113 / 115
対決、そしてこれからもずっと
9
しおりを挟む
勘違いさせたつもりはなかったけど、結果的に私の対応がよくなかったんだと思ったら申し訳なくなった。
斉藤さんはおもむろに口を開いた。
「仕事で失敗して落ち込んでいた日、何気なく目に留まった惣菜屋に入ったんだ。そこに置いていた弁当を買ってレジで支払いをしていた時、君は笑顔で仕事頑張ってくださいって言ってくれたんだ。その時に僕は救われた気がした。僕はその瞬間、君に恋に落ちた。君に会いたくて毎日のようにあの店に通ったんだ」
「だからってストーカーはまずいだろ」
テツが即座に突っ込みをいれると、斉藤さんは反論した。
「僕はストーカーなんてしていない!」
「自覚がないヤツほどそう言うんだよ。美桜に会うために毎日のように店に通ったんだろ。それに、居酒屋でも遭遇したって聞いてるけど。美桜が不快に思った時点でアウトだろ」
「確かに店には通った。だけど、居酒屋で会ったのは本当に偶然なんだ。たまたま入った居酒屋でナツキさんを見かけて嬉しくなって声をかけただけだ。だから僕はストーカーじゃない」
斉藤さんはハッキリとストーカーじゃないと言い切った。
居酒屋で会ったのは偶然だったのか。
それを聞いて少し安堵した。
やっぱり自意識過剰な部分も多少はあったんだなと反省していると、テツが思いがけない言葉を口にした。
「あんたさぁ、他に目を向けてみたらどうだ?」
「どういうことだ?」
斉藤さんは怪訝そうな表情でテツを見る。
「美桜は俺の婚約者だぞ。将来、結婚する相手がいる女を想い続けても時間の無駄な上、あんたの恋は実らない。だったら、スッパリ美桜のことは諦めて他を探した方が絶対にいい。あんた真面目で男前だし、何より一途な男だからすぐにいい人が見つかるよ」
なぜかテツは斉藤さんを励まし褒めていた。
何の根拠もない言葉だったから納得してくれないだろうと思っていたら、斉藤さんの次に放った言葉に唖然とした。
「本当にそう思うか?」
「あぁ、俺が保証する」
斉藤さんが確認するように聞けば、テツは自信ありげに親指を立てた。
何このやり取り。
しかも、保証するってテツは何様のつもり?
私はこの状況が理解できなくて頭にハテナマークが浮かんでいた。
テツの言葉に納得したのか、斉藤さんは妙にスッキリとした表情になっていた。
え、どういうこと?
斉藤さん、単純すぎると思うんだけど。
「ナツキさん、僕が気付かないうちに君に不快な思いをさせていたみたいで本当に申し訳なかった。でも、君の笑顔に救われたんだ。それだけは分かって欲しい」
頭を下げる斉藤さんに、私は静かに頷いた。
車に乗せられそうになった時は焦ったし、大事になると思ってた。
でも、斉藤さんはテツの言葉はひとつでコロッと変わってしまった。
話せば分かる人だったのかな。
何だか拍子抜けだ。
「さっきは乱暴に腕を掴んですみませんでした。もう君に迷惑をかけるようなことはしないと約束する。じゃあ、元気で。あっ、あの惣菜屋に行くことだけは許してほしい」
「私もバッグをぶつけてごめんなさい。お店にはぜひ行ってください」
斉藤さんは微笑むと、止めていた車に乗って街中へと消えて行った。
これでようやく斉藤さんの問題は解決したんだと思ったら、肩の荷が下りた気がした。
斉藤さんはおもむろに口を開いた。
「仕事で失敗して落ち込んでいた日、何気なく目に留まった惣菜屋に入ったんだ。そこに置いていた弁当を買ってレジで支払いをしていた時、君は笑顔で仕事頑張ってくださいって言ってくれたんだ。その時に僕は救われた気がした。僕はその瞬間、君に恋に落ちた。君に会いたくて毎日のようにあの店に通ったんだ」
「だからってストーカーはまずいだろ」
テツが即座に突っ込みをいれると、斉藤さんは反論した。
「僕はストーカーなんてしていない!」
「自覚がないヤツほどそう言うんだよ。美桜に会うために毎日のように店に通ったんだろ。それに、居酒屋でも遭遇したって聞いてるけど。美桜が不快に思った時点でアウトだろ」
「確かに店には通った。だけど、居酒屋で会ったのは本当に偶然なんだ。たまたま入った居酒屋でナツキさんを見かけて嬉しくなって声をかけただけだ。だから僕はストーカーじゃない」
斉藤さんはハッキリとストーカーじゃないと言い切った。
居酒屋で会ったのは偶然だったのか。
それを聞いて少し安堵した。
やっぱり自意識過剰な部分も多少はあったんだなと反省していると、テツが思いがけない言葉を口にした。
「あんたさぁ、他に目を向けてみたらどうだ?」
「どういうことだ?」
斉藤さんは怪訝そうな表情でテツを見る。
「美桜は俺の婚約者だぞ。将来、結婚する相手がいる女を想い続けても時間の無駄な上、あんたの恋は実らない。だったら、スッパリ美桜のことは諦めて他を探した方が絶対にいい。あんた真面目で男前だし、何より一途な男だからすぐにいい人が見つかるよ」
なぜかテツは斉藤さんを励まし褒めていた。
何の根拠もない言葉だったから納得してくれないだろうと思っていたら、斉藤さんの次に放った言葉に唖然とした。
「本当にそう思うか?」
「あぁ、俺が保証する」
斉藤さんが確認するように聞けば、テツは自信ありげに親指を立てた。
何このやり取り。
しかも、保証するってテツは何様のつもり?
