星に願えば

木野恵

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23.邂逅

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 前回のループを終える少し前のこと。

 次のループで精霊たちに説明する手間を省くため、雷の精と影の精自ら、自分たちなら何を聞かされたらすんなり納得できるかを頭に叩き込まれた。

 今回のループで精霊たちに覚えた話を伝え終え、やつに会いに行く旅が再び幕を開ける。

 今回はその辺に生えていた蔦をそれぞれの体に巻き付け、空の旅へ出掛けることになった。

 前回は私単体で飛んでいても追突されなかったから、今回は今までのようにバラバラに飛んで、私が墜落したら道連れにできるようにという工夫のしかただ。

 普段は誰かを道連れにする工夫なんかしないのだけど、やつに会いたい精霊たちを連れていくためには、一人きりではなく道連れにして落ちていかなければならないので致し方なく。

 願いのためとはいえ、わざと足手まといになったり道連れになるのはあんまり気が乗らないなあ……。

 もし、もしも私だけ無事にあちらにたどり着き、精霊二体が地面に叩きつけられて無惨な死に方をしたら?

 考えるだけで吐き気を催してしまった。

 どうかうまくいきますように。無事にみんなでやつの元へたどり着けますように。

 星が見えなくても心から願い、祈りながら空の旅をはじめてしばらくして今度は右の脇腹に衝撃が走った。

「ぐふぅっ!」

 お腹や背中に追突される方が幾分かましだと思わされる痛みが体に広がる。

 可動域の問題が一番でかいだろうな。

 なんてのんきなことを考えながら空を真っ逆さま。

 雷の精は道連れになりながら「よしきた!でかした!」と叫び、影の精はとてもはしゃいでいる。

 いつもは私の心配してくれてたのに、そんなにあいつに会えるのが嬉しいのか。

 ちょっぴり切ない気持ちになりつつも、強がって平気だと言ったのは私なので当然だと思い直した。

 私は私で、ようやくループから抜け出せるかもしれない希望を抱いていたからそこまで落ち込まずに落下し、三度目の気絶をした。



 また悪夢かと思いきや、ユキが正義感たっぷりに自分の考えを話しているところだった。

「みんな事実を確かめもしないで勝手なこと言って。人のこと決めつけて悪く言って」

 ユキが少し怒ったような調子で話しているのを、タマは自分に怒ってるのだと思いながら聞いているところだった。

 どうやら、タマがユキから「なにも悪いことしてないでしょ?」と言ってもらう前の抜けていた記憶の欠片を見ているようだった。

 タマはユキの話を聞き終わり、バカと言ったから怒られているのだと反省し、ユキが否定するところは同じだった。

 ユキは父親のことを言ってるのだと怒り、タマはそれでも悪いことを言ったからだと自責していた。

 自責しつつも、ユキが自分なりにとても立派な正義感を持っていることを感動しながら褒めていた。

 こんなに立派なのに、友達がいないなんておかしい。他の人にも立派だって知ってもらいたい。

 タマが興奮しながら言うと、ユキは照れながらも拒否し、誰にも言っちゃダメだと釘を刺していた。

 話したら父親に殺されると言いながら。

 タマは「せめて立派な正義感だけでもどう?お父さんの話しは抜きにして」と提案したけれど、ユキはそこから父親のことを話したと気づかれたくないからって拒否していた。

 タマは不服なようだったけれど、死んで欲しくないから一生懸命話さないよう我慢したようだ。

 死んでほしくない。嫌な目に遭ってほしくない。楽しい学生生活をこのまま送っていてほしい。

 タマの切実な願いと想いだった。

 なんだよ、お前ら仲良しじゃん。



 珍しく悪夢じゃないものを見られて、少し心が軽くなりながら目を覚ますと、例の石畳の上で寝ていて体がとても痛かった。

 慣れないなあ……。

 痛みを堪えながら、なるべく痛くないよう身じろぎをし、ゆっくり体を起こした。

 傍らには精霊二体が思い思いの格好で寝そべっている。

 出血はなく、生気を感じられるので無事にたどり着けたようだ。

 やったね、大成功だ!無事でいてくれて本当に嬉しいよ!

 誰かを道連れにできてこんなに嬉しいことなんて、後にも先にもきっとないだろうな。きっと、あっちゃいけないだろうよ。

 これで二人の会いたがっていたあいつのところへ行けると思うと嬉しくなってきた。私は会いたくないけど。

 二人をそのまま寝かせておくと体が痛くなるだろうから、なにか柔らかいもの……せめて寝転んでて痛くならないものを敷き、その上で寝かし直した。

 着ていた上着、テントで寝るときに使っている寝袋……これだけで十分痛くないはず。

 二人が起きるまで座って見守っていると、動いている間は体があたたかかったけれど、止まってしばらくしたら再び寒気に見舞われた。

 精霊が傍にいるのに寒いだなんて。

 この寒気が何によるものなのか考えながら、風が吹くのを感じ取る。

 風はいつもの方角から流れてきているようだ。

 体がどんどん冷えていっているのか、徐々に風があたたかくなっているように感じられて心地よかった。

 風はいいなあ……。自由で心地よくて、なにより落ち着ける。

 さして何も起きないまま、ようやく雷の精が目覚め、しばらくしてから影の精も目覚めた。

 二人ともここに来られてはしゃいでいたけれど、私同様寒気を感じているらしく、いつもより少し元気がない。

 この寒気ってなんだろうな?

 雷の精に聞いてみようとしたけれど、考え込んでいる様子だったから、聞きたくてうずうずする気持ちを我慢し、二人を風に導かれるまま案内した。

 前回、前々回と同じ道順だったので、もし次があれば風の導きがなくてもここまでたどり着けそうだ。

 ぼんやりそんなことを思っていると、前と同じ小屋、同じ時計塔が見えてきた。

 雷の精も影の精も少しそわそわしている。相当楽しみだったようだ。

 私が傍にいると、二人も一緒に追い返されるかもしれない。一緒にいるのはここまでの方が良いかもな。

 自分のせいで、会いたいと言っていた二人の願いが叶わなくなるのだけは避けたいし。

「悪いけど、出ていけって言われて追い出された身だから、ここまでで……」

 二人を残して去ろうとすると、影の精が裾を引っ張った。

 どうしたんだろう?

 不思議そうに見つめてみると、影の精がカードを一枚差し出していた。

 ああ、心配してくれたんだな。良いって言ったのに、また用意してくれちゃって。

 神様や国の主に両手で捧げ物をするような格好で、影の精からカードを大切に受けとると、照れた様子で頭の後ろに手を当てていた。

 影の精は今まで何があったか知らないから大袈裟だと思ってるんだろうな。

 私は影の精のカードのお陰で何度も助かったし、楽しいことも楽しみもたくさんできたんだ。

 この受けとり方だけじゃ、ありがたみが表現しきれてなくて物足りないと思ってるくらい。

 でも、そんなこと言われても困るだけなのがわかっているから、一緒に軽く笑いあってお別れをした。



 二人がゆっくりと小屋に向かう背中を見つめていると、窓際にあいつが立つのが私の目にも見えた。

 もしかしたら、私が戻って来たと思って窓際に立ったのかな?怖すぎだろ。

 でも、いつもの繰り返しからほんの少し抜けられたとも考えられるな……。前向きに考えたらね。

 二人は窓際で、私と見た目だけ同じあいつと何やら話をし、小屋の中へ招き入れてもらっていた。

 二人が嫌な目に遭いませんように。

 心からの願いだった。できることなら仲良くなれるといいなんて思いながら、精霊たちの見送りを終えた。

 さて、私はこれからどうするか。

 そういえば、小屋の近くにある時計塔をまだ調べてなかったから、見学という名目で見に行っても良いな。

 二人の精霊を心配しつつ、時計塔を上ってみたくて出入り口を探した。

 あいつの小屋と違って、こっちにはちゃんと出入り口があったし、見つけるのにさほど苦労もしなかった。

 時計塔の出入り口にドアはついていないから自由に中へはいれてラッキーだけど、虫とかいろいろ大丈夫なのだろうか?

 あれこれ考えつつ時計塔に入ってまっすぐ奥まで行くと、階段があった。

 階段は壁に沿って螺旋状に上へと伸びている。

 結構な高さだな。

 どれくらいつかれるか考えもせず、とりあえず上を目指して階段を登りはじめてすぐに息が苦しくなり、足もガタガタになってしまった。

 今のぐうたら生活をする前なら、こんな階段楽勝だったんだけどな。

 奴隷や泥棒をして暮らしていた日々を懐かしみながら、ぐうたらできる生活の良いところも数え上げていく。

 奴隷と泥棒生活は気が休まらないし不安定で腹ペコな暮らしだったけれど、今より筋力も体力もあって、たくさん運動ができた。身軽でもあったな。痩せてたから。

 今の暮らしは体力がた落ちでだらしなくなりがちだけど、楽しい仲間がたくさんいて、安定した暮らしができて、のんびりのほほんと暮らせる。ご飯も好きなときに食べられるんだ。

 旅に出ようとしたら応援してもらえて、帰るのを待ってくれて、お金まで用意して支援してくれて……。

 なんとしても帰らないとな。

 雑念で頭をいっぱいにしながら階段をのぼる苦しみを頭から追い出していると、あっという間に鐘のある場所までたどり着けた。

 実際はどれくらいかかったかなんてわからないけど、感覚的にはあっという間だ。

 何の変哲もない時計塔といった印象の歯車があるフロアで、誰かが真っ白な布を被って座っていた。

 誰だろ?うっすら嫌悪感がある。

 嫌悪感を感じている自分の勘を信じて、とりあえず警戒しながら観察した。

 相手は頭をカクンカクンとさせている。もしかしたら寝ているのかもしれない。

 音を立てないよう、慎重に近寄って真っ白な布を外そうと手を伸ばすと、手首をいきなり掴まれた上に、こちらを勢いよく振り向いてきて叫び声をあげてしまった。

 なぜか掴んできた相手も驚いている上に、「落ち着いて」なんて言ってワタワタしていて奇妙だった。

 なんだこいつ。

 変なものでも見るような目をしていたのか、相手はしばらく静まり返った後、自分のことを説明し始めた。

 こいつがいうには、夢を操って私を導こうとしていたらしい。

 胡散臭いなと思いながら聞いていると、私が今まで見てきた夢をピシャリと言い当てた上に、あいつと私の関係までペラペラ話し始めたから、どれだけこいつが胡散臭くても耳を傾けてしまった。

 私が昼夜問わず星に願った結果、もしも売られていたらどうなっていたかの世界へ旅立ったこと、他にもいろんな欠片があちこちに散っていること、小屋にいるあれが戻るべき魂の一つだということ。

 ただ耳を傾けただけじゃなく、うっすらとある嫌悪感の正体にもなんとなく気づくことができた。

 こいつもまた私なのだと。

 あとは、人がパズルのピースはめていったり、推理小説で推理しながら楽しんでたら答えをバンバン言って楽しみを一つずつ潰してっちゃうような真似をしてきたことも嫌悪感の原因だろう。

 この野郎。推測して楽しみにしてたのに!

 でも、ある程度察してたし、顔見てほとんど答えを悟ってたから、答え合わせだと思えばギリギリ許せるか。

 夢を操って導くのは他の存在でもできそうだけど、最初から嫌悪感を抱くのは今までの人生経験上、自分以外に心当たりがないし、もしこいつが私じゃないなら、どうしてあいつと私の関係をここまで詳細に口にできるだろうか?

 当の本人は白い布を被って顔を見えづらくして隠してるつもりになってるけど……。

 話を聞き終え、単刀直入にもう一人の私であるかどうか聞いてみると、平静を装って見た目が全然違うことをアピールしていた。

 目元まで白い布で隠れてるけど、鼻も口元も私にしか見えない。

 なぜこいつは他人だと自信満々に名乗ったんだろう?小屋の馬鹿と同じ症状でも患ってる?

 不思議に思いながら「どうして白い布を被っているだけで変装した気になっているのか」と尋ねてみると、口を開けて硬直していた。

 え?変なこと言った?

 それにしても、こんな変なやつも私なのか……。ショックだな。

 苦虫を噛み潰したような顔をしながら頭を抱えそうになっていると、目の前の変人は自分がどんな姿に見えているかを私に聞いてきた。

「白くて大きい布を被った自分」

 見たまま正直に言うと、目の前のやつは「嘘!!まじか!」なんて言いながら騒ぎ出すものだから、こちらとしては訳が分からない。

 冷たい目で見ていると、落ち着いてきたのかゆっくり説明をしてくれた。

 どうやら目の前の変人が被っているのは「夢衣」という変身できる布らしく、被ったら姿が真っ白になって、思い描いた姿へ変身できるそうな。

 もし変身してなければ、相手の心にいる一番大切な誰かになれるのだけど、そういう人がいなければ真っ白な姿のままらしい。

 なのにどういうわけか、私の目には布被ったただの自分にしか見えてなくて物凄く混乱したようだ。

 事情を知ると自分相手とはいえ、変人呼ばわりして悪かったなと、ほんの塩一つまみほどは思うことができた。

 そりゃ慌てるわ。道具の不備か何かなのかな?

 とりあえず布の機能が切れてるんじゃないかと指摘してみたけれど、そんなはずはないの一点張りだった。

 何を根拠に?と聞くと、これは魔法が宿っている布とかじゃなく、夢魔が持っている布を盗んだものだと言い張るのだ。

 盗んだと言っても、燃やしたものがコピーされて手元にきたのだとか。

 面白いことができる私に興味を持っていると、鏡を持っていないかと聞いてきた。

 あるけど、どうしたんだろう?

 首を傾げつつ、背負っていたリュックから鏡を取り出して渡すと、しげしげといろんな角度から自分を眺めてうっとりしだした。

 事情を知らなければヤバいやつだと思ってもう一回引いてただろうけど、多分鏡にはちゃんと化けられた姿が映ってたってことだろう。

 一体何に化けてるのやら、目に涙をうっすら浮かべながら見惚れていて、引きはしないけどやはり異常だと思わされた。

 自分と同じ顔のやつが奇行に走ってるのを見るのはこれで二度目。二度目ともなると少しはショックが薄い。

 小屋にいる馬鹿と時計塔にいる間抜けと……。

 自分も大概変だししっかりしてないしまともじゃないけど、こいつら二人よりはだいぶましじゃない?

 こんな自己肯定感の高め方したくなかったなと、天を仰ぎながら現実逃避しそうになったけれど、見上げたところで目に入るのは薄暗い天井だけ。

 ああ、星空が見たいな。真っ暗なキャンバスにちりばめられた煌めく星々、太陽の輝く青空に、月の輝く明るい夜空。

 これもまた散っていった自分の一人なのだと認めたくないのを二回も連続して見たせいか、家に帰りたい気持ちがどんどん強くなってくる。

 旅、出るんじゃなかったのかも。

 そんなことを思い始めていると、夢の自分が鏡を返してきた。

 もういいのかな?なんて思っていると、聞いてもないのに「ちゃんと変身した姿が映ってた。夢で見た金髪イケメン」なんて報告してくれた。

 ああそう……。それは良かったね。

 苦笑いしながら聞いていると、私の目を覗き込んできたので目を逸らした。

 お前も私なら人の目なんてそんなしげしげ見るの得意じゃないだろうに。

 すると案の定、自分から覗き込んでおいて体ごと目を逸らしているのだから、思わずひっぱたきそうになった。

 ダメだ。どうあがいてもイライラする。どうして自分を相手にするとこんなに腹が立つのか。

 しかし、小屋の馬鹿ほどではなかったからなんとかなりそうだ。

 ゆっくり深呼吸し、気持ちを落ち着かせてから本題に入った。

 夢で導こうとした先、目的、理由……その他もろもろ洗いざらい吐いてもらおうじゃないか。

 夢を操ったということはつまり、私に悪夢を見せ続けていた元凶は自分ですと名乗っているようなものだ。

 よくもまあ堂々と名乗りをあげられたもんだ。人が悪夢見ても平気そうにしてるからってこいつ。

 理由次第では一発殴ろうかと思うだけ思っていると、ちゃんとしたお話が始まったので、とりあえず真剣に聞いてみることにした。

 夢の私が言うには、小屋の馬鹿をどうにかしてほしくて夢を通してヒントをたくさん出していたらしい。

 ここに迷い込むかどうかは運次第だったけれど、上手に迷い込んでくれてほっとしたとか。

 ほっとすんなよ。

 いろいろ言いたいことも思ってることもあったけれど、この一言を思っただけであとは口にも出さずに頭を働かせた。

 小屋のあいつをどうにかしたら解放してもらえるのかと聞いてみると、夢を操れる私は何度も頷いていた。

 ここからも出られるのだとか。

 ほんとかなあ。なんか胡散臭いだけじゃなく布のくだりで頼りなさそうな印象が強いんだけど。そういうのがなくったって、目の前のこいつは所詮私だからなあ……。

 でも、現状他にすることも目指すものもないし、とりあえず聞き入れてみるか。

 小屋の馬鹿のことめちゃくちゃ嫌いだけどさ……。

 まずは仲直りするところからだけど、どうしような……。

 悩んでいると、夢を操れる私が首を傾げていたので素直に打ち明けてみることにした。

 自分相手だと他の人に相談するときのような不安も心配もなにもなくてすんだ。

 自分だから相談した結果、巻き込んでしまったり嫌な目に遭わせたり痛い目に遭わせても胸が痛まないし、そもそも自分なんだから余計なことはしないだろう。他にも、他人に打ち明けるか悩むポイントをオールクリアで気兼ねなく話すことができた。

 どうやら、夢を操る私もあいつと上手に話し合いができなくて追い出されて時計塔にこもってしまったらしい。

 童話の世界にいる限り、死んでも巻き戻してもらえるから死ぬことはないそうだが、精神的には狂ってしまいそうになるのだとか。

 閉じ込められた期間が私よりずっと長いらしい。

 夢を操る私は小屋の馬鹿の悪口を言いたい放題で共感できる点も多く、お互いしばらくの間ずっと小屋の馬鹿についてゲラゲラ笑いっぱなしだった。

 笑い上戸なところも見た目以外の共通点らしい。

 あの狂人とどうやって話し合えってんだふざけんな。

 お互い普段は悪口で盛り上がることはあまりないってところも雑談の中で交えながら、小屋の馬鹿が目の前にいるのが自分なのに気づかないことで大笑いし、同じ話をずっと繰り返してることも馬鹿にしながら、まともな話し合いをする前に拒絶して追い出してきた短気具合も突っ込み、とにかくたくさん笑いながら話した。

 夢を操る私は、自分たちの方にあった問題を解決してすぐここにきたけれど、閉じ込められた上に何もできなくて鬱憤がたまりまくっていたらしく、私よりも過激に小屋の馬鹿のことを罵りまくって大笑いしていた。

 そうして、最終的に一緒にいた違和感ありまくりのユキに話題が移っていった。

「あれってさ。本当にユキか?」

 私は思ったことを素直に口にしてみただけだったけれど、夢を操る私は言われて気がついた様子だった。

 初めて見たときの違和感がすごかったこと、さすがにユキ本人がずっと小屋の馬鹿ばっかり見つめてニコニコするか疑問なこと、死んだ日から十五年も経っているのに、魂が傍に居続けられるかどうかということ。

 夢を操る私が言うには、あのユキにはでかいアホ毛があるから、違和感の正体はそれじゃないか?という指摘があった。

 なるほど、だからあんなに違和感があったのか。

 違和感の正体を教えてもらって納得しつつ、アホ毛に気づいていながら言われるまでユキが本物かどうか考えもしなかった夢の私に笑いがこみあげてきた。

 私だってアホ毛に気づけなかったくせにな。

 仲直りの方法を相談するはずだったのに、いつの間にか小屋の馬鹿に関する悪口で盛り上がった挙句、ユキが本物かどうか、正体は何かで話が盛り上がってループを終えてしまった。

 鳴り響く鐘の音を聞きながら、またここにくると約束すると、とびきり嬉しそうな顔をしながら「待ってる」と叫んでいるのを見て今回は終わりだった。

 自分に対する嫌悪感が少し和らいだような気がして、心がちょっと軽くなった。

 こんな風にあいつとも話せたら、このループ地獄も終わるのだろうか……。
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