命導の鴉

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第三章 受け継がれるもの

四幕 「赤の閃光」 四

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 ヴェルノとジェレルが加勢したことで、一気に形勢は逆転した。

 ヴェルノが床にエラルを寝かせると、そこから二人は残っていた魔力を込めた魔錬刃で先ずエラルを攻撃したフレアを切り刻む。

 二人の連携は見事なもので、あっという間にフレアの核が露出する。

 そこで二人の魔力は切れるが、すぐにヴェルノがエラルの魔力が充填された魔錬刃に持ち替えて核を両断する。

 続いて、アスの目の前にいたフレアの処理にあたる。ヴェルノがエラルの魔錬刃で戦っている間にジェレルがディオニージの魔錬刃を借り、すぐフォローに入る。

 一体目と同じように二人で切り刻み一気に核を露出させると、今度はジェレルが核を両断した。

「ふぅ、なんとか片付いたな」

 核を失ったフレアの肉体が光の粒子となり霧散する中、ヴェルノが魔力切れで輝きを失った剣を地面に突き立てる。

「まぁ、ヴェルノと俺が組めば造作もないことだな」

「・・・偉そうに。お前、フレアの核を両断するのに三回も切ってたじゃないか。腕落ちすぎだろ」

「いやいや、片腕折れてんだぞ俺は!?」

「油断して真っ先に腕折られるからだろ?まぁ俺なら片腕折れてても一回で切れるけどな」

「いやいや、そういうヴェルノだって魔力の出力が昔より安定していなかったからギリギリだったんじゃないか?」

「そりゃ全盛期と比べれば、それなりに腕は落ちてるがジェレル程じゃないさ。・・・まぁ与太話はそれ位にして」

 アスの下にヴェルノがゆっくり歩を進める。

「大分怪我してるな。すまん、もう少し早く到着できればこんなことには・・・」

 傷だらけで涙を浮かべるアスを見つめてヴェルノが申し訳ないと頭を下げた。

「ううん、僕は大丈夫だけどフォンセさんとエラルが・・・」

「エラルは多分、大丈夫だ。気を失ってはいるが見たところ致命傷は受けていなかったからな。フォンセも今ジェレルが診てくれる。ああ見えてジェレルは医療の知識も豊富だからなんとかしてくれるだろう。さぁアスも力を抜いて」

 そう言ってヴェルノが剣を握りしめるアスの手を優しく撫でた。

 その手から力が抜け、剣がするりと床に落ち無機質な金属音が広間に響く。

 それと同時に緊張状態から解放されたアスはその場にヘナヘナと座り込んだ。

「こんなとこだ。出来ることは限られるが少しでも手当てしておこう。えーっと」

 ヴェルノが辺りを見回すとシオンが鞄を持って近寄ってきた。

「応急用の救護セットが入ってますので使ってください」

「・・・ああ、ありがとうシオン。君は大丈夫なのか?」

 包帯の他、必要な資材を鞄から取り出しながらヴェルノが問いかけるとシオンは無言でコクンと頷く。

「そうか、よかった。すまないがエラルの手当てをお願いできるか?致命傷はないとはいえ、それなりに傷は負っているからな」

 シオンはわかりましたともう一度頷き、ヴェルノから渡された鞄を持ってエラルの方に向かった。

 その様子を見送ってから、ヴェルノはアスの手当てを始めると、声をひそめるようにアスに尋ねた。

「・・・ここへ来る途中、シオンの強烈な輝波を感じた。何かあったか?」

「いや特には・・・」

 そこまで言ってからアスはふと思い出したことがあり、それをヴェルノに伝えた。

「戦っている最中だったから気付かなかっただけかもしれないけど、シオンが物凄い魔操を放ったタイミングがあったんだ。もしかしたらその時かも。それにピアスについた黒い石から放たれる熱火、水氷、風音の三系統の魔力を操ってた」

 手当てを続けるヴェルノの眉間に皺がよる。

「輝波を放ち、更には熱火、水氷、風音も操るのか。まるでフレアだな」

「でも、僕たちを守ってくれた。・・・フレアとは違うよ」

 確かにシオンの特徴はヴェルノが言った通りフレアのそれとなんら変わりがない。それはアスも感じていたことではあった。

 それでも共に戦ったシオンをフレアと同じとして一括りにしてしまうようなヴェルノの言葉が嫌でアスは明確に否定した。

 いや、正確にはヴェルノを否定したかったというよりもそう思ってしまう自分の心を何とか否定したいという気持ちが強かったのかもしれない。

「そうだな。だが、本人が認知していないだけで何らかの関係性があると考える方が自然だろう。少なくとも特異な体質であることには違いないしな」

「うん・・・」

 なんらかの関係性がある、その言葉にアスは反論することができずにただ俯いた。

 フレアがシオンを襲うときに敵意を感じなかったことからもそれは薄々感じていたことだったからだ。

 しかし、そのことをヴェルノに伝えたとて何になるわけでもないと思ったアスは言葉を飲み込み、その後は黙って手当てを受けた。

「よし、これでいいだろう。足も痛めているみたいだから、これ以上の無理は禁物だぞ」

 ヴェルノはニッコリ微笑んでアスの頭をポンポンと優しく叩いてから、立ち上がる。

 そして、フォンセの治療状況を遠目に窺うと、様子を見てくると言ってその場を離れていった。

 残されたアスは、少し離れたところで横たわっているエラルの方に視線を向ける。

 その目には慣れない手つきで四苦八苦しながら手当てをしているシオンの姿が映った。

「フレアと同じ特性を持つ・・・か」

 その健気な姿からはフレアという悪意の塊を連想することは至極困難なものに思えた。

 アスは体に負担をかけないように注意しながらその場にゆっくり立ち上がると、シオンを手伝うために痛めた足を引きずりながら二人の方へ歩を進めた。
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