私はこの状況が理解できなくて頭にハテナマークが浮かんでいた。
テツの言葉に納得したのか、斉藤さんは妙にスッキリとした表情になっていた。
え、どういうこと?
斉藤さん、単純すぎると思うんだけど。
「ナツキさん、僕が気付かないうちに君に不快な思いをさせていたみたいで本当に申し訳なかった。でも、君の笑顔に救われたんだ。それだけは分かって欲しい」
頭を下げる斉藤さんに、私は静かに頷いた。
車に乗せられそうになった時は焦ったし、大事になると思ってた。
でも、斉藤さんはテツの言葉はひとつでコロッと変わってしまった。
話せば分かる人だったのかな。
何だか拍子抜けだ。
「さっきは乱暴に腕を掴んですみませんでした。もう君に迷惑をかけるようなことはしないと約束する。じゃあ、元気で。あっ、あの惣菜屋に行くことだけは許してほしい」
「私もバッグをぶつけてごめんなさい。お店にはぜひ行ってください」
斉藤さんは微笑むと、止めていた車に乗って街中へと消えて行った。
これでようやく斉藤さんの問題は解決したんだと思ったら、肩の荷が下りた気がした。
12
あなたにおすすめの小説
もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
泉南佳那
恋愛
イケメンカリスマ美容師と内気で地味な書店員との、甘々溺愛ストーリーです!
どうぞお楽しみいただけますように。
〈あらすじ〉
加藤優紀は、現在、25歳の書店員。
東京の中心部ながら、昭和味たっぷりの裏町に位置する「高木書店」という名の本屋を、祖母とふたりで切り盛りしている。
彼女が高木書店で働きはじめたのは、3年ほど前から。
短大卒業後、不動産会社で営業事務をしていたが、同期の、親会社の重役令嬢からいじめに近い嫌がらせを受け、逃げるように会社を辞めた過去があった。
そのことは優紀の心に小さいながらも深い傷をつけた。
人付き合いを恐れるようになった優紀は、それ以来、つぶれかけの本屋で人の目につかない質素な生活に安んじていた。
一方、高木書店の目と鼻の先に、優紀の兄の幼なじみで、大企業の社長令息にしてカリスマ美容師の香坂玲伊が〈リインカネーション〉という総合ビューティーサロンを経営していた。
玲伊は優紀より4歳年上の29歳。
優紀も、兄とともに玲伊と一緒に遊んだ幼なじみであった。
店が近いこともあり、玲伊はしょっちゅう、優紀の本屋に顔を出していた。
子供のころから、かっこよくて優しかった玲伊は、優紀の初恋の人。
その気持ちは今もまったく変わっていなかったが、しがない書店員の自分が、カリスマ美容師にして御曹司の彼に釣り合うはずがないと、その恋心に蓋をしていた。
そんなある日、優紀は玲伊に「自分の店に来て」言われる。
優紀が〈リインカネーション〉を訪れると、人気のファッション誌『KALEN』の編集者が待っていた。
そして「シンデレラ・プロジェクト」のモデルをしてほしいと依頼される。
「シンデレラ・プロジェクト」とは、玲伊の店の1周年記念の企画で、〈リインカネーション〉のすべての施設を使い、2~3カ月でモデルの女性を美しく変身させ、それを雑誌の連載記事として掲載するというもの。
優紀は固辞したが、玲伊の熱心な誘いに負け、最終的に引き受けることとなる。
はじめての経験に戸惑いながらも、超一流の施術に心が満たされていく優紀。
そして、玲伊への恋心はいっそう募ってゆく。
玲伊はとても優しいが、それは親友の妹だから。
そんな切ない気持ちを抱えていた。
プロジェクトがはじまり、ひと月が過ぎた。
書店の仕事と〈リインカネーション〉の施術という二重生活に慣れてきた矢先、大問題が発生する。
突然、編集部に上層部から横やりが入り、優紀は「シンデレラ・プロジェクト」のモデルを下ろされることになった。
残念に思いながらも、やはり夢でしかなかったのだとあきらめる優紀だったが、そんなとき、玲伊から呼び出しを受けて……
課長のケーキは甘い包囲網
花里 美佐
恋愛
田崎すみれ 二十二歳 料亭の娘だが、自分は料理が全くできない負い目がある。
えくぼの見える笑顔が可愛い、ケーキが大好きな女子。
×
沢島 誠司 三十三歳 洋菓子メーカー人事総務課長。笑わない鬼課長だった。
実は四年前まで商品開発担当パティシエだった。
大好きな洋菓子メーカーに就職したすみれ。
面接官だった彼が上司となった。
しかも、彼は面接に来る前からすみれを知っていた。
彼女のいつも買うケーキは、彼にとって重要な意味を持っていたからだ。
心に傷を持つヒーローとコンプレックス持ちのヒロインの恋(。・ω・。)ノ♡
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
病弱な第四皇子は屈強な皇帝となって、兎耳宮廷薬師に求愛する
藤原 秋
恋愛
大規模な自然災害により絶滅寸前となった兎耳族の生き残りは、大帝国の皇帝の計らいにより宮廷で保護という名目の軟禁下に置かれている。
彼らは宮廷内の仕事に従事しながら、一切の外出を許可されず、婚姻は同族間のみと定義づけられ、宮廷内の籠の鳥と化していた。
そんな中、宮廷薬師となった兎耳族のユーファは、帝国に滅ぼされたアズール王国の王子で今は皇宮の側用人となったスレンツェと共に、生まれつき病弱で両親から次期皇帝候補になることはないと見限られた五歳の第四皇子フラムアーク付きとなり、皇子という地位にありながら冷遇された彼を献身的に支えてきた。
フラムアークはユーファに懐き、スレンツェを慕い、成長と共に少しずつ丈夫になっていく。
だがそれは、彼が現実という名の壁に直面し、自らの境遇に立ち向かっていかねばならないことを意味していた―――。
柔和な性格ながら確たる覚悟を内に秘め、男としての牙を隠す第四皇子と、高潔で侠気に富み、自らの過去と戦いながら彼を補佐する亡国の王子、彼らの心の支えとなり、国の制約と湧き起こる感情の狭間で葛藤する亜人の宮廷薬師。
三者三様の立ち位置にある彼らが手を携え合い、ひとつひとつ困難を乗り越えて掴み取る、思慕と軌跡の逆転劇。
イケメン副社長のターゲットは私!?~彼と秘密のルームシェア~
美和優希
恋愛
木下紗和は、務めていた会社を解雇されてから、再就職先が見つからずにいる。
貯蓄も底をつく中、兄の社宅に転がり込んでいたものの、頼りにしていた兄が突然転勤になり住む場所も失ってしまう。
そんな時、大手お菓子メーカーの副社長に救いの手を差しのべられた。
紗和は、副社長の秘書として働けることになったのだ。
そして不安一杯の中、提供された新しい住まいはなんと、副社長の自宅で……!?
突然始まった秘密のルームシェア。
日頃は優しくて紳士的なのに、時々意地悪にからかってくる副社長に気づいたときには惹かれていて──。
初回公開・完結*2017.12.21(他サイト)
アルファポリスでの公開日*2020.02.16
*表紙画像は写真AC(かずなり777様)のフリー素材を使わせていただいてます。
初恋は溺愛で。〈一夜だけのはずが、遊び人を卒業して平凡な私と恋をするそうです〉
濘-NEI-
恋愛
友人の授かり婚により、ルームシェアを続けられなくなった香澄は、独りぼっちの寂しさを誤魔化すように一人で食事に行った店で、イケオジと出会って甘い一夜を過ごす。
一晩限りのオトナの夜が忘れならない中、従姉妹のツテで決まった引越し先に、再会するはずもない彼が居て、奇妙な同居が始まる予感!
◆Rシーンには※印
ヒーロー視点には⭐︎印をつけておきます
◎この作品はエブリスタさん、pixivさんでも公開しています
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜
椿かもめ
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。
【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】
☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆
※ベリーズカフェでも掲載中
※推敲、校正前のものです。ご注意下さい
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる