命導の鴉

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第二章 遠き日の約束

四幕 「命の捉え方」 四

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 一行が西王郭大門をくぐると、目の前には巨大な王城フリズレイルがそびえ立つ。

 王郭内で見る王城は一際でかく感じ、アスは王城を見上げて、その大きさに息をのんだ。

「アスとジゼルはここに入るのは初めてだと思うから簡単に説明しておこうか」

 オーべが二人の前に立ち解説を始める。

「まず目の前に見えるでかい建物が知っての通り、王城フリズレイルだ。俺の執務室もある。右手手前にある建物が輝胎の儀等の創生を司る創極、そして右手奥、遠くにうっすらと見える建物が終生を司る葬極で輝葬師が送った輝核を受け取っている。二つの極はフリズレイルの地下にある双極根と呼ばれる輝核統制システムを介してつながっており、それらを総称したものが双極と呼ばれている。ちなみに王郭の正門は南だ。機会があれば南門から入り正面から見てみるといい。中央にフリズレイル、左右に創極と葬極が並ぶ光景はなかなかに荘厳で圧巻だぞ」

 アスはオーべの説明を受けながら、初めて見る双極に興奮していた。

 葬極に目をやると、施設に向かって流星のごとく数多の光が吸い込まれており、各地から絶え間なく輝核が送られてきている様子が窺える。

「すごい!ここが人の命の源流になるんだ!」

「確かに、沢山の光が吸い込まれていく様は幻想的な気もするね。・・・だけど、あの一つ一つの光が誰かの死によって生まれていると思うと少し複雑かな」

 アスとジゼルは、しばらくその幻想的な光景を眺めていた。

「そろそろいいか?エロワのところに行くよ」

 オーべ達は王郭西大門に入ったところから左、北に向かって歩を進める。貴族達の居住地は王郭北側にまとまっているためだ。

 貴族街に来ると流石に警備は厳重で、何回も警備兵に身元確認を迫られた。

 しかし、バルタザール卿が発行した臨時召喚書が強力で、強面の警備兵もその書面を見るやいなや直ちに道を開けるとともに敬礼で見送ってくれた。

 貴族街の中心部辺りまできて、やっと目的のバルタザールの屋敷前に到着した。

 屋敷の正門前に立っていた門兵に召喚書を見せるとすぐに案内役の使用人に中継ぎをしてくれた。

 使用人は正門まで来るとお待ちしておりましたと丁寧に応対したうえで、バルタザール卿のところまでの道案内を始めた。

 ヴェルノ達は広い庭園を抜けた先の大きな屋敷に入ると、いくつあるのか数えるのが億劫になるくらい沢山ある部屋の中の一つに通された。

 部屋はよく清掃されており、バラの香りが漂っている。中には二十人程度の座席が確保された大きな円形の会議テーブルが据え付けてあったが、それでもゆとりを感じられるくらいに広い室内であった。

「腰の物はこちらでお預かりいたしますね」

 ヴェルノ達は各々頷き、腰に帯びた剣を外すとその使用人に渡した。

 その後、使用人がお座りくださいと勧めた会議テーブルの末席に4人が座ると、しばらくして奥の扉が開き、高貴な身なりの男が二人現れた。

 貫禄のある体格をした男が上座の席に座り、その横に三十代くらいの軟弱そうな男が座る。

 アスは、バルタザール卿とエロワ卿の顔は知らない。だが、多分二人がそうなのだろうと思った。

 遅れて、もう一人、見覚えのある顔が部屋に入ってきた。タラスだ。

 ジゼルがタラスを睨みつける。

 しかしタラスはそんな視線など全く意に介さず、笑みを浮かべてヴェルノ達に一度会釈をすると、バルタザールとエロワの二人を警護するような形でその二人の後ろに立った。

「さて、結の報告を聞こう」

 バルタザール卿の言葉にヴェルノは頷くとその場に立ち上がり、丁寧に頭を下げてから話を始めた。

「それでは、ジョフレ卿及びその従者に関する結の報告を始めます。まず依頼内容ですが・・・」

「無駄な話はいい。結果のみを報告せよ」

 バルタザール卿の冷たい言葉に場の緊張感が高まる。

「かしこまりました。ジョフレ卿と従者であるパウラ、エド、アグアイの計四名については、ロムトアで遺体を確認したため、その場で輝葬いたしました」

「うむ、遺品はそこに置いておけ。あとで回収する」

 自分の子供が死んだというのに淡白な対応を見せるバルタザール。

 貴族とはこんなに冷徹なものなのかとアスの心中は不快感で満たされていった。

「中身の確認はよいのですか?」

 ヴェルノが質問をしたところ、明らかにバルタザールの機嫌が悪くなった。

「勝手に話すことは禁ずる。初回だから許すが、次はない」

「かしこまりました」

「よし、それでオーべ、例の書類は?」

「・・・こちらになります」

 オーべは、鞄からコモラの角に関する保有と採取の許可証を取り出すと、なぜかジゼルの前に置いた。

「どういう意味だ、オーべ?」

 明らかに不満そうな低い声でバルタザールがオーべを睨む。

「申し訳ありません。今回の許可証を発行するにあたってヴィエルニ家から条件が出ておりまして・・・。今回の許可証はここにいるジゼルからエロワ卿に直接渡すようにと仰せつかっております」

「なに?なんでそんなことになる?」

「私如きにはヴィエルニ家の真意は計りかねますので・・・ご容赦を」

 もちろん、これはオーべの嘘だった。ジゼルにエロワを殴る機会を与えようと咄嗟に思いついた行動であった。

 だが、この条件の真正性をここで判断することはできないこともあって、バルタザールはやむなく条件を飲んだ。

 それで許可証が手に入るなら瑣末的なことという判断もあったのかも知れない。

「ふむぅ。よく分からんが致し方ないか。エロワ受け取りに行け」

 だが、エロワはジゼルを見つめるだけで立ち上がらない。

「どうした?早く行かんか」

 苛立つバルタザールの言葉を受けて、エロワは渋々と立ち上がるが、足は動かさず代わりに口を開く。

「そこもとの者はなぜ私を睨んでおる、受け取りを躊躇するではないか。やめよ」

 ジゼルはため息をついてから手元に置かれた紙を持って立ち上がり、エロワの方に歩き出した。
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