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第四章 星天燃ゆる雪の都
四幕 「星喰の片鱗」 三
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最北の旅憩所を出立してから四日目。天候は一気に崩れ、アス達の進路を猛吹雪が阻む。
この辺りまでくると積雪もひどく、猛吹雪と相まって一歩進むだけでも難儀な状態であった。
「アス!この吹雪じゃ方角もよく分からないしこれ以上進むのは危険だ。どこかに拠点を構えて吹雪をやりすごさないか!?」
「そうだね。とはいってもどこに拠点を設けるか・・・。近くに避難用の小屋があればありがたいんだけど・・・」
ゼラモリーザへの道は険しいこともあって、国が所々に巡礼者が悪天候時に避難するための簡素な小屋を設けているのだ。しかし視界が悪くその小屋を探すことも困難な状況であった。
「どうする?私とエラルの熱火魔操で爆発を起こして穴を掘ればそれなりに風を凌げる場所は作れるけど・・・」
「いや、それは最後の手段にしよう。こんなところで大きな振動を起こすと雪崩を引き起こすかもしれないし」
「アス!あっちにうっすらとだけど数本の木が見える。もしかして森があるんじゃないか?」
「ほんと!?森に入れば少しは吹雪が凌げるかもしれないね。そっちに行ってみよう!」
エラルが見つけた木の方に進むとやがて多数の木々が見えてきた。
「ありがたい、常緑樹の森だ」
一行が森の中に入ってからも吹き抜ける風は変わらずに冷たく強かったが、降雪が木に阻まれたこともあって、かなり状況は緩和された。
「うう、寒い。さっきよりは歩きやすくなったけど、それでもそろそろ限界だぞ。もう少し進んで小屋がなければさっき言った最終手段をとろうぜ」
「そうだね。木がある分、さっきよりは雪崩の危険も少ないだろうしね。それに森に入ったことで、間違いなく正規の道をそれたから、小屋が見つかる可能性も多分低いと思う。もう少し進んだら拠点を作ろう」
「了解だ。・・・げっ」
エラルが前方にいる生物に気がついて顔をしかめた。そこには一頭の白い毛で覆われた狼がおり、こちらの様子をじっと伺っていた。
「・・・ホワイトウルフ!しまった、ここはホワイトウルフの縄張りだったか!」
アスが咄嗟に腰の剣へと手を伸ばす。その際に僅かに殺気が漏れてしまったようで、その殺気に刺激された前方のホワイトウルフは耳をつんざくような大きな遠吠えをあげた。
「もしかして仲間を呼んだんじゃないのか!?」
「ごめん、刺激してしまったみたい。エラル、シオン、周囲に警戒して!」
アスが辺りを見回すと次第にホワイトウルフが集まり始めてきた。その数は二十を超える。
その内の一匹が牙を剥いて猛然とエラルに突進してきた。
「うおっ!」
雪に足を取られたエラルは体勢を崩しながらもなんとかその一撃を回避する。
「くそ、足場が悪すぎる。おまけに手がかじかんで上手く剣が握れないし、このまま一斉に来られたらかなりきついぞ」
「シオン!周囲に炎の壁を作って!」
「了解!」
シオンが炎の壁を展開すると一気に一帯に積もった雪が溶け始めた。
「この火を見て去ってくれればいいけど・・・」
アスの淡い期待とは裏腹に、周囲を取り囲んだホワイトウルフの戦意は削がれることはなく、低く唸るような鳴き声で更にアス達を威嚇してきた。
「しょうがないか・・・。シオン、僕達の足元の雪が溶け切ったら魔操を解いていいよ。エラルは今のうちに手を温めておいて」
「やるのか?」
「うん、攻撃してくる者だけを斬り払おう。僕達の実力を見せつけることで戦意を喪失させたい。・・・本当は群れのリーダーを叩くのが一番効果的なんだろうけど、こっちから攻撃するには足場が悪すぎるし、そもそもどの狼がリーダーかも分からないからね」
「数体は殺すことになるな・・・」
「うん・・・」
アスとエラルがゆっくりと抜刀する。その切先には迷いがこもっていた。
「小童!それじゃ生温いぞ!!」
突如、怒声が響き渡るとホワイトウルフだけでなくアス達も飲み込む程の恐ろしく強大な殺気が一帯を支配した。
「なんだ、この殺気は!?」
アス達が反応してその殺気が放たれる方向に視線を向ける。そこには白い魔力のモヤに包まれながら拳を構える一人の老人が立っていた。
「やると決めたら全部殺す覚悟で臨め!」
強烈な殺気にホワイトウルフの群れが後退りを始める。
「喝!!」
老人が大地を揺るがす程の大声を発して更に練り込まれた殺気を解き放つと、ホワイトウルフの群れは怯えるような甲高い鳴き声を発して四散した。
「ふむ、他愛も無い」
ホワイトウルフが退散したことを確認した老人はまとった白い魔力を解放すると、呆気に取られるアス達に悠々と歩み寄る。
「怪我はなさそうじゃな」
「あ、ありがとうございました。あの、貴方は?」
剣を鞘に納めながらアスが尋ねると老人は顎鬚をさすりながらニッコリ微笑んだ。
「わしは光武のモードレッドじゃ」
その名にアス達は目を丸くした。それは誰もが知る有名な人物の名だったからだ。
「うそ!?」
「モードレッドって、光武で拳聖と呼ばれているあのモードレッドか!?」
「・・・その通りではあるが、年長者を呼び捨てるのはあまり感心せんな」
「うっ、すみません」
エラルはバツの悪そうな顔をして頭を下げた。
「ふふ、まぁよい。それで、お主達は何者じゃ?なぜこんなところに?」
「僕は輝葬師のアスといいます。後の二人は衛士でエラルとシオンです。ゼラモリーザを目指していたんですが、突然の悪天候に襲われてやむなくこの森に避難したところです」
「そうか。それで不用意にホワイトウルフの縄張りに入ってしまったというわけか」
「はい・・・。モードレッド様はなぜここに?」
「わしも一緒じゃよ。ゼラモリーザを目指していて・・・、いや話は後にしよう。この先に建物があるからそこまでとりあえず行かんか?」
「もしかして避難用の小屋があるのか!行くよ!すぐ行く!」
エラルが嬉々とした声を上げる。
「うむ。っとその前に、悪いがお主ら、先程わしがいたあたりに散らばっている木の枝を集めてくれんか。建物で暖を取るために使おうかと集めていたんじゃがお主らを助ける際に放ってしまったからな」
「お安いご用だ!とっとと集めて小屋に行こうぜ!」
「ほっほっほ、元気な童じゃな」
それからアス達はすぐに木の枝を回収すると、モードレッドの案内に従って避難用の小屋に向かった。
この辺りまでくると積雪もひどく、猛吹雪と相まって一歩進むだけでも難儀な状態であった。
「アス!この吹雪じゃ方角もよく分からないしこれ以上進むのは危険だ。どこかに拠点を構えて吹雪をやりすごさないか!?」
「そうだね。とはいってもどこに拠点を設けるか・・・。近くに避難用の小屋があればありがたいんだけど・・・」
ゼラモリーザへの道は険しいこともあって、国が所々に巡礼者が悪天候時に避難するための簡素な小屋を設けているのだ。しかし視界が悪くその小屋を探すことも困難な状況であった。
「どうする?私とエラルの熱火魔操で爆発を起こして穴を掘ればそれなりに風を凌げる場所は作れるけど・・・」
「いや、それは最後の手段にしよう。こんなところで大きな振動を起こすと雪崩を引き起こすかもしれないし」
「アス!あっちにうっすらとだけど数本の木が見える。もしかして森があるんじゃないか?」
「ほんと!?森に入れば少しは吹雪が凌げるかもしれないね。そっちに行ってみよう!」
エラルが見つけた木の方に進むとやがて多数の木々が見えてきた。
「ありがたい、常緑樹の森だ」
一行が森の中に入ってからも吹き抜ける風は変わらずに冷たく強かったが、降雪が木に阻まれたこともあって、かなり状況は緩和された。
「うう、寒い。さっきよりは歩きやすくなったけど、それでもそろそろ限界だぞ。もう少し進んで小屋がなければさっき言った最終手段をとろうぜ」
「そうだね。木がある分、さっきよりは雪崩の危険も少ないだろうしね。それに森に入ったことで、間違いなく正規の道をそれたから、小屋が見つかる可能性も多分低いと思う。もう少し進んだら拠点を作ろう」
「了解だ。・・・げっ」
エラルが前方にいる生物に気がついて顔をしかめた。そこには一頭の白い毛で覆われた狼がおり、こちらの様子をじっと伺っていた。
「・・・ホワイトウルフ!しまった、ここはホワイトウルフの縄張りだったか!」
アスが咄嗟に腰の剣へと手を伸ばす。その際に僅かに殺気が漏れてしまったようで、その殺気に刺激された前方のホワイトウルフは耳をつんざくような大きな遠吠えをあげた。
「もしかして仲間を呼んだんじゃないのか!?」
「ごめん、刺激してしまったみたい。エラル、シオン、周囲に警戒して!」
アスが辺りを見回すと次第にホワイトウルフが集まり始めてきた。その数は二十を超える。
その内の一匹が牙を剥いて猛然とエラルに突進してきた。
「うおっ!」
雪に足を取られたエラルは体勢を崩しながらもなんとかその一撃を回避する。
「くそ、足場が悪すぎる。おまけに手がかじかんで上手く剣が握れないし、このまま一斉に来られたらかなりきついぞ」
「シオン!周囲に炎の壁を作って!」
「了解!」
シオンが炎の壁を展開すると一気に一帯に積もった雪が溶け始めた。
「この火を見て去ってくれればいいけど・・・」
アスの淡い期待とは裏腹に、周囲を取り囲んだホワイトウルフの戦意は削がれることはなく、低く唸るような鳴き声で更にアス達を威嚇してきた。
「しょうがないか・・・。シオン、僕達の足元の雪が溶け切ったら魔操を解いていいよ。エラルは今のうちに手を温めておいて」
「やるのか?」
「うん、攻撃してくる者だけを斬り払おう。僕達の実力を見せつけることで戦意を喪失させたい。・・・本当は群れのリーダーを叩くのが一番効果的なんだろうけど、こっちから攻撃するには足場が悪すぎるし、そもそもどの狼がリーダーかも分からないからね」
「数体は殺すことになるな・・・」
「うん・・・」
アスとエラルがゆっくりと抜刀する。その切先には迷いがこもっていた。
「小童!それじゃ生温いぞ!!」
突如、怒声が響き渡るとホワイトウルフだけでなくアス達も飲み込む程の恐ろしく強大な殺気が一帯を支配した。
「なんだ、この殺気は!?」
アス達が反応してその殺気が放たれる方向に視線を向ける。そこには白い魔力のモヤに包まれながら拳を構える一人の老人が立っていた。
「やると決めたら全部殺す覚悟で臨め!」
強烈な殺気にホワイトウルフの群れが後退りを始める。
「喝!!」
老人が大地を揺るがす程の大声を発して更に練り込まれた殺気を解き放つと、ホワイトウルフの群れは怯えるような甲高い鳴き声を発して四散した。
「ふむ、他愛も無い」
ホワイトウルフが退散したことを確認した老人はまとった白い魔力を解放すると、呆気に取られるアス達に悠々と歩み寄る。
「怪我はなさそうじゃな」
「あ、ありがとうございました。あの、貴方は?」
剣を鞘に納めながらアスが尋ねると老人は顎鬚をさすりながらニッコリ微笑んだ。
「わしは光武のモードレッドじゃ」
その名にアス達は目を丸くした。それは誰もが知る有名な人物の名だったからだ。
「うそ!?」
「モードレッドって、光武で拳聖と呼ばれているあのモードレッドか!?」
「・・・その通りではあるが、年長者を呼び捨てるのはあまり感心せんな」
「うっ、すみません」
エラルはバツの悪そうな顔をして頭を下げた。
「ふふ、まぁよい。それで、お主達は何者じゃ?なぜこんなところに?」
「僕は輝葬師のアスといいます。後の二人は衛士でエラルとシオンです。ゼラモリーザを目指していたんですが、突然の悪天候に襲われてやむなくこの森に避難したところです」
「そうか。それで不用意にホワイトウルフの縄張りに入ってしまったというわけか」
「はい・・・。モードレッド様はなぜここに?」
「わしも一緒じゃよ。ゼラモリーザを目指していて・・・、いや話は後にしよう。この先に建物があるからそこまでとりあえず行かんか?」
「もしかして避難用の小屋があるのか!行くよ!すぐ行く!」
エラルが嬉々とした声を上げる。
「うむ。っとその前に、悪いがお主ら、先程わしがいたあたりに散らばっている木の枝を集めてくれんか。建物で暖を取るために使おうかと集めていたんじゃがお主らを助ける際に放ってしまったからな」
「お安いご用だ!とっとと集めて小屋に行こうぜ!」
「ほっほっほ、元気な童じゃな」
それからアス達はすぐに木の枝を回収すると、モードレッドの案内に従って避難用の小屋に向かった。
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