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第三章 受け継がれるもの
三幕 「誘い(いざない)の下降」 三
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ヴェルノが司令室に到着すると、部屋は兵士が慌ただしく出入りしており騒然となっていた。
ジェレルがヴェルノの姿に気付くと副官と思われる男にとりあえずの指揮を任せ、奥の部屋へ案内する。
部屋に入り扉を閉めるなり、ジェレルはヴェルノに確認する。
「この異常な圧はシオンの輝波に呼応したもので間違いないか?」
「ああ、間違いないだろう。シオンは先ほど目を覚ました」
ジェレルはため息まじりに椅子に腰掛ける。
「気付いているか?圧がどんどん強くなっていることを。多分黒フレアだろうが間違いなく近づいてきている」
「ああ、鳳が到着するまでなんとか持ち堪えられるか・・・」
先ほどの副官が、二人のいる部屋の扉を激しく開ける。
「東の監視塔より報告がありました!吹雪で視界が悪いものの壁外に黒フレアらしき影を確認したとのことです!」
「来たか。案外静かな登場だったな。・・・街全体に向けて魔禁の鐘を鳴らすよう各所に伝達、住民の避難は西だ。東の監視塔にいる兵士には息をひそめて黒フレアを変に刺激するなと伝えておけ。あと、俺は特務があるから以降の指揮は任せる」
副官の男は了解と敬礼してから命令を伝達するために部屋を出た。
程なくしてフレアの襲来を街全体に知らせるために魔禁の鐘が鳴り響き始める。
この鐘には、フレアに魔力を感知されて被害を受けないように一般住民の魔力使用を原則禁止するという意味も込められていた。
鐘の音が鳴るのを確認したジェレルは大きく息を吐いてからゆっくり立ち上がる。
「ここからは命懸けだ。ヴェルノ、ディオニージ様から魔錬刃は借りてきてるよな?」
「勿論だ」
そう言ってヴェルノは腰に帯びた剣をパンと一つ叩いた。
「久々の共闘だな。・・・ヴェルノ、無理はするなよ、あくまで俺たちは時間稼ぎでいいんだ」
「わかってる。お前こそ無理するなよ」
「よし!行くぅおお??」
ジェレルが喋り切る前に轟音が鳴り響く。同時に大きな衝撃が建物を大きく揺らした。
「なんだ!?」
すぐに司令室を出て、音が鳴った方に通路を駆けた二人は、目の前の現状に息を呑む。
建物の外壁が崩れて大きな穴が空いており、風通しの良くなった外壁からは吹雪が舞い込んでいた。
「・・・まるで砲撃を受けたような跡だな。魔操ではなさそうだが」
ジェレルが、穴の空いた外壁とは反対の内壁に視線を向けると、直径五十センチ程の白い球がめり込んでいた。
「これは一体なんだ?」
怪訝な顔でそれに近づこうとするジェレルをヴェルノが制す。
「ジェレル下がれ!輝波が出てる、その球はフレアだ!」
目の前の白い球が一気に膨張し、異常に発達した上半身を持つ歪な体躯をした白い巨体が姿を現した。
直後、轟音と共に建物が再び大きく揺れると、止むことなく次々と轟音と振動が続く。
このまま建物が崩壊するのではないかと思われる程の衝撃は七回目を最後にとりあえず収まった。
体勢を立て直す二人の目の前では、体を整形し終えたフレアが標的を探索するかのように周囲をゆっくり見回している。
その動作と顔の部分に刻まれた黒く歪な線で描かれた模様が相まった姿はこの上なく不気味であった。
その様子を見ながら、ジェレルとヴェルノがゆっくりと魔錬刃を抜刀する。
階下からは悲鳴も聞こえ始め、かすかにフレアという単語も聞こえた。
「・・・信じられんが、フレアを無理矢理丸めて投擲してきたようだな」
ヴェルノの頬を冷や汗が伝う。
「黒フレアはまだ四キロメートル先の壁外にいるんだぞ。そこから打ち込んできたっていうのか」
「黒フレアは膂力も凄まじいが、雷光系を除く全系統の魔操が使えるのも特徴だからな。重さを操る震重系の魔操で軽くした上で投げたんだと思う」
「だとすると七回揺れたから七体のフレアが投入された可能性があるということか?その上、黒フレアまで来ると。・・・さて、先手は取られてしまったし、著しく劣勢ということになるが、ここからどう巻き返すんだヴェルノ?」
「時間稼ぎが目的だろ?ならさっき地下で打ち合わせた通りだ。屋上に黒フレアをおびき寄せて、順次地下に退避していくルートが一番粘りやすい。白フレアまで相手にはしていられないから悪いがそっちは他の兵士に頑張ってもらおう」
「やはりそれしかないか。だがとりあえずは目の前のこいつだけは処理していかないとな」
ジェレルが魔錬刃に水氷系の魔力を込めると群青に染まり始める。
「ああ、さっさと片付けていくぞ」
同じくヴェルノも魔錬刃に熱火系の魔力を注ぐ。
ヴェルノの魔錬刃が深紅に染まり始めたところで魔力を感知した目の前のフレアが二人に襲いかかる。
大きく振り抜かれた拳をジェレルがすんでのところでかわし、そのままフレアの片足を切りつけた。魔錬刃の威力は凄まじく、その斬撃によってフレアの足は両断された。
片足を失い体勢を崩すフレア。その側面に回ったヴェルノが剣を横にして大きく振りかぶる。
「ぶっとべ!」
ヴェルノは、剣の腹を使って渾身の力でフレアを打ち抜くと同時に熱火の魔操を爆裂させた。
強烈な一撃はフレアを大きく吹き飛ばし、先ほど出来た外壁の穴から、その巨体を外に放り出した。
二人が今いる場所は地上五階。フレアはなす術もなく地上に向かって落下していき、程なくしてグシャっという小さくも不快な音が響いた。
「ははは、流石だな。外に吹っ飛ばすって発想はなかったよ」
「どうせすぐ再生するだろうが、とりあえずは余計な時間を省けてよかった。さあ、屋上へ急ごう」
外から魔禁の鐘がけたたましく鳴り響く中、二人は屋上に向かって足早に駆けて行った。
ジェレルがヴェルノの姿に気付くと副官と思われる男にとりあえずの指揮を任せ、奥の部屋へ案内する。
部屋に入り扉を閉めるなり、ジェレルはヴェルノに確認する。
「この異常な圧はシオンの輝波に呼応したもので間違いないか?」
「ああ、間違いないだろう。シオンは先ほど目を覚ました」
ジェレルはため息まじりに椅子に腰掛ける。
「気付いているか?圧がどんどん強くなっていることを。多分黒フレアだろうが間違いなく近づいてきている」
「ああ、鳳が到着するまでなんとか持ち堪えられるか・・・」
先ほどの副官が、二人のいる部屋の扉を激しく開ける。
「東の監視塔より報告がありました!吹雪で視界が悪いものの壁外に黒フレアらしき影を確認したとのことです!」
「来たか。案外静かな登場だったな。・・・街全体に向けて魔禁の鐘を鳴らすよう各所に伝達、住民の避難は西だ。東の監視塔にいる兵士には息をひそめて黒フレアを変に刺激するなと伝えておけ。あと、俺は特務があるから以降の指揮は任せる」
副官の男は了解と敬礼してから命令を伝達するために部屋を出た。
程なくしてフレアの襲来を街全体に知らせるために魔禁の鐘が鳴り響き始める。
この鐘には、フレアに魔力を感知されて被害を受けないように一般住民の魔力使用を原則禁止するという意味も込められていた。
鐘の音が鳴るのを確認したジェレルは大きく息を吐いてからゆっくり立ち上がる。
「ここからは命懸けだ。ヴェルノ、ディオニージ様から魔錬刃は借りてきてるよな?」
「勿論だ」
そう言ってヴェルノは腰に帯びた剣をパンと一つ叩いた。
「久々の共闘だな。・・・ヴェルノ、無理はするなよ、あくまで俺たちは時間稼ぎでいいんだ」
「わかってる。お前こそ無理するなよ」
「よし!行くぅおお??」
ジェレルが喋り切る前に轟音が鳴り響く。同時に大きな衝撃が建物を大きく揺らした。
「なんだ!?」
すぐに司令室を出て、音が鳴った方に通路を駆けた二人は、目の前の現状に息を呑む。
建物の外壁が崩れて大きな穴が空いており、風通しの良くなった外壁からは吹雪が舞い込んでいた。
「・・・まるで砲撃を受けたような跡だな。魔操ではなさそうだが」
ジェレルが、穴の空いた外壁とは反対の内壁に視線を向けると、直径五十センチ程の白い球がめり込んでいた。
「これは一体なんだ?」
怪訝な顔でそれに近づこうとするジェレルをヴェルノが制す。
「ジェレル下がれ!輝波が出てる、その球はフレアだ!」
目の前の白い球が一気に膨張し、異常に発達した上半身を持つ歪な体躯をした白い巨体が姿を現した。
直後、轟音と共に建物が再び大きく揺れると、止むことなく次々と轟音と振動が続く。
このまま建物が崩壊するのではないかと思われる程の衝撃は七回目を最後にとりあえず収まった。
体勢を立て直す二人の目の前では、体を整形し終えたフレアが標的を探索するかのように周囲をゆっくり見回している。
その動作と顔の部分に刻まれた黒く歪な線で描かれた模様が相まった姿はこの上なく不気味であった。
その様子を見ながら、ジェレルとヴェルノがゆっくりと魔錬刃を抜刀する。
階下からは悲鳴も聞こえ始め、かすかにフレアという単語も聞こえた。
「・・・信じられんが、フレアを無理矢理丸めて投擲してきたようだな」
ヴェルノの頬を冷や汗が伝う。
「黒フレアはまだ四キロメートル先の壁外にいるんだぞ。そこから打ち込んできたっていうのか」
「黒フレアは膂力も凄まじいが、雷光系を除く全系統の魔操が使えるのも特徴だからな。重さを操る震重系の魔操で軽くした上で投げたんだと思う」
「だとすると七回揺れたから七体のフレアが投入された可能性があるということか?その上、黒フレアまで来ると。・・・さて、先手は取られてしまったし、著しく劣勢ということになるが、ここからどう巻き返すんだヴェルノ?」
「時間稼ぎが目的だろ?ならさっき地下で打ち合わせた通りだ。屋上に黒フレアをおびき寄せて、順次地下に退避していくルートが一番粘りやすい。白フレアまで相手にはしていられないから悪いがそっちは他の兵士に頑張ってもらおう」
「やはりそれしかないか。だがとりあえずは目の前のこいつだけは処理していかないとな」
ジェレルが魔錬刃に水氷系の魔力を込めると群青に染まり始める。
「ああ、さっさと片付けていくぞ」
同じくヴェルノも魔錬刃に熱火系の魔力を注ぐ。
ヴェルノの魔錬刃が深紅に染まり始めたところで魔力を感知した目の前のフレアが二人に襲いかかる。
大きく振り抜かれた拳をジェレルがすんでのところでかわし、そのままフレアの片足を切りつけた。魔錬刃の威力は凄まじく、その斬撃によってフレアの足は両断された。
片足を失い体勢を崩すフレア。その側面に回ったヴェルノが剣を横にして大きく振りかぶる。
「ぶっとべ!」
ヴェルノは、剣の腹を使って渾身の力でフレアを打ち抜くと同時に熱火の魔操を爆裂させた。
強烈な一撃はフレアを大きく吹き飛ばし、先ほど出来た外壁の穴から、その巨体を外に放り出した。
二人が今いる場所は地上五階。フレアはなす術もなく地上に向かって落下していき、程なくしてグシャっという小さくも不快な音が響いた。
「ははは、流石だな。外に吹っ飛ばすって発想はなかったよ」
「どうせすぐ再生するだろうが、とりあえずは余計な時間を省けてよかった。さあ、屋上へ急ごう」
外から魔禁の鐘がけたたましく鳴り響く中、二人は屋上に向かって足早に駆けて行った。
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