうと判断した一行は、ここで野営し明朝から本格的にロムトアに入ることにした。
野営に適したところを探し、その場所でアスとジゼルがテントの設営を始めるとタラスも少し離れた場所でテントの設営を始める。
ここまでの道中、タラスはヴェルノ達と一定の距離を保って後ろを追従する形で歩いていたため、三人とタラスの間で会話らしい会話はほぼ無かった。
そんなタラスを見て、内気なのかなとジゼルがアスに軽口を投げかける場面もあったが、アスはタラスが時折見せる三人を監視しているかのような鋭い目に若干の不信感を抱いていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる