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第四章 星天燃ゆる雪の都
五幕 「邂逅」 四
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「まず前提だが、今から言う要望を聞いてくれれば、俺たちはお前達に危害を与えないことを約束しよう」
つい先程、アスたちを始末するといった敵意剥き出しの発言がビセンテからあったばかりなので、その言葉が本当なのか疑わしいところではあったが、アスたちを睨むビセンテが不本意そうに舌打ちをしているため、少なくともその発言は嘘ではないように思われた。
「要望とはなんだ?」
リアスの真意を計りかねるアスは眉をひそめながら慎重に尋ねる。
「ああ、一つ目は輝葬の依頼だ。っと、誤解のないように言っておくが対象者はお前の姉じゃないから安心してくれ。そして二つ目はシクステンの剣を返してほしいというもの、三つ目はこのホゾの道を荒らさないようにすること、四つ目はしばらくユフムダルへ近づかないこと、以上になるがどうだろうか?」
「それだけか?」
「ああ、そうだ」
何の準備もなく敵拠点に引き込まれてしまったアスたちに対して、圧倒的有利な立場にあるリアスがわざわざ場を設けてまで提示した要望として考えれば、それはあまりにも容易な内容であり、かなりの不自然さを感じさせた。
それに要望の内容もおかしい。アスがその点を指摘しようとする前に、モードレッドが先に口を開いた。
「ふむう、一つ目は要望として分からんでもないが、他の三つは不可解じゃな。わしらを殺せば解決しそうなものじゃろうに。ちなみに要望を聞かないとどうなるんじゃ?」
「その時は不本意だが力づくで聞いてもらうことになる」
「ほっほ、それでは要望と言いつつも、脅迫と変わらんな」
「そんなに難しいことを要求しているつもりはないんだがな。命を天秤にかけるほどのことでもないだろう?」
「まぁそうじゃな。さてどうするかのう」
モードレッドは顎髭をさすりながらアスに視線を向けた。
「・・・輝葬は構わない。だが、お姉ちゃんを返してもらうことが条件だ」
アスは机の上で手を組んで鋭い視線をリアスに向ける。だが、対するリアスはゆっくりと首を横に振った。
「今は駄目だ。・・・だが、悪く思わないでほしい。これは俺の意思ではなく、ジゼル自身が拒んでいるからなんだ」
「ふざけるな!そんなわけないだろう!」
怒声と共に机を叩いて立ち上がるアスを、リアスは動じることなくじっと見つめる。
「あまり詳しく話すことは出来ないが、ジゼルは今、とある理由でお前たちアリオンに強い敵対感情を有する状態となっている。この状態でお前に会えばどのような行動をとってしまうか分からないからということで、ジゼルはお前に会うことを避けているんだよ」
「そんな戯言を僕が信じると思うのか!?」
「まぁ確かに難しいだろうな。だが、冒頭お前たちに危害を与えるつもりがないと言ったのが、父と弟には手を出さないでほしいというお前の姉、ジゼルの想いを尊重してのものだとすればどうだろうか?ジゼルが会わないと言っていることが嘘ではないことの証明にはならないだろうが、少なくとも俺がジゼルの想いに誠実な対応をしているのだということは汲み取ってもらえると思うが?」
「そんなこと・・・」
否定しようとしたアスであったが、すぐに言葉に詰まる。そう言われると、確かにリアスがアスたちに配慮している理由が他に思い浮かばなかったからである。
「お前が思っている以上に俺たちはジゼルのことを大切にしているんだよ。そしてジゼルが大切にしているお前のこともな、アス。・・・いずれ会える機会を作るつもりだから、今は耐えてほしい」
リアスが慈しむような口調で優しくアスのことを諭す中、否定も反論もできないアスは、顔をしかめながら目線を落とし力無く椅子に座り込んだ。
そのまま黙り込んでしまったアスの様子を見て、モードレッドが大きく息を吐く。
「アスさんは少し休みなさい。ここからはわしが話を引き取ろう。よいな?」
「・・・はい」
モードレッドは意気消沈したアスの肩をポンポンと叩くと再びリアスに視線を向けた。
「では、そうじゃのう。そちらの要望に応える代わりにこちらからの質問に答えてもらおうか。お主も要望という柔らかい言葉を使った以上、そのくらいのことは構わんじゃろう?」
「確かにその方が話し合いっぽくなるか。よし、いいだろう。だが、際限なく答えるわけにもいかないから、・・・そうだな、そっちは五人いるから質問は五つまで、話せる範囲で話すという条件で答えよう。先に言っておくがこれ以上の譲歩はないぞ」
「うむ、それで異論はない。さて聞きたいことがある者はおるか?なければわしが代わりに問うことにするが・・・」
「私からいいですか?」
シオンがすぐに反応して声を上げると、モードレッドはシオンに対して静かに頷きを返した。
「では、シオンさんから質問してもらおうかのう」
「ありがとうございます。・・・それでは私からは私のお父さんのことについて伺います」
「ん?お前の父のこと?」
意味が分からないといった様子のリアスがはてと首を傾げると、シクステンがハッとした表情で慌てて横から補足する。
「ごめんリアス。言うのを忘れてた。そいつはトリストさんの娘らしいんだ」
「なっ!?」
リアスは大きく目を見開いて、シオンを見つめた。
「お前、あの時の子供か!?・・・まさか生きていたとはな」
「ええ、お父さんから貰ったこのピアスのおかげでね」
シオンは耳にかかった黒髪をそっと手でよけて、漆黒の石がついたピアスをリアスに見せつける。
「星石の模造品か・・・、なるほどな。トリストなら造れてもおかしくない」
「私はフレアを使ってリメリト村を滅ぼしお母さんの命を奪ったのはあなた方だと思っています。だから正直あなた方に対しては嫌悪感しかない。なぜリメリト村を襲ったのか、なぜあんなに酷いことができるのか。聞きたいことは沢山ありますが、私は何よりもお父さんのことを教えてほしい。お父さんは何者で、今どこにいるのか答えてください」
目に涙を浮かべながら、それでも毅然とリアスに相対するシオン。その手は強く握りしめられており、ふるふると肩を震わせていた。
「・・・そうだな。白衛、お前らで言うところのフレアを送り込んだのは間違いなく俺だ。だが、俺たちも俺たちなりの正義の下でやったことだから罪悪感はない。ただ、お前を見殺しにしたのはすまなかった。あの時はアリオンとの混血であるお前も排除すべき対象だと思っていたが今は過ちだったと思っている」
リアスがシオンに対して頭を下げると、その横に座るビセンテが小さく舌打ちをした。
「それでトリストのこととその行方だったな。質問が二つになっているが、まぁいいだろう。トリストは俺たちと同じく『インディジ』に属する者で、正真正銘俺たちの仲間だ。二十年前に行方不明となっていてな、ずっと探していたんだよ。悪いが今はどこにいるか分からん。リメリト村で確認したのを最後にこちらも把握できていない」
「インディジ・・・それって・・・」
シオンはそこで言葉を遮り、一度逡巡する様子を見せてから言葉を続けた。
「何なんですか?人類の敵といわれる星喰のことですか?」
「ふふ、それは二つ目の質問としてカウントしてよければ答えよう」
戸惑うシオンの横からモードレッドが答える。
「構わんよ。わしも聞きたかったことじゃし話を続けてもらおう」
「そうか、では答えよう。インディジはこの星の正統なる管理者のことだ。お前たちの敵であることには違いないが星喰ではない。むしろ星喰は堕天の日にこの星に降り立ったお前たちアリオンを指す言葉だよ」
「馬鹿なことを申すな。堕天の日に現れたのはお主たち星喰とフレアであろう。我ら人類の始祖であるラウル様こそがこの星の主であるぞ!」
「ラウルがこの星の主であることは否定しないよ。しかしだ、お前たちが星喰として星に拒絶されている存在であることもまた事実。星が侵略者を駆逐するために生み出した星浄魔力生命体、白衛がお前たちを標的にしていることがなによりの証拠だ」
「あくまでお主たちとフレアが星を守る存在でわしらが侵略者と申すか。・・・堕天の日のことを描いた崩記の内容とまるっきり逆じゃのう。お主の発言だけでは到底信じられんな」
「ふふ、面白いことを言うな。崩記は俺たちの祖先が書いたものだぞ?それをもって否定しようとするなど滑稽ですらある。おそらく、なんらかの形で我々の崩記を入手したお前らアリオンが都合のいいように解釈しただけのことだろう」
「崩記がお主たちのものじゃと?ははっ、それすらも信用ならん話じゃ。もっと明確な証拠はないのか?」
「・・・いいだろう。それを三つ目の質問として受けよう」
そう言っておもむろに念じ始めたリアスの額にうっすらと黒い紋が浮かび上がる。
「それは、星喰が持つという黒き紋か・・・」
モードレッドの呟きにリアスが頭を振る。
「違う、お前たち星喰を屠るための黒き紋だ。正式には星紋という。今からお前たちにこの星紋を通じて星の声を届けよう」
リアスが鋭い眼光で手を掲げると、にわかにアスの視界が暗転し無重力空間に漂うような感覚に陥った。
それは輝葬の際の意識乖離によく似た感覚であった。
「きゃあ!」
「うお、なんだよこれ!」
「なんにも見えないよ!」
「むぅ・・・」
他の者にも同様の現象が起こっているようで驚きの声と共に緊張感が伝わってくる。
「案ずるな、俺の精神世界へいざなっただけで全く害はない。この空間にいる間は時間の概念もなくなるから現実世界においては刹那の時間さえ経過することもないよ。さぁ、じっくりとこの星の声を聞くがいい」
暗闇の中、突如、アスの目の前に力強く慈愛に満ちた光を放つ巨大な光球が現れた。
巨大な光球は何を語るでもなく、ただ静かに輝きを放つ。
その神秘的ともいえる光景がアスの古い記憶を刺激し、五年前にハマサ村で見た夢のことを思い出させた。
(これは、あの時の光?、これが星の声・・・?)
アスが懐かしさと困惑が入り混じる不思議な感覚で光球を見つめていると、にわかに光球の強烈な思念がとめどなくアスの心に流れ込んできた。
「うぐぐぐっ」
その強烈な思念がアスの心を激しく揺さぶり、掻き乱す。
著しく心が乱れる中、それでもアスは確かに感じていた。この光球がこの星の命そのものであるということを。更にはアスたちの属する人類、リアスの言葉でいうならアリオンと呼ばれる人類のことを間違いなく排除対象としていることを。
「感じることはできたか?この星の大いなる意思を」
リアスの言葉と共に強烈な思念による心の揺さぶりは治まった。
だが、この超常的な現象を目の当たりにして皆言葉を失っているようで、誰も声を発しない。
「そして、この大いなる意思はインディジの中でも特に才覚のある者を選び、星喰のアリオンを駆逐するための力、星紋を与える。心して聞け、星に選ばれし我らの名を。我らは『星天』!この星を守り浄化するための崇高なる星の戦士だ!」
リアスの咆哮に呼応するかのように巨大な光球は強く輝き出し、アスの視界は真っ白となった。
しばらくして光球の発光が治まり、アスたちはリアスの精神世界から解き放たれる。
現実世界に戻ったアスの視界には再び洞窟内の景色が映し出された。
つい先程、アスたちを始末するといった敵意剥き出しの発言がビセンテからあったばかりなので、その言葉が本当なのか疑わしいところではあったが、アスたちを睨むビセンテが不本意そうに舌打ちをしているため、少なくともその発言は嘘ではないように思われた。
「要望とはなんだ?」
リアスの真意を計りかねるアスは眉をひそめながら慎重に尋ねる。
「ああ、一つ目は輝葬の依頼だ。っと、誤解のないように言っておくが対象者はお前の姉じゃないから安心してくれ。そして二つ目はシクステンの剣を返してほしいというもの、三つ目はこのホゾの道を荒らさないようにすること、四つ目はしばらくユフムダルへ近づかないこと、以上になるがどうだろうか?」
「それだけか?」
「ああ、そうだ」
何の準備もなく敵拠点に引き込まれてしまったアスたちに対して、圧倒的有利な立場にあるリアスがわざわざ場を設けてまで提示した要望として考えれば、それはあまりにも容易な内容であり、かなりの不自然さを感じさせた。
それに要望の内容もおかしい。アスがその点を指摘しようとする前に、モードレッドが先に口を開いた。
「ふむう、一つ目は要望として分からんでもないが、他の三つは不可解じゃな。わしらを殺せば解決しそうなものじゃろうに。ちなみに要望を聞かないとどうなるんじゃ?」
「その時は不本意だが力づくで聞いてもらうことになる」
「ほっほ、それでは要望と言いつつも、脅迫と変わらんな」
「そんなに難しいことを要求しているつもりはないんだがな。命を天秤にかけるほどのことでもないだろう?」
「まぁそうじゃな。さてどうするかのう」
モードレッドは顎髭をさすりながらアスに視線を向けた。
「・・・輝葬は構わない。だが、お姉ちゃんを返してもらうことが条件だ」
アスは机の上で手を組んで鋭い視線をリアスに向ける。だが、対するリアスはゆっくりと首を横に振った。
「今は駄目だ。・・・だが、悪く思わないでほしい。これは俺の意思ではなく、ジゼル自身が拒んでいるからなんだ」
「ふざけるな!そんなわけないだろう!」
怒声と共に机を叩いて立ち上がるアスを、リアスは動じることなくじっと見つめる。
「あまり詳しく話すことは出来ないが、ジゼルは今、とある理由でお前たちアリオンに強い敵対感情を有する状態となっている。この状態でお前に会えばどのような行動をとってしまうか分からないからということで、ジゼルはお前に会うことを避けているんだよ」
「そんな戯言を僕が信じると思うのか!?」
「まぁ確かに難しいだろうな。だが、冒頭お前たちに危害を与えるつもりがないと言ったのが、父と弟には手を出さないでほしいというお前の姉、ジゼルの想いを尊重してのものだとすればどうだろうか?ジゼルが会わないと言っていることが嘘ではないことの証明にはならないだろうが、少なくとも俺がジゼルの想いに誠実な対応をしているのだということは汲み取ってもらえると思うが?」
