星に願えば

木野恵

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22.たどり着けない場所

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 あやつとまた話すのを考えると憂鬱でならない。

 別に、時間を巻き戻されるのをなんとかしないと抜け出せないって決まった訳じゃないから、雷の精を救出してのんびりふらふら世界の探索でもしようかな。

 話しにいくのは最後の手段にしちゃおう、そうしよう!解けない問題があったら他の問題を先に解くのと同じだ!後回し後回し!

 前にもこの童話の世界をくまなく探したような気がするけど、それは多分気のせいだ。多分。

 でもやはり、世界を探索したあといろいろ試して、あいつと話したこともあって、それからなにかあって死んだ気がする。

 死んだらそれまでだからきっと気のせいなんだけど……。

 豚くんや狼との出来事も初めてじゃなかった気がするけど、それも多分気のせい。気のせいったら気のせいだ。

 よし、とりあえず方針は決まったわけだし、なんとなくうっすらある記憶もあやつに会うのと同様、後回しだ。

 頭を切り替え、影の精と見張りを交代し、雷の精を救出。バッテリーを可能な限り組み立て直した。

 前よりだいぶ元通りまでいけたじゃん。楽しいな。

 満足しながら見つめていると、雷の精がしげしげとバッテリーを見つめ「お前さん、こういうの得意だったかいな?」なんて言うので、時間の巻き戻りの説明をする手間が省けた。

「なるほど。これほど説得力のあるもんはないな!お前さんはバッテリーのカバーをバキバキに壊しそうだし、一発でこんなに組み立てられそうもない癖に、ここまでやれるんだから。しかし、なんでわしらにはなくてお前さんには記憶があるんだ?」

 な、なんだと!?なんて言いたい気持ちをグッと抑える。

 初めて分解したときバッテリーカバーをバキバキにしたことはあえて黙っておいた。

 本当のことを言ったら確実にバカにしてくるよどうせっ。別にいわないといけない話じゃないしっ。

 にしても、酷い言われようだなあ。全部当たってるのがなんかムカつく。でも、それだけよく見てくれてるってことだな。

 反論したら当たってたのがバレるから腹立っても黙るしかないんだけどさー。くそー。悔しいなあ。

 そうは思いつつも、雷の精がそんなに見てくれていたのが心のどこかで嬉しいようで、じんわりと胸があたたかくなってくる。

「時間を巻き戻してる本部みたいなとこにいたのが、見た目だけ私そっくりなやつでさ。しかも、そいつの記憶が悪夢になって流れ込んでるみたいで。多分、それが記憶の有無に関係あるんじゃないかなと推測してるところ」

 雷の精はなるほどと頷き、顎に手を当てて黙り込んだ。

 考え事でもしてるのかな?

