嘘をつく唇に優しいキスを

松本ユミ

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封印した恋心

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ゆっくりと目を開けて、視界に飛び込んできた天井に違和感を覚えた。
確かうちの天井の色は白だったはず。
寝転がったまま目線だけ動かしてみると、私がいるのはコンクリート調の壁に囲まれた部屋……。

どういうこと?
寝ぼけてるのかな、と目を擦る。
再び、目を開けてみてもさっきと変わらない天井が見えた。

やっぱりここは私の部屋じゃない。
身体に力を入れて起き上がると今の状況を理解するべく、昨日からの行動を思い出そうと目を閉じた。

昨日の夜、会社の飲み会があった。
その時に新庄くんの結婚話を聞いて、ついお酒に手が伸びたのは覚えている。

飲み会が終わり、帰ろうとした時になりゆきで新庄くんに車で送ってもらう事になったんだけど……それからどうしたんだっけ。

その後の記憶が全くない。
思い出せずにひとりパニックに陥っていると、不意にドアが開いた。

「あ、起きた?」

部屋の主であろう人の声と共に、ひょっこりとよく知っている顔が覗いていて唖然とした。

「し、新庄くん……」

じゃあ、ここは新庄くんの部屋ってことなの?

「朝ご飯出来てるけど、食う?」

呑気にそんなことを言ってくる。

いやいや、それよりもどうして私は新庄くんの家にいるのか説明が欲しい。
断わろうとしたけど私のお腹は正直者で、空腹でなにか食べさせてと言わんばかりにグゥと音を立てる。
それが思いのほか、大きい音だった。

「桜井の腹は正直だな。飯、食うだろ?」

恥ずかしさで小さく頷けば新庄くんはクスリと笑う。

「洗面所はこの部屋を出て右にあるから勝手に使って」

そう言って寝室を出た。

ベッドから降りようとした時、ハッと自分の身体を見る。
もしかして……なんて変な考えが頭を過った。
だけど実際には、服を着たまま寝ていてシワになっているだけだった。

一瞬でも"一夜の過ち"があったかもと考えた自分が恥ずかしい。
新庄くんに限ってそんな間違いは起こさないだろうけど。

今、何時だろうかと周りを見回しても、この寝室には時計はない。
私のバッグがベッドの下に置いてあるのが目に入った。

きっと新庄くんが持ってきてくれたんだろう。
バッグをあさり、スマホを見ると九時十分と表示されていた。

九時って私は人様の家でどれだけ寝ていたんだろう。
新庄くんのことを呑気だと思っていたけど、自分も大概だなと呆れてしまう。

寝癖が付いているであろう髪の毛を手櫛で直しながらため息を吐く。
ふと、さっきまで自分が寝ていたベッドに視線を向けた。
無神経にベッドまで貸してもらっていたことに居たたまれない気持ちになる。

だって新庄くんには……。
あー、もう!嫌な思考を振り払うように両頬を手で軽く叩き寝室を出た。

洗面所で顔を洗い、新庄くんが出してくれていたタオルで顔を拭く。
その足で向かったのはリビングだ。
モノトーンのインテリアで揃えられた落ち着いた雰囲気で新庄くんらしいなと思ってしまう。
さっきの寝室もそうだったけど、必要最低限の物しか置かれていない。

「ホラ、早く飯食べろよ」

新庄くんに促され、朝食をご馳走になることにした。
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