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二人の本音
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最終日の日曜、特に大きなトラブルもなくイベントは大盛況に終わった。
余韻に浸る間もなく、私たちは後片付けに取りかかる。
大まかな物を片付けたところで社長が『今日はみんな疲れているだろうからこの辺で終わらせて、残りは明日しよう』と言い、それに従った。
誰かが話の流れで『打ち上げしよう』と提案していたけど、賛同する人はほとんどいなかった。
疲れているのにそんな元気はなく早く家に帰りたい人が多数。
結局、打ち上げは別の日にすることになった。
私は十八時半頃に会社を出た。
身体は疲れていたけど、このまま帰る気分にはならなくて買い物をしようと大型ショッピングモールに寄ることにした。
お店をはしごしていたらあっという間に時間が経ち、十九時半前になっていた。
街灯が照らされている歩道を歩き、駅に向かっていたら数メートル先のコンビニの前に俯いて立っている新庄くんの姿が視界に入った。
プルオーバーのパーカーに黒のスキニーパンツというラフな服装だったので、一度家に帰ったんだろう。
昨日のことがあり、下手に喋ったら墓穴を掘りそうだったから今日はまともに会話していない。
このまま見なかった振りをして立ち去ろうと思っていたんだけど……。
「あれ、桜井じゃん。まだ帰ってなかったのか?」
運悪くちょうど顔をあげた新庄くんに気付かれてしまった。
流石に無視することは出来なくて口を開く。
「あ、うん。ちょっと買い物をしてたから。新庄くんはなにしてるの?」
「俺は」
「湊くん、お待たせ。ここには欲しかったデザート売ってなかったよ」
言葉を遮るようにコンビニから出てきた女の人が新庄くんに声をかけた。
茶髪のふんわりとしたボブにパッチリとした二重の大きな目が印象的だ。
小柄で華奢な感じがして女の私でも守ってあげなきゃと思ってしまうような可愛らしい人。
直感的にこの人は新庄くんの彼女だと思った。
絵になる美男美女のツーショットを目の当たりにし、無意識に後ずさる。
不意に新庄くんの彼女が私の方に視線を向けてきた。
「湊くんの知り合い?」
「あぁ、会社の同僚だよ」
「そうなんだ」
その人はニコリと笑顔を浮かべて私を見て、慌てて会釈した。
嫌な汗が背中を伝う。
前に新庄くんのマンションに泊まったことが彼女にバレていたら……と考えただけで生きた心地がしない。
とっさに私はここにいちゃいけないと思った。
「私、電車の時間があるから失礼するね」
「あ、桜井っ」
新庄くんの横をすり抜け足早で駅を目指した。
どうしてこういうタイミングで会ってしまうんだろう。
お似合いの二人の姿を見て胸が張り裂けそうな気持ちになった。
嫉妬、悲しさ、悔しさなどいろんな感情が混ざり合い、涙が零れ落ちて視界がぼやける。
それを手で拭いながら必死に足を動かす。
もうすぐ駅に着くということろで、足元をよく見ていなかったから、側溝の穴にヒールが引っかかって勢いよく転んでしまった。
痛っ!
こんな場所で転ぶなんて本当に災難だ。
絶対に今日の占いは最下位だと思う。
通行人はいるけど、物珍しそうにチラ見するだけで特に声をかけることもなく素通りしていく。
手のひらは擦り剥け、膝から血が滲んできている。
今日はスカートにハイソックスだったので膝が丸出しの無防備だった。
はあ、何をやっているんだろう。
新庄くんと彼女のツーショットを見た上に転んでしまうとか、自分の運のなさに呆れてしまう。
バッグからティッシュを取り出して血を拭っていると「大丈夫か?」と気遣う声が耳に届いて顔を上げると、思わず目を見開いた。
余韻に浸る間もなく、私たちは後片付けに取りかかる。
大まかな物を片付けたところで社長が『今日はみんな疲れているだろうからこの辺で終わらせて、残りは明日しよう』と言い、それに従った。
誰かが話の流れで『打ち上げしよう』と提案していたけど、賛同する人はほとんどいなかった。
疲れているのにそんな元気はなく早く家に帰りたい人が多数。
結局、打ち上げは別の日にすることになった。
私は十八時半頃に会社を出た。
身体は疲れていたけど、このまま帰る気分にはならなくて買い物をしようと大型ショッピングモールに寄ることにした。
お店をはしごしていたらあっという間に時間が経ち、十九時半前になっていた。
街灯が照らされている歩道を歩き、駅に向かっていたら数メートル先のコンビニの前に俯いて立っている新庄くんの姿が視界に入った。
プルオーバーのパーカーに黒のスキニーパンツというラフな服装だったので、一度家に帰ったんだろう。
昨日のことがあり、下手に喋ったら墓穴を掘りそうだったから今日はまともに会話していない。
このまま見なかった振りをして立ち去ろうと思っていたんだけど……。
「あれ、桜井じゃん。まだ帰ってなかったのか?」
運悪くちょうど顔をあげた新庄くんに気付かれてしまった。
流石に無視することは出来なくて口を開く。
「あ、うん。ちょっと買い物をしてたから。新庄くんはなにしてるの?」
「俺は」
「湊くん、お待たせ。ここには欲しかったデザート売ってなかったよ」
言葉を遮るようにコンビニから出てきた女の人が新庄くんに声をかけた。
茶髪のふんわりとしたボブにパッチリとした二重の大きな目が印象的だ。
小柄で華奢な感じがして女の私でも守ってあげなきゃと思ってしまうような可愛らしい人。
直感的にこの人は新庄くんの彼女だと思った。
絵になる美男美女のツーショットを目の当たりにし、無意識に後ずさる。
不意に新庄くんの彼女が私の方に視線を向けてきた。
「湊くんの知り合い?」
「あぁ、会社の同僚だよ」
「そうなんだ」
その人はニコリと笑顔を浮かべて私を見て、慌てて会釈した。
嫌な汗が背中を伝う。
前に新庄くんのマンションに泊まったことが彼女にバレていたら……と考えただけで生きた心地がしない。
とっさに私はここにいちゃいけないと思った。
「私、電車の時間があるから失礼するね」
「あ、桜井っ」
新庄くんの横をすり抜け足早で駅を目指した。
どうしてこういうタイミングで会ってしまうんだろう。
お似合いの二人の姿を見て胸が張り裂けそうな気持ちになった。
嫉妬、悲しさ、悔しさなどいろんな感情が混ざり合い、涙が零れ落ちて視界がぼやける。
それを手で拭いながら必死に足を動かす。
もうすぐ駅に着くということろで、足元をよく見ていなかったから、側溝の穴にヒールが引っかかって勢いよく転んでしまった。
痛っ!
こんな場所で転ぶなんて本当に災難だ。
絶対に今日の占いは最下位だと思う。
通行人はいるけど、物珍しそうにチラ見するだけで特に声をかけることもなく素通りしていく。
手のひらは擦り剥け、膝から血が滲んできている。
今日はスカートにハイソックスだったので膝が丸出しの無防備だった。
はあ、何をやっているんだろう。
新庄くんと彼女のツーショットを見た上に転んでしまうとか、自分の運のなさに呆れてしまう。
バッグからティッシュを取り出して血を拭っていると「大丈夫か?」と気遣う声が耳に届いて顔を上げると、思わず目を見開いた。
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