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それぞれの旅立ち
フェルグス・マクロイヒ2
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「姫を救った遠征軍に従軍していた者……そして、フェルグスのように刃を交えた者……命を守られた者……家族を救われた者……全ての者が、一真を助けたいと願っている。だが、個人としての気持ちが強すぎるあまり、集団で行動出来ていない事が問題だ」
「確かに……我々もそうだが、個人的に一真を助けたいと思っている。その結果、各々が一真の元へ向かっている」
オルフェの言葉に、フェルグスが腕を組みながら頷く。
「それって、問題なの? 個人で動いた方が、集団で動くより問題が小さくて済むんじゃ……」
「普通の人……ならな。先日、せっかく救い出した姫が消えた。ホワイト・ティアラ隊に従軍していたティアと、ルナを連れてな。ベルヘイム軍と戦う事になつたら、一真の側に付くと置き手紙が残っていたらしい……」
オルフェは小さく絞った声を更に小さくし、酒場の雑踏に掻き消される程度の声で重大な話をした。
姫……とは、ヴァナディース姫の事であり、バロールに長い間囚われていた姫である。
その正体はヴァン神族のフレイヤであり、一真が光の神であるバルドルだった時代に、その側で働いていた。
その頃からバルドルを慕っていたフレイヤは、ティアやルナが一真の元へ行こうと計画している事を知り、共にベルヘイムを出る決意をする。
非戦闘員である二人だけで、ヨトゥン領に行かせる訳にはいかない……そう自分に言い聞かせながらも、ベルヘイムを出るならば、バルドルと共に
戦う……後戻りをする気はなかった。
助けられた恩は、ベルヘイムにもある。
それでも、命懸けでバロールと戦い、実際に助けてくれたのは一真だ。
迷いを捨て、フレイヤは旅立った。
マーリンの元へルナを預けると、フレイヤとティアは一真の元へ……
「と、いう事だ。個人で動くと、冷静な判断が出来なくなる。姫のような立場ですら……な。そして、個人で動くと民意を得られ難い。なので、我々は集団で動く」
「オルフェ……頭、大丈夫? どっかで強打でもした? 国王様が一真を攻撃しようとしているのに、集団で動けば反旗を翻したのと同じになっちゃうでしょ!」
ドンっ! と、ゼークは再び机を叩く。
「ゼーク、声がデカイ! 国王も一真の功績は認めているんだ。公に助けに行けなくても、抜け道はある」
「私達も、その為に呼ばれたのだろう? ベルヘイム十二騎士の選抜試験……騎士か騎士見習いならば、参加資格があると聞いたが?」
フェルグスの言葉にオルフェは頷くと、葡萄酒を口に含む。
「ベルヘイム十二騎士……今まではベルヘイム騎士団の隊長クラスの中から、推薦によって選抜されていた。しかし航太達のように、どこの騎士団にも所属していないのに、十二騎士以上の活躍した実例があった。そして、オレとランカストの分……十二騎士に二人分の空きが出来た事も異例だ。オレが元帥になった事もあり、今回は実力重視となった訳だ。推薦状は必要だが……」
「それで、十二騎士の選抜試験については分かったけど、それと一真を助ける事と、何か関係ある訳?」
ゼークは葡萄酒の入ったグラスを両手で転がしながら、首を傾げる。
「ベルヘイム十二騎士に合格した者……若しくは、その上位入賞者に何らかの任務を与え、それをカムフラージュに一真さんを助ける……という事ではないでしょうか?」
「なるほど……頭が切れる。集団とは言ったが、軍隊を引き連れて行けば敵と認識されるかもしれない。国からバックアップを受けられる少数精鋭……そして、国民から支持を受けやすい者……」
ガラバとオルフェの話を聞いていたゼークが、両手をポンっ! と叩いて、理解したと表情で分かる程の晴れやかな顔になった。
「十二騎士になれば、国境は顔パス出来る! それに、お供も数人なら問題ない! 一真を正気に戻してベルヘイムに連れ帰る事が出来れば、千人力どころか万人力だし、結果オーライってヤツね!」
「問題は、十二騎士になれるか……だろ? ベルヘイム騎士団の強者も出てくるだろうしな。どうするつもりだ?」
フェルグスはオルフェを覗き込むように見て、返答を待つ。
「試験まで、国王に半年もらっている。一真討伐の軍は、それから二ヶ月後ぐらいに出陣する事になるだろう。試験までに航太に見習い騎士の称号を取らせて、ゼークと航太のペアが優勝する。決勝の相手は、フェルグスとガラバ君が望ましいんだが……」
オルフェは言葉を切って葡萄酒を飲み干すと、再び口を開く。
「姫を救出した英雄がベルヘイム十二騎士になり、再び姫の救出に向かう。その脇を支える者は、試験で激戦を繰り広げた者達……航太、智美、絵美、ゼーク、フェルグス、ガラバ、そして近衛騎士のテューネ……七人で部隊を構成してもらう。国民は、かつての七国の騎士を思い出し、盛り上がるだろう」
「個人の力だけではなく、協調性も試される……二人一組で参加し、勝ち残った二人が十二騎士になる訳か……」
フェルグスは金貨を置いて立ち上がると、オルフェを見る。
「試験の日まで、我々は鍛練と情報収集を行う。決勝戦が出来レースでは、観客も興ざめだろう? そちらの思惑に乗らずとも、我々はベルヘイム十二騎士の肩書きさえ貰えればいい。問題は、国境越えだけだからな……」
フェルグスとガラバは、酒場の外へと出て行く。
その姿を目で追いながら、ゼークは口を開いた。
「なんか……穴だらけの計画だけど、大丈夫なの? 私と航太でフェルグス達に勝つのも難しいし、そもそも航太達が半年の間に戻って来る保障も無いでしょ?」
「そしてフェルグスも言っていたが、ベルヘイム騎士団の強者も参加するだろう……ベルヘイム十二騎士は、騎士団の憧れだからな……厳しい戦いだが、この程度の奇跡を起こせなければ一真の心を取り戻すなど不可能だ。しかし、全てが整った時……この七人ならば一真の心を取り戻せる……そんな気がしているんだ……」
オルフェの声を聞きながら、ゼークはフェルグスが出て行った扉を見つめる。
「航太……とっとと戻って来なさいよ……時間が無いわ……」
ゼークが呟いた頃、航太達は波打つ海岸に立っていた。
再び異世界への扉を開け、義弟である一真の心を取り戻す為に……
「さて……行くか! 今度は一真と一緒に戻って来る! 誰も欠ける事なく、全員でだ!」
「オケオケ。ゼークちゃんへのお土産も持ったし、忘れ物なーしっ!」
「航ちゃんがテンション高い時って空回る事多いから、少し心配……ねぇ、ガーゴ」
「でしゅねー! でも、航太はテンション高くても低くても、基本阿呆だから、あまり変わらないでしゅよ~。巻き込まれないように、遠くから見守ってるのが一番でしゅ! 敵にやられてても、見てればいいんでしゅ~。ジーっと、見てるだけでしゅ~」
アヒルのヌイグルミに殴りかかる航太……
その姿を遠目から見てる人影を、この時三人は気付いていなかった……
「確かに……我々もそうだが、個人的に一真を助けたいと思っている。その結果、各々が一真の元へ向かっている」
オルフェの言葉に、フェルグスが腕を組みながら頷く。
「それって、問題なの? 個人で動いた方が、集団で動くより問題が小さくて済むんじゃ……」
「普通の人……ならな。先日、せっかく救い出した姫が消えた。ホワイト・ティアラ隊に従軍していたティアと、ルナを連れてな。ベルヘイム軍と戦う事になつたら、一真の側に付くと置き手紙が残っていたらしい……」
オルフェは小さく絞った声を更に小さくし、酒場の雑踏に掻き消される程度の声で重大な話をした。
姫……とは、ヴァナディース姫の事であり、バロールに長い間囚われていた姫である。
その正体はヴァン神族のフレイヤであり、一真が光の神であるバルドルだった時代に、その側で働いていた。
その頃からバルドルを慕っていたフレイヤは、ティアやルナが一真の元へ行こうと計画している事を知り、共にベルヘイムを出る決意をする。
非戦闘員である二人だけで、ヨトゥン領に行かせる訳にはいかない……そう自分に言い聞かせながらも、ベルヘイムを出るならば、バルドルと共に
戦う……後戻りをする気はなかった。
助けられた恩は、ベルヘイムにもある。
それでも、命懸けでバロールと戦い、実際に助けてくれたのは一真だ。
迷いを捨て、フレイヤは旅立った。
マーリンの元へルナを預けると、フレイヤとティアは一真の元へ……
「と、いう事だ。個人で動くと、冷静な判断が出来なくなる。姫のような立場ですら……な。そして、個人で動くと民意を得られ難い。なので、我々は集団で動く」
「オルフェ……頭、大丈夫? どっかで強打でもした? 国王様が一真を攻撃しようとしているのに、集団で動けば反旗を翻したのと同じになっちゃうでしょ!」
ドンっ! と、ゼークは再び机を叩く。
「ゼーク、声がデカイ! 国王も一真の功績は認めているんだ。公に助けに行けなくても、抜け道はある」
「私達も、その為に呼ばれたのだろう? ベルヘイム十二騎士の選抜試験……騎士か騎士見習いならば、参加資格があると聞いたが?」
フェルグスの言葉にオルフェは頷くと、葡萄酒を口に含む。
「ベルヘイム十二騎士……今まではベルヘイム騎士団の隊長クラスの中から、推薦によって選抜されていた。しかし航太達のように、どこの騎士団にも所属していないのに、十二騎士以上の活躍した実例があった。そして、オレとランカストの分……十二騎士に二人分の空きが出来た事も異例だ。オレが元帥になった事もあり、今回は実力重視となった訳だ。推薦状は必要だが……」
「それで、十二騎士の選抜試験については分かったけど、それと一真を助ける事と、何か関係ある訳?」
ゼークは葡萄酒の入ったグラスを両手で転がしながら、首を傾げる。
「ベルヘイム十二騎士に合格した者……若しくは、その上位入賞者に何らかの任務を与え、それをカムフラージュに一真さんを助ける……という事ではないでしょうか?」
「なるほど……頭が切れる。集団とは言ったが、軍隊を引き連れて行けば敵と認識されるかもしれない。国からバックアップを受けられる少数精鋭……そして、国民から支持を受けやすい者……」
ガラバとオルフェの話を聞いていたゼークが、両手をポンっ! と叩いて、理解したと表情で分かる程の晴れやかな顔になった。
「十二騎士になれば、国境は顔パス出来る! それに、お供も数人なら問題ない! 一真を正気に戻してベルヘイムに連れ帰る事が出来れば、千人力どころか万人力だし、結果オーライってヤツね!」
「問題は、十二騎士になれるか……だろ? ベルヘイム騎士団の強者も出てくるだろうしな。どうするつもりだ?」
フェルグスはオルフェを覗き込むように見て、返答を待つ。
「試験まで、国王に半年もらっている。一真討伐の軍は、それから二ヶ月後ぐらいに出陣する事になるだろう。試験までに航太に見習い騎士の称号を取らせて、ゼークと航太のペアが優勝する。決勝の相手は、フェルグスとガラバ君が望ましいんだが……」
オルフェは言葉を切って葡萄酒を飲み干すと、再び口を開く。
「姫を救出した英雄がベルヘイム十二騎士になり、再び姫の救出に向かう。その脇を支える者は、試験で激戦を繰り広げた者達……航太、智美、絵美、ゼーク、フェルグス、ガラバ、そして近衛騎士のテューネ……七人で部隊を構成してもらう。国民は、かつての七国の騎士を思い出し、盛り上がるだろう」
「個人の力だけではなく、協調性も試される……二人一組で参加し、勝ち残った二人が十二騎士になる訳か……」
フェルグスは金貨を置いて立ち上がると、オルフェを見る。
「試験の日まで、我々は鍛練と情報収集を行う。決勝戦が出来レースでは、観客も興ざめだろう? そちらの思惑に乗らずとも、我々はベルヘイム十二騎士の肩書きさえ貰えればいい。問題は、国境越えだけだからな……」
フェルグスとガラバは、酒場の外へと出て行く。
その姿を目で追いながら、ゼークは口を開いた。
「なんか……穴だらけの計画だけど、大丈夫なの? 私と航太でフェルグス達に勝つのも難しいし、そもそも航太達が半年の間に戻って来る保障も無いでしょ?」
「そしてフェルグスも言っていたが、ベルヘイム騎士団の強者も参加するだろう……ベルヘイム十二騎士は、騎士団の憧れだからな……厳しい戦いだが、この程度の奇跡を起こせなければ一真の心を取り戻すなど不可能だ。しかし、全てが整った時……この七人ならば一真の心を取り戻せる……そんな気がしているんだ……」
オルフェの声を聞きながら、ゼークはフェルグスが出て行った扉を見つめる。
「航太……とっとと戻って来なさいよ……時間が無いわ……」
ゼークが呟いた頃、航太達は波打つ海岸に立っていた。
再び異世界への扉を開け、義弟である一真の心を取り戻す為に……
「さて……行くか! 今度は一真と一緒に戻って来る! 誰も欠ける事なく、全員でだ!」
「オケオケ。ゼークちゃんへのお土産も持ったし、忘れ物なーしっ!」
「航ちゃんがテンション高い時って空回る事多いから、少し心配……ねぇ、ガーゴ」
「でしゅねー! でも、航太はテンション高くても低くても、基本阿呆だから、あまり変わらないでしゅよ~。巻き込まれないように、遠くから見守ってるのが一番でしゅ! 敵にやられてても、見てればいいんでしゅ~。ジーっと、見てるだけでしゅ~」
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