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第四章 星天燃ゆる雪の都
二幕 「鴉の品格 前」 一
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王都を出て七日目の正午頃、大陸西方の街道を北上していたアス達一行は予定通りルフェコの街に入った。
ルフェコは西の都メルウルハと雪の都ユフムダルを結ぶ街道の丁度中間に位置していることもあって旅人や商人の往来も多く、中核都市の一つとしてかなり発展している。
南門から街に入ったアス達は本日の宿を探すため、そのまま南門から続く本通りを使って、町人や商人の喧騒で賑わう街中を進んだ。
ルフェコからユフムダルまでは十日程度かかる見込みであり、途中には小さな旅憩所しかないことも事前に把握していたため、一行はこの街に二日間滞在してしっかりと英気を養う予定でいた。
「すごい活気だな。いつもこんな感じなのかな」
「ほんとね、なんかすごい活力を感じる」
初めてルフェコに来たエラルとシオンは物珍しそうに好奇の目でキョロキョロと街や往来する人達を見回す。
「僕が前にお父さんと立ち寄った時はもう少し人が少なくて静かだったよ。多分時期的なものもあるんじゃないかな。ルフェコから北側の街道は冬季の間、積雪によって一部区間が通行止めになるから、その通行止めが解除される春は特に人の往来が多くなるんだと思う」
「なるほどなぁ。・・・あれ?、アスあそこなんだろ?人が大勢集まってる」
本通りに面した広場に人集りを見つけたエラルは興味津々といった様子で駆け出した。
「ちょっとエラル!急に駆け出すと人にぶつかるよ・・・、もう!」
注意の言葉などどこ吹く風といった様子でさっさと広場に向かうエラルの後ろ姿を見ながら、シオンは腰に手を当てて小さくため息を吐く。
その二人の姿を見てアスは笑みを浮かべた。
「初めての街だし色々気になって浮き足立つのはしょうがないよ。特にエラルは体が先に動くタイプだからね」
「まぁそうなんだけど。でも、もう少し落ち着いた行動をしてほしいな」
「そうだね。でもあの向こう見ずな感じってエラルのいいところだと思うよ」
「うーん、そうかなぁ」
シオンは眉をひそめながら腕組みをして首を傾げる。
「ふふふ。とりあえず僕も何の集まりか気になるし一緒に行ってみようよ」
「うん、そだね」
アスがエラルの向かった人集りに向かって歩き始めると、シオンも腕組みを解いてその後ろを追った。
人集りの最後列にアスとシオンが並ぶ。その中央には軽装の兵士が二名立っていた。
丁度これから手に持った紙を読み上げるところだったようで、軽く咳払いをしている。
先に行ったエラルはちゃっかりと最前列まで潜り込んでいた。
「・・・流石だね」
「ほんとに」
エラルを見て二人が苦笑いをする中、兵士の話が始まる。
「我々はユフムダル兵である。つい先日、ユフムダルのオグルスピア城に二名の侵入者があった。一名はその場で捕らえたがもう一名は逃亡し、その消息が分かっていない。目下捜索中ではあるがユフムダル近郊では発見に至らなかったため、この度捜索範囲を広げることとなった。ついては、もし今から言う特徴に合致した人物を発見したら速やかに軍部施設に報告をお願いしたい。特徴は長身で痩せ型、髪の色は銀髪で隻腕の男だ。住民達に手数をかけることは心苦しく思うが是非とも協力を賜りたい。なお、本件はルフェコにおいて、しばらくの間広報を続ける予定ではあるが皆も周りの知り合いに情報を伝達していただきたい。以上だ!」
話を終えた兵士は読み上げた紙をしまうとそそくさとその場を後にする。
次の広場に行くぞという声も聞こえたため、おそらくルフェコ内の色々な場所で今の話をするつもりなのだろう。
兵士の話が終わった後、集まった人々は知り合い同士で小さくまとまり今の話についてあれやこれやと話し込んでいたが程なくして散会を始め、そのタイミングで最前列にいたエラルもアスとシオンの下に戻ってきた。
「なんか物騒な話だったね」
シオンが不安気な表情で呟く。
「うん、そういえば少し前に東の都ブロエーラルでも似たようなことがあって大騒ぎになってたね。もしかしたら同一犯かも」
「何が目的なんだか・・・。それにしてもオグルスピアに侵入って相当だよな。ユフムダルは王都に匹敵する軍事力を持つ都だってのに」
「そうだね。それでも一名逃げられたって話だから相当の実力者なのかも。とりあえず、さっきの話にあった銀髪で隻腕の男には僕達も注意しよう」
「うん」
「そだな」
三人は互いに頷きあった後、宿探しを再開するため、広場を背に本通りに向かって歩き始めた。
「もし、お若いの」
広場を出かかったところで、背後から三人を呼び止める声がかかる。
三人が振り返るとそこには年老いた男性が緊張した面持ちで立っていた。
老人は振り返ったアスの瞳をまじまじと見つめる。
「やはり青い目をされておられる。失礼ですが輝葬師様であられますか?」
「あ、はい。・・・輝葬師のアスといいます」
まだ輝葬師と名乗ることに慣れないアスは少し戸惑った様子で返答した。
「おお!やはりそうでしたか。私はユージャ村のクレムと申します。一つ相談したいことがありまして、少し私の話に時間を割いていただけませんか?」
「えっと・・・」
アスは申し出を受けてもいいかを確認するためにエラルとシオンの方に目線を向ける。
二人がにこやかに頷きを返したことを受けてアスは再びクレムに目線を向けた。
「いいですよ。お話を聞かせてください」
アスが柔らかい口調で快諾したことに安堵したのか、クレムはホッとした様子で頭を下げて話を始めた。
ルフェコは西の都メルウルハと雪の都ユフムダルを結ぶ街道の丁度中間に位置していることもあって旅人や商人の往来も多く、中核都市の一つとしてかなり発展している。
南門から街に入ったアス達は本日の宿を探すため、そのまま南門から続く本通りを使って、町人や商人の喧騒で賑わう街中を進んだ。
ルフェコからユフムダルまでは十日程度かかる見込みであり、途中には小さな旅憩所しかないことも事前に把握していたため、一行はこの街に二日間滞在してしっかりと英気を養う予定でいた。
「すごい活気だな。いつもこんな感じなのかな」
「ほんとね、なんかすごい活力を感じる」
初めてルフェコに来たエラルとシオンは物珍しそうに好奇の目でキョロキョロと街や往来する人達を見回す。
「僕が前にお父さんと立ち寄った時はもう少し人が少なくて静かだったよ。多分時期的なものもあるんじゃないかな。ルフェコから北側の街道は冬季の間、積雪によって一部区間が通行止めになるから、その通行止めが解除される春は特に人の往来が多くなるんだと思う」
「なるほどなぁ。・・・あれ?、アスあそこなんだろ?人が大勢集まってる」
本通りに面した広場に人集りを見つけたエラルは興味津々といった様子で駆け出した。
「ちょっとエラル!急に駆け出すと人にぶつかるよ・・・、もう!」
注意の言葉などどこ吹く風といった様子でさっさと広場に向かうエラルの後ろ姿を見ながら、シオンは腰に手を当てて小さくため息を吐く。
その二人の姿を見てアスは笑みを浮かべた。
「初めての街だし色々気になって浮き足立つのはしょうがないよ。特にエラルは体が先に動くタイプだからね」
「まぁそうなんだけど。でも、もう少し落ち着いた行動をしてほしいな」
「そうだね。でもあの向こう見ずな感じってエラルのいいところだと思うよ」
「うーん、そうかなぁ」
シオンは眉をひそめながら腕組みをして首を傾げる。
「ふふふ。とりあえず僕も何の集まりか気になるし一緒に行ってみようよ」
「うん、そだね」
アスがエラルの向かった人集りに向かって歩き始めると、シオンも腕組みを解いてその後ろを追った。
人集りの最後列にアスとシオンが並ぶ。その中央には軽装の兵士が二名立っていた。
丁度これから手に持った紙を読み上げるところだったようで、軽く咳払いをしている。
先に行ったエラルはちゃっかりと最前列まで潜り込んでいた。
「・・・流石だね」
「ほんとに」
エラルを見て二人が苦笑いをする中、兵士の話が始まる。
「我々はユフムダル兵である。つい先日、ユフムダルのオグルスピア城に二名の侵入者があった。一名はその場で捕らえたがもう一名は逃亡し、その消息が分かっていない。目下捜索中ではあるがユフムダル近郊では発見に至らなかったため、この度捜索範囲を広げることとなった。ついては、もし今から言う特徴に合致した人物を発見したら速やかに軍部施設に報告をお願いしたい。特徴は長身で痩せ型、髪の色は銀髪で隻腕の男だ。住民達に手数をかけることは心苦しく思うが是非とも協力を賜りたい。なお、本件はルフェコにおいて、しばらくの間広報を続ける予定ではあるが皆も周りの知り合いに情報を伝達していただきたい。以上だ!」
話を終えた兵士は読み上げた紙をしまうとそそくさとその場を後にする。
次の広場に行くぞという声も聞こえたため、おそらくルフェコ内の色々な場所で今の話をするつもりなのだろう。
兵士の話が終わった後、集まった人々は知り合い同士で小さくまとまり今の話についてあれやこれやと話し込んでいたが程なくして散会を始め、そのタイミングで最前列にいたエラルもアスとシオンの下に戻ってきた。
「なんか物騒な話だったね」
シオンが不安気な表情で呟く。
「うん、そういえば少し前に東の都ブロエーラルでも似たようなことがあって大騒ぎになってたね。もしかしたら同一犯かも」
「何が目的なんだか・・・。それにしてもオグルスピアに侵入って相当だよな。ユフムダルは王都に匹敵する軍事力を持つ都だってのに」
「そうだね。それでも一名逃げられたって話だから相当の実力者なのかも。とりあえず、さっきの話にあった銀髪で隻腕の男には僕達も注意しよう」
「うん」
「そだな」
三人は互いに頷きあった後、宿探しを再開するため、広場を背に本通りに向かって歩き始めた。
「もし、お若いの」
広場を出かかったところで、背後から三人を呼び止める声がかかる。
三人が振り返るとそこには年老いた男性が緊張した面持ちで立っていた。
老人は振り返ったアスの瞳をまじまじと見つめる。
「やはり青い目をされておられる。失礼ですが輝葬師様であられますか?」
「あ、はい。・・・輝葬師のアスといいます」
まだ輝葬師と名乗ることに慣れないアスは少し戸惑った様子で返答した。
「おお!やはりそうでしたか。私はユージャ村のクレムと申します。一つ相談したいことがありまして、少し私の話に時間を割いていただけませんか?」
「えっと・・・」
アスは申し出を受けてもいいかを確認するためにエラルとシオンの方に目線を向ける。
二人がにこやかに頷きを返したことを受けてアスは再びクレムに目線を向けた。
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