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不器用な優しさ
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「あー、これは虫歯だね」
昨日からのダメージで気持ちがどん底真っ只中なのに、追い打ちをかける歯科医師の言葉。
聞いた瞬間、"ガーン"という効果音が脳内に鳴り響く。
あの後、送ってくれるという新庄くんの申し出を断った。
そんなことをしてもらったら余計に辛くなるだけだし、こういう優しさは傷心の私には本当にキツイ。
アパートにつき、階段をのぼっていると足を滑らせて脛を強打してしまった。
あまりの痛さに半泣き状態でなんとか帰宅。
踏んだり蹴ったりだ。
シャワーを浴びながら、ふと午後から歯の定期検診を予約していたことを思い出す。
そんなこんなで、ゆっくりする間もなく、いとこが働いている『牧村ファミリー歯科』に来ていた。
検診だけで終わると思っていたのに、まさかの虫歯とかホントについてない。
次から次へと我が身に降りかかる不運にため息しか出ない。
治療が終わり、ハンカチで口許を拭きながら足取り重く待合室へ向かう。
また来週も来ないといけないとか最悪だ。
歯の治療の時、口を開けっ放しにしないといけないのが地味に辛い。
ウィーンという耳を塞ぎたくなるような機械音に気持ちは駄々下がり。
小学生の頃は虫歯治療でよく歯医者に通っていた。
高校ぐらいから特に虫歯にはなっていなかったので、虫歯治療をするのは十年ぶりぐらい。
また歯医者通いかと思うだけで憂鬱でたまらない。
「桜井さーん」
ソファに座っていたら受付の人に名前を呼ばれ、支払いを済ませる。
「次回のご予約はどうしますか?」
「じゃあ、来週の土曜の同じ時間は空いてますか?」
スマホのカレンダーアプリをタップし、予定を確認して口を開く。
「土曜の十四時ですね。少々、お待ちください」
受付の人がパソコンの画面を見ている。
「はい、大丈夫です。では、十七日の土曜、十四時に予約をお取りしますね」
予約日時を記入した診察カードを渡され、それを受け取った。
「あー、定期健診のつもりが虫歯とかついてないんだけど」
思わず愚痴をこぼす。
「ふふ、でもそれで虫歯が見つかってよかったじゃない。悪化する前に治療が出来るんだから。何事も早め早めがいいでしょ」
笑いながらフランクに答えてくれる受付の女性。
この歯科医院の受付をやっているのは、いとこの新藤唯香。
一人っ子の私は、幼い頃から彼女を実のお姉ちゃんのように慕っていて、親戚が集まると必ず唯香ちゃんの隣をキープしていた。
年を重ねた今でも、定期的に会ってご飯を食べたりしている。
私たち二人は飲んだ時の勢いで“片想い同盟”を結成していた。
どうして過去形かというと、唯香ちゃんに彼氏が出来て同盟を解消したからだ。
唯香ちゃんは長年の片想いが報われたと喜んでいて、私も自分のことのように嬉しくて心から祝福をした。
昨日からのダメージで気持ちがどん底真っ只中なのに、追い打ちをかける歯科医師の言葉。
聞いた瞬間、"ガーン"という効果音が脳内に鳴り響く。
あの後、送ってくれるという新庄くんの申し出を断った。
そんなことをしてもらったら余計に辛くなるだけだし、こういう優しさは傷心の私には本当にキツイ。
アパートにつき、階段をのぼっていると足を滑らせて脛を強打してしまった。
あまりの痛さに半泣き状態でなんとか帰宅。
踏んだり蹴ったりだ。
シャワーを浴びながら、ふと午後から歯の定期検診を予約していたことを思い出す。
そんなこんなで、ゆっくりする間もなく、いとこが働いている『牧村ファミリー歯科』に来ていた。
検診だけで終わると思っていたのに、まさかの虫歯とかホントについてない。
次から次へと我が身に降りかかる不運にため息しか出ない。
治療が終わり、ハンカチで口許を拭きながら足取り重く待合室へ向かう。
また来週も来ないといけないとか最悪だ。
歯の治療の時、口を開けっ放しにしないといけないのが地味に辛い。
ウィーンという耳を塞ぎたくなるような機械音に気持ちは駄々下がり。
小学生の頃は虫歯治療でよく歯医者に通っていた。
高校ぐらいから特に虫歯にはなっていなかったので、虫歯治療をするのは十年ぶりぐらい。
また歯医者通いかと思うだけで憂鬱でたまらない。
「桜井さーん」
ソファに座っていたら受付の人に名前を呼ばれ、支払いを済ませる。
「次回のご予約はどうしますか?」
「じゃあ、来週の土曜の同じ時間は空いてますか?」
スマホのカレンダーアプリをタップし、予定を確認して口を開く。
「土曜の十四時ですね。少々、お待ちください」
受付の人がパソコンの画面を見ている。
「はい、大丈夫です。では、十七日の土曜、十四時に予約をお取りしますね」
予約日時を記入した診察カードを渡され、それを受け取った。
「あー、定期健診のつもりが虫歯とかついてないんだけど」
思わず愚痴をこぼす。
「ふふ、でもそれで虫歯が見つかってよかったじゃない。悪化する前に治療が出来るんだから。何事も早め早めがいいでしょ」
笑いながらフランクに答えてくれる受付の女性。
この歯科医院の受付をやっているのは、いとこの新藤唯香。
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