 雷の精は静かに考え事をしているし、そろそろ影の精が起きてくる頃だ。ご飯でも用意しようかな。

 ちょうど朝食の用意を終えたタイミングで、起きてきた影の精にご飯を差し出し、食べてもらいながら時間の巻き戻りについて話をした。

 影の精は驚いた様子で聞きながらご飯を食べ、食べ終わってから石を手にとって文字を綴った。

「その小屋にいる人、なにがあったの?なにもないのにそんな風にはならないよね?」

 影の精の言葉は最もだけど、相手が自分と同じ姿、顔形だからか、全くそんな心配が浮かんでこなかったのをほんの少しだけ反省した。

「知らないっ!あんなやつ」

 反省しつつも、心配の代わりにでたのがこの言葉だった。

 影の精は目を丸くしながらまた文字を綴った。

「いつもはそんなじゃないのに」

 そ、そうだね……。

 影の精の文字を見つめながら我に返ったけれど、なぜあいつにこんなにイライラするのか自分でもわからなかった。

 なんでだろ……。

 目を閉じて考え込んでいると、影の精がまた文字を綴った。

「一緒にいって、どんな子か見てみたいな」

 影ちゃんなら、私と違ってあいつと会話ができそうな気がした。なんとなく。

「一緒にいけたらいいね。みんなで。私はどうしても腹が立って行きたくないけど……」

 できれば会いに行きたくないけど、案内できるのは私しかいない。

 口では会いに行けたら良いねと言っているけど、本当は会いに行きたくなんかない。でも、影の精が会いたがってるから、叶えてあげたい気持ちがあるのも本当だった。

 黙っていた雷の精は話を聞いていたらしく「わしも会ってみたい」なんて言い出すのだ。

 えー……。後回しでいいじゃん。話したくないしできればもう会いたくない。

 しかし、二人が興味津々なので会いに行かないわけにはいかなくなってしまった。

 いやだなあ……。でも二人の気持ちを無視したくないし、会いたがってる人がいたらあいつも喜びそうな気がした。

 あいつなんか嫌いだけど……。嫌いかどうかと喜んでもらえるのが嬉しくないかどうかは別の話だった。

 石畳と時計塔のある場所へは雲にひき逃げされて転落したあと、いつの間にかたどり着いていたと話すと、雷の精は噴き出し、影の精は心配してくれた。

「お前さん本当についてないな!」

「うっせえ!」

 影の精は地面に文字を書き怪我しなかったかどうか聞いてくれている上に、私が痛い思いしないといけないならやめとくかどうか聞いてくれた。

 影ちゃんありがとう……!んー!好き!

「大丈夫だよ。なんか慣れちゃったみたいで全然痛くもかゆくもない」

 影の精に喜んでほしかったのと、本当は痛いけど怖くはないから少しだけ強がって話してみた。

 影の精は心配そうだったけれど、にっこり笑ってくれた。

 続けて、あいつのいる地域のことを二人に話した。

 怪我はなかったけれど、精霊が傍にいるときの温もりがなく、寒気がしていたこともついでに話した。

「寒気か……」

 雷の精はまた考え込んでいる。

「なにか心当たりが?」

 雷の精は「幽霊の可能性は確かにある。氷の精かもしれんし、お前さんが死んだ可能性も捨てきれん。寒気だけじゃちと特定は難しいな」と答えてくれた。

「そっかー」

 確かに、寒気っていっても、熱があるときの寒気と冷えてるときの寒気、悪い予感の寒気とかいろいろあるしな。

 次は、みんなでいくにはどうしたらいいかを考えることにした。

 今のところ行けたのは二回。

 二回ともみんなとはぐれて一人っきりになったときだ。

 死んだ可能性も否めない。

 とりあえず同じことをやって、みんなでもろとも雲にぶつかってもらえばいいのでは?

 これは名案だ。

 いつもなら怪我したり死んだらどうしようと心配するけれど、やつの心の問題を解決しない限り巻き戻ってしまうからか、そんな心配はよそにいった。

「空を飛んでると雲がひき逃げしにくるから、みんなでぶつかるのはどう?痛い思いも怖い思いもして欲しくないんだけどさ」

 雷の精と影の精を見てみると、ニコニコしながら頷いている。

 えっ?いいの?

「ぶつかられるの痛いよ?気づいたら石畳の上で寝てるのだって、地味に痛いよ?」

 それでも会いに行ってみたいらしくて、雷の精と影の精はニコニコしながら頷いている。

 そんなに会いたいのか。良かったじゃん、そんな風に思ってもらえて。

 ふと、やつの悪夢でユキがたこ焼きを買ってきたときの心境を思い出した。

 会いたくて会いに来てくれたんじゃないんだ。なんて思ってたっけ?

 人にいわれたから会えないって言われて、人に言われたから会いに来て。

 周りの人と違って流されず、自分でものを考えられる人だと思ってたのに、蓋を開ければロボットかなにかのようだと思ってショックを受けたんだろうか?

 憶測でしかないけれど、少なくともこの出来事がかなりショックだったようだし、この二人なら私と違って上手に話せそうな気がした。

 前に、私はやつと会話がうまくできなくて、ものすごく痛い目に遭ったような……。いつだろ?

 記憶が曖昧だし、いつの話かわからないけど、今度は大人しくしとこう。

 さしずめ、私の役目はこの二人をあいつのところに案内することかな?

