54 / 115
新しい職場
6
しおりを挟む
社長はユーモアのある人で、リフレッシュ休暇や家族サービス休暇を設けている。
社員第一主義で「いい仕事をしてもらうためには、社員の働きやすい環境を作るのことが大切だ」と言うのが口癖らしい。
素敵な考え方で、あの社長なら言いそうな気がした。
総務や営業の人、ウェブデザイナーの人など紹介してもらった。
名前はなんとなく覚えた……というか、ノートを片手にメモしていった。
それを見た緑さんに「真面目ね」なんて笑われてしまったけど。
最初に挨拶した人は、総務部長の金本さん。
四十代の男性で緑さんの直接の上司だ。
ということは、私にとっても上司となる人で思わず背筋が伸びた。
「夏木さん、そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。一緒に頑張ろうね」と優しく笑顔で言ってくれ、少しホッとした。
会議室や資料室、給湯室の使い方など教わった。
「さて、一通り挨拶も終わったしお昼にしましょうか」
もうそんな時間?
腕時計を見ると十一時半過ぎだった。
「あの、お腹大丈夫ですか?」
お腹が大きいのにずっと社内を案内してもらっていたので気になっていた。
「大丈夫よ。心配してくれてありがとう。病気じゃないんだし、少しは歩いた方がいいからね。それにみんな過保護だからすぐに椅子に座れって言ってうるさかったでしょ」
確かに私が社員の人と話している時、周りの人は緑さんに椅子に座るように促していた。
あだ名や名前で呼びあったりして、みんな仲がいいんだなというのがうかがえた。
同時に私はその中に入っていけるんだろうかという不安も芽生えた。
そんな私の気持ちを読み取ったのか、緑さんは柔らかく笑う。
「そんな不安そうな顔しないで。みんな美桜ちゃんに構いたくてウズウズしてるのよ」
「どういうことですか?」
「最初だし、あまりグイグイ話しかけて美桜ちゃんに引かれるのが嫌だからみんな猫被ってるの。それがおかしくて何度も笑いそうになったわ。歓迎会して交流を深めたいってみんな口を揃えて言うの。ホント気が早いんだから」
緑さんは思い出し笑いをする。
そんな風に言ってもらえてよかった。
私も早くみんなに溶け込めるように積極的に挨拶していこう。
お店で働いていたので、人と話すことは好きな方だ。
「それじゃ、一度社長室に戻りましょう。お昼はきっと社長が美味しい店に連れていってくれると思うから」
私は緑さんと共に社長室に戻った。
***
お昼は社長と緑さんと一緒に『エリクレール・ローザ』というフレンチのお店に行った。
フレンチといってもカジュアルな感じでそんなにハードルは高くなかった。
ガラス張りの開放的な空間で、ダウンライトがオシャレな雰囲気を演出していた。
座り心地のいいソファ席やテーブル席が充実していて、インテリアや照明に凝っていた。
もちろん、料理も美味しかった。
帰る間際に『エリクレール・ローザ』は副社長が手掛けたお店だということを知り、デキる人なんだと再認識した。
「じゃあ、明日からよろしくね」
「はい。今日はありがとうございました」
社長にお礼を言って私はデザイン事務所を後にした。
社員第一主義で「いい仕事をしてもらうためには、社員の働きやすい環境を作るのことが大切だ」と言うのが口癖らしい。
素敵な考え方で、あの社長なら言いそうな気がした。
総務や営業の人、ウェブデザイナーの人など紹介してもらった。
名前はなんとなく覚えた……というか、ノートを片手にメモしていった。
それを見た緑さんに「真面目ね」なんて笑われてしまったけど。
最初に挨拶した人は、総務部長の金本さん。
四十代の男性で緑さんの直接の上司だ。
ということは、私にとっても上司となる人で思わず背筋が伸びた。
「夏木さん、そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。一緒に頑張ろうね」と優しく笑顔で言ってくれ、少しホッとした。
会議室や資料室、給湯室の使い方など教わった。
「さて、一通り挨拶も終わったしお昼にしましょうか」
もうそんな時間?
腕時計を見ると十一時半過ぎだった。
「あの、お腹大丈夫ですか?」
お腹が大きいのにずっと社内を案内してもらっていたので気になっていた。
「大丈夫よ。心配してくれてありがとう。病気じゃないんだし、少しは歩いた方がいいからね。それにみんな過保護だからすぐに椅子に座れって言ってうるさかったでしょ」
確かに私が社員の人と話している時、周りの人は緑さんに椅子に座るように促していた。
あだ名や名前で呼びあったりして、みんな仲がいいんだなというのがうかがえた。
同時に私はその中に入っていけるんだろうかという不安も芽生えた。
そんな私の気持ちを読み取ったのか、緑さんは柔らかく笑う。
「そんな不安そうな顔しないで。みんな美桜ちゃんに構いたくてウズウズしてるのよ」
「どういうことですか?」
「最初だし、あまりグイグイ話しかけて美桜ちゃんに引かれるのが嫌だからみんな猫被ってるの。それがおかしくて何度も笑いそうになったわ。歓迎会して交流を深めたいってみんな口を揃えて言うの。ホント気が早いんだから」
緑さんは思い出し笑いをする。
そんな風に言ってもらえてよかった。
私も早くみんなに溶け込めるように積極的に挨拶していこう。
お店で働いていたので、人と話すことは好きな方だ。
「それじゃ、一度社長室に戻りましょう。お昼はきっと社長が美味しい店に連れていってくれると思うから」
私は緑さんと共に社長室に戻った。
***
お昼は社長と緑さんと一緒に『エリクレール・ローザ』というフレンチのお店に行った。
フレンチといってもカジュアルな感じでそんなにハードルは高くなかった。
ガラス張りの開放的な空間で、ダウンライトがオシャレな雰囲気を演出していた。
座り心地のいいソファ席やテーブル席が充実していて、インテリアや照明に凝っていた。
もちろん、料理も美味しかった。
帰る間際に『エリクレール・ローザ』は副社長が手掛けたお店だということを知り、デキる人なんだと再認識した。
「じゃあ、明日からよろしくね」
「はい。今日はありがとうございました」
社長にお礼を言って私はデザイン事務所を後にした。
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
68
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる