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第四章 星天燃ゆる雪の都
六幕 「星喰と星天と希望の翼」 七
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黒フレアの咆哮に呼応するかのように、先程飛来してきた大量の白い球体がそこかしこで輝波を放ちながら一気に膨張する。
アスたちの付近にあった白い球体は、見る見るうちに上半身の上腕から胸筋までが異常に発達した歪な体躯を有する三メートル程度の巨大な生命体、白フレアに変貌した。
おそらく、一帯に降り注いだ百を超える全ての球体が同様にフレアと化したのであろう。
無数の攻撃的な輝波が錯綜し、輝葬師であるアスの五感を強烈に刺激する。
黒フレアの圧も相まってアスは頭を押さえながら片膝をついて、肩で激しく呼吸した。
「大丈夫かアス!くそっ!まさか球体がフレアになるなんて!もしさっきの球体が全てフレアになったんだとしたら、もうどうしようもないぞ!」
とりあえずは目の前に現れた白フレアに備えるために抜刀するエラルであったが、もはやどう対処すればよいかも分からないといった様子で白フレアを見つめていた。
焦るエラルをよそに黒フレアも白フレアもその場から動かず、攻撃対象を索敵するかのようにゆっくりとあたりを見回している。
嵐の前の静けさといった様相が更にアスたちの恐怖感を煽った。
そんな中、処刑台にいたミリアが剣を頭上に掲げて大声で兵士たちに檄を飛ばす。
「怯むな!兵士は今のうちに密集陣形で防御体勢をとってしばし持ち堪えろ!諦めなければすぐに増援が来る!反撃はそれからでいい!」
それからミリアが体を翻して処刑台の黒フレアに相対した。
「まさかあの人、一人で黒フレアを止めるつもりか!?」
エラルがそう言うと、アスが呼吸を整えつつ黒フレアを見据えた。
「・・・流石に一人じゃ鳳といえど危険だと思う。目の前のフレアをなんとか処理して僕たちも加勢しよう」
「アスはもう大丈夫なのか!?」
「うん・・・、大分輝波は落ち着いてきたかな。さぁエラル、シオンすぐに・・・、シオン?」
黒フレアや白フレアの発生に気を取られていたアスとエラルは、今になってシオンの様子がおかしいことに気づいた。シオンは肩を震わせながら黒フレアを見つめている。
「シ、シオン?一体どうしたの?」
アスが心配して尋ねるとシオンは頭を振りながらそのまま力無くぺたんと地面に座り込んでしまった。
「あのウィルマって人、黒フレアになったんだよね・・・。星天が黒フレアの正体だったってことだよね・・・。だったら五年前に村のみんなとお母さんを襲った黒フレアって・・・」
アスは、シオンが何を言いたいのかを理解した。それはシオンに限らずアスとエラルも実はかねてから可能性のひとつとして考えていたことであったが、今まで口に出さないようにしていたがために意識から薄らいでいた悲しい推測であった。
そして、その推測がこの最悪のタイミングで確定的になり、シオンの心を著しく摩耗させたのだと気付いたアスはやるせない表情を浮かべ、大粒の涙を目に溜めたシオンの頭を優しく撫でる。
「お父さんが・・・、お父さんがみんなを・・・」
「シオン、もう言わなくていい。・・・エラル、白フレアは僕が相手をするから、しばらくシオンの守りをお願い」
そう言って抜刀するアスをエラルが制した。
「いや、シオンの守りはアスの方がいい。俺の魔操の方が戦闘向きだからな」
「でも・・・」
「いいから。俺だって王都で十分に鍛えてきたんだからフレアの一体や二体くらいなんとかできるさ!」
エラルは覚悟を決めるかのように一度大きく息を吐いてから白フレアに剣を向けた。
次の瞬間、黒フレアと戦闘によって大きく吹き飛ばされたミリアが、受け身を取りながらアスたちのところに転がり込んでくる。
「うおっ!」
ミリアは驚きの声を上げるエラルをちらりと見て一つ舌打ちをすると、迫る黒フレアから放たれた追撃の氷柱を剣に込めた魔力で相殺した。
「一般市民が剣を持って何をするつもりだ!邪魔になるだけだからすぐに避難しろ!」