 案内したあと、二人の邪魔にならないよう、あいつと喧嘩しないようにしないとな。

 脳内会議はここまでにして、どうやってやつのところへ行くか、具体的な作戦会議をした。

 私一人を雷の精が浮かせ、影の精と雷の精が私にくっついて空を飛ぶ方針に定まった。

 雲がひき逃げしに来たら会いに行けるし、来なければ世界の探索ができる。

 どちらに転んでも利がある作戦だ。

 いざ空に浮かべてもらうと、精霊二体のくっつき方のせいか、とあるアニメ映画で大きなモフモフに子供二人がくっついて飛ぶシーンがフラッシュバックした。

 思わず主題歌を口ずさみそうになりながら空を飛んでいたけれど、一度目の飛行は一周目のループのように何も起きなかった。

 もしかしたら、このまま何も起きないかもしれないな。

 次の日も、そのまた次の日も何も起きず、しまいには見覚えのある流され小島のある場所まで飛んで帰ってきた。

 お手軽に世界一周できる童話世界だったな。

 特に出入り口があるわけではなく、地上では童話のお話が繰り広げられているばかりだった。

 空に再び穴が開くこともなし……。

 その間に雷の精のカードが五枚ほどできたので、せっかくだから効果を見てみることにした。

 雷の精は少しテンションが高くなっているし、影の精は興味津々だ。

 私も、雷のカードにどんな効果があるのか楽しみだし、投げるつもりで貼り付けたら効果は投げるときのものになるのか、貼り付けるときのものになるのかも調べたくてうずうずしていた。

 こすったら帯電だったけど、投げたらどうなるかな?

 雷の精と影の精に注目される中、興味のままに危うく投げそうになったけれど、自分の中にある冷静な部分がしっかり手綱を引いてくれた。

「実は……見られていると条件が固定化されるみたいで。投げて条件満たすまであっち向いててもらってもいい?」

 二体ともキョトンとしていたけれど、手を合わせて「中二病って条件が出るんだけどもうやりたくない。勘弁してほしい。他にはどんな条件があるのか知りたい。お願いだからあっちを向いてほしい」と懇願気味にお願いすると、二体は納得しながらあっちを向いてくれた。

 よし……さらば中二。

 お願いを聞いてくれた精霊たちに感謝しながらカードを縦向きに投げた。

 陰でこっそり練習したおかげで、カードは綺麗な放物線を描いて飛んでいく。

 サクッという音を立てて地面にカードが突き刺さり、条件の文字がうっすらと浮かんでくる。

 変顔。

 よし、中二病よりずっとましだ!精霊は二体ともあっちを向いてくれている!

 自分の鼻を指で押し上げ、梅干しのようなすっぱいものを食べた時のように顔に思いきり力を入れてぎゅっとする。

 これでどうだ!不細工に磨きをかけてやったぞ!

 魔法のロックが外れ、カードが突き刺さった位置に激しい音を立てながら雷がたくさん落ちてきてとても綺麗だった。

 月とすっぽん、落雷と私の変顔。

 比べるのは良くないと思いつつも、心の中で自虐気味に比較して一人でクスッと笑った。

 落ち切ったかと思えば、カードから空に向かって雷が伸び、しばらくの間ずっとびりびりしていた。

 まるで下から空高く火を噴き上げる花火のよう。

 見惚れている傍らで、雷の精と影の精はカードの方を向いてはしゃいでいる。

「さすがわし!」

 雷の精は腕を組んで誇らしげだ。

 雷は綺麗で迫力があっただけでなく、芸術的な美しさと力強さに溢れていて感動した。

 その一方で、魔法が終わった後やけに視界がクリアになったと思えば、周りの木々が消し飛んでいた。

 無闇に使っちゃいけないカードじゃないか?安易に縦向きに投げちゃいけないな……。

 唐突に手に入った凶悪な武器に、手の震えも汗も止まらなくなった。

 間違って縦向きに投げたらどうしようという不安と責任が重くのしかかってくる。

 今の実験で死んだ動物がいないかどうかも心配だった。

 木の中にリスやアライグマ、鳥がいたら?

 少しずつ口が震えてくるのも感じる。

 落ち着けー、落ち着けー……。

 ゆっくり深呼吸し、落ち着いてから雷の精にそっと話しかけた。

 落ち着かない心理状態のまま口を開いたら語気が強い上に慌てふためいててまともな言葉が出ないのはわかりきっているから。

「このカード、やばくない?扱いきれないよ」

 雷の精は顎に手を当てて少し考える様子を見せてからにっこり微笑んでくれたけど、私にはなぜ微笑んだのかまったくわからなかった。

「今のを見て、はしゃいで何度も使おうとする輩じゃなくて良かったよ。ま、そうでないとわしら精霊が傍にはおらんだろう」

 なんとなく微笑んでくれた理由は分かったけど、安心してもらえて嬉しいけどっ!そういう問題じゃないだろー!

 マジでやばいってこのカード。ここで実験を続けて本当に良いのかな?どう考えてもダメだろ!