「そんなこと・・・」
否定しようとしたアスであったが、すぐに言葉に詰まる。そう言われると、確かにリアスがアスたちに配慮している理由が他に思い浮かばなかったからである。
「お前が思っている以上に俺たちはジゼルのことを大切にしているんだよ。そしてジゼルが大切にしているお前のこともな、アス。・・・いずれ会える機会を作るつもりだから、今は耐えてほしい」
リアスが慈しむような口調で優しくアスのことを諭す中、否定も反論もできないアスは、顔をしかめながら目線を落とし力無く椅子に座り込んだ。
そのまま黙り込んでしまったアスの様子を見て、モードレッドが大きく息を吐く。
「アスさんは少し休みなさい。ここからはわしが話を引き取ろう。よいな?」
「・・・はい」
モードレッドは意気消沈したアスの肩をポンポンと叩くと再びリアスに視線を向けた。
「では、そうじゃのう。そちらの要望に応える代わりにこちらからの質問に答えてもらおうか。お主も要望という柔らかい言葉を使った以上、そのくらいのことは構わんじゃろう?」
「確かにその方が話し合いっぽくなるか。よし、いいだろう。だが、際限なく答えるわけにもいかないから、・・・そうだな、そっちは五人いるから質問は五つまで、話せる範囲で話すという条件で答えよう。先に言っておくがこれ以上の譲歩はないぞ」
「うむ、それで異論はない。さて聞きたいことがある者はおるか?なければわしが代わりに問うことにするが・・・」
「私からいいですか?」
シオンがすぐに反応して声を上げると、モードレッドはシオンに対して静かに頷きを返した。
「では、シオンさんから質問してもらおうかのう」
「ありがとうございます。・・・それでは私からは私のお父さんのことについて伺います」
「ん?お前の父のこと?」
意味が分からないといった様子のリアスがはてと首を傾げると、シクステンがハッとした表情で慌てて横から補足する。
「ごめんリアス。言うのを忘れてた。そいつはトリストさんの娘らしいんだ」
「なっ!?」
リアスは大きく目を見開いて、シオンを見つめた。
「お前、あの時の子供か!?・・・まさか生きていたとはな」
「ええ、お父さんから貰ったこのピアスのおかげでね」
シオンは耳にかかった黒髪をそっと手でよけて、漆黒の石がついたピアスをリアスに見せつける。
「星石の模造品か・・・、なるほどな。トリストなら造れてもおかしくない」
「私はフレアを使ってリメリト村を滅ぼしお母さんの命を奪ったのはあなた方だと思っています。だから正直あなた方に対しては嫌悪感しかない。なぜリメリト村を襲ったのか、なぜあんなに酷いことができるのか。聞きたいことは沢山ありますが、私は何よりもお父さんのことを教えてほしい。お父さんは何者で、今どこにいるのか答えてください」
目に涙を浮かべながら、それでも毅然とリアスに相対するシオン。その手は強く握りしめられており、ふるふると肩を震わせていた。
「・・・そうだな。白衛、お前らで言うところのフレアを送り込んだのは間違いなく俺だ。だが、俺たちも俺たちなりの正義の下でやったことだから罪悪感はない。ただ、お前を見殺しにしたのはすまなかった。あの時はアリオンとの混血であるお前も排除すべき対象だと思っていたが今は過ちだったと思っている」
リアスがシオンに対して頭を下げると、その横に座るビセンテが小さく舌打ちをした。
「それでトリストのこととその行方だったな。質問が二つになっているが、まぁいいだろう。トリストは俺たちと同じく『インディジ』に属する者で、正真正銘俺たちの仲間だ。二十年前に行方不明となっていてな、ずっと探していたんだよ。悪いが今はどこにいるか分からん。リメリト村で確認したのを最後にこちらも把握できていない」
「インディジ・・・それって・・・」
シオンはそこで言葉を遮り、一度逡巡する様子を見せてから言葉を続けた。
「何なんですか?人類の敵といわれる星喰のことですか?」
「ふふ、それは二つ目の質問としてカウントしてよければ答えよう」
戸惑うシオンの横からモードレッドが答える。
「構わんよ。わしも聞きたかったことじゃし話を続けてもらおう」
「そうか、では答えよう。インディジはこの星の正統なる管理者のことだ。お前たちの敵であることには違いないが星喰ではない。むしろ星喰は堕天の日にこの星に降り立ったお前たちアリオンを指す言葉だよ」
「馬鹿なことを申すな。堕天の日に現れたのはお主たち星喰とフレアであろう。我ら人類の始祖であるラウル様こそがこの星の主であるぞ!」
「ラウルがこの星の主であることは否定しないよ。しかしだ、お前たちが星喰として星に拒絶されている存在であることもまた事実。星が侵略者を駆逐するために生み出した星浄魔力生命体、白衛がお前たちを標的にしていることがなによりの証拠だ」
「あくまでお主たちとフレアが星を守る存在でわしらが侵略者と申すか。・・・堕天の日のことを描いた崩記の内容とまるっきり逆じゃのう。お主の発言だけでは到底信じられんな」
「ふふ、面白いことを言うな。崩記は俺たちの祖先が書いたものだぞ?それをもって否定しようとするなど滑稽ですらある。おそらく、なんらかの形で我々の崩記を入手したお前らアリオンが都合のいいように解釈しただけのことだろう」
「崩記がお主たちのものじゃと?ははっ、それすらも信用ならん話じゃ。もっと明確な証拠はないのか?」
「・・・いいだろう。それを三つ目の質問として受けよう」
そう言っておもむろに念じ始めたリアスの額にうっすらと黒い紋が浮かび上がる。
「それは、星喰が持つという黒き紋か・・・」
モードレッドの呟きにリアスが頭を振る。
「違う、お前たち星喰を屠るための黒き紋だ。正式には星紋という。今からお前たちにこの星紋を通じて星の声を届けよう」
リアスが鋭い眼光で手を掲げると、にわかにアスの視界が暗転し無重力空間に漂うような感覚に陥った。
それは輝葬の際の意識乖離によく似た感覚であった。
「きゃあ!」
「うお、なんだよこれ!」
「なんにも見えないよ!」
「むぅ・・・」
他の者にも同様の現象が起こっているようで驚きの声と共に緊張感が伝わってくる。
「案ずるな、俺の精神世界へいざなっただけで全く害はない。この空間にいる間は時間の概念もなくなるから現実世界においては刹那の時間さえ経過することもないよ。さぁ、じっくりとこの星の声を聞くがいい」
暗闇の中、突如、アスの目の前に力強く慈愛に満ちた光を放つ巨大な光球が現れた。
巨大な光球は何を語るでもなく、ただ静かに輝きを放つ。
その神秘的ともいえる光景がアスの古い記憶を刺激し、五年前にハマサ村で見た夢のことを思い出させた。
(これは、あの時の光?、これが星の声・・・?)
アスが懐かしさと困惑が入り混じる不思議な感覚で光球を見つめていると、にわかに光球の強烈な思念がとめどなくアスの心に流れ込んできた。
「うぐぐぐっ」
その強烈な思念がアスの心を激しく揺さぶり、掻き乱す。
著しく心が乱れる中、それでもアスは確かに感じていた。この光球がこの星の命そのものであるということを。更にはアスたちの属する人類、リアスの言葉でいうならアリオンと呼ばれる人類のことを間違いなく排除対象としていることを。
「感じることはできたか?この星の大いなる意思を」
リアスの言葉と共に強烈な思念による心の揺さぶりは治まった。
だが、この超常的な現象を目の当たりにして皆言葉を失っているようで、誰も声を発しない。
「そして、この大いなる意思はインディジの中でも特に才覚のある者を選び、星喰のアリオンを駆逐するための力、星紋を与える。心して聞け、星に選ばれし我らの名を。我らは『星天』!この星を守り浄化するための崇高なる星の戦士だ!」
リアスの咆哮に呼応するかのように巨大な光球は強く輝き出し、アスの視界は真っ白となった。
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