余裕のない表情でアスたちに怒声を浴びせるミリアの視線は、目の前の黒フレアを一点に捉えている。
一瞬たりとも気が抜けない状況と思われたが、何故か黒フレアは追撃の手を止めて、視線をオグルスピア城に向けた。
「コォオフォオオオオァアアア!!!」
再び黒フレアが咆哮すると、今度は今まで静止していた一帯の白フレアたちが一斉にオグルスピア城に向かって一直線に駆け出し始めた。
「な!次はなんだ!?」
「もしかして、城を攻撃するつもりなのか!?」
急な状況変化にアスとエラルが困惑する中、咆哮を終えた黒フレアが大きく屈む。城に向かって大きく跳躍しようとしているのだと思われた。
「黙って行かせるわけがないだろ!」
黒フレアが咆哮している間に距離を詰めていたミリアが、屈んだ黒フレアの後方から一気に剣を振り下ろす。
ミリアの斬撃を振り向きながらの無理矢理な体勢で避けたことで黒フレアの体勢が崩れた。
すかさずミリアが斬撃を繰り出すが、黒フレアは崩れた体勢のまま魔力で覆われた素手でその斬撃を難なくいなす。そして額の星紋が輝くと同時に強烈な火球をミリアに放った。
ミリアが放たれた火球を剣で相殺している間に黒フレアは体勢を建て直し、大剣を握ったままの拳を振り抜いて追撃する。
咄嗟に後ろに跳んでその拳を回避したミリアは、すぐに剣を構え直した。
黒フレアは空振った拳をそのままに首を傾げる。
それから、ミリアを値踏みするように見つめた後、ゆっくりと大剣を鞘から抜いた。
「アス、あの剣!」
剣を見たエラルが驚きながら叫ぶ。
鞘から抜かれた大剣は先日ゼラモリーザでリアスに渡した剣と同様に漆黒の刀身を有していたのだ。
「うん、インサが断頭の剣と偽って持ち込んでいたんだ!」
「アス!白フレアがいなくなったから俺はミリアさんの加勢をするぞ!シオンを頼んだ!」
そう叫ぶとエラルは駆けながら剣に熱火の魔力を込め、黒フレアに斬りかかった。
「馬鹿な!避難しろと言っただろ!」
突然のエラルの行動にミリアが大声を張り上げる。
黒フレアは接近するエラルに直ちに反応すると、エラルが間合いに入ってきたところで今ほど抜いた大剣を高速で振り払う。
エラルは紙一重でその斬撃を避けると、そのまま黒フレアの太ももを斬り払った。
剣は見事に直撃するも、重厚な魔力と硬い表皮で守られた太ももには毛筋程の切り傷をつけただけで剣は弾き返される。その反動でエラルは大きく体勢を崩してしまった。
「マズい!」
顔をしかめるエラルに向かって黒フレアは、大剣を返して再び高速で振り払う。
回避も防御も間に合わないやに思われたが、エラルに気を取られた黒フレアの隙をついたミリアがガラ空きとなった黒フレアの背中を大きく斬りつけた。
黒フレアの剣速が鈍り、すんでのところでエラルは剣を盾にして斬撃を受け止めることに成功する。しかしその尋常ではない膂力によってエラルは勢いよく弾き飛ばされ、そのまま建物の外壁に激突した。
受け身をとったエラルは、すぐにその場に立ち上がるも、足元は少しふらついている。
「エラル!大丈夫!?」
アスはすぐにでもエラルの加勢に向かいたいところであったが、シオンをこのまま放っておくこともできず、苦い表情でただ拳を強く握りしめた。
ふとアスの剣に風音の魔力が込められる。
「・・・心配させてごめん」
驚いたアスが振り向くとそこには気丈に振舞うシオンの姿があった。
「シオン!大丈夫なの!?」
「うん、今はくよくよしている場合じゃなかったね。私はもう大丈夫だから、エラルを援護しよう!」
エラルが攻撃を受けたことで、半ば強制的にシオンは我を取り戻せたようだ。
そして、シオンの力強い言葉を受けて、アスが頷く。
「よし!やろうシオン。みんなで黒フレアを止めよう!」
アスはそう言うと、すぐにミリアと戦闘を続ける黒フレアの背後に向かって駆け出した。
黒フレアの背後に回ったアスの目に、先程ミリアがつけた斬撃の傷痕が映る。既に治癒が始まっており、傷痕はかなり薄くなっていた。
「だから一般市民は下がってろと言っているだろ!!」
黒フレアと真正面から互角の斬り合いを続けていたミリアの視界にアスが入ったようで、再びミリアが怒声を放つ。
そんな言葉などお構いなしにアスは黒フレアとの距離を詰めて、その背中の傷をなぞるように斬りつけた。
アスの手に肉を斬り裂く感触が伝わってくる。黒フレアの表皮はエラルの純紫鋼で出来た魔錬刃を弾くほどに硬かったが、それでも表皮の下にある肉の部分は流石にそこまでの硬さはないようで、傷口を狙ったアスの刃はすんなりと通った。
更に追撃として、アスの魔錬刃が創生した幾重もの風の刃がその傷痕に叩き込まれ、黒フレアの背中から大量の赤黒い体液が噴出した。
鬱陶しそうに体を翻した黒フレアが尋常ならざる剣速でアスに襲いかかる。
「逆(さか)の風!」
シオンの口伝と共に、アスの立ち位置から猛烈な逆風が発生し黒フレアの剣速を鈍らせる。その僅かな隙に後方に跳んだアスは間一髪のところで黒フレアの剣を回避した。
すぐに黒フレアが追撃のため、剣を回避したアスを追って跳躍する。
着地したアスが迫る黒フレアに備えて即座に剣を構え直す中、アスの右手側から疾風の如く駆け寄ったエラルが跳躍中の黒フレアの左側頭部を強烈に刺突した。
「隙だらけだぜ!」
空中で刺突を受けた黒フレアは大きく吹き飛ぶも、宙で体勢を直しながら着地する。
「追撃いくよ!氷柱、三!」
エラルの刺突は黒フレアのこめかみに僅かな傷をつけただけだったが、その小さな傷を目掛けて今度はシオンが鋭い氷柱を放った。
創生された三つの氷柱が的確にこめかみを撃ち抜くと黒フレアが大きくのけぞり、一帯に赤黒い体液が飛び散る。
そこへ間髪入れずに距離を詰めたミリアが追撃の斬撃を放つと、右肩から左の脇腹にかけて斜め一直線に刀傷をつけた。
「いける!このまま畳み掛けるぞアス!シオン!」
エラルが更に追い討ちをかけようとした瞬間、黒フレアの星紋が強烈に輝き、おぞましいほどの魔力が凝縮されていく。
「いけない!全員離れろ!!」
ミリアの大声とほぼ同時にアスの視界が強烈な閃光によって真っ白になった。
続いて大地を揺るがす程の大爆発が生じてアスたちを吹き飛ばす。黒フレアから全方位に向かって凝縮された熱火の魔力が放たれたのだ。
大爆発は一帯の大地を大きくえぐり、大きなクレータを生み出した。
その爆心地に悠然と佇む黒フレアは不気味な笑みを浮かべると、大きく屈んでからオグルスピア城に向かって大きく跳躍した。
アスたちの付近にあった白い球体は、見る見るうちに上半身の上腕から胸筋までが異常に発達した歪な体躯を有する三メートル程度の巨大な生命体、白フレアに変貌した。
おそらく、一帯に降り注いだ百を超える全ての球体が同様にフレアと化したのであろう。
無数の攻撃的な輝波が錯綜し、輝葬師であるアスの五感を強烈に刺激する。
黒フレアの圧も相まってアスは頭を押さえながら片膝をついて、肩で激しく呼吸した。
「大丈夫かアス!くそっ!まさか球体がフレアになるなんて!もしさっきの球体が全てフレアになったんだとしたら、もうどうしようもないぞ!」
とりあえずは目の前に現れた白フレアに備えるために抜刀するエラルであったが、もはやどう対処すればよいかも分からないといった様子で白フレアを見つめていた。
焦るエラルをよそに黒フレアも白フレアもその場から動かず、攻撃対象を索敵するかのようにゆっくりとあたりを見回している。
嵐の前の静けさといった様相が更にアスたちの恐怖感を煽った。
そんな中、処刑台にいたミリアが剣を頭上に掲げて大声で兵士たちに檄を飛ばす。
「怯むな!兵士は今のうちに密集陣形で防御体勢をとってしばし持ち堪えろ!諦めなければすぐに増援が来る!反撃はそれからでいい!」
それからミリアが体を翻して処刑台の黒フレアに相対した。
「まさかあの人、一人で黒フレアを止めるつもりか!?」
エラルがそう言うと、アスが呼吸を整えつつ黒フレアを見据えた。
「・・・流石に一人じゃ鳳といえど危険だと思う。目の前のフレアをなんとか処理して僕たちも加勢しよう」
「アスはもう大丈夫なのか!?」
「うん・・・、大分輝波は落ち着いてきたかな。さぁエラル、シオンすぐに・・・、シオン?」
黒フレアや白フレアの発生に気を取られていたアスとエラルは、今になってシオンの様子がおかしいことに気づいた。シオンは肩を震わせながら黒フレアを見つめている。
「シ、シオン?一体どうしたの?」
アスが心配して尋ねるとシオンは頭を振りながらそのまま力無くぺたんと地面に座り込んでしまった。
「あのウィルマって人、黒フレアになったんだよね・・・。星天が黒フレアの正体だったってことだよね・・・。だったら五年前に村のみんなとお母さんを襲った黒フレアって・・・」
アスは、シオンが何を言いたいのかを理解した。それはシオンに限らずアスとエラルも実はかねてから可能性のひとつとして考えていたことであったが、今まで口に出さないようにしていたがために意識から薄らいでいた悲しい推測であった。
そして、その推測がこの最悪のタイミングで確定的になり、シオンの心を著しく摩耗させたのだと気付いたアスはやるせない表情を浮かべ、大粒の涙を目に溜めたシオンの頭を優しく撫でる。
「お父さんが・・・、お父さんがみんなを・・・」
「シオン、もう言わなくていい。・・・エラル、白フレアは僕が相手をするから、しばらくシオンの守りをお願い」
そう言って抜刀するアスをエラルが制した。
「いや、シオンの守りはアスの方がいい。俺の魔操の方が戦闘向きだからな」
「でも・・・」
「いいから。俺だって王都で十分に鍛えてきたんだからフレアの一体や二体くらいなんとかできるさ!」
エラルは覚悟を決めるかのように一度大きく息を吐いてから白フレアに剣を向けた。
次の瞬間、黒フレアと戦闘によって大きく吹き飛ばされたミリアが、受け身を取りながらアスたちのところに転がり込んでくる。
「うおっ!」
ミリアは驚きの声を上げるエラルをちらりと見て一つ舌打ちをすると、迫る黒フレアから放たれた追撃の氷柱を剣に込めた魔力で相殺した。
「一般市民が剣を持って何をするつもりだ!邪魔になるだけだからすぐに避難しろ!」
余裕のない表情でアスたちに怒声を浴びせるミリアの視線は、目の前の黒フレアを一点に捉えている。
一瞬たりとも気が抜けない状況と思われたが、何故か黒フレアは追撃の手を止めて、視線をオグルスピア城に向けた。
「コォオフォオオオオァアアア!!!」
再び黒フレアが咆哮すると、今度は今まで静止していた一帯の白フレアたちが一斉にオグルスピア城に向かって一直線に駆け出し始めた。
「な!次はなんだ!?」
「もしかして、城を攻撃するつもりなのか!?」
急な状況変化にアスとエラルが困惑する中、咆哮を終えた黒フレアが大きく屈む。城に向かって大きく跳躍しようとしているのだと思われた。
「黙って行かせるわけがないだろ!」
黒フレアが咆哮している間に距離を詰めていたミリアが、屈んだ黒フレアの後方から一気に剣を振り下ろす。
ミリアの斬撃を振り向きながらの無理矢理な体勢で避けたことで黒フレアの体勢が崩れた。
すかさずミリアが斬撃を繰り出すが、黒フレアは崩れた体勢のまま魔力で覆われた素手でその斬撃を難なくいなす。そして額の星紋が輝くと同時に強烈な火球をミリアに放った。
ミリアが放たれた火球を剣で相殺している間に黒フレアは体勢を建て直し、大剣を握ったままの拳を振り抜いて追撃する。
咄嗟に後ろに跳んでその拳を回避したミリアは、すぐに剣を構え直した。
黒フレアは空振った拳をそのままに首を傾げる。
それから、ミリアを値踏みするように見つめた後、ゆっくりと大剣を鞘から抜いた。
「アス、あの剣!」
剣を見たエラルが驚きながら叫ぶ。
鞘から抜かれた大剣は先日ゼラモリーザでリアスに渡した剣と同様に漆黒の刀身を有していたのだ。
「うん、インサが断頭の剣と偽って持ち込んでいたんだ!」
「アス!白フレアがいなくなったから俺はミリアさんの加勢をするぞ!シオンを頼んだ!」
そう叫ぶとエラルは駆けながら剣に熱火の魔力を込め、黒フレアに斬りかかった。
「馬鹿な!避難しろと言っただろ!」
突然のエラルの行動にミリアが大声を張り上げる。
黒フレアは接近するエラルに直ちに反応すると、エラルが間合いに入ってきたところで今ほど抜いた大剣を高速で振り払う。
エラルは紙一重でその斬撃を避けると、そのまま黒フレアの太ももを斬り払った。