 なんて言えばいいかわからず、ガタガタ手を震わせていると、雷の精はガハハと笑いながら指を鳴らしてビリビリしているドームを作ってくれた。

「お前さんのことだからどうせ心配でもしてたんだろ。これなら周りに被害はいかんから思いきり試せるぞ」

 影のカードの一件から、雷の精をおっさんと内心では呼び続けてきたけれど、今回のこの件以降は親父と呼びたくなってしまった。

 ただ、一つ懸念があった。

「地面にいるモグラさんも?」

 雷の精は口を大きく開けてガハハと笑って頷いている。

 笑う雷の精の目には涙がうっすら浮かんでいて、なにがそんなにおかしいのかわからなくてきょとんとしたけれど、安全なら大丈夫だね。

 雷の精に感謝し、カードを横投げに構えた。

 雷の精と影の精をちらっとみると、こちらを見ないよう、投げる方向に顔を向けてニコニコしながら待ってくれている。

 さらば中二。二度と出るな。

 別に中二病で親が死んだわけじゃないけど、親の仇のようになりつつあるのを苦笑しながら、カードを横向きで投げた。

 昔、フリスビーして遊んでたなあ。

 懐かしい思い出を回想していると、カードがゆっくり地面に落ち、条件がうっすらと浮かんで見えてくる。

 早口言葉。

 急に難題が。

 すーっと息を吸い込み、焦らず落ち着いて淡々と言うぞと心に決めながら口を開いたけれど「なまみゅぎなみゃぎょみぇなまたまご」と盛大にかんだ。

 ブッブー!

 やつのいる小屋で聞いたのと同じ音がカードから聞こえてくる。

 やはり不合格の音だったようだ。

 じゃあ、どうやって小屋に入れたのだろうか?

 いらっしゃいなんて言いながら出迎えてもらったのだし、あれは中へ招き入れてもらえたと捉えるべきってことか。

 頭の中で考え事をしていると、雷の精がガハハと笑う声が聞こえて今に意識が戻ってきた。

 保護者席を見る子供のように、精霊たちの方を向くと、影の精は腕を振って応援してくれている。

 よし、もう一度だ。

 条件は変わらず早口言葉だ。

「なまむぎなまもめなまたまご!」

 ちょっとかんだ!違うベクトルにかんだ!

 一回目は多分力の入れすぎ、二回目は力を抜きすぎたのかな。

 噛むときなぜ人は噛んでしまうのか……。深く考えすぎると哲学の領域に足を踏み入れそうだからほどほどに考え、とにかく挑戦あるのみと三回目だ!

「なまむぎなまごめなまたまご」

 よし、言えた!

 影の精がピョンと飛び跳ね、気持ちを大きく表現しながらお祝いしてくれた。

 なんだかとっても嬉しい!ひとりよりずっと楽しい!

 雷の精はよくやったと言わんばかりに腕を組んで頷いている。

 魔法のロックが外れ、カードからあたり一面に激しい光が溢れた。

 しばらくずっと眩しくて目があけられなかったけれど、ようやく光がおさまったのでゆっくりと開けることができた。

 目くらまし、誘導、色々使えそうだな。ただ、本当に光っただけなのかが疑問ではある。

 目を開けると、影の精も雷の精もどこから取り出したのかお揃いのサングラスをかけていて思わず噴き出しながら笑ってしまった。

「どうだ?似合うだろ?」

 影の精も雷の精も、サングラスを指でくいっと押し上げるものだからお腹を抱えて笑ってしまった。

「どこから取り出したの?私も欲しい!」

 すると、意外なことに影の精がすっとサングラスを差し出してくれたので目が飛び出そうだったけれど、どうやって手に入れたのか察して笑いが少しずつおさまった。

「もしかして影ちゃんが影で作ったの?」

 影の精はサングラスを少しずらし、ニコニコしながら頷いた。

 影ちゃん万能すぎ!

 宝物のように両手でサングラスを受け取り、そっとかけてみる。

「似合う?」

 影の精は嬉しそうに頷き、雷の精は笑いながら頷いてくれた。

 心の中でヘヘヘと笑いながら、カードの実験をつづけた。

 次は貼り付けるやつだ!

 木が消し飛んでなくなっちゃったので、近くにある小石を適当に選んでカードを貼りつけた。

 出てきた条件は……中二病だった。

 は!?この野郎!まさか?

 影の精と雷の精を見ると、サングラスで隠れてはいるけれど、なんとなくみられている気配がある。

 石ごとカードを持ち上げて見せてみると、雷の精がガハハと笑いながら「サングラスかけてても出るものなのか気になってな」と白状した。

 影の精は首を傾げながら雷の精を見た後、私の方を見て察したようだった。

 影の精は律儀に違うところをみてくれていたようだ。

 もうやだあ。おっさん!影ちゃんはほんと天使みたいだなあ。

 泣き言を言いそうになりながら中二病ネタを一生懸命絞り出した。

 もう二度とやらずにすむと思ったのにっ!

 半ば怒りを込めながら浮かんできたフレーズを口にする。

「終焉の鎮魂歌!!!」

 とある人が名乗っていた名前を叫んだだけだったけれど、それだけで一発合格できたようで、石が少しびりっとしたあと、特に何も変化が起きないかと思えば……。

 リュックの中にあった金属、念のため持ち運んでいた自転車、とにかくいろんなものが石に吸い寄せられていった。

 これは磁力か!

 このまま石を持ってたら危なかったので、石を放り投げ、引き寄せられる物に挟まれずにすみそうなところまで退避した。

 後片付けがめちゃくちゃ大変そうだ。

 少しげんなりしつつも、カードの効果は興味深くて面白いと思わされた。

 投げる貼る撫でる以外にも発動し方があるかもしれない。

 残る雷のカードは二枚。

 どうせ巻き戻るから、もしもにとっておくことはないだろう。

 そういえば、カードで殴ったらどうなるんだろう?

 ふとした疑問だった。

 でも、殴るものなんて周りにないしな。

 とりあえず、カードを手にしたままシュッと空振りしてみると、なんとカードに条件が浮かんできた。

 中二病。

 しまった。魔法が使えるか試すっていってなかった。

 他にもカードの魔法使う方法あるか調べるとかいってなかったから、精霊二体に見られながらやってしまった結果である。

 思わず畜生と叫びそうになりつつも、歯を食い縛りながらネタを考えた。

 浮かばない!

「もうやだ中二病……」

 思わず弱音を吐いてしまうと、カードからブッブーという音がなるとともに、ゲームで見かけたことのあるリロールマークがでていた。

 まじで?ラッキー!助け舟なのでは!?

 精霊二体に事情を話して視線をそらしてもらい、試しにマークをタッチすると、条件の文字がスッと切り替わった。

 やった!思った通り!

 出てきたのは格好良いと思う名前を叫べという条件で、これはこれでものすごく難儀なものだった。

 格好良い名前とは?

 首を捻りながら唸り、パッと浮かんだのがひとつ。

「ドラゴンダイブ!」

 私ってばドラゴン大好きだもんね。

 カードからバチバチという音が弾けるように聞こえてきて、驚いて手を離してしまった。

 地面に落ちながらカードが剣の形に変形し、格好良く光り輝いている。

 なにこれすごく格好良い!

 剣を手に取るとバチッというものすごい音と静電気の痛みが走ったけれど、それ以降は特に何事もなく握ることができた。

 精霊たちに見ても良いよと合図をして見てもらうと、二体とも歓声を上げていた。

「ちなみにこいつは他の形態もあるのか?」

 雷の親父に聞かれ、槍になれと思いながら振ってみると、形がぐにゃっと変わった。

「変えれた!」

 はしゃぎながら槍になった剣をもって跳ねていると、雷の精は満足そうに頷いていた。

 影の精は私の様子を見てニコニコしながら拍手してくれている。

 精霊のカードってすごいな。

 ますます、私が今まで魔法をストックしてたカードでもいろいろ試してみたくなってくる。

 今までカードを撫でたことしかなかったのを振り返りながら思ったことだった。

 願いをカードに貯めていたつもりだったけど、込められていたのは願いじゃなくて星月日といった星の力だったんじゃないか?

 精霊のカードの場合ではあるけれど、撫でたら自分に魔法を使っているのだから、星月日のカードを使うときに願ったことをもう一度頭に描いていたのだし、可能性がない訳じゃない。

 この仮説が正しいなら、撫でる以外はどんな魔法になるのだろう?

 早く外に出るのが楽しみで仕方がなくなってくる。

 ワクワクしながら、今回のループを終えるお知らせの鐘を聞き届けた。

 小屋にたどり着けず、狭い世界を一周したけれど、有意義な周だった。
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