剣は見事に直撃するも、重厚な魔力と硬い表皮で守られた太ももには毛筋程の切り傷をつけただけで剣は弾き返される。その反動でエラルは大きく体勢を崩してしまった。
「マズい!」
顔をしかめるエラルに向かって黒フレアは、大剣を返して再び高速で振り払う。
回避も防御も間に合わないやに思われたが、エラルに気を取られた黒フレアの隙をついたミリアがガラ空きとなった黒フレアの背中を大きく斬りつけた。
黒フレアの剣速が鈍り、すんでのところでエラルは剣を盾にして斬撃を受け止めることに成功する。しかしその尋常ではない膂力によってエラルは勢いよく弾き飛ばされ、そのまま建物の外壁に激突した。
受け身をとったエラルは、すぐにその場に立ち上がるも、足元は少しふらついている。
「エラル!大丈夫!?」
アスはすぐにでもエラルの加勢に向かいたいところであったが、シオンをこのまま放っておくこともできず、苦い表情でただ拳を強く握りしめた。
ふとアスの剣に風音の魔力が込められる。
「・・・心配させてごめん」
驚いたアスが振り向くとそこには気丈に振舞うシオンの姿があった。
「シオン!大丈夫なの!?」
「うん、今はくよくよしている場合じゃなかったね。私はもう大丈夫だから、エラルを援護しよう!」
エラルが攻撃を受けたことで、半ば強制的にシオンは我を取り戻せたようだ。
そして、シオンの力強い言葉を受けて、アスが頷く。
「よし!やろうシオン。みんなで黒フレアを止めよう!」
アスはそう言うと、すぐにミリアと戦闘を続ける黒フレアの背後に向かって駆け出した。
黒フレアの背後に回ったアスの目に、先程ミリアがつけた斬撃の傷痕が映る。既に治癒が始まっており、傷痕はかなり薄くなっていた。
「だから一般市民は下がってろと言っているだろ!!」
黒フレアと真正面から互角の斬り合いを続けていたミリアの視界にアスが入ったようで、再びミリアが怒声を放つ。
そんな言葉などお構いなしにアスは黒フレアとの距離を詰めて、その背中の傷をなぞるように斬りつけた。
アスの手に肉を斬り裂く感触が伝わってくる。黒フレアの表皮はエラルの純紫鋼で出来た魔錬刃を弾くほどに硬かったが、それでも表皮の下にある肉の部分は流石にそこまでの硬さはないようで、傷口を狙ったアスの刃はすんなりと通った。
更に追撃として、アスの魔錬刃が創生した幾重もの風の刃がその傷痕に叩き込まれ、黒フレアの背中から大量の赤黒い体液が噴出した。
鬱陶しそうに体を翻した黒フレアが尋常ならざる剣速でアスに襲いかかる。
「逆(さか)の風!」
シオンの口伝と共に、アスの立ち位置から猛烈な逆風が発生し黒フレアの剣速を鈍らせる。その僅かな隙に後方に跳んだアスは間一髪のところで黒フレアの剣を回避した。
すぐに黒フレアが追撃のため、剣を回避したアスを追って跳躍する。
着地したアスが迫る黒フレアに備えて即座に剣を構え直す中、アスの右手側から疾風の如く駆け寄ったエラルが跳躍中の黒フレアの左側頭部を強烈に刺突した。
「隙だらけだぜ!」
空中で刺突を受けた黒フレアは大きく吹き飛ぶも、宙で体勢を直しながら着地する。
「追撃いくよ!氷柱、三!」
エラルの刺突は黒フレアのこめかみに僅かな傷をつけただけだったが、その小さな傷を目掛けて今度はシオンが鋭い氷柱を放った。
創生された三つの氷柱が的確にこめかみを撃ち抜くと黒フレアが大きくのけぞり、一帯に赤黒い体液が飛び散る。
そこへ間髪入れずに距離を詰めたミリアが追撃の斬撃を放つと、右肩から左の脇腹にかけて斜め一直線に刀傷をつけた。
「いける!このまま畳み掛けるぞアス!シオン!」
エラルが更に追い討ちをかけようとした瞬間、黒フレアの星紋が強烈に輝き、おぞましいほどの魔力が凝縮されていく。
「いけない!全員離れろ!!」
ミリアの大声とほぼ同時にアスの視界が強烈な閃光によって真っ白になった。
続いて大地を揺るがす程の大爆発が生じてアスたちを吹き飛ばす。黒フレアから全方位に向かって凝縮された熱火の魔力が放たれたのだ。
大爆発は一帯の大地を大きくえぐり、大きなクレータを生み出した。
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